日本認知心理学会発表論文集
日本認知心理学会第5回大会
選択された号の論文の201件中51~100を表示しています
口頭発表
  • 本間 元康, 小山 慎一, 長田 佳久
    セッションID: o4B-3
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    本研究では、ラバーハンドと自身の手の向きが不一致の場合(例えばラバーハンドは甲が上向きで自身の手は平が上向きの場合)、視知覚が触知覚にどのように反映されるかを検討した。参加者の左手を自身から見えないように置き、鏡映された右手のラバーハンドを観察させた。ラバーハンドと自身の手の向きが一致している場合、視覚刺激(赤色光)を提示した部位に触知覚が体験され、視覚刺激のみで触知覚が生じることを確認した。しかし不一致の場合、例えば自身の左手平側を上にした状態でラバーハンドの右手甲側の親指に視覚刺激を与えた場合、参加者は平側の小指に触知覚を感じるという奇妙な現象を体験した。すなわち、鏡の中で刺激されている部位と空間的に対応する部位に触知覚が生じた。これらの結果は視覚情報によって触知覚が引き起こされる際、視覚的な位置情報と実際の手の体性感覚的な位置情報(手の指、平・甲)が統合されていることを示唆する。
  • 熊田 孝恒, 永井 聖剛, 遠藤 信貴, 横澤 一彦
    セッションID: o4B-4
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    新奇な物体の触覚的物体認知時の脳活動を、NIRS (near-infrared spectroscopy)を用いて計測した。fMRIによる先行研究では、右手のみを用いて日常物体の再認を行った場合に、右頭頂葉が活動することが報告されている(Reed et al., 2005)。本研究では、この結果を、右手に加えて左手を用いた場合で、かつ、新奇な物体の認知を行う場合に拡張することを試みた。右頭頂葉のみが触覚による物体認知にかかわる脳部位であれば、これら条件下でも同様の右頭頂葉の活動が観察されるはずである。8名の健常成人の脳活動を、LEGOブロックで作った新奇な物体を触覚的に再認する条件と、再認をせずに単に手の上で動かす条件で比較した。その結果、用いた手にかかわらず再認条件で有意な両側の頭頂葉の活動が認められた。このことから、新奇物体の触覚による認知には両側の頭頂葉が関与することが示された。
  • 唾液ストレスマーカー及びストループ検査による検討
    景山 望, 中林 和彦, 小沢 浩二
    セッションID: o4B-5
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    高圧環境下での作業は,様々なストレス[高圧環境や呼吸ガス等の物理的ストレス,長期間の隔離環境での生活といった心理的ストレス]が混在する特殊環境下で,長期間行われる場合が多い.本研究では,長期間の高圧環境滞在による心理的ストレスと認知機能との関連について,作業期間中の環境圧変化に伴う唾液ストレスマーカー(SIgA,α-Amylaze,Cortisol)の変動,POMS質問紙(横山,1994),ストループ検査の課題成績の変化によって検討した.唾液ストレスマーカー及びPOMS質問紙では作業期間中の環境圧の変化に伴う有意な変動はなかった.ストループ検査では環境圧が最大時に最も成績が悪くなったが,一過性の変化であった.3種類の指標間に有意な相関関係はなかったことを含め,本研究の結果は,長期間高圧環境暴露等の心理的ストレスによる直接的な認知機能への影響は少ないことを示唆するものだった.
  • 幾何学的形態測定学による検討
    小森 政嗣, 川村 智
    セッションID: o4B-6
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    顔の魅力に関する平均仮説の妥当性についてはいまだ一致した結論が得られていない.本研究では,古生物学の分野で主に発展してきた幾何学的形態測定学(Geometrical Morphometrics)の手法を援用することで,顔の形状を直接多変量データとして扱うことで平均仮説の妥当性について検討した.顔画像の特徴点座標に対し,重心サイズを用いたサイズの規格化,およびGeneralized Procrustes Methodによる整列を行うことで,各標識点を多次元正規分布する座標として扱うことができる.顔画像に対する魅力評価実験を行い,局所平滑化手法の一つであるLOESSを用いて顔の形態的特徴と魅力評価の関係を示した.その結果,平均仮説が部分的に支持されたが,男女の顔の違いを反映した軸においては,平均性に基づいた評価が行われていなかったことが示唆された.
