日本認知心理学会発表論文集
日本認知心理学会第5回大会
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ポスター発表
  • 藤木 大介, 関口 道彦, 加島 志保, 高橋 佳子, 倉田 久美子, 山崎 晃
    セッションID: p1-047
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    Ninio (2004)は,“黒い靴”の様な名詞句の理解は,名詞“靴”を理解し,それに“黒い”という属性を追加するプロセスであると説明し,ここから,句の理解の発達には名詞のみを理解する段階があると予測し,これを示した。しかし,ヘブライ語は名詞句の語順が名詞-形容詞の順であるので,名詞であること,初頭語であること,句の主要部であることがそれぞれ交絡している。本研究ではこの交絡を日本語の名詞句と形容詞句を用いることで解消し実験を行った。その結果,名詞が初頭になくても,句の主要部でなくても,形容詞と名詞とからなる句の理解では名詞を選択的に理解する発達段階があることが示唆された。しかし,名詞句と比較して形容詞句では,句内の形容詞の理解が困難となることも示唆された。
  • :ウソをつかれるときの信じることと赦すこと
    菊地 史倫, 佐藤 拓, 阿部 恒之, 仁平 義明
    セッションID: p1-048
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    本研究では自分が引き起こした不都合な状態を処理するために出来事の起こりやすさ(生起確率)を操作してウソをつくときの2つのウソの目的(信じられること、赦されること)の関係性について検討した。183人の大学生は知人が約束の時間に遅れ、遅刻理由を話すというシナリオを読んだ。参加者は遅刻理由を本当だと思うか、待たされたことをその遅刻理由で赦せるかなどを判断した。その結果、A.出来事の生起確率を高く操作したウソは、信じられやすいがそのウソが信じられた後で赦されにくい。B.出来事の生起確率を低く操作したウソは、信じられにくいがそのウソが信じられた後で赦されやすいとウソをつかれる人が考えていた。これらの結果から出来事の生起確率を操作してウソをつくときには、2つのウソの目的が両立しないことが示唆された。また感情とウソの目的の関係性を検討したところ、感情によって行動の調整が行われている可能性が示唆された。
  • 猪原 敬介, 堀内 孝, 楠見 孝
    セッションID: p1-049
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    コンストラクショニスト理論では整合性仮定と説明仮定という2つの仮定を想定し,これらを満たすタイプの推論はオンラインで処理されるという予測を行っている。しかしこの2つの仮定を満たさない推論であっても,条件を整えることでオンラインで処理され得ることが近年いくつも報告されている。本研究では,仮定を満たさない推論である下位目標の推論および仮定を満たす因果的前提の推論,上位目標の推論について,1)文脈により推論を限定することで下位目標の推論であってもオンラインで処理されるかどうか,2) 学習意図の操作によって各推論の結果パターンに違いは見られるか,という点について検討した。結果は,文脈によって推論が限定されることで下位目標の推論であってもオンラインで処理され得ること,今回検討した3つの推論はいずれも学習意図の影響を受けない自動性を持つ推論である可能性,がそれぞれ示唆された。
  • -報告率と単純反応時間の関係-
    水野 りか, 松井 孝雄
    セッションID: p2-001
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    注意の瞬きはRSVPされる刺激系列中に2標的が数100 ms以下のSOAで呈示されると第2標的の報告率が低下するといった現象を指し,その原因は記憶レベルの処理不全だとする説が有力である。一方,水野・松井 (2006)は類似した実験で第2標的への単純反応時間を測定し,SOAが数100 ms以下で反応時間が遅延することを見いだした。そして松井・水野 (2006)はこの原因が注意切り替えの困難度にあることを明らかにした。注意切り替えの困難度は感覚レベルの要因である。しかし単純反応時間の遅延も注意の瞬きもSOAが数100 ms以下での処理不全であり,共通の要因が関与した可能性は否めない。そこで本研究ではこの可能性を検証するために,同条件で第2標的の報告率と単純反応時間を測定・比較した。その結果,両者には有意な負の相関関係が見いだされ,注意の瞬きに注意切り替えの困難度が関与している可能性が示された。
  • 松井 孝雄, 水野 りか
    セッションID: p2-002
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    文字マッチング課題を用いた多くの実験において、反応時間がISIの増大につれて減少する傾向が示されている。松井・水野(2006, 日心大会)ではこのような傾向が文字マッチング判断以外の実験手続きに依存している可能性を検討した。その結果、ISI増大による反応時間の減少傾向は文字の異同判断なしでもISIがブロック内要因であれば生じ(実験1)、異同判断ありでもISIがブロック間要因であれば消失した(実験2)。この結果は、減少傾向が文字マッチング自体ではなくISIをブロック内要因にしたという実験手続きに由来していることを示唆している。この現象は注意の瞬きと関連するものであると考えられるので、本研究では注意の瞬き研究との比較のため、ISIの条件をより細かく設定して詳細な検討を行なった。
  • 漁田 武雄, 漁田 俊子
    セッションID: p2-003
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    本研究は,比の法則によると新近性効果が成立する条件下で,場所・計算課題・BGMを複合操作した文脈の変化によって,新近性効果が消失するか否かを調べた。大学生144名を,ランダムにSC, DC, EX群に割り当てた。SC群では,7対の項目対を視覚的に5秒間提示し,各項目対に共通な連想語を口頭で報告させた。各対提示の前後に,計算課題を30秒間行わせた。最後の計算課題終了後,口頭自由再生の教示を与え,再生を開始させた。DC群は,SC群と同じ方法で計算と対提示を行わせ,7対目の提示後,計算をさせずに課題を終了した。つづいて,実験参加者を別の場所に誘導し,自由再生を開始させた。対提示終了から再生教示までが30秒となるよう調整した。EX群では,SC群と同じ手続きで実験を進行し,最後の計算課題終了時に爆発音を提示した。本実験の結果,複合文脈変化は新近性効果の大きさに影響したが,消失させることはなかった。
  • マッチング課題を用いた検討
    小松 佐穂子, 箱田 裕司
    セッションID: p2-004
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    これまで,顔の表情認知過程と人物認知過程は,それぞれ独立した過程であると考えられてきた。しかし,近年の研究から,両過程は完全に独立しているのではなく,相互に作用していることが明らかになってきている。本研究では,表情情報,あるいは人物情報のいずれかに選択的注意を向けて行う照合課題を用いて,表情認知過程と人物認知過程間に相互作用が存在するのかについて検討した。実験の結果,表情情報は人物認知過程に干渉するが,人物情報は表情認知過程に干渉しないという両過程における非対称的な関係が明らかになった。
