日本補綴歯科学会誌
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4 巻, 4 号
【特集】接着と合着を再考する/咬合咀嚼は健康長寿にどのように貢献しているのか
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
依頼論文
特集:接着と合着を再考する
  • 小峰 太, 松村 英雄
    2012 年 4 巻 4 号 p. 343-352
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/11/14
    ジャーナル オープンアクセス
    ここ10年ほどの間にレジン系装着材料で修復物,固定性補綴装置を接着する症例が増加している.この傾向は,ジルコニアセラミック修復システムの導入と,歯質,セラミックス,合金の接着に有効な種々の機能性モノマー,重合開始剤の開発によるところが大きい.本稿では,最近普及しつつあるセラミックスおよび金属製修復物と補綴装置の接着システムについて概観し,合着と接着の使い分けについても解説する.
  • ―歯質接着のためのナノ界面分析―
    吉田 靖弘
    2012 年 4 巻 4 号 p. 353-363
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/11/14
    ジャーナル オープンアクセス
    歯科用接着材料は,開発から50年以上が経過し,著しい発展を遂げてきた.う蝕や破折は,最小限の削除でコンポジットレジンを充填する,いわゆるミニマムインターベーションと呼ばれる修復治療が可能となっている.また,固定式の補綴装置による治療も,接着性レジンセメントの開発により劇的な変化を遂げている.歯質接着メカニズムは非常に複雑であるが,基本的には歯質無機成分脱灰部にレジン成分が流れ込み,重合硬化することにより得られた機械的嵌合による.加えて化学的結合も近年,再び注目を集めている.そこで本稿では,歯質接着メカニズム,特に化学的な相互作用によりどのように接着耐久性が向上するのかについて解説する.
  • ―支台築造を中心に―
    坪田 有史
    2012 年 4 巻 4 号 p. 364-371
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/11/14
    ジャーナル オープンアクセス
    支台築造は歯質欠損を補い,歯冠修復装置を装着するために適正な支台歯形態へ回復することからその臨床的意義は高い.根管処置歯において,支台築造が原因で発生するトラブルの多くは,脱落,2次齲蝕,また歯根破折である.合着材料と接着性材料の選択から考えると,それらのトラブルへの対策として接着性材料の活用は有用性が高い.過去の臨床研究から,接着を前提として,歯冠部残存歯質量から根管処置歯の支台築造に関する臨床的ガイドラインを作成した.臨床的ガイドラインは,残存歯質量からクラスI~Vに分類した.その結果,ポスト形成が必要な残存歯質量が示された.また,レジン支台築造ならびにファイバーポストの有用性が示された.
特集:日本補綴歯科学会第121回学術大会 シンポジウム2「咬合咀嚼は健康長寿にどのように貢献しているのか」
  • 矢谷 博文, 赤川 安正
    2012 年 4 巻 4 号 p. 372-374
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/11/14
    ジャーナル オープンアクセス
  • ―80歳住民での12年間コホート研究から―
    高田 豊, 安細 敏弘
    2012 年 4 巻 4 号 p. 375-379
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/11/14
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:80歳の後期高齢者地域住民の咀嚼機能や現在歯数を保つことが長寿に繋がるかどうかを,92歳までの12年間コホート研究で検討した.
    方法:福岡県在住の80歳住民1,282名中平成10年健診に824名が参加した.824名中782名の生死を12年間追跡した.15個の食品数をいくつ咀嚼可能かどうかで咀嚼機能を判断した.80歳時の咀嚼可能食品数0~4個,5~9個,10~14個,15個すべての咀嚼機能4群に分けた.また,80歳時の現在歯数で0本,1~9本,10~19本,20本以上の4群に分けた.咀嚼機能・現在歯数と80歳から92歳までの12年間生存・死亡の関係をKaplan-Meier法とCox比例ハザード回帰分析で検討した.