ポスター発表
  • 鈴木 明夫, 佐藤 健
    セッションID: p1-001
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    外国語としての英文読解における等位接続詞を図的提示した際の理解促進効果は先行研究によって明らかになっているが、今回はその図的提示の効果はLarkin & Simon (1987)らが主張する「探索的効率性」によるものなのかを英文の提示時間と提示方法を操作する事で検証した。結果としては図的提示した等位接続詞を含む英文を読解した読み手は線状的に提示した等位接続詞を含む英文を読解した読み手よりも、読み時間が短くても理解力は低下しないことがわかり、図的提示の効果は「探索的効率性」によるものであると示唆された。
  • 森田 愛子, 花森 広治
    セッションID: p1-002
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    空間移動に関する文章を読み,その文章に適合する地図を選択する地図選択課題を行った.読解時間の分析より,空間移動を東西南北で記述した文(方角文)のほうが,ランドマークと左右の方向で記述した文(ランドマーク文)よりも読解時間が長かった.そして大学生の男女において性差が見られ,女性のほうが文の読解時間が長かった.さらに男性においては方角文とランドマーク文の読解時間に差が見られなかった.また,方向感覚尺度の得点とも関連が見られ,方向感覚についての自己評価が低い人のほうが方角文とランドマーク文の読解時間の差が大きかった.地図選択の正答率や反応時間にはそのような差は見られなかったが,方角での説明文の理解が困難であるのは,空間情報のメンタルモデルの構築が困難であることを示唆していると思われる.そして,特にその傾向は女性および方向感覚について自己評価の低い人において顕著であることがわかった.
  • 職業的音楽家へのインタビューコメントの質的検討
    香曽我部 琢
    セッションID: p1-003
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    本研究の目的は,幼児の音楽表現活動における「創造的認知」の発達プロセスについて、職業的な音楽家がどのように捉えているのか、ビジュアルエスノグラフィーを用いてその認知発達プロセスについて明らかにするものである。本研究では,幼児の楽器を使った音楽表現活動の様子を記録した3つの動画クリップを3名の職業的音楽家に提示した。そして,活動における幼児の「創造性」について半構造化インタビューを行い、そのコメントをもとに分析を行った。その結果,3名の音楽家が,クリップ3の幼児が自由に,自発的に活動している状況を「創造性」が高いと示しながらも,その「創造性」が違う創造的認知の枠組みの中で捉えられており,その意味に「ずれ」があること。
  • 足立 邦子, 山 祐嗣, 唐沢 穣, 川崎 弥生
    セッションID: p1-004
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    本研究では、比較無知仮説(Fox & Tversky, 1995)に示されるように、曖昧性の効果がフランス人においても当てはまるのかどうか検討する。さらにFox & Tversky(1995)では扱われなかったコントロール感を操作し、コントロールの錯誤(Langer, 1975)がフランス人にも当てはまるのかどうか検討する。そのため、Fox & Tversky(1995)によって用いられたEllsbergの2色問題を用い、フランス人が行う確率判断を検討する。
  • 池田 佐恵子
    セッションID: p1-005
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    絶対音感は、外部からの参照枠を与える音なしに音楽的な音の高さを同定することができる能力、とされる。絶対音感保有者の音高知覚には、音楽的音高のカテゴリーとラベルとの連合が必要であると考えられているが、連合の過程の詳細は明らかにされていない。日本の一般的な音楽教育で使用されるイタリア語の音名体系では、白鍵音と黒鍵音でラベルの質が音声的に異なる。本研究ではこの違いが音高同定にもたらす影響を検討するため、白鍵音刺激に隣接する白鍵音と黒鍵音へのエラーを分析した。その結果、絶対音感保有者では、音声的ラベル境界のない黒鍵音側へのエラー率が、音声的ラベル境界のある白鍵音側へのエラー率よりも高かった。また、音声モードを活性化させやすい条件で、音声的に類似したラベルの音名へのエラー率が高かった。これらの結果は、絶対音感保有者が音声的符号化が可能な白鍵音のカテゴリーで音高を符号化していることを示唆する。
  • 堀田 千絵, 川口 潤
    セッションID: p1-006
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    本研究は,修正Think/No-Thinkパラダイムを用いて意図的忘却と日々使用するストレスコーピング尺度得点との関連を検討することを目的とした。まず、すべての実験参加者は無関連語対を記銘した。次に,Think/No-Think段階において,手がかり語に対応する反応語を考えないようにするか,もしくは再生するかを反復して行うことが求められた(0,4,もしくは12回)。テスト段階において,手がかり語の対応語を再生するように求められた。結果は,ストレスコーピング尺度得点で抑制効果に差は見られなかった。
  • 有賀 敦紀, 渡邊 克巳
    セッションID: p1-007
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    Presenting a target-like distractor in an RSVP task deteriorates the detection of a trailing target because the visual system has difficulties in rejecting the erroneously accepted distractor. We investigated whether the rejection process is influenced by observers' knowledge regarding possible distractors. Observers identified a letter (target) embedded in a stream of line patterns, rejecting a preceding distractor (digit). We informed the observers about either the category of distractors ("digit") or the identity of the distractor (e.g., "5"). The distractors with certain distractor-target lags increased identification errors, indicating that the distractor rejection process temporarily interfered with the target identification. When the observers knew the distractor identity, the rejection process started later than when they knew only the distractor category. These results suggest that the rejection process may operate at either the category or the individual-item level; however, the setting of the rejection level is not under the observers' control.