  • 重森 雅嘉
    セッションID: p2-005
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    ヒューマンエラーは、見間違いなどの知覚段階のスリップ、思い違いなどの判断段階のミステイク、言い間違いなどの行為段階のアクションスリップのいずれにおいても共通のメカニズムが仮定されている。しかし、これらのメカニズムの共通性を保証する研究は、これまで行われていない。本研究では、女子短大生(平均18.31歳)に対し、知覚、判断、行為段階の各情報処理段階のエラー誘発課題として、数字の書き写し課題、ルーチンスの水瓶問題、急速反復書字課題を用い、共通のエラーメカニズムとして仮定される注意要因と誤ったスキーマ活性化要因を操作した実験を行った。注意要因は、課題実施速度の教示の違い、エラースキーマ活性化要因は、正誤いずれかのスキーマの活性化を誘発させる文脈の違いによって操作した。実験の結果、いずれの段階においても、エラー発生には、注意と誤ったスキーマの活性の要因が共通に働くことが確かめられた。
  • 酒井 浩二
    セッションID: p2-006
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    プロトタイプ理論によれば,カテゴリの事例としての典型性に基づきプロトタイプを中心に事例が表象される.本研究では,この理論の妥当性を検討するため,プロトタイプ的な特性に基づきカテゴリ判断されると前提をおき,典型性が高い事例ほどカテゴリ判断に要する反応時間は短くなることを調べた.カテゴリ判断では,カテゴリ名の提示後に事例が提示され,その事例がカテゴリに属するか否かをできるだけ正確に速く実験参加者は判断した.典型性判断では,実験参加者はカテゴリの事例の典型性を5段階評価した.実験の結果,事例の典型性の高さと反応時間の速さの相関係数は,すべての実験参加者8人で正となり,うち5人は有意であった.複数の事例はプロトタイプを中心にカテゴリ化され,典型性の高い事例ほどプロトタイプとの距離が短く表象されて短時間でカテゴリ判断しやすいと解釈される.
  • 日高 聡太, 河地 庸介, 行場 次朗
    セッションID: p2-007
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    本研究では,運動中に維持される物体形状を反映する表象的慣性 (representational momentum: RM) を指標とし,仮現運動物体表象が保持する奥行情報について検討した.陰影を奥行手がかりとして用いた実験1では,凸の運動物体が平らな図形へと変化する条件で,凹図形へと変化する条件よりもRM量が有意に多くなった(実験1A).一方,運動物体が凹図形の場合,RM量に差は見られなかった(実験1B).これらの結果は,2値化図形を用いて陰影の明るさ手がかりの効果を検証した実験2では再現されなかった.実験3では,凸の運動物体が低空間周波数フィルタによって不鮮明化された凸図形へと変化する条件で,凹図形へと変化する条件よりもRM量が有意に多くなった.本研究は,仮現運動物体表象は特に凸に関して不完全あるいは2次元と3次元との間の奥行情報を保持する,低空間周波数情報優位の物体表現であることを示唆する.
  • カラーワードの一致不一致の頻度変化
    堤 教彰, 嶋田 博行, 林 秋ヨ, 福岡 耕平, 石坂 洋輔
    セッションID: p2-008
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    ストループ効果を用いたスイッチングタスクを考案した. 先行カラーワードのカラー次元とワード次元の特定のカラーまたは文字によりカラーネーミング出力,ワードリーディング出力を切り替えた.
  • -周辺視野と中心視野の違い-
    藤村 友美, 鈴木 直人
    セッションID: p2-009
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    人間の視覚において,周辺視は時間的に変化する情報に敏感であるといわれている(福田, 1996)。本研究では,周辺視において動的情報が表情認知に及ぼす影響を検討することを目的とした。表情刺激は,次元的観点に基づいて作成した表情から快表情3種類(いきいきした,うれしい,のんびりした),不快表情3種類(恐ろしい,怒った,悲しい)を抜粋した。課題は,見本照合課題を用いた。これは,中心視,左右周辺視のいずれかの位置に呈示されるターゲット表情(動画,静止画)と同一の表情刺激を後続の見本表情(静止画)の中から選択するというものである。結果は,中心視では,動画条件と静止画条件の正答率に有意な差は見られなかったのに対し,周辺視では,恐ろしい表情以外で動画条件の正答率は,静止画条件の正答率よりも有意に高かった。このことから,周辺視では,動的情報によって相対的に表情の認知的処理が促進されることが明らかになった。
  • 小野 史典, 北澤 茂
    セッションID: p2-010
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    本研究では,奥行き方向の運動が時間知覚に与える影響を調べた。具体的には,画面に呈示していた視覚刺激を消し,短時間後(例: 150ms)再度呈示した。被験者は刺激が消えていた時間(空白時間)の長さを評定した。その際,視覚刺激が消える前と後で大きさを変化させ,刺激が近づく,または遠ざかると感じるようにした。その結果,空白時間は同じであるにも関わらず,近づくと感じる空白時間は,遠ざかると感じる空白時間よりも短く評定された。さらに視覚刺激が消える前と後で,刺激の形状を変化させ,奥行き方向の運動を感じないようにしたところ,この効果は消えた。これらの結果は,時間知覚が奥行き方向の運動によって影響を受けることを示している。
  • 閾下プライミング課題とIATを用いた検討
    唐牛 祐輔, 楠見 孝
    セッションID: p2-011
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    本研究は,潜在的ジェンダーステレオタイプが対人印象判断に及ぼす影響を検討した.実験参加者(男女各32名)は,呈示される刺激(依存関連プライム/ニュートラルプライム)の位置同定課題を行った後,無関連な課題として架空のターゲット人物(女性/男性)の印象評定を行った.あわせてImplicit Association Testを実施し,“女性-依存”というジェンダーステレオタイプ的知識連合の強度を測定した.その結果,男女とも“女性-依存”という潜在的ジェンダーステレオタイプを持っていることが確認され,それに一致する形で,依存関連プライムに接触すると,ターゲット人物が女性の場合に,依存性をより高く評定するという傾向が見られた.さらに,“女性-依存”というジェンダーステレオタイプ的知識連合強度が強いほど,依存関連プライム接触時に女性ターゲット人物の依存性をより高く評定するという正の相関関係が見られた.