    結果:12年間で276名が生存し506名が死亡した(生存率35.3%,死亡率64.7%).死亡506名中で主要な死因は心血管病死128名,呼吸器病死96名,癌死87名,老衰死51名であった.咀嚼不良群は咀嚼軽度不良群,咀嚼軽度良好群,咀嚼良好群よりも有意に生存率が低かった.現在歯数4群と累積生存率の関係には有意差を認めなかった.性別を補正したCox比例ハザード回帰分析で咀嚼良好群の死亡率を1とすると咀嚼不良群2.1倍,咀嚼軽度不良群1.4倍,咀嚼軽度良好群1.3倍とそれぞれ有意に死亡率が高かった.現在歯数4群でも性別を補正すると,20本群に比べて0本群は死亡率が1.5倍,1~9本群は1.4倍有意に高値だった.咀嚼できる食品数が1品増えると死亡率が4.4%減少し,現在歯数が1本増えると死亡率が1.5%減少した.さらに,性別のほかの交絡因子でも補正した.咀嚼4群と死亡率の関係は交絡因子に日常生活活動度(ADL)と肥満度(BMI)を加えると有意度が低下した.また,現在歯数4群と死亡率の関係はADLと喫煙を交絡因子に加えると有意度が低下した.
    結論:咀嚼食品数からみた咀嚼機能が良好なほど長寿であったが,この関係には一部ADLとBMIが影響していた.現在歯数が多いほど長寿の傾向にあったが,この関係にはADLと喫煙が一部関係していた.80歳住民という後期高齢者でも,現在歯数を保ち咀嚼機能を維持することが長寿に直接繋がると考えられた.
  • 那須 郁夫
    2012 年 4 巻 4 号 p. 380-387
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/11/14
    ジャーナル オープンアクセス
    健康日本21の目標は「健康寿命の延伸」である.日本大学では,平成11年から健康余命に関連する要因の研究のため,全国5,000人規模の高齢者縦断調査を行っている.その結果から,さきいか・たくあんが噛めると答えた咀嚼能力の優れた高齢者は,健康余命が長いことがわかった.平成18年には,介護保険の新介護予防事業において「口腔の機能向上プログラム」が開始された.歯科への期待は「歯科疾病対応モデル」から「口腔機能向上モデル」へとその軸足が移りつつある.このような時代背景のもと,国民の咀嚼機能維持回復のために歯科補綴装置を設計,調製する役割を果たすことで健康寿命の延伸という国民の福祉にとって具体的な貢献ができるはずである.
  • ―文献レビューを中心に―
    池邉 一典
    2012 年 4 巻 4 号 p. 388-396
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/11/14
    ジャーナル オープンアクセス
    文献レビューによって,「咬合・咀嚼は健康長寿に貢献しているのか」を検討した.本論文では,ヒトを対象としたコホート研究を選択した.疾患の発症率や死亡率を高める因子は,喫煙や食習慣,生活習慣病,社会経済的要因など,すでに確立されたものがいくつもある.そこでそれらの交絡因子の影響を,多変量解析を用いて統計学的に調整した研究を採用した.
    その結果,以下のことが明らかとなった.1)歯数は長寿と関連している.2)その経路として,歯周病とともに口腔機能低下による栄養摂取の変化が考えられる.3)歯を失うと摂取不足になるのは,主に野菜である.また野菜不足は心血管系疾患と関連がある.4)無歯顎や多数歯欠損では,義歯を使用しないと余命が短くなる可能性がある.5)義歯の質や口腔機能と健康長寿との関係は,現在のところエビデンスがほとんどない.
  • 赤川 安正, 吉田 光由
    2012 年 4 巻 4 号 p. 397-402
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/11/14
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では,補綴歯科が健康長寿に与えるインパクトについて,介入研究をはじめ優れた臨床研究のエビデンスから論じてみる.すなわち,補綴歯科治療がもたらす咬合・咀嚼・嚥下機能の回復・維持が,健康寿命の延伸を達成するために必要な「介護予防」・「介護の重症化の予防」にどのように関わっているか,さらにこの「介護予防」・「介護の重症化の予防」に最も重要とされる,①口腔機能の向上,②運動器の機能向上,③栄養改善,の3 つにどのように貢献しているかについて述べる.加えて,今後進めていかなければならない課題についても併せて説明する.