  • “眼”と“顔”の喜び表情の決定要因
    上田 彩子, 須賀 哲夫
    セッションID: p1-008
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    他者の情動を認知する能力は、正常な社会的相互関係を保つうえで重要である。特に、眼の複雑な表情及び心的状態を理解する能力は、“心の理論”の指標となることが知られている。本研究では、眼の表情認知の一端を明らかにすることを目的に、眼と顔の“喜び”情動表出の決定要因について比較的検討を行った。実験刺激には、異なる表情間で部分的に入れ替えを施した、合成顔画像を用いた(例:中立情動を表出した眼の領域と、喜びを表出した残りの顔領域を合成した顔画像)。その結果、眼と顔の喜び表情判断において大きな違いはなく、共に決定要因は口を含む部分領域の変化であった。しかしながら、眼を含む部分領域の微細な変化を読み取ったのは、顔の表情判断ではなく、眼の表情判断であった。
  • 川上 正浩
    セッションID: p1-009
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
     本研究では,近傍語間に認められる類似性が,カタカナ表記語の語彙判断課題における反応時間にいかなる影響を及ぼすのかを検討した。カタカナ3文字表記語に対して,その近傍語(neighbor)との類似性について,形態的類似性,音韻的類似性の2軸で評価し,それぞれの高低に基づいて4条件のカタカナ表記語を選択した。形態的類似性については,近傍語間で異なる文字同士の形態的類似性評定値(川上,2002)に基づき,音韻的類似性については,近傍語間で異なる文字の音素単位の一致不一致に基づき,その評価がなされた。語彙判断課題を用いてこれら4条件に対する反応時間を比較した結果,近傍語間の形態的類似性が,語彙判断時間に抑制的な効果を持つことが示された。
  • 将来の出来事と感情に関する研究(2)
    兵藤  宗吉, 野内 類
    セッションID: p1-010
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    大学生の実験参加者に将来1年間と将来2年から3年の出来事を5分間で書いてもらい、その出来事の感情価を1(不快)から5(快)までの5段階で評定をしてもらった。参加者は2群あり、将来1年間と将来2年から3年とでカウンターバランスをとった。結果によると、快と評定された出来事が最も多く、これまでわれわれがおこなってきた自伝的記憶(過去の出来事)の実験結果と一致したものであった。
  • その形成と変容の時間相
    汪 キン, 河邊 隆寛, 三浦 佳世
    セッションID: p1-011
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    顔の脅威印象は非常に短時間 (39ms) の内に形成される (Barら,2006).本研究は,絵画における印象の形成時間ならびに時間経過によるその変容について検討した.3つの刺激提示時間条件 (300ms/1000ms/制限なし,被験者間要因) を設定し,10の形容詞対を用いて印象評定実験を行った.その結果,「好き」,「違和感」といった印象については1000ms条件と制限なし条件の間でのみ有意な相関が見られた.また,「不思議な」には,300msと1000msの間にのみ有意な相関が見られた.その他の「静かな」,「単純な」,「恐ろしい」などの印象については300ms条件と1000ms条件の間,300ms条件と制限なし条件の間,1000ms条件と制限なし条件の間に有意な相関が見られた.以上の結果は,絵画の印象のおいても即座に決まるものと即座に決まらないものあることを示している.