  • 室井 みや, 笠井 清登, 植月 美希, 菅 心
    セッションID: p2-012
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    統合失調症患者55名を対象に、ストループ課題を行い、健常者77名との比較を行った。その結果、個別呈示型ストループ課題を用いた先行研究と異なり、反応時間で干渉が有意であった.また、干渉量は統制群の方が多かった.一方、誤答率については、先行研究と同様、両群で干渉が有意で、かつ、患者群で統制群よりも干渉量が多かった. さらに、年齢、発症年齢、持続年数、性別、教育歴、IQなどの指標と干渉量の関連を調べ、統合失調症における選択的注意機能と関連する要因について検討した。その結果、年齢,発症年齢、持続年数と干渉量の相関が反応時間で見られ、40歳以上のグループでは中性条件で不一致条件より反応時間が長くなるというように、年齢により一致性の影響が逆であった. これらの結果は年齢に伴う選択的注意機能の変化を示唆している。
  • 金敷 大之
    セッションID: p2-013
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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     本研究は,対象として認知されている色に対して,人がどのような色名をつける傾向があるかを現状調査することが目的であった。マンセルカラーシステムに基づいた,日本色研事業(1988)発行の『標準色カード202』に対して,参加者は11選択肢の中から命名することが求められた。
  • 杉尾 武志, 赤間 健一, 余語 真夫, 東 宏治, 八木 匡
    セッションID: p2-014
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    創造的なデザインとは,単に新奇なだけでなく,デザイン対象が実際に有用であると判断されるものを指す.しかし,デザインの形状や心理特性がどのように創造的であるという評価に結びつくかについては,これまであまり検討されてこなかった.さらに,そのデザインに対する好き嫌いといった感情的要因と創造性評価の関係も明らかではない.本実験では,新規開店のカフェにおくためのイスを描画させたグループと,描画のペアごとに選好性,新奇性,有用性の判断を行わせたグループの結果から,多次元類似度空間を構成した(それぞれ描画空間と評価空間).そして重回帰分析を用いて,デザイン描画の評価空間の各次元が描画空間の各次元,描画の形状特性および心理特性によりどの程度説明できるかを検討した.その結果,描画に対する選好性,描画の輪郭周囲長(複雑さと相関が高い),およびイスの対称性と伸長性によって創造性評価が説明できることが示された.
  • 安田 孝, 上田 卓司, 西本 武彦
    セッションID: p2-015
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    グラフの3-D表現に関して,余分な情報の付加であり,かえって読み取りを困難にするという意見がある(例えば,Tufte, 2001)。しかしグラフの読み取りに関する実験的な検討は,まだ十分には行われていない。本研究では円グラフを用い,グラフの傾きと回転の二つの要因を操作し,この問題を検討した。実験1では,円グラフの仰角を4段階に操作した。実験2では,グラフを回転させ基線位置を4段階に操作した。被験者はグラフの特定の領域が,全体の何パーセントに当たるかを数値で回答した。分析の結果,実験1では,被験者の読み取りの誤差に有意な差は認められなかった。実験2では,最も大きな領域の読み取りで有意差が認められた。以上の結果から,円グラフに関しては3-D化が読み取りを誤らせることはなく,むしろグラフの基線位置が重要であることが示唆された。
  • 笹岡 貴史, 河原 哲夫
    セッションID: p2-016
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    笹岡ら(2005)は,物体を能動的に回転させて見えの変化を観察することで,その後の物体認識成績が向上することを示した.本研究では,この能動的観察が影響を与える脳部位についてMEGによって調べた.被験者は,継時的に角度差をもって呈示される二つの物体の比較照合課題をMEGシールドルーム内で行った.計測は2セッション行われ,第2セッションの前に能動的観察を行う被験者群(Active群)・受動的観察を行う被験者群(Passive群)に分けられた.両群の多くの被験者で第二刺激提示後200-400msにおいて左頭頂間溝領域に磁場源が推定されたため,その時間帯の左半球全チャネルのRMS値を調べたところ,Active群において第2セッションでの値が有意に減少し,角度差が大きい条件でその傾向は顕著であった.以上の結果から,能動的観察が左頭頂間溝領域の活動に影響を与えることが示唆された.
