日本認知心理学会発表論文集
日本認知心理学会第5回大会
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ポスター発表
  • 須藤 智, 原田 悦子
    セッションID: p2-048
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は注意に関わる認知課題達成ならびに日常的注意に関するメタ認知評価が認知的加齢とどどのような関係にあるのかを検討することを目的とした。大学生93名,高齢者210名を対象とした小集団実験により,AIST式認知的加齢検査,分割的注意に関する質問紙,認知的失敗傾向の質問紙を実施した.その結果,加齢に伴い注意課題成績はいずれも低下し,認知的失敗はメタ認知評価が甘くなった。一方,分割的注意のメタ認知評価は加齢により低下した。さらにパス解析の結果では,加齢から注意課題成績へはいずれも関連性が認められたが,分割的注意質問紙の加齢からの独自関連性は消失し,注意課題の数字探索,課題切替からの関係性のみが有意となった。認知的失敗のメタ認知評価は,加齢からの独自関連性に加え,数字探索,課題切替の低成績者ほど甘くなった.日常的注意のメタ認知評価において,認知的失敗と注意分割は大きく性格が異なることが示された。
  • 話速変換機能がもたらす主観的評価のずれ
    南部 美砂子, 竹下 和臣, 原田 悦子
    セッションID: p2-049
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    最近の高齢者向け携帯電話には,聴力低下に対応する技術として,相手の声がゆっくりに聞こえる話速変換機能が盛り込まれている.本研究では,この機能の使用による認知的な影響について明らかにするため,高齢者と若年者のペアによる対話実験を行った.実験には12組のペアが参加し,携帯電話を用いて対話課題を3試行実施した.第2試行では,高齢者が使用する携帯電話において話速変換機能を作動させた.試行ごとにおこなわれた主観的評価を分析したところ,話速変換機能を使用した場合,高齢者ではより話しやすいという評価が得られたのに対し,若年者ではより聞き取りにくいという評価が示された.これらの結果について,対話システムという認知的人工物の特性と対話という認知的協働過程の関係にもとづき考察する.
  • 越智 啓太, 中村 敦子
    セッションID: p3-001
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    情動的にショッキングなできごとに遭遇した場合のエピソード記憶、いわば、トラウマ記憶は、時間的な流れを含んだ形態で想起されるのでなく、一枚の写真のような形態で想起されるということがしばしば指摘されている。記憶のスナップショット化、あるいはフラグメント化といわれる現象である。しかし、トラウマ体験の記憶が本当にスナップショット化するのか、あるいは、被験者や出来事のどのような特性がスナップショット化と関連するのかについてはいまのところ、明らかになっていない。そこで、本研究では、エピソード記憶のスナップショット化尺度を作成するとともに、実験協力者にショッキングな短編フィルムを視聴させ、その記憶のスナップショット化の程度と情動喚起の程度について検討してみた。
  • 豊田 弘司
    セッションID: p3-002
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    記銘語に情動的情報を付加する情動的精緻化が、偶発記憶に及ぼす効果を意味的精緻化との比較において検討した。実験1では、漢字から連想する気持ち(情動的情報)と漢字の示す対象の性質(意味的情報)の適合度を評定させる方向づけ課題を行い、その後、偶発自由再生テストを行った。その結果、情報が適合する場合には情動的精緻化が意味的精緻化よりも再生率が高かった。実験2では漢字を2回呈示し、呈示形式の要因も併せて検討したが、全体として意味的精緻化が情動的精緻化よりも再生率が高かった。漢字に対する情報の適合性において個人差が大きかったので、実験3では、被験者に情動及び意味的情報を生成させる手続を用いた。その結果、再生段階の中期において分散呈示条件における情動的精緻化が意味的精緻化よりも再生率が高かった。これらの結果から、意味的精緻化の検索機能は時間とともに低下し、次第に情動的精緻化が優位になる可能性が示された。
  • 関口 貴裕, 大東 玲子
    セッションID: p3-003
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    顔記憶の個人差と,顔に対する記銘時の注視パタンの関係を眼球運動計測により検討した。実験参加者45名に,液晶ディスプレィ上に提示された未知の人物20名(動画)の印象判断を行わせ(偶発記憶課題),その際の注視パタンを記録した。そして8分間の挿入課題の後,写真刺激を用いて先ほど見た顔に対する再認記憶課題を実施した。顔記銘時の注視パタンを再認記憶成績高群,低群で比較したところ,両群ともに眼,鼻,口の内部特徴を,頬,額,輪郭,髪の外部特徴に比べ長く注視していたが,内部特徴に対する注視時間は高群の方が低群よりも長く,外部特徴に対する注視時間は低群の方が高群よりも長くなっていた。この結果から,顔の内部特徴を長く注視することが顔記憶に促進的であり,顔を見た場合にどの領域をより長く注視するかの違いが顔記憶の個人差に関わることが示唆された。
  • 渡邊 兼行
    セッションID: p3-004
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    アハ体験が記憶を促進するかどうかが調べられた。Auble, Franks, & Soraci(1979)のパラダイムに則り、意味の通りづらい文を呈示し、その後、文理解を促進するキーワードを呈示した(アハ文)。また、統制条件として、キーワードをあらかじめ文内に埋め込み、意味が通りやすい文として呈示した(非アハ文)。その後、呈示された文の記憶を再生させたところ、アハ文の方が、非アハ文よりもよく再生されていた。さらに、アハ文の中でキーワードが無くても理解が容易な文とそうでない文を比較したところ、キーワード呈示前の文理解度に差はあったものの、再生率に有意な差は見られなかった。一方、キーワード呈示後の納得度に関しては、アハ文と非アハ文の間に有意な差が見られ、アハ文の難易の間に差は見られなかった。これらから、アハ体験による記憶の促進が、単に文理解の難易を反映したものではなく、理解の変化によって引き起こされている可能性が論じられた。
  • 独立Remember/Know(IRK)手続きによる検討
    伊藤 美加, 木原 香代子, 吉川 左紀子
    セッションID: p3-005
