目的:2016年度歯科診療報酬改定において,歯冠補綴時色調採得検査,有床義歯咀嚼機能検査,舌圧検査が医療保険に導入された.そこで,臨床現場での実施状況と導入時の医療技術評価提案の試算に対してどの程度実施されているかを明らかにすることを本研究の目的とした.
方法:2016,2017,2018年度におこなわれた厚生労働省社会医療診療行為別調査の診療行為(細分類)の実施件数を調査した.レジン前装金属冠および硬質レジンジャケット冠の装着件数に対する歯冠補綴時色調採得検査の割合,多数歯欠損有床義歯および総義歯装着件数に対する有床義歯咀嚼機能検査の割合,接触機能改善を目的とした舌接触補助床副子の実施件数に対する舌圧検査の割合を比較した.また,医療技術評価提案の試算と比較検討した.
結果:歯冠補綴時色調採得検査は,適応症例の5%程度に実施され,試算の7%前後であった.有床義歯咀嚼機能検査は2016年にはほとんど無く,2017年(0.2%),2018年(0.4%)と微増した.舌圧検査は2016年から必要な症例には複数回算定されていたが,試算の12 ~13% であった.2018年からは適応が拡大し,大幅に増加した.
考察および結論:いずれの検査も,医療技術評価提案で試算された実施回数を大幅に下回っていた.今後,経年的推移を見守るとともに,新しい医療技術評価提案に際しては,実施数の推定に注意が必要であることが示唆された.
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