原著論文
  • 本多 利人, 渡邉 文彦
    2012 年 4 巻 4 号 p. 403-410
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/11/14
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:本研究は,クリアフィルDCコア(クラレ),Unifil Core EM(ジーシー)の2種類の支台築造用コンポジットレジンを直接法で築造し,切削時期を変え,築造体の歯面への接着強さに及ぼす影響を比較検討することを目的とする.
    方法:実験試料に,ウシ歯根象牙質を用い歯面を平滑に研磨,直径3 mmの穴をあけたテープで被着面を規定した.被着面の周囲に直径4 mmのチューブを固定し,根管内を想定した実験試料とするため,高さ5 mmのパテで周囲の光を遮断,支台築造用レジンを築盛,20秒間光照射を行った.築盛直後,メーカー指定時間経過後,30分後,1時間後,1日後,1週間後に切削を行ったものと,コントロールとして切削していないものを用い,各条件につき6個ずつ接着強さをせん断試験により比較検討した.平均値を二元配置分散分析後,Tukeyの検定にて多重比較を行った.また,破断面をSEMにより観察した.
    結果:両材料で築盛直後,メーカー指定時間経過後,30分後に切削したものの接着強さは,1時間以上経過後と比較して有意に低かった(p<0.05).1時間以上経過後に切削したものは,切削していないものとの間で,また材料間でも有意差はなかった.破断面の観察では,直後のものは界面破壊とアドヒーシブ内の凝集破壊を,その他の条件では,混合破壊とレジンの凝集破壊が多く認められた.
    結論:本実験の条件で,5 mm以上の根管長でレジンコアを築盛する場合,1時間以上経過したのちに支台歯形成を行うことが必要である.
  • 新田 悟, 松浦 尚志, 片渕 三千綱, 佐藤 博信
    2012 年 4 巻 4 号 p. 411-418
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/11/14
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:近年,前装陶材の破折防止のためにジルコニアオールセラミック修復物のコーピングにカラーを付与するようになったが,理想的な機械的強度を得るカラーの高さは明確でない.本研究の目的は,カラーの高さが前装陶材の破折強度に及ぼす影響を明らかにすることである.
    方法:カラーなし(CH0)および高さ1 mm(CH1)と高さ3 mm(CH3)のカラーを付与したコーピング3種類を10個ずつ,計30個のジルコニアコーピングをCAD/CAMシステムによって作製した.陶材をプレス築盛し,円柱型クラウンをセメント合着した後,コーピングの咬合面から軸面への移行開始部直上を負荷ポイントとした破折強度試験を行った.破折強度(最大破折応力)と破折面形態を3群間で比較した.
    結果:CH1群(2,340±189 N,p=0.048)とCH3群(2,440±210 N,p=0.004)の破折強度はCH0群(2,110±215 N)と比べて有意に高い値を示し,CH3群の破折強度はCH1群と比べて高いが有意ではなかった.CH0群とCH1群ではコーピングの咬合面から軸面への移行部が露出し,それより下方は陶材がコーピングに付着していたが,CH3群ではコーピングが下方のカラーに至るまで露出していた.
    結論:ジルコニアコーピングへのカラーの付与は前装陶材の破折強度を増加させ,カラーの高さの増加は破折強度を有意ではないが付加的に増加させる可能性を示唆した.