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    未知顔の再認記憶に及ぼす表情の効果について,意図記憶課題を用いた伊藤ら(2003,日心)は,同画像再認条件における怒り表情の優位性を,偶発記憶課題を用いた木原ら(2003,日心)は,符号化時の喜び表情の優位性が異表情再認条件で顕著であることを見出していることから,喜び表情と怒り表情とでは異なる心的機制が作用している可能性が考えられる。そこで本研究では,学習時に喜び表情または怒り表情を提示し,再認時に学習した人物または未学習人物の中性表情に対してRemember-Know-Nothing判断を求め,意図記憶条件と偶発記憶条件とを比較することにした。IRK手続きに基づき分析した結果,意図記憶課題ではR反応で怒り表情の優位性が,偶発記憶課題ではR・F反応に関わらず喜び表情の優位性が認められた。特定の表情の処理の優位性は,実験参加者の主観的な検索意識の状態によって異なることを示した。
  • -時間的切迫性を用いた検討-
    堀内 孝
    セッションID: p3-006
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
     想起時間の長短が自伝想起における意識性と自動性に及ぼす影響を検討するため,自伝的記憶を想起することが許される時間を時間的切迫要因として実験的に操作した。具体的には,時間的切迫性が高い条件は想起時間が2秒,低い条件は6秒に設定された。個別実験であり,24人の実験参加者はコンピュータディスプレイに提示された刺激語から自伝的記憶の想起を試み,R判断(具体的に思い出せる),K判断(あることが分かるだけ),N判断(全く思い出せない)のいずれかで答えることが求められた。IRK手続きを適用して自伝想起の意識的成分と自動的成分を評価した結果,自伝想起の意識的成分は時間的切迫性が高くなると減少するが,自動的成分に関しては変わらないことが見だされた。
  • 干場 美紀
    セッションID: p3-007
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,偶発学習によってニオイを記憶する際の言語ラベリングが記憶パフォーマンスに影響するかどうかを検討した。(1)ニオイの提示ごとに同定・命名を求める条件(ラベル生成群),(2)ニオイとニオイ物質の名称を対提示し,ニオイと名称の一致の程度を評定する条件(ラベル提示群),(3)ニオイの提示ごとに主観的強度の回答を求める条件(強度評定群),の3条件に異なるカテゴリー(食品・日用品・精油)のニオイを提示し,2分の保持インターバル後にターゲット刺激とディストラクタ刺激の再認を求めた。再認終了後,ニオイ経験の有無,強度と快‐不快の評定を求めた。結果は,ラベル生成群がラベル提示群と強度評定群よりも有意に高い再認成績であった。また,ニオイ物質のカテゴリーは親近性の高い食品のニオイが有意に高い再認成績を示した。これより,ニオイの記憶にはニオイへの言語ラベリングの付与よりもむしろ,能動的なラベルの生成が重要であることを示唆した。さらに,ニオイ経験があるにもかかわらずニオイ物質名称の親近性が低い場合の再認成績が低かったことより,ニオイの短期再認にはニオイとニオイ物質名称の適切な連合の必要の可能性が考えられる。
  • 木暮 照正
    セッションID: p3-008
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    過去にニュース等で報道された社会的できごとがいつ起きたのかを改めて推定させてみると,実際の生起時期よりも現在に近づいて報告される傾向が一般には認められる(テレスコープ効果)。ただし,より最近に起きたできごとの場合はむしろ実際よりも遠ざかって報告される傾向もある(反テレスコープ効果)。木暮(2006)はこの両効果と回答者の認知スタイル(認知的熟慮-衝動性の次元,滝聞・坂元, 1991)との関連性について検討を加え,反テレスコープ効果の傾向は即座に判断を下しやすい衝動群において強いという可能性を指摘した。本報告では,これを踏まえ,さらに加齢差(若年成人群と高齢群)との関連性について検討を行った。その結果から,認知スタイルの影響よりも加齢の影響の方が大きく,高齢群の方が反テレスコープ効果の影響が強い可能性が導かれた。このことに基づいて生起時期推定において生じる加齢差と認知スタイル等との関連性について考察を行う。
  • 酒井 徹也, 漁田 武雄
    セッションID: p3-009
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,記銘項目を複数個同時提示する場合の背景色の文脈効果について調べた。実験1では18名の大学生が参加し,6項目×4画面(9秒/画面)の計24項目,実験2では実験1と重複しない18名の大学生が参加し,3項目×7画面(4.5秒/画面)の計21項目を意図学習させた。薄赤‐薄緑,薄青‐薄黄のいずれかの背景色対を参加者ごとに無作為に割り当てた。記銘項目提示の際,画面ごとに背景色対内の色を交互に提示した。実験1・2とも,全項目提示後,30秒間の計算課題を遅延課題として挿入した。遅延課題の後,口頭自由再生を行わせた。再生テスト中は学習時に用いたうちいずれかの背景色を提示し続けた。実験の結果,いずれの実験においても再生数について文脈間(学習時と再生時の背景色の異同)での差は見られなかった。同時提示項目数が3項目の場合,同文脈条件の再生にのみ群化が生じ,再生数との相関が有意であった。
  • 順序情報の独立性 1
    都賀 美有紀, 星野 祐司
    セッションID: p3-010
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    順序情報の記憶処理へのアプローチとして, 順序情報の独立性と語長による影響を検討した。本研究では順序情報を測定するために再構成課題を使用し, また項目情報を測定するために自由再生課題を使用した。これらの課題を用いて, 順序情報と項目情報への語長の影響を検討した。その結果, 項目情報には語長の短い単語からなるリストの記憶成績が, 語長の長い単語からなるリストの記憶成績よりも高くなる, 語長効果(Baddeley, Thomson, & Buchanan, 1975)が見られた。それに対し順序情報の記憶には語長の影響は見られなかった。これら項目情報と順序情報の記憶パフォーマンスの違いから, 順序情報が項目情報から独立している可能性が示唆された。また, 順序情報の記憶に語長の影響が見られなかったことから, 順序情報が項目のリハーサルに影響を受けない可能性と, Hendry & Tehan(2005)で示唆されている, 語長の違いによる項目情報と順序情報のリソースのトレードオフの見解を支持しないことが示唆された。
  • 竹田 和弘, 兵藤 宗吉
    セッションID: p3-011
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は囲碁熟達者の囲碁図における卓越した記憶能力について検討したものである。Reitman(1976)以降,囲碁熟達者の記憶優越は,チャンクを重複させることに起因していると考えられてきた。そこで,異なる複数の盤を連続呈示することにより,チャンクの重複を限定する課題を用いた。この課題はGobet & Simon(1996)で使用されたmultiple boards taskを囲碁に応用したものである。そして,囲碁熟達者における記憶優越がチャンクの重複だけで説明可能であるのか,さらに拡張された理論を必要とするのかについて検討した。また,遅延条件を加えることで,検索手がかりが短期記憶だけに保持されているのかについても調査した。実験計画は2(遅延:ある,なし)×5(呈示盤面:1,2,3,4,5)の2要因被験者内計画である。刺激の呈示時間は5秒間で,テストは再生課題であった。