  • 高木 幸子, 井出野 尚
    セッションID: p2-017
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    本研究では,表情写真を呈示することによる位置弁別課題への影響を検討することを目的とした.これまでの研究において,先行提示した表情動画の感情種(neutral/positive/negative)がエモーショナル・ストループ刺激および数字ストループへの反応時間に影響を与えること,特に先行提示される表情が恐怖の場合には反応時間が早くなることが明らかとなった(?木&井出野,2005,2006).今回の実験では上記の先行研究を踏まえて,表情の感情種を増やした上(中立、喜び、怒り、恐怖)で,表情の感情種が位置弁別課題に与える影響を検討した.また近年,表情の注意喚起への影響と特性不安,能動的注意とワーキングメモリの関連,さらにはSOAとの関連を検討する研究も数多く行なわれていることから,被験者のリーディングスパンテストと状態不安尺度を測定し,SOAを変化させて検討を行った.
  • 山田 祐樹, 三浦 佳世
    セッションID: p2-018
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    運動物体周辺の視空間は歪曲する (Whitney & Cavanagh, 2000).また,これは仮現運動によっても生じる (Shim & Cavanagh, 2004).本研究は,空間ならびに時間における歪曲が変形性仮現運動 (TAM) によって生じることを確かめた.異なる大きさの二つの四角形が呈示され,その後,両四角形に接する横長の長方形が現れた.この場合,小さな四角形から大きな四角形の方へと,長方形の錯覚的な変形運動が生じる.この長方形の上に小さな二つの黒点を重ねた (実験1).被験者は,それらの黒点の位置と時間順序を答えるよう求められた.結果として,運動方向への位置ずれが生じ,時間順序は小さな四角形に近い方の黒点が先であった.しかし長方形を排除した実験2では,この効果が生じなくなった.これらの結果は,TAMによって時間と空間に歪みが生じることを示唆する.
  • 竹原 卓真, 栗林 克匡
    セッションID: p2-019
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    日常生活では、高頻度で電子メールが送受信されている。電子メールには、顔文字や絵文字など、エモティコンと呼ばれるオブジェクトがしばしば付加されるが、本研究では、それらエモティコンを付加した場合に、電子メールの感情情報がどのように認識されるのかを検証した。その結果、喜び感情については先行研究と同様に、顔文字を付加しない条件よりも、付加した条件のほうが喜び感情の認知が促進された。また、悲しみ、怒り、恐怖、嫌悪の4つのネガティブ感情を表現する電子メールに、対応する顔文字を付加しても、当該感情の認知が促進されることはなかった。中性感情と位置付けられる驚きについては、喜び感情とほぼ同様の結果が示された。他方、感情表出している静止した絵文字を付加した場合、顔文字よりも視覚的情報量が多いため、当初は感情認知が促進されると推測したが、結果的に感情認知が促進される感情と、促進されない感情が存在した。
  • 日米比較研究
    内田 由紀子, ダフィ ショーン, 北山 忍
    セッションID: p2-020
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、日米の学生に「ソシオグラム」と呼ばれる絵を描いてもらった。ソシオグラムにおいては、自分自身と友人が楕円によって描かれ、また関連する人たち(自己と他者、他者同士)の間が線で結ばれた。結果、3つの研究を通じて、日米での自他の描き方の違いが見られた。アメリカでは自己が友人よりもかなり大きなサイズで描かれるに対し、日本ではその差はほとんど見られない、もしくはアメリカに比べるとその差は小さいものであった。それぞれの文化において自己や関係性がどのように認知されているのかについて、考察を行う。また、ソシオグラム課題の有効性についても検討を加える。
  • 梅原 修一, 松井 三枝, 倉知 正佳
    セッションID: p2-021
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    健常者における被注察感ならびに妄想傾向が視線感知に及ぼす影響を検討した。実験は様々な視線の角度の顔写真に対して「被験者自身のこと」を見ていると感じるか、あるいは、「被験者のいる方」を見ていると感じるかの評定を求め、見ていると反応した頻度ならびに反応時間を指標とした。その結果、「被験者自身のこと」についての評定を求めた場合、被注察感の強い者が弱い者に比して反応時間が遅い結果となった。そして、「被験者のいる方」の評定の場合、妄想傾向の高い者が低い者に比して反応頻度が低く、被注察感の強い者が弱い者に比して反応が速かった。また、反応頻度に性差が認められ男性に比して女性のほうが頻度が低く、視線について鋭敏に判断することが考えられた。
  • 小森 伸子, 北崎 充晃, 板倉 昭二
    セッションID: p2-022
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    幼児がもつロボットに対する概念、特にヒューマノイドロボットに対する生物学的な属性の付与について検討した。参加者は平均年齢5歳児19名、6歳児21名、成人15名であった。人間、うさぎ、車、冷蔵庫、ロボット(Robovie,神田,石黒,小野,今井,中井,2002)5枚の写真を用意し、生物に関する質問9つ(例:「目があるのはどれ?」 「痛いと思えるのはどれ?」)を行い、あてはまると思う写真を選択させた。結果は、Robovieは外見上目をもっているが、人間やうさぎにくらべて目があると選択する率は成人、幼児とも低かった。また心的状態に関する質問ではロボットは痛みを感じると答える幼児もおり、幼児はヒューマノイドロボットに関して成人とは異なった判断をしている可能性が示された。
  • 嶺本 和沙, 吉川 左紀子
    セッションID: p2-023
