日本補綴歯科学会誌
Online ISSN : 1883-6860
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最新号
令和6年4月
選択された号の論文の28件中1~28を表示しています
巻頭言
依頼論文
◆企画:第132回学術大会/臨床リレーセッション1「アンテリアハイパーファンクションにどう対応するか?-その病因学と補綴治療のキーポイント-」
  • 荻野 洋一郎
    原稿種別: 依頼論文
    2024 年 16 巻 2 号 p. 221-226
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

     上顎無歯顎,下顎前歯残存症例において特徴的な口腔状態を示すコンビネーションシンドロームは,アンテリアハイパーファンクションシンドロームとしても認知されている.アンテリアハイパーファンクションという用語は正確に定義されていないが,その用語から下顎前歯による過大な咬合力と推察できる.これは,コンビネーションシンドロームに代表される歯列だけでなく,アイヒナーの分類のC1やB4の歯列においても観察される.この病態は,臼歯部の咬合支持の弱体化や喪失,さらには咬合高径の低下に起因することが多い.

     本論文では,アンテリアハイパーファンクションがもたらす口腔状態を整理し,その原因と臨床的対応について考察する.

  • 大山 哲生
    原稿種別: 依頼論文
    2024 年 16 巻 2 号 p. 227-232
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

     アンテリアハイパーファンクション(AH)とは,コンビネーションシンドロームのEichner C2症例のみならず,B4症例やC1症例における前歯部の過大な咬合力と定義される.一般的に対応を苦慮する症例は,その過大な咬合力による咬合接触が適切に管理されていないために義歯の動揺,咬合接触状態の変化および歯周組織の変化等を惹起し,更なる口腔組織の破壊につながっていくことに起因している.そして,その治療方針は臼歯部咬合の回復であり前歯部の咬合力のコントロールに尽きる.本稿では,臨床術式を中心に義歯補綴でのAH症例に対する処置法および処置後の対応方法について考察する.

  • 中野 環
    原稿種別: 依頼論文
    2024 年 16 巻 2 号 p. 233-238
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

     アンテリアハイパーファンクションシンドロームとは,上下顎臼歯部の咬合支持がなく,残存している下顎前歯部が過大な咬合力を生み出すことにより生じる現象である.そのような症例においては安定した強固な臼歯部の咬合支持の回復と前歯部に加わる咬合力のコントロールが重要である.そのためにインプラントを用いた補綴治療は非常に有効な選択肢の一つである.しかし,たとえインプラントを用いてもインプラント体や上部構造にトラブルを引き起こす可能性もあることから,その補綴設計や咬合状態のチェックは注意深く行わなければいけない.

◆企画:令和5年度第3回専門医研修会「顎機能障害の補綴治療(顎関節症治療の基本)」
  • 島田 明子
    原稿種別: 依頼論文
    2024 年 16 巻 2 号 p. 239-244
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

     咀嚼筋痛障害は顎関節症(Temporomandibular Disorders: TMDs)の分類のうち,咀嚼筋である咬筋や側頭筋の疼痛とそれに伴う機能障害を主な症状とする.国際的に標準化された顎関節症の診断基準であるThe Diagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders(DC/TMD)によって,専門医でない歯科医師でもその診断が確実な診断が可能である.また,咀嚼筋痛障害の治療にはアプライアンス療法,理学療法,薬物療法などの保存的治療が選択される.本稿では,咀嚼筋痛障害の基本事項,診断,さらに治療についての最新知見を解説する.

  • 荒井 良明
    原稿種別: 依頼論文
    2024 年 16 巻 2 号 p. 245-250
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

     顎関節障害患者の治療は,病態説明とホームケア指導に始まり,保存的治療として理学・運動療法,薬物療法,オーラルアプライアンス療法などを主体とした可逆的な治療が行われ,咬合治療が可逆的治療に対する優位性は証明されていないことから,咬合を永久に変えるような処置はできるだけ避けるべきである.

     一方で,顎関節障害の改善後に前歯部開咬といった二次的咬合異常を呈し高度な咀嚼障害を訴え,補綴治療の介入が必要な症例も少なくない.

     本稿では,補綴専門医が顎関節障害とそれに起因する咬合機能障害患者を治療するうえで必要な基礎知識として,1)現在の顎関節障害の疾病概念と治療について,2)オーラルアプライアンスの症状別の応用方法, 3)顎関節の形態変化に伴う咬合機能障害患者の補綴治療の3点に焦点を当てて解説する.