  • 山田 陽平, 月元 敬, 平野 哲司
    セッションID: p3-012
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    覚えた項目の一部 (ターゲット) を先に想起することが、関連する項目の後の想起を損なわせる。この現象は検索誘導性忘却と呼ばれており、ターゲットの検索を成功させるために競合項目の干渉を抑止した結果であると考えられている(Anderson, 2003)。このような抑止説を支持する性質のひとつに検索固有性 (ターゲットを検索したときにのみ検索誘導性忘却が生じ、再呈示では生じないこと) があり、連合強度の変化 (ブロッキング説) では説明できない。本研究では再生テストの種類 (通常、語尾、カテゴリ名) を参加者内要因とし、検索誘導性忘却 (抑止量) に違いがあるかどうかを検討した。その結果、一文字検索およびカテゴリ名検索条件において検索誘導性忘却が認められなかった。これは検索固有性の性質をあらわしていると考えられるが、通常検索条件においても有意な差は認められなかった。これは、参加者内要因によって各条件に割り当てる項目数が減少したために、うまく効果を検出できなかったのかもしれない。これらの結果から、抑制効果の検出と項目数の関係を考える必要がある。
  • 矢野 円郁
    セッションID: p3-013
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    イベントが生起してから現在までの経過時間の判断(JOR)と,イベントの生起頻度の判断(JOF)の関連性を調べた.【方法】被験者(若年者21名)は,PC上に2秒ずつ連続呈示される3項目(物体のカラー写真)を覚え,10秒間の妨害課題(計算問題)の後,3項目を再生するという課題を11セット行った.各項目の呈示頻度は1~5回の5種類あり,11セット終了後,各項目の呈示頻度判断(JOF)を行った.これを3リスト行い,最後に,全項目と新奇項目をランダムな順序で呈示し,リスト弁別課題(JOR)を行った.【結果】JORとJOFの正確さに相関がみられた(r=-.68,p<.01).1項目あたりのJOFズレ量は頻度が高いほど大きく,1回呈示ではほとんどズレがなかった.【考察】時間的に分離された同一項目の反復呈示の頻度判断プロセスと経過時間判断プロセスは,少なくとも一部,基盤が共通している可能性が示唆される.
  • 言語報告の内容分析
    遠藤 光男, 高野 ルリ子
    セッションID: p3-014
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
     観察した顔について言語報告することが後の再認記憶に妨害的に働くことを言語隠蔽効果という。この言語隠蔽効果の生起メカニズムを説明する有力な考えに再符号化干渉説と転移不適切処理シフト説がある。前者の説では言語報告の不正確な再符号化が再認記憶を妨害すると考える(Meissner et al., 2001)。一方、後者の説では顔認知に利用されている全体的処理が言語報告によって部分処理に移行することが再認記憶を妨害すると考える(Schooler, 2002)。今回はこれら2つの説の妥当性について検討するために、言語報告の内容を正確性と全体・部分のどちらに関わる記述であるかの2つの側面から分析し、記述内容と再認記憶成績の関係を探った。その結果、部分に関わる不正確な記述の量が多いと再認成績が低下することや、全体に関わる不正確な記述の量が多いと逆に再認成績がよくなることが示され、部分的に両方の説とも支持された。
  • 性差と気分状態の影響について
    関口 理久子
    セッションID: p3-015
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
     本研究では、自伝的記憶質問紙(AMQ, Talarico et al., 2004; Rubin et al., 2003)に基づいた質問紙を用いて、情動的自伝的記憶の想起に伴う主観的諸特性について、性差および気分状態の影響を検討すること、また記憶の強度と情動価の諸特性への影響を検討することを目的として行った。その結果、肯定的出来事の記憶の方が、否定的出来事よりも、想起において視覚-空間的鮮明さや再体験感を多く伴い、またメタ認知(視点および自己認識的意識)、言語的詳細さも高かった。また、肯定的出来事と否定的出来事の各々について、性差、気分状態、感情の強度、感情価、記憶年齢を独立変数として重回帰分析した結果、個人差では、性差は自伝的記憶の言語的詳細さのみに関与し、直前の気分状態は想起に伴う諸特性にほとんど関与しないことが示された。また、記憶の強度は、情動価よりも、自伝的記憶の想起に伴う諸特性のほとんどすべてを有意に予測することが示された。
  • 松川 順子, 荒田 瑶子
    セッションID: p3-016
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,彩色された対象物線画を用いて色の適切さが対象物の再認に及ぼす効果を検討した。実験1では,彩色線画の色の適切さ判断を求め,彩色線画の色の適切さとその色の変化が対象物(線画)再認に及ぼす効果を検討した。実験2では,彩色線画の符号化時間による対象物(単語)再認への効果を検討した。その結果,1.適切な色の判断時間が短い,2.学習からテストにかけて色が変化すると,正再認率が低下したり反応時間が長くなる,3.テスト刺激が不適切な色をしていると正再認率が低下したり反応時間が長くなる,4.不適切な色線画での符号化時間が短いと対象物再認成績が低下するという結果が見いだされた。これらの結果は,対象物の同定や符号化に色の適切さが促進効果を持ち,再認段階においても同様の同定過程が再認の反応時間に影響を与えている可能性を示唆している。
  • 高堂 裕佳子, 川口 潤
    セッションID: p3-017
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    TOT(tip-of-the-tongue)現象の解消について,なぜ突然に答えが思い浮かぶ”pop-up”が起こるのか,現在のモデルからの説明は困難である。そこで本研究は,思考の行き詰まりから突然解消するインサイト(insight)とTOT解消との類似性に注目し,TOTが解消に至るまでに,大脳右半球特有の表象活性が起こるという予測を立て実験を行った.40名が実験に参加し,著名人の顔に対し既知判断(DK, FOK, TOT, K)を行い,左右各視野(lvf-RH, rvf-LH)にプライム刺激が瞬間呈示された.続いて名前の命名RTを測定し,顔に対する既知判断4回答におけるプライミング効果と左右差について比較検討を行った.その結果,TOT人名について,lvf-RHにプライム刺激を呈示した条件で顕著なプライミング効果が示された.以上より,TOT状態が解消する際,RHによる潜在的な表象活性が機能することが明らかになり,pop-up現象の説明を可能にした.