  • 青林 唯
    セッションID: p1-012
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    意味的自己知識と自伝的自己知識の関係は独立であるとも依存的であるとも言われている。では、この両者の関係は日常的な場面でどのように作用するのだろうか。本研究では認知行動理論から両者の関係が強い場合、特に感情制御能力が低い人には日常的な不適応が高くなると予測した。課題促進パラダイムを用いて自伝的自己知識と意味的自己知識の関係性を測定した。また、行動統制尺度を用いて感情制御能力を自己報告により測定した。日常適応として、主観的幸福感を測定した。その結果、意味的自己知識検索が早い場合、感情制御能力が高い人は主観的幸福感が高いのに対し、感情制御能力が低い人は主観的幸福感が低かった。以上の結果から、意味的自己知識と自伝的自己知識の連結は感情制御の効果を調整する働きがあり、特に日常的に感情制御がうまくない人にとっては非適応的な影響を与えることが示唆された。
  • 小河 妙子, 川上 正浩
    セッションID: p1-013
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    漢字二字熟語(熟語と略す)は,その熟語(e.g., 病院)と同じ語頭を共有する語頭近傍語(e.g., 病気)と同じ語尾を共有する語尾近傍語(e.g., 入院)をもつ。先行研究では,高頻度近傍語の活性化が,呈示された単語の認知を妨害することが報告されている。しかし,被験者による近傍語の主観的な想起順序(近傍語想起頻度)や想起された近傍語間の意味的類似性については考慮されてこなかった。そこで本研究では,被験者約600名に対して,漢字一字を手がかりとして近傍語を想起させる近傍語想起課題を実施した。各被験者には,教育漢字1006字の中から20字を呈示し,各漢字を語頭位置あるいは語尾位置に含む熟語を1分間で最大8語まで想起させた。この調査結果をもとに,被験者によって想起された近傍語の種類数と近傍語想起頻度とを参照可能な表を作成し,近傍語間の意味的類似性を規定する要因について検討した。
  • 鈴木 結花, 柴田 寛, 福光 優一郎, 小泉 政利, 行場 次朗, 萩原 裕子
    セッションID: p1-014
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    成人を対象とした事象関連電位(ERP)研究では、文脈から意味的に逸脱した単語が提示されたとき、逸脱しない単語が提示されたときと比べて、刺激提示後250-500ms付近に大きな振幅をもつ陰性電位(N400)が生じることが知られている。また、N400に続く陽性電位(LPC)が意味の適切さに関連する成分として報告されている。本研究では、成人と4歳児の意味逸脱処理を反映するERP成分を調べた。意味的に逸脱した文と逸脱していない文を聞いたときのERPを測定した結果、N400は両群で観察された。しかし、幼児の陰性電位は成人よりも振幅が大きく、頂点潜時および持続時間が長かった。幼児では左前頭野付近で大きな陰性電位がみられたが、成人において有意な半球差はみられなかった。LPCは成人でのみ見られた。これらの結果から、幼児の意味処理は成人より遅く、意味処理の頭皮分布は成人と子どもで異なることが示唆された。
  • 唐沢 かおり, 青山 晴美
    セッションID: p1-015
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    Hsee & Zang(2004)は、ディスティンクションバイアスの生起について選択肢を比較評価した際の幸福感情予期の失敗によるものであることを論じている。本研究は、幸福感と同様、感情予期が意思決定に重要な役割を果たすとされている後悔に焦点を当て、ディスティンクションバイアスに与える影響を2つの実験を通して検討した。実験1では、幸福感の強さの予期では、選択肢を単独で評価した場合のみ、質的な差が影響し量的な差が影響しない一方、後悔については比較評価・単独評価にかかわらず、量的な差も予期される後悔の強さに影響することを示した。実験2では、量的・質的特性にトレードオフ関係がある選択肢について、選択・不選択時の幸福感と後悔の予期を検討し、比較評価における幸福感情予期においてのみ量的特性が影響することを示した。これらの結果はバイアス生起が予期される感情の種類に影響されることを示唆している。
  • 正田 悠, 中村 敏枝, 河瀬 諭, 片平 建史, 安田 晶子, 小幡 哲史, 谷口 智子
    セッションID: p1-016
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    同一楽曲の演奏であっても,演奏者が意図する表現が異なると,演奏音に対する印象が異なるということは,我々が日常的に経験することである.本研究では,そのような演奏における表現の違いが聴取者の印象評定に与える影響を定量的に検討した.聴取刺激として,プロのピアニストに,2つの楽曲(ラフマニノフ作曲「音の絵Op.39-1」,同作曲「前奏曲Op.32-5」)を3通りの表現タイプ(<機械的な>,<芸術的な>,<誇張的な>)で演奏させ,それを録音したものを用いた.実験参加者には,作成された6刺激(2(曲)×3(表現タイプ))を聴取させ,そのそれぞれについて31の感情語を用いた印象評定を求めた.結果,聴取者は演奏者の意図した表現タイプを区別することができ,また,表現タイプによって印象の程度も異なることが示された.