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    刺激を一定時間見ることで、次の刺激への判断に影響が出る順応効果は、低次の視覚処理段階において長く知られていた。近年、このような順応効果が顔などの高次の視覚処理においても起こるということが確認され、顔の様々な情報についても順応効果が確認された。本実験では、表情を刺激とした場合の順応効果を検討した。実験1では刺激人物に男性を用い、怒り・恐怖・喜び・悲しみの4種の表情を用いた。実験参加者は、表情かランダムモザイクパターンに順応し(順応刺激)、モーフィングで合成した強度の弱い表情(テスト刺激)について強制4択でどの表情に見えるかを回答した。その結果、恐怖を除いた表情において順応刺激とテスト刺激が同じ表情の場合に、正答率が有意に下がった。実験2において刺激人物を女性に変えて同じ実験を行ったところ、同様の結果が得られた。これらの結果は、表情においても順応効果が起こるということを示唆している。
  • 守田 知代, 森戸 勇介, 久保 佳弥子, 定藤 規弘, 板倉 昭二
    セッションID: p2-024
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    ヒトは生後3ヶ月から社会的因果関係を示す2つのボールの動きに対して感受性を持っており(Rochat et al., 1997)、さらに生後9ヶ月頃にはそれら2つのボールの役割を認識できるようになると考えられている(Rochat et al., 2004)。生後5・9ヶ月の乳児および成人を対象として、追跡関係を示して動く2つのボール、無関係に動く2つのボールを見ているときの眼球の動きを視線計測装置(NAC社製)によって計測し、グループ間における視線パターンの違いを分析した。その結果、5ヶ月の乳児は、追跡されるボールに比べて追跡するボールを2倍程度長く注視していた。9ヶ月児でも同様の傾向が見られた。ところが、成人では、反対に追跡されるボールを2倍程度長く注視するという結果が得られた。成人のような視線パターンには、社会的因果関係を認識する以外の認知能力が関わっている可能性がある。
  • 小泉 愛, 池田 功毅, 田中 章浩, 高野 陽太郎
    セッションID: p2-025
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    Algom et al. (2004) は、従来の情動ストループが、色-単語ストループとは異なる性質を持つことを指摘した。この指摘を受け、表情と情動語の2次元の情報を含む刺激を用いた新情動ストループが考案され、表情課題(Etkin et al., 2006)と、単語課題(Haas et al., 2006)の双方においてストループ効果が確認された。だが、単語課題におけるストループ効果は、色-単語ストループでは(特定の条件下を除き)生じない現象である。この単語課題におけるストループ効果は、Haas et al.(2006)の刺激特性(単語の干渉耐性)や課題特性に由来するのか、又は新パラダイムと色-単語ストループの原理の差異に由来するのかは不明である。本実験では、表情課題と単語課題を同一被験者に課し(実験1)、さらに刺激特性(干渉耐性)を操作して(実験2)、新情動ストループと色-単語ストループの性質の同異を検討した。
  • 安藤 花恵, 三浦 佳世
    セッションID: p2-026
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、質問紙調査により、演劇経験1年目、2年目、3・4年目、5年以上の俳優がどのような態度で演劇に取り組んでいるのかを検討した。目指す俳優像、脚本を読む際の態度、演技プランを立てる際の態度、演技中の態度について、それぞれ16~18の項目の評定をおこなった。その結果、経験1年目、2年目の俳優は、演技中になりきろうとしたり、役になりきることができる俳優を目指すなど、「なりきる」ということへの志向が強いことが明らかになった。経験2~4年目の俳優には、自分のセリフに線を引いたり、脚本を読む際にまず自分のセリフを探したり、自分の出るシーンを重点的に読むなど、自己中心的な傾向が見られた。経験が5年以上になると、そのようななりきることへの志向や自己中心的な傾向は消え、存在感のある俳優や華のある俳優を目指すなど、感性的に優れた俳優を目指すようになることが示された。
  • 自動性-統制性の観点から
    榊 美知子, 村山 航
    セッションID: p2-027
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    原因帰属理論では,達成場面で失敗したとき,人はその人なりの合理性をもって帰属を行っていると考えてきた.しかし,こうした考えは正しいのだろうか。むしろ,人は本来,失敗を自動的に能力帰属しやすい傾向を持っており,能力以外の帰属因を考慮するのは難しいのではないだろうか。そこで本研究では,失敗時における能力帰属の自動性を示すことを目的とした。実験1では,失敗後に二重課題によって認知的負荷を課した高負荷条件と,認知的負荷を与えない統制条件を設け,能力帰属が行われる程度を比較した。その結果,高負荷条件は統制条件に比べて,能力帰属の程度が大きいことが明らかになり,能力帰属の自動性が示された。この結果は,他の解釈可能性を排除するために教示やフィードバック方法を変更した実験2でも再現された。
  • 中山 冴香
    セッションID: p2-028
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、聴覚的な平行課題(妨害課題)が、視覚的注意課題に対してどのような影響を与えるのかについて焦点を検討した。ドライビングシュミレーターを用いて行った実験では、会話をしながら行った群では注意資源が減少し、エラーが増加したと報告されている(MMcKnight et al.,1993)。本研究では、パソコンの画面に映し出された記号に対応するキーボードを押すという課題の反応時間を、聴覚的妨害課題を課せながら行う群と、統制群を設け、比較検討を行った。
  • 高畠 かほる, 伊東 裕司
    セッションID: p2-029
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、1)表情のカテゴリ判断において文脈効果が見られるか否か、見られるならば2)表情強度の高低と文脈効果との間に交互作用が見られるか否か、3)文脈から推測される感情と表情の一致・不一致で文脈効果に違いが見られるか否かを検討した。表情刺激として真顔、強度の異なる笑顔・怒り顔を、文脈刺激としては表出者の置かれている状況を描写した状況文を用いた。その結果、1)文脈効果は笑顔では強度の低い刺激においてのみ、怒り顔では強度に関わらず見られた。2)笑顔においてのみ強度の高低によって文脈の影響が異なった。3)笑顔では文脈あり条件での反応時間が、文脈なし条件での反応時間よりも長く、怒り顔では不一致条件での反応時間が他の条件よりも長いことが示された。笑顔は顔面の形態が、怒り顔は表出者の情動状態が優位な判断材料として用いられていることを示すものと考えられる。