  • 木原 香代子
    セッションID: p3-018
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    日常生活における顔の認知スタイルを質問紙によって調査し,顔の意図記憶,及び偶発記憶の再認成績とどのような関係を示すかを検討した。再認記憶実験では,符号化時に喜び,あるいは怒りの表情で提示した。再認テストには記銘時と再認時で同じ刺激が示される同画像再認課題と,同一人物の異なる表情が示される異画像再認課題を用いた。ヒット率と顔の認知スタイルの相関を検討したところ,偶発記憶事態では同画像再認課題,異画像再認課題ともに喜びで符号化したときに顔の認知スタイルと相関が示された。一方,意図記憶事態ではいずれの再認課題においても相関は示されなかった。この結果は,偶発記憶事態での再認成績が日常生活で示される顔の認知スタイルを反映していることを示唆している。このことは,我々が日常生活において,人と出会ったとき,顔を覚えようと意図することは少なく,「この人はどんな人であるのか」といった対人関係を築く準備を行うことが多いという日常的経験とも一致する。
  • 笠原 洋子, 越智 啓太
    セッションID: p3-019
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    笠原・越智(2006)は,声の処理(個人同定に関する音響情報の処理)と発話内容の処理は異なる心理的プロセスを経るという仮説について検討した。しかしこの実験では,声の再認成績に天井効果が出てしまった。そこで本実験では,別のターゲットを用い,更なる検討を行った。実験参加者に声(または内容)に注目するように教示し,ターゲットの声を呈示した。その後,声の同定テストと内容再認テストを実施した。その結果,声の同定テストでは両条件ともにチャンスレベル以上の成績を示し,内容再認テストでは内容注目条件のほうが有意に成績がよいことが示された。本実験結果から,個人同定に関する音響情報の処理には,意識せずとも一定量の処理資源が自動的に配分され,他方発話内容の処理は,状況によって処理資源を増減されて配分される可能性が考えられる。
  • 佐藤 文紀
    セッションID: p3-020
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    Marsh et al. (1998)は、被験者に対し行為文の書かれた2つのスクリプトを学習させた。その後、一方のスクリプトを実験者から指定され、あとで被験者自身がそのスクリプトを遂行することが求められた(以降、指定教示と銘記)。遂行する前に、語彙判断課題が行われ、そこでは学習した2つのスクリプトに使用されていた単語が含まれていた。後で遂行を求められたスクリプトに使用されていた単語の反応時間と、求められなかったスクリプトの反応時間を比較した結果、遂行を求められたほうの反応時間が短かった。この結果は、指定教示によって遂行意図がスクリプトに付与されたと解釈できる。しかし、この実験では、被験者は遂行を予期しながらスクリプトを符号化することが可能な状況であった。その為、本研究では遂行を予期しながらの符号化が意図優位性効果のどのような影響を与えるのかを検討した。
  • Operation or Identification?
    Maehara Yukio, Saito Satoru
    セッションID: p3-021
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    This study investigated which of the two, "operating representation" or "identifying representation," causes the representation-based interference forgetting in WM span performances. A letter mental rotation task demanding spatial operations of a verbal representation was employed as the processing task with verbal or spatial memory materials in the WM span tests. If the greater amount of the processing task during retention duration causes decrease only in the spatial memory span, any interference in memory traces should be attributed to the spatial operations of the letter. If it causes decrease in both the verbal and spatial memory spans, any interference in memory traces should be attributed to simple identification of the letter, because it includes both the verbal and spatial representations. Results supported the latter prediction. Therefore, we suggest that interference of processing requirements with memory traces in a WM span test occurs when the representation to be processed is identified.