◆企画:令和5年度中国・四国支部学術大会「今後の補綴歯科を考える」
  • 市川 哲雄, 松田 岳, 石田 雄一, 渡邉 恵
    原稿種別: 依頼論文
    2024 年 16 巻 2 号 p. 251-257
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

     クラウンブリッジなどの固定性補綴装置の場合,印象採得から補綴装置製作までフルデジタル化が可能で,中間材料を使うことなく,所望の装置を製作できる.一方,義歯治療においては,技工操作のデジタル化は十分に可能であるが,義歯の印象採得,咬合採得のデジタル化は十分にできていないのが現状である.本稿では,印象採得,咬合採得,設計および人工歯排列,フレーム部分の製作,義歯のコンポーネントの統合,義歯の複製の観点から義歯治療のデジタル化の現状と今後について考察した.あわせて,補綴歯科治療における真のDigital Transformation,Smart Prosthodonticsについて言及した.

専門医症例報告
  • 平澤 正洋
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 2 号 p. 259-262
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:65歳女性.上下顎全部床義歯人工歯の咬耗による咀嚼困難および審美不良を主訴に来院した.審美的要求が高く治療用義歯での確認を提案するも,早急な治療を希望されたため旧義歯の修理後に全部床義歯を新製し,追加の要望に対しては義歯修理にて対応した.

    考察:リラインと咬合面再形成を伴う旧義歯の修理,および義歯新製時にゴシックアーチ描記法による水平的顎位の確認を行うことで,良好な義歯の安定を得た.また,装着後にも高い審美的要望に真摯に対応し,患者満足度の高い結果が得られた.

    結論:旧義歯修理による義歯の安定を図った後に全部床義歯を装着し,装着後も審美的要求に対応した結果,患者の高い満足度を得られた.

  • 丸尾 勝一郎
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 2 号 p. 263-266
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:64歳男性.上下顎の部分床義歯の咀嚼困難および審美不良を主訴に来院した.治療用義歯によって咬合状態の改善を図った後,インプラント埋入および骨造成を行った.固定性の暫間補綴装置によって,咀嚼機能および審美性の回復が認められたので,最終上部構造を装着した.

    考察:すれ違い咬合に近い咬合状態においては,咬合平面・咬合高径に乱れが生じているケースが多く,まずは治療用義歯によって咬合状態の改善を図ることが重要である.

    結論:本症例では治療用義歯と固定性インプラント修復によって,長期的に安定する機能および審美的結果が得られ,患者の口腔関連QoL向上に寄与した.

  • 盛林 昭仁
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 2 号 p. 267-270
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患患者は73歳男性.上顎右側中切歯歯冠破折による審美不良と咀嚼障害を主訴に来院した.臼歯部欠損や歯冠破折,多数歯にわたる中等度の咬耗から咬合平面は不整で,咬合高径の低下による前歯部補綴スペースの不足を認めた.咬合挙上と咬合平面の是正を行うことで咀嚼機能の回復と審美性の改善を図った.

    考察:咬合挙上および咬合平面の可及的是正を顔面計測と下顎安静位などから暫間的に行った後,十分な観察期間を設けて審美面および機能面を評価したうえでの最終補綴治療が良好な結果をもたらしたと考えられる.

    結論:咬合高径の低下により前歯部補綴スペースが不足した症例に対して,咬合挙上を行うことで良好な結果が得られた.

  • 安藤 彰浩
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 2 号 p. 271-274
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は,76歳の男性.前歯部の審美不良と咀嚼時に上唇を誤ってかんでしまうことを主訴として来院した.初診時,前歯部被蓋関係が反対咬合であり,顔面の正中と歯列の正中の不一致を認めた.主訴の改善を目的とし,オーバーデンチャーを用いた.

    考察:最終義歯装着後は,審美的な改善が得られ,上唇の誤咬が消失したことから,適切なリップサポートが得られたものと考える.また,上唇の誤咬の主な原因は,前歯部の水平的な被蓋不足であったと考える.

    結論:オーバーデンチャーを用いることで,治療開始後早期に主訴の改善が可能であった.最終義歯装着から約5年が経過したが,良好に経過している.