  • 駒田 悠一, 篠原 一光, 三浦 利章
    セッションID: p2-030
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
     本研究の目的は道路環境を想定した映像内で、左右から自車と衝突する可能性のある飛び出しがあったときに、どこからの飛び出しがもっとも検出の反応時間が遅いか検討することである。また、その検出速度が周囲の対象の数によってどのように変化するかも合わせて検討した。本実験では衝突可能性をそろえるために、飛び出す速度を飛び出す場所ごとに変化させた上で、中央を固視させながら左右からの飛び出しに対する単純検出課題を行い、反応時間を計測した。実験の結果、とくに左奥において飛び出しの検出が遅く、また対象数が増えることによって左奥のみ成績が悪化することが示された。結果、近くからの飛び出しよりも遠方での飛び出しのほうが危険な場合もありうることが示された。
  • 内藤 宏, 三浦 利章, 木村 貴彦
    セッションID: p2-031
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    把持動作実行時の視覚的注意の空間特性について検討した.実験環境は実空間であり,把持動作の運動方向は「近→遠」,「遠→近」の奥行き2方向であった.立方体が奥行き方向に3行2列に配置され,各立方体の直下及び中央に,緑か赤に点灯可能な2つのLEDが置かれた.探索ターゲットが2つのLEDの点灯パタンで定義される,結合探索課題を行った.把持ターゲットは探索ターゲットの直近の立方体であった.把持動作実行の有無が探索パフォーマンスに及ぼす影響を検討するため,把持動作を行わない統制実験も行った.把持動作の運動方向と視覚的注意の移動方向が一致する場合に,不一致である場合よりも探索時間が短縮するという仮説を立てた.両実験,両運動方向条件において,中央行に配置されたLEDの探索が早いという傾向が見られた.
  • 大塚 聡子, 大野 一樹, 河原 哲雄
    セッションID: p2-032
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    先行刺激(プライム)に接触すると、意味的に関連する後続刺激(ターゲット)に対する反応は促進される。この意味プライミング効果は、一般に文字刺激を用いて検討される。本研究では、プライムを画像としたときに、文字ターゲットに対する反応にプライミング効果が生じるかどうかを検討した。各試行では、観察者にプライム画像を提示した後に、ターゲットに対する語彙判断課題を求めた。ターゲットは、プライム画像の基本語(基本語条件)、プライム画像と意味的に関連する語(関連あり条件)、プライム画像と意味的に関連しない語(関連なし条件)、無意味語の4種類であった。実験の結果、基本語条件と関連あり条件における反応時間は関連なし条件より短かった。したがって意味プライミングが認められた。以上の結果に基づき、画像による物体認知過程と意味ネットワークの関係について議論する。
  • 大崎 弘孝, 川畑 秀明, 箱田 裕司
    セッションID: p2-033
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    変化検出課題において,変化した位置や特徴を捉えることは質的に異なるメカニズムによるものであることが示唆されている (Wilkin, & Mattingley, 2000).視覚探索型刺激布置における変化検出課題において,色矩形を刺激として用いた場合には変化位置検出と変化特徴検出との間にパフォーマンスの差はみられないが(大崎・川畑, 2005),ガボールパッチを刺激として用いた場合には両者のパフォーマンスの間に違いがみられている (Watanabe, 2003).本研究では,ガボールパッチが円環状に布置された変化検出課題において,その要素数および方位変化量を変数とし,変化位置検出と変化特徴検出の特性を検討した.その結果,位置検出と特徴検出ともに,方位変化量に比例して線形的に正答率が上昇することが示された.また,位置検出の方が特徴検出よりも変化検出の感度が高いということが示唆された.
  • 参加者内計画による検討
    大塚 幸生, 川口 潤
    セッションID: p2-034
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    単語の意味活性化の程度は,単語に向けられる注意量によって影響されることが示されている(Smith, Bentin, & Spalek, 2001: attention modulation hypothesis)。しかし,先行研究で使用された子音-母音判断の際に,単語が音読されることで同時に意味処理も行われ,ターゲット処理との両方で意味処理が行われた結果,意味活性化が生じた可能性が残された。本研究では,意味処理が重複して行われる可能性を排除するために,視覚的に提示される単語とは異なるモダリティの聴覚的な注意分割課題を使用した。また,参加者の個人差を考慮するために,注意分割条件を参加者内要因とした。その結果,全ての注意分割条件の間で意味活性化の程度に違いが確認された。これは,Smith et al.(2001)の主張と一致しており,単語の意味活性化が注意資源を必要とすることが示唆された。
  • 伊丸岡 俊秀
    セッションID: p2-035
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,単語の意味から想起される色が探索効率に与える影響を,単語の視覚探索課題を用いて調べた.実験では,色を想起しやすい語10語(色想起条件;例えば“空”)と想起しにくい語10語(色非想起条件;例えば“心”)を用いた.全ての単語には課題とは関係のない色がつけられていた.探索目標となる単語は,事前に被験者ごとに調査しておいた単語から想起される色(“空”ならば薄い青)あるいは,赤・青・緑・黄・橙・白のいずれかで彩色され,妨害項目は目標項目の輝度にマッチした別々の色によって彩色された.実験の結果,想起条件に関わらず,想起した色がつけられた目標に対する探索効率が他の色が着けられたときに比べて良くなることが示された.目標が想起した色ではない色で彩色されたときの効率低下は色想起条件で大きく,単語によって想起された色と実際に単語に着けられた色との不一致が今回見られた効果の原因であると考えれる.