  • 佐藤 浩一, 内田 愛子
    セッションID: p3-022
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    3人一組の集団で、単語リストの協同再生を検討した。36名・12組の集団が構成された。個人再生結果を機械的に合算した名義群の成績と比較すると、12組中6組で、協同再生成績が名義群を上回る「促進効果」が見出された。3組では名義群と協同再生の成績が等しかった。協同再生の成績が名義群より劣る「協同抑制」現象は、3組だけで見出された。各グループの話し合いのプロトコルが分析され、(1)時間をかけ、(2)単語の一部やカテゴリーなど手がかりになるような情報を多く話し合いの場に提出することで、集団での再生が促進されることが示唆された。
  • 背景文脈の一致が虚再認に与える影響
    山田 恭子, 鍋田 智広, 緒本 翔平, 中條 和光
    セッションID: p3-023
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    環境的文脈依存効果は,学習時とテスト時の環境的文脈が一致すると,不一致の場合と比較して記憶成績がよくなる現象である。この効果は,学習時に学習項目と環境的文脈が結びつくことにより生じると考えられている。本研究では,学習時に呈示されない単語の再認である虚再認においても環境的文脈依存効果が認められるかどうかを調べた。実験では,被験者は特定の単語(太陽・ルアー語)の連想語からなる単語リスト(光,月など)を背景文脈とともに意図的に記銘した。1日の遅延後,学習時と同じ背景文脈が呈示される同文脈条件もしくは異なる背景文脈が呈示される異文脈条件において再認課題を実施した。その結果,同文脈条件において異文脈条件よりもターゲットの正再認率とルアー語に対する虚再認率が高かった。このことは,たとえ学習時に呈示されなくても,学習時に活性値の上昇した項目は,環境的文脈と連合を形成することを示唆する。
  • 嘘の対象を要因とした記憶パフォーマンスの比較
    田中 未央, 厳島 行雄, 高島 翠
    セッションID: p3-024
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    過去の出来事を想起する際に嘘をつくと,オリジナルの出来事に関する記憶が抑制されることが示されている(Christianson & Bylin, 1999)。先行研究では,語り手は嘘をつく際に2つの方略を併用していることが示されており,田中(2005)では,語り手が使用する嘘の方略を統制した実験を行い,嘘をつく際に「知らないふり」をすることによってオリジナル記憶のリハーサルが妨害されると,後の記憶が抑制される可能性を示した。目撃証言に関する先行研究では,想起の対象によって記憶の正確さが異なることを示している(Yuille & Cutshal, 1986)ことから,嘘の対象が異なる場合にも後の記憶の正確さに違いがみられると考えられる。よって,本研究では嘘の対象を統制した実験を行い,嘘の対象が異なる場合の記憶を比較する。
  • 中山 友則, 兵藤 宗吉
    セッションID: p3-025
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    事後に獲得した情報が専攻する情報の記憶を損なうことを事後情報効果という。事後情報効果のパラダイムは出来事の呈示,事後情報の呈示,記憶テストの3段階で構成される。これにより,出来事と事後情報の2つの情報源があり,それぞれの情報源で特定の項目が呈示される。本研究では,それぞれの情報源でのみ呈示された項目を挿入テストで呈示および選択させることにより,特定項目へのアクセス可能性を増加させ,ソースモニタリングに及ぼす影響を検討した。実験の結果,出来事で呈示された項目のアクセス可能性を増加させた場合はソースモニタリングが不正確になる一方,事後情報で呈示された項目のアクセス可能性を増加させた場合はソースモニタリングが正確になった。これは出来事項目の活性化は出来事という情報源へのアクセスが困難であるのに対して,事後情報項目の活性化は事後情報という情報源へのアクセスが容易にできたためであると解釈された。
  • 小林 由佳梨, 牧野 義隆
    セッションID: p3-026
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
     気分一致効果が見られる際,気分と一致する感情価を持つ記憶の想起が促進されるのか,それとも異なる感情価を持つ記憶の想起が抑制されているのか明確でない.また,想起されるエピソードが気分誘導課題と関連するか否かで気分の効果が異なる (Sakaki, 2007).本研究では,架空の場面を想像させるイメージ課題を用いて気分(ポジティブ,ネガティブ,ニュートラル)を誘導し,気分がエピソードの想起に与える影響に関して,イメージ課題と関連するエピソード・非関連なエピソードについて検討した.その結果,イメージ課題と関連・非関連のエピソードに拘らず,ポジティブ条件でポジティブなエピソードの想起数がニュートラル条件より多かった.ネガティブ条件とニュートラル条件の間に有意差は認められなかった.よって,ポジティブ気分時には,ポジティブな記憶の想起が促進されると考えられる.
  • 2種類の意味処理の比較
    藤田 哲也, 畑中 佳子
    セッションID: p3-027
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    顕在記憶課題である処理水準モニタリングと再認を用いて,処理反復効果(学習時とテスト時の処理が一致している方が成績がよいという現象)が見られるかどうかを検討した。藤田と畑中のこれまでの研究(e.g.,日心,2006)においては,意味処理と物理処理を対比した場合には処理反復効果が見られていたが,本研究で,「単語の持つ明るさのイメージ」と「単語の使用頻度」という2種類の意味処理を対比させた場合には処理反復効果は見られなかった。見かけ上は課題要求が異なっている処理であっても,課題遂行に必要な処理過程が類似していると,処理の一致・不一致による差は生じないことが確認された。
  • 篠原 一光, 中村 隆宏, 龍田 成示, 井場 陽一
    セッションID: p3-028
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    自動車運転中の聴覚メッセージによって運転者の注意が阻害され事故につながる可能性がある。本研究では2つの異なる注意資源特性を持つ記憶課題が視覚的な標的検出成績に与える影響を検討した。記憶課題として、数字系列を聴覚提示して記銘の後、回答するために聴覚的処理を要する課題と視空間的処理を要する課題を用いた。視覚課題としては注視点の位置で標的図形の弁別を行うと同時に、注視点周辺に散在する小さな四角形が短時間円形に変化するのを検出する有効視野課題を用いた。その結果、周辺視野での変化の検出反応時間は記憶課題が視空間的処理を必要とする場合に長く、中心視野での図形の弁別反応時間も視空間的処理を必要とする場合に長く、検出の失敗はより多くなった。この結果は、聴覚的情報であってもそれが視空間的処理を引き起こす場合には視覚課題の遂行を妨害することを示し、運転時に与えるべきではない情報について示唆を持つものである。
  • 自由再生法を用いた検証
    舘 瑞恵, 伊東 裕司
    セッションID: p3-029
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    自分の記憶に対する確信の強さは、本当に記憶の正確さを反映しているのか?Perfect(2002)らは、一般常識記憶においては、確信度(主観的確かさ)から正確さ(客観的正しさ)を推定することができるが、目撃記憶においては、このような関連性が見られないと主張している。しかし、伊東(2006)は、目撃記憶においても、確信度は正確さを反映しているとする、実験データを報告している。我々は、伊東の実験をもとに、新たに自由再生法を用いた記憶実験を行い、一般常識記憶と目撃記憶における、課題成績(正確さ)と回答に対する自信評定(確信度)の相関関係(C-A相関)を検証した。その結果、両課題共、有意なC-A相関がみられた。つまり、一般記憶・目撃記憶とも、記憶に対する確信度は記憶の正確さを反映していること、言い換えれば、確信度が記憶の信頼性の指標となりうることが示唆された。
  • 繰り返し提示の効果
    日根 恭子, 伊東 裕司
    セッションID: p3-030
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,意図的学習教示のもと,54個の日本語複合語を用いて再認課題を実施した.学習時の刺激提示条件として,提示時間が4秒で1回のみ提示される繰り返し無し条件と,1回の提示時間が2秒で2回提示される繰り返し条件を設定した.再認課題では,通常のold刺激,new刺激に加え,学習時に提示された複合語を構成する要素単語の組み合わせを変えたconjunction刺激を提示し,old/new判断を求めた.その結果, old刺激では繰り返し無し条件よりも繰り返し条件でold反応率が有意に高くなった. conjunction刺激では, 繰り返し無し条件と繰り返し条件でold反応率に有意な差は見られなかった. 刺激として複合語を用いた本実験の結果を,符号化時における部分的処理と全体的処理という観点から,顔刺激の場合と比較して考察する.