  • 前田 直人, 坂本 隼一, 兒玉 直紀, 沖 和広, 柴田 豊文, 曽我 恵子, 白髭 智子, 西川 悟郎, 皆木 省吾
    2012 年 4 巻 4 号 p. 419-426
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/11/14
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:要介護高齢者,特に認知症や寝たきり高齢者の歯科治療現場において,作製した義歯の使用が困難である症例に遭遇することがある.本研究では,義歯作製の時期や義歯治療の内容を患者の認知症ならびに日常生活自立度との関連から検討することを目的とした.
    方法:1999年1~4月の間に岡山県倉敷市の介護力強化型病院である柴田病院に入院していた無歯顎患者53名を対象として,入院前後の義歯使用状況,入院後の義歯治療内容,日常生活自立度,認知症の程度について調査した.
    結果:寝たきり者においては,入院前に義歯を作製し使用していたすべての人が入院後も義歯を使用していたのに対し,入院後に義歯を作製した人の使用率は65.6%であった.認知症例では,入院前に義歯を作製していた人の入院後の使用率は83.3%であり,入院時に義歯を持っておらず入院後に新製した人の使用率も同じであった.それに対し,入院後に不適合義歯を再製した人の使用率は22.2%であった.
    結論:本研究の結果から,寝たきりまたは認知症になる前に使える義歯を持っている人は,寝たきりまたは認知症になってからも義歯を使える人が多いことが示唆された.したがって,高齢者の有床義歯補綴においては,寝たきりになった後にも義歯形態が変化しない設計を可及的に選択することが望ましいと考えられた.
  • 王丸 寛美, 津田 緩子, 樋口 勝規
    2012 年 4 巻 4 号 p. 427-433
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/11/14
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:わが国では2003年の山陽新幹線居眠り運転事故以来「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」に対する社会的認識が高まり始め,職業従事者等に対する検査・治療が積極的に推奨されるようになってきた.SASは生活習慣病を高頻度に合併するといわれている.潜在患者数は約200万人といわれているにもかかわらず,現在治療中の患者数は13万人と少なく,検査が必要な患者が潜んでいる可能性が高いと考えられる.SASの治療法の一つに口腔内装置があることから,歯科を受診するSAS患者は増えつつあるが,他の患者のなかにも未診断の患者が多く含まれると考えられる.今回は歯科治療のため受診した患者に対してSASに関するアンケートを行い,スクリーニングの内容および方法について検討した.
    方法:調査対象者は,歯科治療を目的として受診した患者23名とした.独自の質問項目に加えて,Epworth質問票,ベルリン質問票を含んだオリジナルの質問票を用いてアンケートを実施した.また,Mallampatiスコアを用いて,舌および扁桃の大きさを評価した.
    結果:被験者23名のうちEpworth質問票でスコア10以上が3名,ベルリン質問票でハイリスクが9名であった.MallampatiスコアがIII,IVを示した者は11名存在した.
    結論:歯科受診患者のなかにSASの潜在患者を見つけ出す可能性が高いと予測され,質問票等を利用して歯科臨床の現場からも認識向上のため努力をすべきである.
  • 田口 裕哉, 滝沢 智子, 岡 友有子, 藤井 規孝
    2012 年 4 巻 4 号 p. 434-443
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/11/14
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:従来,全部鋳造冠の支台歯形成についてさまざまな教育方法や評価方法が試みられてきたが,動画教材を用いて教育効果を検討したものや支台歯の客観的評価に関する報告は数少ないように思われる.そこで,本研究は効果的な教材と妥当性のある支台歯の評価方法の開発を目的として行った.
    方法:術者の視界を録画することができるように位置を調整したカメラを用いて記録した,動画教材を用意した.10名の研修歯科医がこの動画教材を視聴する前と後に行った支台歯形成の結果を,面積計算を用いたテーパーに関する客観的手法と上級医の主観的評価によって比較することにより,本教材の効果を検証した.さらに客観的評価と主観的評価の一致率についても検討を行った.
    結果:動画視聴後にはすべての支台歯において主観的評価が上がっており,支台歯のテーパー,形態については動画視聴前後で有意差が認められた.客観的評価には有意差が認められなかったが,主観的評価と強い相関を示していることがわかった.