  • 形と色の処理の相互作用
    荒生 弘史, 堀 峻介
    セッションID: p2-036
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,ピクトグラムを用いた性別判断における形態情報と色情報の役割について,ストループ様課題を用いて検討した.用いた図柄は,英語や日本語,単純な図柄,複雑な図柄であり,それぞれ形と色が示す性別が一致する場合と不一致の場合があった.色情報は無視し形だけから性別を判断する形態判断課題と,形の情報は無視し色だけから性別を判断する色判断課題を行った.図柄のタイプごとに干渉効果の出現の仕方が異なっていたことより,性別判断における形態情報と色情報の役割や優先性は図柄タイプごとに異なると考えられる.抽象性の高い単純な図柄や,比較的親しみの低い英語図柄のタイプでは形態情報にくらべ色情報がより優先的に処理される一方,母語である日本語図柄については色からの干渉をほとんど受けずに形態からの情報が処理されると考えられる.人間の情報処理の観点からピクトグラムの理解しやすさを考慮することについて考察した.
  • ―反復経頭蓋磁気刺激による研究―
    松吉 大輔, 廣瀬 信之, 苧阪 直行
    セッションID: p2-037
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    近年のサルの電気生理学的研究やヒトの脳イメージング研究は,仮現運動知覚における複数の脳領域の寄与を示唆してきた。特に側頭頭頂後頭接合部 (temporo-parieto-occipital junction: TPOJ) に関する知見が,ここ数年いくつか報告されている。しかし,これらの研究で報告されている個々の領域が,どのように仮現運動知覚に関わっているのかは明らかではない。そこで,本研究では,オフラインの反復経頭蓋磁気刺激 (repetitive transcranial magnetic stimulation: rTMS) によって,複数の側頭頭頂接合部の神経活動を一時的かつ部位限局的に抑制することにより,それぞれの領域が仮現運動知覚にどのような機能的関与を行っているかを直接に検討した。その結果,rTMS適用後の仮現運動知覚の様態が部位依存に変化している可能性が示されたので,その一部を報告する。
  • ―海鳥と緑の関係は―
    中根 愛, 飯田 沙依亜
    セッションID: p2-038
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    色や音素といった連続的に変化する刺激において、異なるカテゴリに属する刺激対はより異なって感じられ、同じカテゴリに属する刺激対はより同じように感じられるというカテゴリカル知覚が確認されている。他方無意味図形を用いた研究において、同じカテゴリに属するという学習が刺激間の類似性を高めるという結果が得られている。これらの知見を踏まえ、本研究では連続的に変化しない無意味図形をカテゴリカル知覚研究の実験パラダイムで用いた。これにより連続的に変化する刺激においてのみでなく、非連続的な変化をする刺激においてもカテゴリカル知覚が生じることを確認する。実験参加者は無意味図形のカテゴリを学習した後、カテゴリカル知覚研究で用いられる二択強制選択課題を行った。同カテゴリ条件と異カテゴリ条件のRTの比較から、変化が非連続的な刺激を用いた二択強制選択課題におけるカテゴリカル知覚を確認した。
  • 類似度評定課題による検討
    時津 裕子
    セッションID: p2-039
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    熟練した考古学者は,出土遺物を素早く正確に見極め,観察対象に対する高精度の記憶保持を長期にわたって行うなど,物質文化の分類と同定に関する総合的な認知技能“鑑識眼”を体得している.この技能の基盤に熟達者に特有のカテゴリー知識があることは疑いない.これまでの研究から,熟達化にともないカテゴリー判断に影響する属性の種類・強度が異なることがわかってきた.本研究では,土器図版の類似性評定課題を用いてより些細な検討を行った.
  • 野村 光江, 吉川 左紀子, 魚野 翔太
    セッションID: p2-040
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、Bayliss&Tipper(2006)の手続きを用いて、対象物への視線の予測性が人物判断に影響するか検討した。中心視野に正面顔の写真刺激が呈示されたあと左右いずれかの周辺視野に標的が出現した。参加者には標的の位置判断を課した。36枚の顔刺激には(1)必ず標的を見る(2)必ず標的の反対を見る(3)標的を見るか見ないかは50%ずつ、という3条件を設けた。課題終了後、顔刺激に対する好意度の判断をさせると、必ず標的の反対を見る顔に比べて必ず標的を見る顔に対して好意度が上昇した(実験1)。標的出現後に顔刺激の視線方向を変化させたところ(実験2)、こうした好意度の上昇は見られなかった。視線と対象との時空間的関係を処理することによって後の対人認知が影響されるが、好意度形成とって重要なのは、他者が共同注意を行うことよりも課題遂行に有用な情報を提供することであることが示唆された。
  • “Like me”理論に基づいた介入を通して
    実藤 和佳子, 大神 英裕
    セッションID: p2-041
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    大人が子どもの行動を模倣するとき、定型発達及び自閉症児の関心をひきつけることが複数報告されているが、定型発達/非定型発達を直接的に比較検討した研究は少ない。近年提出された発達仮説の1つである“Like me”理論では、社会的認知発達の基盤には他者が自分と類似した存在であることの理解があり、子どもの行動を模倣することはその理解を促すのに有効であるとされる。そこで本研究では、模倣という関わりがもつ意義について探るために、随伴的行動を比較条件として設定する。養育者による介入(模倣・随伴的行動)時の幼児の社会的関心の変化について、Still Faceパラダイムを応用して、定型発達児と自閉症児における反応から検討する。更に、養育者が介入を一定期間持続して行った際の自閉症幼児のコミュニケーション能力の発達的変化について縦断的に調査を行い、社会的認知発達との関連性についても議論する。
  • 上田 祥行, 齋木 潤, 多湖 真琴
    セッションID: p2-042
