日本補綴歯科学会誌
Online ISSN : 1883-6860
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ISSN-L : 1883-4426
10 巻, 3 号
平成30年7月
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
巻頭言
依頼論文
◆企画:第126回学術大会/海外特別講演
  • Frauke Müller
    2018 年10 巻3 号 p. 179-189
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/02
    ジャーナル フリー

    When tooth loss occurs later in life, ageing and multimorbidity impact dental treatment decisions. There is sufficient evidence to state that the mandibular implant overdenture is a well-established treatment modality, certainly in non-dependent edentulous individuals, but little is known on the very old and geriatric edentulous patients. They often present unfavourable anatomical conditions, xerostomia and a lack muscle control. Although the benefits of dental implants are well documented, elderly adults are often reluctant to agree to an implant insertion, even if cost is removed as limiting factor. The main reasons for implant refusal are the fear of surgery and pain. The present paper describes the use of minimal-invasive and simple treatment concepts for elderly, edentulous patients. It further highlights possible complications, which may arise with the onset of dependency and/or frailty and advises further simplification of the implant-restorations when needed. Recall and maintenance in this group of patients is crucial to assure the patients’ benefit from the intervention until late in life.

◆企画:エビデンス & オピニオン 第2回
  • 藍 稔
    2018 年10 巻3 号 p. 190-195
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/02
    ジャーナル フリー

    咬頭嵌合位はあらゆる下顎運動の起点であり終着点で,日常頻繁に使われる.それは前後左右にごく狭い範囲にあり,その変位を防いでいるのが咬頭である.咬頭嵌合位は歯の咬耗や欠如によって変位したり失われたりする.その診断や修復には基準として中心位が使われる.しかし,中心位の概念が近年の米国の定義では変更されている.その背景を考察した結果,新たな定義による中心位がGysi時代の下顎位に近似すると判断した.さらに,歯の接触や咬合支持域の状態によって咬合力が加わった時に起きる咬頭嵌合位の変化の観測から,多数の均等な咬合接触の重要性が再確認された.

◆企画:誌上ディベート『米国型 vs. スカンジナビア型』
  • 米国型 vs. スカンジナビア型 −日本の補綴歯科専門医はどちらを向いているのか?−2 論文を読んでのCritical Discussion
    中居 伸行
    2018 年10 巻3 号 p. 196-201
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/02
    ジャーナル フリー

    『インプラント周囲の角化歯肉』と『歯周インプラント補綴』についてcritical discussionを試みた.前者では科学的根拠に基づく慎重な治療介入が,後者では慎重な補綴設計が肝要であると思われた.『スカンジナビア型』では「必要性に基づくこと」を介入原則としているが,『米国型』では,術者の主体的意志がさらにそこに添加されているように感じられた,両者の取り組み方の違いは,臨床介入の際の判断基準Shouldしたほうがいいこと,Canしてもいいこと,Not have toしなくてもいいこと,Shouldn’tしないほうがいいことに関する視座の違いから生じているのだろう.

  • -『米国型 vs. スカンジナビア型』を読んで-
    江草 宏
    2018 年10 巻3 号 p. 202-208
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/02
    ジャーナル フリー

    本企画では,“歯周病患者に対する固定性補綴歯科治療”をテーマに,前号掲載された弘岡秀明先生および松井徳雄先生の各論文に代表される治療コンセプトを,それぞれ『スカンジナビア型』および『米国型』と分類し,論考を試みた.「絶対的に必要なこと以上のことは何もするな,しかし,絶対的に必要なことは怠ってはいけない」とのコンセプトに基づくスカンジナビア型治療と,「外科処置により,可能な限りの生理的な骨形態,浅い歯肉溝,付着歯肉の獲得」を治療目標に置く米国型治療との間には,アプローチはまったく異なるものの,目指す共通点も見えてくる.本企画を通じて,“歯周病に対する補綴歯科治療の専門性”を考える一助となれば幸いである.

◆企画:第3回補綴歯科臨床研鑽会プロソ’17
  • 伴 清治
    2018 年10 巻3 号 p. 209-215
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/02
    ジャーナル フリー

    クラウンブリッジにおけるデジタルデンティストリーの活用のためには,歯科用CAD/CAMシステムにおけるマテリアル選択が必須である.しかし,歯科用CAD/CAMシステムは材料と加工法の組み合わせによりきわめて多種多様なシステムが活用されており,さらにシステムは年々多様化し,使用可能な材料が増える傾向にある.したがって,マテリアル選択には各方法・材料の基本的知識を,最新情報を元に把握しておく必要がある.本報では,歯科用CAD/CAMシステムで使用される材料の特性について,最適材料の選択に役立つように,セラミックス系材料,金属系材料,レジン系材料の3つの素材に大別して,解説する.