  • 上田 紋佳, 泊 直希, 寺澤 孝文
    セッションID: p3-031
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    メロディの単純接触効果を扱った研究の中で,数ヶ月単位の遅延を設けた研究としてPeretz & Gaudreau(1998)が挙げられる。2ヶ月から4ヶ月のインターバルが設けられ,熟知度の低いメロディにおいて単純接触効果が持続することが報告されている。そこで用いられたメロディは既存の楽曲であるが,本研究では,無作為に作成された音列とリズムを組み合わせたランダムなメロディを用いて,単純接触効果の長期持続性を検討した。実験参加者は,好意度評定による偶発学習をした7週間後に好意度評定することが要求された。実験の結果,7週間前に学習した条件は,学習していない条件よりも好意度評定が高くなることが示された。
  • 山本 晃輔, 金敷 大之
    セッションID: p3-032
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は,におい材料の熟知価と感情価(快‐不快度,感情喚起度),およびそれを手がかりとして想起される自伝的記憶の鮮明度,感情価(快-不快度,感情喚起度)を調査することであった。30種類のにおい材料を使用し,118名を対象に調査を行った結果,それぞれの特性を有するにおい材料が明らかになった。
  • 外山 昌樹, 伊東 裕司
    セッションID: p3-033
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    実験参加者のペアが協同で想起した場合(協同想起群)と、個人想起の参加者をランダムに取り出してペアを形成した場合(Nominal群)の記憶成績を比較すると、Nominal群のほうが優れている現象のことをCollaborative Inhibition (Weldon & Bellinger,1997)という。本研究では、物語文を刺激として用い、情報の重要度によって抑制の程度に違いが見られるかどうか検討した。また、全参加者に2回目の想起を個人で行ってもらった際の記憶成績についても、検討を加えた。その結果、Nominal群は協同想起群よりも、また協同想起を経た参加者群は個人想起を繰り返した参加者群よりも優れた記憶成績を収めたが、いずれにおいても重要度による記憶成績の違いは見られなかった。これらの結果から、協同想起が記憶成績に及ぼす影響について考察する。
  • 佐々木 璃恵, 伊東 裕司
    セッションID: p3-034
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    検索誘導性忘却(Retrieval-induced forgetting; M. C. Anderson, Bjork & Bjork, 1994)とは、ある項目を検索した結果、その項目に関連する項目の再生成績が低下する現象のことである。この現象は単語刺激だけでなく目撃証言、視空間的な図形などの刺激材料においても生じることが示されている。本研究ではBarnier et al., (2004)と同様に快・不快・中立の感情語を刺激として用い、自伝的記憶における検索誘導性忘却の再現性と感情の影響を検討した。実験の結果、検索練習カテゴリーのうち練習をした記憶はベースラインである非検索練習カテゴリーの記憶より正答率が高く、練習をしなかった記憶は正答率が低いという検索誘導性忘却が生じた。感情価ごとの正答率は、ポジティブ語もネガティブ語もニュートラル語より有意に正答率が低く、感情的な記憶は忘却が起こりやすいことが示唆された。
  • 浅田 康弘, 牧野 義隆
    セッションID: p3-035
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    Marsh, McDermott, & Roediger (2004) の実験1において,想起時に起こる意味的な活性化が虚再認の生起に影響を及ぼす可能性を示した.しかしながら,彼らの結果では,再認時における未学習関連語の再認率が高くはなかった.そのため,それらの関連語自体が活性化していたとは考えにくい.したがって,虚再認はその関連語自体が活性化していなくても生起する可能性があると考えられる.これにより,関連語の活性化が顕在的な場合と潜在的な場合とが存在すると考えられる.本研究では,関連語の符号化を顕在的に行なう条件と潜在的に行う条件を設けて,虚再認の生起に違いが生じるのかを検討した.