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,触覚刺激とは異なる特徴を持つ視覚刺激が,同じ位置に呈示された触覚刺激の判別成績にどのような影響を与えるのかを検討した。協力者は2種類の異なる粗さを持つ耐水ペーパーを左右の手に呈示され,その粗さの弁別を行うように教示された。協力者が触覚刺激の判別を行う間,視覚刺激としてピクセル数の異なる2種類のホワイトノイズが耐水ペーパーと同じ位置に呈示されていた。粗い耐水ペーパーとピクセル数が大きいホワイトノイズが同じ位置に呈示された場合を「一致」条件,粗い耐水ペーパーとピクセル数が小さいホワイトノイズが同じ位置に呈示された場合を「不一致」条件とした。このとき,一致条件での触覚刺激の粗さの判別成績は不一致条件に比べて有意に高かった。これらの結果は,視覚と触覚に呈示される刺激が異なる物質であるにも関わらず,同じ位置に呈示された視覚情報の影響を受けて触覚の知覚が変化していることを示唆している。
  • 三浦 佳世, 秋山  祐子
    セッションID: p2-043
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    笑顔時に隆起する頬の部分を明るくすると、笑顔の印象の高まる可能性が 指摘されている。そこで、顔の形態特徴に基づくタイプ別(大人-子供、ソフト-シャープの2軸による4タイプ)の典型平均顔(真顔)およびそれらの平均顔に、両頬もしくは同面積の額と顎へハイライトを入れ、表情(笑顔、怒り、悲)がどのように変化して感じられるかを、7段階評定で検討した。 その結果、頬にハイライトが加わると、笑顔の印象が高まり、怒りと悲しみ の印象の弱まることが示された。ただし、元の真顔に笑顔や怒りの印象が感じられる場合には、ハイライトが笑顔の印象を強めたり、怒りを和らげる効果が減少し、顔の形態的特徴が度合いに影響することも示された。
  • 松田 幸久, 岩崎 祥一
    セッションID: p2-044
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
     空間的注意の自動的・能動的制御と性格特性の関連について検討した。空間的注意の自動的制御は周辺ボックス自体が輝度変化を起こすPosnerタイプ(1987)が用いられた。能動的制御は注視点上に矢印を提示するシンボリックcueが用いられた。いずれもcueの有効性は50%であった。性格特性は質問紙によって測定した。実験にはNEO-FFI、日本語版Sensation-Seeking Scale、楽観主義尺度が用いられた。結果、1)神経症傾向-高群は復帰の抑制量-SOA800msが低い、2)誠実性-高群はIOR量-SOA450msが高い、3)Experimental Seeking-高群は反応時間全般が早い、4)Thrill and Adventure Seeking-高群はIOR量-SOA450msが低い、というものであった。本報告ではそれらを包括的に考察し議論する。
  • 藤谷 萌絵, 楠見 孝
    セッションID: p2-045
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
     大学生の人生における目標設定に,相互独立的-協調的自己観(Markus & Kitayama, 1991),自尊心(Rosenberg, 1965)が及ぼす影響を,男女大学生167名に対する質問紙調査によって検討した.将来展望は,将来目標リストアップ法(都築,1997)を用いて,人生の目標を10個,順位を付けてリストアップさせた.その内容を6つのカテゴリに分類し,頻度をカウントした.一方,文化的相互独立的-協調的自己観尺度に基づいて,回答者を独立群,中間群,協調群に分け,自尊心尺度(Rosenberg, 1965)の得点に基づいて,自尊心の高・中・低の3群に分けた.あわせて,仕事価値観尺度(1993)への評定を求めた.その結果,独立群と自尊心高群では仕事カテゴリの将来展望数が多かった.協調群では家庭カテゴリの将来展望数が多く,仕事価値観では,社会的貢献を重視する傾向があった.
  • 中村  絵美子, 楠見 孝
    セッションID: p2-046
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
     大学生の環境配慮行動に及ぼす社会的規範,リスク認知,行動にともなう感情などの影響を,男女大学生216名に対する質問紙調査によって検討した.環境配慮行動はリサイクルへの協力,過剰包装を断るなど4つ行動を取り上げ,その行動実行頻度,社会的規範(一人一人が行うべきか),ゴミ対策としての有効性,行動コスト,行動に伴うネガティブ感情(罪悪感,悪い気分),ポジティブ感情(満足感,誇らしさ)などについて5段階評定を求めた.さらに,環境問題のリスク認知,その解決への責任認知,道徳的人生観などについての項目についても5段階評定を求めた.相関・重回帰分析の結果,規範意識が低い場合は,環境配慮行動をしない場合のネガティブな感情が起こらず,環境配慮行動が実行されないことが明らかになった.一方,環境配慮行動にともなうポジティブな感情が環境配慮行動実行に及ぼす影響は見いだせなかった.
  • 上田 真由子, 太刀掛 俊之, 臼井 伸之介
    セッションID: p2-047
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本実験では、実験参加者に視覚課題と聴覚課題を同時に遂行させる二重課題を課した。視覚課題は標的検出課題であり、聴覚課題は聴覚刺激に対する前後判断課題であった。結果、視覚課題パフォーマンスはその難易度が低い場合、前後の音源位置の違いによる影響は全く受けなかった。一方、高い場合には、聴覚刺激が後ろから提示されたとき、視覚標的への反応が遅延する結果が示された。この結果は、空間的注意における視聴覚間のリンクの存在を裏付けるものである。また、本研究のより重要な結果は、「聴覚における空間的注意」が視覚課題に及ぼす悪影響を明らかにしたことである。一般的に、クロスモダリティ的な二重課題において、人は致命的となり得る視覚課題を優先して遂行する。そのため、視覚課題の難易度操作による影響は、むしろ聴覚課題パフォーマンスに表れやすい。ただし、聴覚課題が空間的注意を強く必要とする場合、視覚課題パフォーマンスにも影響が表れると考えられる。
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