  • 正木 千尋, 柄 慎太郎, 近藤 祐介, 向坊 太郎, 田村 暁子, 細川 隆司
    2018 年10 巻3 号 p. 216-223
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/02
    ジャーナル フリー

    インプラント治療は診査・診断から埋入手術,さらには補綴に至るまですべての過程においてデジタル技術の恩恵を受けている.CTデータや口腔内STLデータを基に埋入シミュレーションを行うだけでなく,CAD/CAMシステムを用いたガイデッドサージェリーや上部構造の作製が行われるようになってきた.しかしながら,ガイデッドサージェリーを行ったとしても100%正確に埋入できるわけではなく,またCAD/CAM補綴に関してもどのような症例でどの材料を選択すべきかの基準がないのが現状である.本稿ではインプラント治療におけるデジタルワークフローを整理し,ガイデッドサージェリーやCAD/CAM補綴の有用性や問題点について検討してみたい.

  • 新谷 明一
    2018 年10 巻3 号 p. 224-229
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/02
    ジャーナル フリー

    クラウンブリッジにおけるデジタルデンティストリーの活用は増加し続けている.現代のクラウンブリッジ製作には主に間接法が用いられているが,その最初のステップである印象採得から装置の設計・製作まで,ほぼすべての工程のデジタル化が可能となっている.また,検査・診断においてもデジタル技術が利用されてきており,その活用領域は無限の広がりを感じさせている.しかしながら一方では,新しい技術を使いこなせず,CAD/CAM冠の脱落などに代表されるトラブル報告も多くなってきている.これは従来の歯科精密鋳造法で製作された歯冠補綴装置と異なった製作方法や材料が使用されていることに起因され,それぞれの作業工程に適切な配慮が必要となる.

◆企画:シリーズ/補綴医に贈る再生医療の話 第2回
  • 新部 邦透, 江草 宏
    2018 年10 巻3 号 p. 230-237
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/02
    ジャーナル フリー

    近年,歯学領域では顎骨や歯周組織,歯の再生医療を目的とした幹細胞研究が盛んに行われている.また,補綴歯科領域における幹細胞研究は再生医療にとどまらず,疾患モデルの構築や創薬研究へと発展しつつある.安定した再生医療の確立には,用いる幹細胞の発生学的な由来を考慮し,本来たどってきた発生過程を模倣した組織再生をいかに導くかが鍵と考えられている.特に歯はユニークで複雑な発生過程をたどるため,選択した細胞によってその過程を再現する方法は異なってくる.本稿では,組織再生に重要な要素の一つである「細胞」に焦点を当て,補綴歯科領域に応用可能と期待されるさまざまな幹細胞を紹介する.

専門医症例報告
  • 渡部 悠介
    2018 年10 巻3 号 p. 239-242
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/02
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は69歳男性.歯の欠損と咬耗により咬合高径の低下および咀嚼障害を生じていた.安静空隙量,セファロ分析および診断用ワックスアップを参考に,プロビジョナルレストレーションおよび治療用義歯を用いて咬合挙上を行った.この状態にて,歯内および歯周治療を行い,下顎位の安定を確認後に補綴装置を装着した.

    考察:プロビジョナルレストレーションおよび治療用義歯を用い,機能的に問題のない下顎位を模索した後,補綴処置を行ったことで,機能障害,支台歯の異常および補綴装置の破損が無く経過していると考える.

    結論:咬合挙上を行う際に,可逆的治療により下顎位の決定を行うことの重要性が示唆された.

  • 三野 卓哉
    2018 年10 巻3 号 p. 243-246
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/02
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は64歳男性.可撤性義歯の痛みと審美障害を主訴に来院した.残存歯は,4 | のみで,義歯床下粘膜の菲薄化,人工歯排列の不良が患者の義歯の疼痛と審美障害の原因と診断し,4 | 抜歯後に上下顎にインプラント体を6本ずつ埋入した.その後,機能性,審美性,清掃性が確認された暫間補綴装置の形態を卓上スキャニングし,フルジルコニア最終補綴装置へ置換した.補綴装置装着3年後も患者は機能的,審美的に満足している.

    考察:暫間補綴装置の形態をデジタル技術にて最終補綴装置へ再現させたことが,患者の満足に繋がった.