  • 野畑 友恵, 箱田 裕司
    セッションID: p3-036
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,人が持つ一番古い記憶である最幼児期記憶を想起させ,その想起内容について分析した。Bruce,Wilcox-O'Hearn,Robinson,Phillips-Grant,Francis,& Smith(2005)は,一番古い断片的な出来事(fragment event)の記憶と個人的な出来事(personal event)の記憶を想起させ,想起された記憶内容について分析した。断片的な出来事の記憶とはストーリー性がない記憶であり,個人的な出来事の記憶とは出来事について最初から最後まで思い出せる記憶である。その結果,断片的な記憶は個人的な記憶よりも想起した経験時期の年齢が低いことが示された。そこで本研究では,想起した記憶の断片化の程度によって経験時期に違いが見られるのか,Bruce et al.の知見を検証した。また,記憶の感情価によって記憶の断片化の程度が異なるのかについて検討した。
  • 板垣 文彦, 伊藤 憲治, 三浦 祥恵
    セッションID: p3-037
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    乱数生成(RNG)課題の分析手法、ならびにこの課題に特化されたワーキングメモリモデルである「軸モデル」(板垣,2005)は、数表象の音韻特性と視空間特性(マグニチュード)を利用した2つの生成方略と、それらの方略循環によって保持されるエピソード・バッファ容量、およびそれらの時間的処理効率を評価する。乱数生成課題の成績は人間の発話刺激に妨害されるが、ピンクノイズの影響を受けないことが知られている。本実験では発話刺激とピンクノイズ刺激の違いを検討するために21名の実験参加者を対象に1Hz, 2Hz, 4Hzの3段階で左右に音像移動させるピンクノイズ刺激を各90秒間、順序を変えてヘッドホンによりに呈示し、同時遂行したRNG課題への影響を検討した。その結果、音像移動速度の促進傾向は音韻特性を利用する方略にステレオタイプ化を生じさせたが、視空間特性を利用する方略とバッファ容量、処理効率には影響を与えなかった。
  • 内城 裕希
    セッションID: p3-038
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    ある事象を考えないようにすると、その事象やそれに関連する事象がかえって頭に浮かぶという抑制の逆説的効果が注目を浴びている。本研究では、参加者自身が経験したエピソードに対して想起の抑制を求め、エピソードの数が逆説的効果の生起に影響を及ぼすかどうかを検討した。56人の参加者は、自分自身が経験したエピソードを1つ、あるいは3つ想起し、その後、エピソードの想起を抑制する、あるいは特別な教示がなされない条件にランダムに割り当てられた。エピソードの想起回数の合計を指標として分析した結果、抑制群は統制群の想起回数よりも多く、逆説的効果が生じたが、エピソード数による違いは見られなかった。また、3エピソード条件において、エピソードごとの想起回数を指標として分析した結果、すべてのエピソードにおいて逆説的効果が生じた。これらの結果から、逆説的効果はエピソードの数にかかわらず生じる可能性が示唆された。
  • 宮原 道子
    セッションID: p3-039
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,文章の音読再生課題(実験1)と文章の校正つき音読再生課題(実験2)を用いて,課題に無関連な言語音(日本語)とオフィスノイズ(PCやコピー機などの機械音)が及ぼす影響を検討した.実験1では,有意味な言語音によってオフィスノイズよりも有意に大きな妨害効果が得られた.ところが,同音異義語を検出する校正課題と音読再生課題を同時に行った実験2では,オフィスノイズによる妨害効果のみが起こり,言語音による妨害効果は起こらなかった.以上の結果より,音読再生課題では有意味な言語音によってオフィスノイズよりも大きな妨害効果が起こること,言語音による妨害効果と同音異義語の校正課題には同じ認知処理過程が関与することが明らかとなった.この結果はCowan(1995)のモデルによる説明が可能である.
  • 池田 和浩, 仁平 義明
    セッションID: p3-040
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    自己に関連するような視点で出来事を想起するとき,保持されている記憶にどのような影響を与えるのか検討した.被験者は,高校時代の主人公と生活態度に問題のある友達の間におきる出来事の物語を熟読した後,物語の主人公を被験者自身に置き換えて想起する「主観的想起群」と,物語の登場人物と被験者自身を乖離させて想起する「客観的想起群」のどちらかに分けられ,それぞれの視点から物語を想起した.1週間後,物語の内容に関する再認課題を行った.実験の結果,主観的想起群の被験者は,物語の主人公に関わる情報を正確に認識することができた.しかし,友人に関する情報については記憶変容が認められた.客観的想起群では,主人公の情報よりも友人の情報を正確に生成した.また,感情的情報については,どちらの視点においても,快情報・中性情報は正確に保持され,不快情報は変容していた.