    結論:今回開発した動画教材は支台歯形成の教育に効果的であることがわかった.さらに,支台歯のテーパーを客観的に評価する際には面積計算が有用であること,ある程度臨床経験を積んだ上級医の主観的評価には妥当性があることが示唆された.
専門医症例報告
  • 齋藤 美佳
    2012 年 4 巻 4 号 p. 444-447
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/11/14
    ジャーナル オープンアクセス
    症例の概要:治療中パニック症状を起こした適応障害を有する患者に対し,医科と情報を共有して治療環境を整えることによって,順調にインプラント補綴治療ができた.
    考察:患者との信頼関係を長期間維持して治療にあたり,奥歯でかめないという主訴に対し,インプラントを用いて咬合支持を回復することにより有歯顎者とほぼ同等の接触状態および咬合力を得ることができた.3年経過した後も良好な経過をたどっていることから,本症例に対する処置は適切であったと考える.
    結論:適応障害を有する患者の態度に留意しながら治療環境を整えたことで,咀嚼障害を改善し順調な治療が行えたと言える.
  • 澤田 智史
    2012 年 4 巻 4 号 p. 448-451
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/11/14
    ジャーナル オープンアクセス
    症例の概要:下顎前歯部咬耗を主訴に来院した76歳男性.口腔内検査および種々の検査より臼歯部の咬合支持喪失による前歯部の過蓋咬合と低位咬合が疑われた.客観的な基準を参考に咬合の再構築を図り,最終補綴処置に移行した.その後は1~6カ月ごとの定期検診にて経過観察を行い,現在5年が経過したが良好な状態が保たれている.
    考察:全顎的な咬合の再構築により,咀嚼機能および審美障害の改善を図ることができたと考えられる.
    結論:本症例のように臼歯部欠損による咬合高径の低下と全顎にわたる著しい咬耗が認められる場合において,セファログラム分析を参考にした咬合高径の決定により咬合の再構築することが重要であると考えられる.
  • 香川 良介
    2012 年 4 巻 4 号 p. 452-455
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/11/14
    ジャーナル オープンアクセス
    症例の概要:患者は69歳男性で義歯の動揺および疼痛による咀嚼障害を主訴に来院した.本症例は左右すれ違い咬合を呈しており,上顎をオーバーデンチャーとすることで咀嚼機能の回復を行った.上顎残存歯を削合し根面をコンポレジットレジンで被覆した後,上顎全部床義歯を製作した.義歯装着後,疼痛は改善し,良好に経過している.
    考察:左右すれ違い咬合においては,支台装置による義歯の抗回転力を大きく設計できないことから,本症例にあるように上顎を全部床義歯とし,義歯の回転抑制を図ったことが良好な結果につながったと考えられる.
    結論:左右すれ違い咬合において,上顎を全部床義歯とし義歯の回転抑制を図ったことで良好な結果を得た.
  • 瀬良 郁代
    2012 年 4 巻 4 号 p. 456-459
    発行日: 2012/10/10
    公開日: 2012/11/14
    ジャーナル オープンアクセス
    症例の概要:患者は65歳の男性であり,当院にて全部床義歯作製後,人工歯がたびたび脱離し修理を繰り返した.口腔内所見では,上下顎堤の吸収が少なく,垂直的なデンチャースペースが得られないため,人工歯排列および義歯床スペースの確保が困難であった.
    考察:本症例では,咬合力による義歯床の歪みならびに硬質レジン歯と義歯床用レジンの接着不良が人工歯脱離の主な原因と考察した.新義歯設計の際には,義歯床の剛性を確保するため,デンチャースペースに適合した強固な補強構造を設定し,人工歯の選択にも注意を払った.
    結論:新義歯装着直後から良好に経過し,主訴であった人工歯脱離は約4年のリコール時まで一度も発生していない.
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