  • 原田 章生
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 2 号 p. 275-278
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は55歳の女性.前歯ブリッジの脱離による審美不良および咀嚼困難を主訴に来院した.内因性の酸蝕症による上顎前歯部舌側歯質の欠損および咬合高径の低下を認め,オールセラミッククラウンおよびブリッジを用いて全顎的な咬合再構成を行った.

    考察:上顎前歯欠損部のデンチャースペースの不足に対し,診断用ワックスアップを参考にプロビジョナルレストレーションを作製し,最終補綴の設計を決定した.

    結論:内因性の酸蝕症およびブラキシズムを伴う欠損歯列に対し,オールセラミッククラウンおよびブリッジを用いた全顎的な補綴歯科治療を行い,審美性および咬合機能の回復を行い,良好な経過と患者の高い満足を得た.

  • 秋山 友里
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 2 号 p. 279-282
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は78歳女性.繰り返す義歯破損と義歯不適合による咀嚼困難を主訴として来院した.上顎前歯部にはフラビーガムがあり,起床時に同部の疼痛を自覚していた. Co-Cr製の可撤性部分床義歯を製作,装着し,また,睡眠時ブラキシズムが認められたため就寝時義歯を装着した.

    考察:補綴治療介入により,咀嚼機能の改善と高い患者満足度に寄与したと考えられる.

    結論:無圧印象により製作した金属床に患者は満足し,さらに夜間用義歯を使用することで良好な経過が得ることができたと考えられた.

  • 高藤 恭子
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 2 号 p. 283-286
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は55歳女性.上顎前歯部のブリッジが脱離を繰り返していることから審美的ならびに機能的な改善を希望して当科に来院した.抜歯後の検査の結果,上顎前歯部の著しい骨吸収を認めたため,骨造成術を行い,その後にインプラントによる補綴処置を行った.

    考察:現在のところインプラント周囲組織は良好であるが,角化粘膜が少ないことから,移植骨の吸収については注意深く経過観察を行っていく必要があると考えられる.

    結論:自家骨と人工骨を併用することで水平的にも垂直的にも理想的な骨量が確保でき,より審美的で患者満足度の高い補綴処置が可能となった.

  • 瀧口 悟
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 2 号 p. 287-290
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は77歳女性.上顎および下顎臼歯部におけるインプラント体撤去後に,可撤性床義歯を装着したものの著しい咀嚼障害を訴えていた.下顎残存歯には固定性補綴装置を,上下顎欠損部には再度インプラント支持型補綴装置を装着することにより咀嚼機能の回復を行った.

    考察:インプラント治療の既往があり,可撤性補綴装置による咀嚼機能の低下と違和感が消失しない症例に対しては,適切な診断のもと,インプラント支持型の固定性補綴装置を再び適用する有用性が示された.

    結論:可撤性補綴装置では改善されない咀嚼障害に対して,インプラント支持型補綴装置を装着することにより,咀嚼機能の回復と患者満足度の改善に貢献できた.

  • 秋山 謙太郎
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 2 号 p. 291-294
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:62歳女性.上顎義歯の動揺による咀嚼困難を主訴に来院した.上顎前歯部および,下顎臼歯部に可撤性部分床義歯を使用しており,右側小臼歯部に咬合接触を残すのみであった.類すれ違い咬合を呈する本症例に対して,インプラント支持による固定性補綴装置を用いて機能回復を行った.

    考察:咬合支持域の減少により義歯の安定が失われていた患者に対して,インプラント支持による固定性補綴装置は,咬合支持域を増加させ,咀嚼機能の回復に寄与したと考えられた.

    結論:類すれ違い咬合を呈する症例に対して,インプラント支持による固定性補綴装置を用いて機能回復を行い,良好な経過が得られた.

  • 尾関 創
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 2 号 p. 295-298
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は64歳の女性で歯頸部の歯肉退縮および齲蝕による審美不良,咀嚼機能低下および咬合痛による咀嚼困難を主訴に来院した.重度歯周疾患,歯冠補綴装置の咬合面に破損と咬耗を認め,咬合高径の低下が疑われたため,プロビジョナルレストレーションにて咬合挙上を行い経過観察したのちに,最終補綴装置を装着した.

    考察:プロビジョナルレストレーションを用いて十分な咬合の確認,歯周組織の安定を図ったことが,良好な審美性,咀嚼機能の回復につながったと考えられる.

    結論:治療のゴールを見据えた治療計画に従い,咬合高径,咬合平面を是正したのち,最終補綴を行ったことにより良好な結果を得られた.