  • 検索するターゲット写真が異なる場合
    伊藤 令枝
    セッションID: p3-041
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    顔の再認記憶においては、示差特徴に着目する示差特徴処理や全体処理などの符号化方略が考えられている。本研究では、これらの方略の役割について検討するために、示差特徴処理を導くとされる示差特徴課題と、全体処理を導くとされる示差表情課題を用いて実験を行った。実験参加者は、示差特徴課題又は示差表情課題によって真顔を符号化した。その後、笑顔又は真顔、正立又は倒立呈示のターゲットを検索する再認テストが行われた。その結果、示差特徴課題を行った方が後の再認成績が高く、また、符号化時と検索時の表情が同一であった方が、不一致であるよりも再認成績が高かった。しかし、検索時に正立で呈示しても、倒立で呈示しても成績は変わらなかった。また、定位要因と表情一致・不一致要因との間に交互作用が認められ、倒立条件の場合は、表情不一致の影響は認められなかった。
  • 笠井  有利子
    セッションID: p3-042
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    我々が日常目にする情景(ビジュアルシーン)には様々な可変情報-明るさや色合い、シーン内に含まれる物体など-が含まれるが、これらは記憶表象でどのように表現されているのだろうか。本研究ではシーン内に含まれる対象物の色に対する記憶の精度を調査した。刺激は複数の対象物を含むCG室内空間の画像40枚で、各室内に表面色が変化するターゲット(壁や家具)が1つ設定されていた。変化はターゲットの元の色を基準とした飽和度および色相の変化であった。実験参加者は、学習画像を記憶した直後に変化画像を呈示され、ターゲットの色変化を検出する課題を行った。その結果、元の飽和度が高く面積が大きい対象物の変化発見成績が最も高かった。ただしターゲットが壁面の場合の変化発見率は低かった。笠井・川端(2006)における照明色(室内全体の色調)の変化発見成績と比較して、対象物の色変化はより微妙で定量的な変化を検知できるようであった。
  • 近藤 あき, 齋木 潤
    セッションID: p3-043
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    これまで視覚性短期記憶がどのような物体表象を保持しているかという問題が変化検出課題を用いて検討されてきた。先行研究から視覚属性の結合を要する変化検出は属性単独の変化検出よりも困難であること、さらに記憶表象への検索負荷が変化検出の成績に影響を与えることが示されている (Wheeler & Treisman, 2002)。しかし先行研究では結合する属性の組み合わせに応じて異なる刺激を用いて検討していた。そこで本研究は色、形、位置の3属性で定義された同一の刺激に対して、変化検出の遂行時にどの属性結合を要するかに応じて課題を分類した。さらに記憶表象への検索負荷を操作し、全ての属性結合において検索負荷が検出成績に影響するか再検討した。実験の結果、検索負荷が検出成績に与える影響は、色-形、色-位置結合では見られたが、形-位置結合では見られず、少なくとも全ての属性結合において生じるのではないことが示唆された。
  • 川平 杏子, 厳島 行雄
    セッションID: p3-044
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    感覚刺激を手がかりとした自伝的記憶の無意図的想起は,非日常的な出来事だけなく,日常的な出来事も想起されやすいことや,想起時の気分に関係なく手がかりとなる刺激に触れるたびにその出来事が想起されるという特徴が示唆された (川平,2005;2006)。そこで,本研究では,これらの特徴が感覚刺激を手がかりとした無意図的想起に固有のものであるのかを検討するために,実験において,感覚刺激を手がかりとして意図的に想起した記憶との比較を行なった。実験参加者は,女子大生,大学院生21名 (平均年齢 20.88歳,SD=1.52) であった。音楽刺激を聞いて想起することのできる過去の出来事を回答するよう求めた。実験で得られた32事例を意図的想起群として,川平 (2006) で得られた日誌法のデータのうち年齢の範囲が同じで,聴覚刺激を手がかりとした34事例と比較検討した。
  • 生駒 忍
    セッションID: p3-045
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    単純接触効果の生起メカニズムに関して、今日最も広く支持されているのが知覚的流暢性誤帰属説である。これは、接触に起因する流暢性が過去経験に正しく帰属されず対象への評価に誤って帰属されることで単純接触効果が生じると考えるものである。しかし、この仮説は顕在記憶が単純接触効果を抑制することを予測する一方で、多くの実証データは単純接触効果が顕在記憶から独立であることを示している。この不一致を考える上で、生駒(2005)は単純接触効果を「顕在記憶と排反しない記憶誤帰属」(原田, 1999)として理解する視点を提案している。ただし、そこではなぜ単純接触効果が誤有名性効果にみられるような排反を示さないのかは明らかにされていない。そこで、これまでの記憶誤帰属の知見を整理し、顕在記憶と排反するかどうかを規定する要因を見いだし、単純接触効果が顕在記憶と排反しない記憶誤帰属であることについて議論を進めたい。
  • 矢吹 大地, 寺澤 孝文
    セッションID: p3-046
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    間接再認手続きを用いた研究によって,少なくとも2,3ヶ月の間,人間が意味の同定が困難と思われるような聴覚刺激の学習の効果を保持していることが報告されている。先行研究では,9週間前に2回学習した刺激と学習していない刺激との間で成績に2割近くの差が見られた。しかし,先行研究においてはどの研究においても刺激の物理的条件が1度の呈示で2秒の聴覚刺激が2度繰り返されるという条件で設定されていた。よって,1度の呈示で3秒の聴覚刺激を1度だけ呈示する条件に変化させることによっても長期的な学習の繰り返しの効果が再現されるか,また,効果に変化が現れるのかを検討することを本研究の目的とした。実験の結果,学習の繰り返しの効果が再現された。他に,刺激の変化によって学習の効果の上昇量が変化する可能性が見られた。
  • 皆川 直凡
    セッションID: p3-047
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
     日本固有の短詩型である俳句は,五七五の定型を原則とする。俳句を実験室において記憶し,それを検索しようとする場合,上五,中七,下五の順に検索すると考えられる。また,上五のあとに切れがある俳句と中七のあとに切れがある俳句とでは,検索のされ方が異なると考えられる。本研究では,プライミング・パラダイムを用いて,この仮説を検証した。実験参加者(大学院生)に俳句を解説文と共に提示し,理解させた後,プライミング・パラダイムによる実験を行った。各試行では,俳句の上五,中七,下五のうち二つを継時提示し,同じ俳句のものか否かを判断させた。その結果,上五のあとに切れのある俳句を用いた条件では,中七と下五のペアに対する反応が上五と他の句のペアよりも速く,中七のあとに切れのある俳句を用いた条件では,上五と中七のペアに対する反応が下五と他の句のペアよりも速いという,差異が認められた。
  • 中田 英利子
    セッションID: p3-048
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    想起している事象の記銘条件を判断させるためにエピソードの詳細の想起を求める課題をソース・モニタリング課題と言う。本研究ではソース・モニタリングは意味情報の保持を前提するのかを検討した。比較した条件は、記銘とテストのどちらもラベルで行うラベル・ラベル条件、記銘とテストのどちらも絵刺激で行う絵刺激・絵刺激条件、絵刺激を記銘させるがラベルでテストを行う絵刺激・ラベル条件、ラベルを記銘させるが絵刺激でテストを行うラベル・絵刺激条件の4つの条件であった。さらに、この4条件におけるソース・モニタリングが同質のものであるのか検討すべく確信度評定も求めた。ラベルを記銘した場合、絵を記銘した場合には意味情報よりもエピソードの詳細に関する情報に依存した判断過程であることが示唆された。確信度評定の結果から、絵を記銘した場合にはラベルでのテストと絵でのテストではソースの判断過程が質的に異なることが示された。
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