    結論:可撤性義歯の痛みと審美障害が主訴の患者にインプラント支持補綴装置を適応し良好な経過を得た.

  • 山田 将博
    2018 年10 巻3 号 p. 247-250
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/02
    ジャーナル フリー

    症例の概要:44歳の女性.初診より2週間前に左側顎関節に非復位性関節円板前方転位による開口障害を生じた.左側下顎頭の変形と左側臼歯部前方咬合小面での早期接触,クレンチングを認めた.徒手的マニピュレーションとスプリント療法による関節円板の復位と顎関節症状の寛解後,インプラントと固定性補綴装置による咬合再構成を行った.

    考察:関節円板前方転位後早期に治療し,適正な下顎位で固定性補綴治療による適切な咬合を確立したことにより,非復位性関節円板前方転位の整復と顎関節の安定化が達成されたと考えられる.

    結論:非復位性関節円板前方転位症例に対し,早期の関節円板の整復と咬合再構成により良好な治療経過を得た.

  • 小出 恭代
    2018 年10 巻3 号 p. 251-254
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/02
    ジャーナル フリー

    症例の概要:42歳女性.左側口蓋粘表皮癌の再発で硬口蓋および軟口蓋の一部を切除した.松浦らの上顎欠損の分類1)H3S1D2T0であった.口蓋欠損による発音障害と診断し,欠損部を被覆する暫間顎義歯を製作し欠損部位の創傷治癒確認後,仮床義歯試適時に義歯床縁および研磨面をフレンジテクニックにて形成した新顎義歯を製作した.

    考察:今回の症例では口腔癌切除後,新顎義歯を装着後に発語明瞭度の向上を認めた.嚥下,発音に留意した形態の義歯を製作したことにより良好な結果が得られたと考えられる.

    結論:口蓋欠損患者において軟口蓋後縁の存在は大きく,その形態に留意し義歯を製作したことにより発音が改善されたと考えられる.

  • 三宅 忠隆
    2018 年10 巻3 号 p. 255-258
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/02
    ジャーナル フリー

    症例の概要:56歳の女性.| 1 の位置異常による審美障害と咀嚼時疼痛を主訴に来院した.下顎左側遊離端欠損部には,他院にて可撤性義歯を装着したものの,使用していないという.補綴前処置として全顎にわたる歯周初期治療と並行して| 1 には抜歯前に矯正的挺出を行い,| 1 と下顎左側遊離端欠損部に対して,インプラント補綴装置を装着した.

    考察:抜歯前の挺出を行うことで,歯槽骨の水平化に有効であることが判った.また,固定性インプラント補綴により,10年以上の咬合バランスの維持と患者満足に寄与できた.

    結論:インプラントによる固定性補綴装置により,臼歯での咬合支持と前歯への負担軽減を実現させ,良好な予後経過が得られた.

  • 岩下 英夫
    2018 年10 巻3 号 p. 259-262
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/02
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は75歳男性.繰り返す義歯破損と疼痛による咀嚼困難を主訴に来院した.咬耗を原因とする咬合高径の低下および下顎左側偏位を改善する目的で治療用義歯を装着し,3カ月のリハビリテーションを行い咬合の安定を確認した後に最終補綴処置を行った.定期的なメインテナンスにより経過は安定している.

    考察:治療用義歯装着後リハビリテーションを行い,下顎位と咬合の安定をはかることで最終補綴処置による咬頭嵌合位の設定を的確に行うことができた.

    結論:咬耗に伴う低位咬合と下顎の偏位を呈する症例に対して,治療用義歯を応用することで良好な予後が得られた.

  • 上田 一彦
    2018 年10 巻3 号 p. 263-266
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/02
    ジャーナル フリー

    症例の概要:22歳の女性.上下顎9歯の先天性欠損を有しており,不正咬合改善のため矯正治療終了後,欠損部の審美性,機能性の改善のため補綴治療を希望して当科を受診した.下顎前歯部は顎骨幅の不足によりブリッジにて,上下顎小臼歯部はインプラントを用いた固定性補綴治療を行った.

    考察:小臼歯部へのインプラント治療と共に下顎前歯部顎堤に結合組織移植を行い,ポンティック基底面形態をオベイト型に整形した結果,長期的に安定した審美的,機能的回復が得られた.

    結論:現在,補綴装置装着から3年6カ月以上良好に経過しているが,今後も長期的に良好な予後を獲得するために経過観察を継続することが重要であることが示された.

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