  • 白須 健一郎
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 2 号 p. 299-302
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:76歳女性.義歯の不適合により咀嚼困難を訴え来院した.上顎にはオーバーデンチャーが,下顎には部分床義歯が装着されていたが,咬合平面が著しく乱れ,咀嚼時に義歯の動揺を認めた.咬合平面を適正化した治療用義歯を製作し,咬合の安定を図った後に最終補綴装置を上下顎に製作した.

    考察:治療用義歯の形態を最終補綴装置に移行することで,予知性の高い補綴装置の製作が可能になり口腔に関連するquality of life,義歯に対する満足度が改善できた.

    結論:咬合平面が乱れている患者に対し,治療用義歯を用いて咬合の安定を確認し,補綴装置の製作を行うことにより,良好な結果を得ることができた.

  • 力德 史朗
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 2 号 p. 303-306
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は70歳男性.歯の動揺による咀嚼困難を主訴に来院した.重度慢性歯周炎による全顎的な骨吸収や多数歯の動揺,クラウン辺縁に不適合および二次齲蝕が認められた.治療用義歯を装着後,歯周基本治療を行い,残存歯の保存可否を判断したうえで,上顎はチタン床総義歯,下顎はコーヌスクローネ義歯を製作し,咬合再構成を行った.

    考察:コーヌスクローネ義歯の二次固定効果や容易な清掃性により,残存歯は良好な歯周組織状態が維持されている.

    結論:歯周治療後,総義歯およびコーヌスクローネ義歯を用いて咬合再構成を行い,安定した予後を得ることができた.

  • 白木 麗
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 2 号 p. 307-310
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は78歳女性.上下顎義歯不適合による咀嚼障害と残存歯の審美不良を訴え来院した.歯の挺出による咬合平面の不正,上顎補綴装置の形態不良および下顎の維持・支持不足を認めた.バーチャル咬合器を応用し,咬合平面を修整,上顎はインプラントを含めた固定性補綴装置,下顎はオーバーデンチャーを装着した.

    考察:バーチャル咬合器は,検査,プロビジョナルレストレーションの製作から,それらの情報を反映した最終補綴装置の製作までの操作を,効率的かつ高精度に進めるための有効な手段であると考えられた.

    結論:バーチャル咬合器を用いることにより,審美的かつ患者の顎機能に調和した補綴装置を製作することが可能であった.

  • 森田 晃司
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 2 号 p. 311-314
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は67歳女性.かみ合わせの変化と審美不良を主訴に来院した.診査の結果,咬耗症による審美障害と診断し,補綴治療による審美回復を行った.

    考察:咬耗症に対して治療用義歯による咬合挙上とプロビジョナルレストレーションによる歯冠形態の調整後に固定性ならびに可撤性補綴装置を用いて審美障害を改善した.固定性補綴装置としてポーセレンレイヤリングジルコニアやモノリシックジルコニア,可撤性補綴装置として金属床義歯を選択することにより良好な審美が得られた.

    結論:咬合挙上とともにプロビジョナルレストレーションによる審美性の改善を行い,適切な最終補綴装置を装着することが患者の満足につながった.

  • 北村 彩
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 2 号 p. 315-318
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は59歳男性,歯を失いかみにくいとの主訴で来院した.下顎歯肉癌による下顎区域切除に伴う下顎歯列部分欠損による咀嚼障害と診断した.新義歯を製作し,安定した咬合を回復することで咀嚼機能の回復を図り,咀嚼障害の改善を図った.

    考察:機能的に歯列が整うことで咬合接触面積の向上,咬合力の上昇を認めた.それに伴い,咀嚼サイクルは安定した.咀嚼能力検査,平井の食品摂取可能食品質問表を用いた咀嚼評価において改善を認めた.

    結論:顎欠損において適正な義歯の装着は,安定した咬合関係を確保し,咬合力の向上,咀嚼能力の回復に寄与し咀嚼障害の改善に寄与すると考える.

  • 鎌田 征之
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 2 号 p. 319-322
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:56歳男性.重度歯周疾患による残存歯の動揺に起因する咀嚼困難を主訴に来院した.歯周基本治療の後,治療用義歯,暫間義歯にて最終補綴装置の設計を検討し,支台装置にテレスコープクラウンを用いた部分床義歯にて補綴処置を行った.

    考察:本症例では,テレスコープクラウンによる二次固定の獲得が咀嚼能力の向上に寄与し,治療後に高い患者満足度を得ることができた.また,支台歯へのプラークコントロールが容易となったことで,患者の口腔清掃に対するモチベーションが維持でき,かつ良好な結果につながったと考える.

    結論:テレスコープクラウンによる補綴処置により咀嚼能力の向上が認められた.

  • 森 由香里
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 2 号 p. 323-326
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:54歳女性.うまくかめないため飲み込みにくく見た目が悪いという主訴で来院した.検査の結果,上顎前歯部動揺による咀嚼障害,顎位不安定および舌骨低位による嚥下機能低下,上顎前歯部歯根露出による審美障害と診断し,補綴治療と同時に嚥下機能向上を目的とした間接訓練を行い,その後最終補綴装置を製作した.

    考察:長期間咀嚼困難であった患者に対し,間接訓練や姿勢,嚥下方法を指導した後に補綴装置を製作したことで,口腔機能向上につながった.

    結論:嚥下障害への一線を越えないためには適切な補綴治療だけでなく,回復可能な段階で嚥下機能低下を診断し,嚥下機能にアプローチすることが重要である.

  • 風呂川 聡
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 2 号 p. 327-330
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:60歳の女性.咀嚼時の上顎右側臼歯部の動揺および疼痛を主訴として来院した.重度歯周疾患による歯の動揺および咬合平面の不正に起因する義歯の安定不良による咀嚼障害と診断した.歯周基本治療を行いながら治療用義歯を用いて支台歯および支台装置の選定を行い最終補綴装置となるコーヌステレスコープクラウンを装着した.

    考察:治療用義歯を用いて義歯の構成要素ならびにそれを用いた設計,さらに機能性の評価を行い,その結果を最終義歯に移行できたことで良好な結果が得られたと考えられる.

    結論:治療用義歯を用いて義歯設計の妥当性を検証したところ,最終補綴装置にて良好な結果が得られた.

  • 田中 晋平
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 2 号 p. 331-334
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は54歳女性.クラウン脱離および欠損に起因する咀嚼困難を主訴に来院した.欠損に対してインプラントによる補綴治療,クラウン脱離した部位には感染根管治療後にオールセラミッククラウンによる補綴治療,上顎前歯部に限局的矯正治療を行った後,ホワイトニングを行った.

    考察:インプラントによる臼歯部の咬合支持域の確保と限局的矯正治療による前歯部被蓋関係の改善,ホワイトニング,歯冠補綴治療により機能的で審美的な口腔内状態を得ることができた.

    結論:本症例では矯正歯科,補綴歯科および保存歯科の専門的な連携を伴う包括的歯科治療を行うことにより,良好な結果を得ることができた.

  • 新川 重彦
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 2 号 p. 335-338
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:患者は61歳の女性.食事や会話がしづらいことを主訴に来院した.臼歯部に欠損を認めたが,違和感と審美的な問題から可撤性床義歯は使用しておらず,欠損放置による対合歯の挺出を認め,咬合平面の是正が必要であると判断し,固定性インプラント義歯を用いた治療を行った.最終補綴装置装着から3年経過した現在も機能的,審美的に満足している.

    考察:プロビジョナルレストレーションによって機能を評価したうえで,補綴治療を行ったことで,患者の高い満足に繋がった.

    結論:違和感と審美不良のため可撤性床義歯を使用できなかった患者に対し,口腔インプラント義歯を用いた機能回復は,一つの有効な治療法であることが確認できた.

  • 吉嵜 太朗
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 16 巻 2 号 p. 339-342
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    症例の概要:72歳男性.咬耗による咀嚼および審美障害を主訴として来院した.胃食道逆流症およびブラキシズムが原因と考えられる全顎的な咬耗と顔貌所見から咬合高径の低下が認められた.治療用義歯による咬合高径の決定後,残存歯の処置および最終補綴装置を装着した.

    考察:治療用義歯による補綴学的空間の確保後に上顎前歯部の臨床的歯冠長延長術を行い,暫間補綴装置を装着した.咬合と歯周組織の安定を確認し,最終補綴装置の製作に移行したことにより咀嚼機能や審美性の改善が得られた.

    結論:咬耗による低位咬合症例に対して,治療用義歯による診断は最終補綴装置の安定した機能および審美が得られ,患者のQOL向上に寄与した.

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