  • 浅野 倫子, 横澤 一彦
    セッションID: p1-017
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    誤字の有無を確かめながらの読み、すなわち校正読みにおける誤字検出の難易度は、文章の読みの処理メカニズムを反映していると考えられる。読みは様々な要因が複雑に影響した認知過程であり、そのメカニズムを解明するためには、複合的に影響する複数の要因を調べる必要がある。本研究では、誤字検出を実験課題とし、校正読みの認知過程を多面的に調べた。各誤字は、正字との音韻、意味的類似性、文章中での位置、誤字検出に必要な文章の処理範囲などの要因を内包しており、重回帰分析によって各要因の寄与度を検討した。校正の非専門家を対象とした実験の結果、誤字検出の難易には主に誤字検出に必要な文章の処理範囲が大きく影響することが示された。また専門家を被験者として同様の課題を行った結果、誤字の持つ要因によらず専門家は非専門家よりも誤字検出率が高く、特に文章の処理範囲についての特性が異なる可能性が示唆された。
  • 國田 祥子, 藤木 大介, 西村 裕之, 中條 和光
    セッションID: p1-018
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    文章で対象の位置関係を述べられた場合,人は心内に空間的な位置関係を視空間的に表象する状況モデルを構成すると考えられている。本研究では状況モデルの構成に文章の呈示モダリティが及ぼす影響について調べた。文章が視覚呈示されると,作動記憶において視空間的な状況モデルの更新と文章の処理との競合が生じ,状況モデルの構成が阻害される可能性がある。この点について調べるため,空間的な位置関係を述べた文章を視覚,または聴覚で呈示し,その後に記憶テストを行ってその成績を比較した。実験の結果,文章を聴覚呈示した場合には,状況モデルの更新の要・不要に関わらず,記憶成績は変化しなかった。それに対し,文章を視覚呈示した場合,状況モデルの更新が必要な条件で記憶成績が低下していた。これらの結果から,文章を視覚呈示すると状況モデルの更新と文章の処理が競合し,状況モデルの構成が阻害されることが明らかとなった。
  • 島田 英昭, 北島 宗雄
    セッションID: p1-019
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    マルチメディアマニュアルでは、通常、画像(イラスト、写真など)、字幕、ナレーションを関連させることでコンテンツを伝達する。これらの情報提示方法を適切にコントロールすることでマニュアルの質の向上が期待できる。本研究は、字幕の提示タイミングと分かりやすさの関係を吟味した。先行研究から、画像の1秒後にナレーションを提示すると分かりやすいことが明らかになっているので、これに加えて字幕の提示タイミングとして、(a)画像と同時、(b)画像の0.5秒後、(c)ナレーションと同時の3条件を設定し、分かりやすさの主観的評定値を比較した。その結果、(a)画像と同時が他の条件よりも有意に評定値が高かった。しかし、その差はわずかであった。また、個人ごとのタイミングの好みをクラスター分析した結果、4つのタイプに分類することができた。
  • 谷口 智子, 中村 敏枝, 河瀬 諭, 片平 建史, 安田 晶子, 小幡 哲史, 正田 悠
    セッションID: p1-020
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    これまでの研究では、演奏において、音楽的なアイディアの伝達や調整を可能にする、特定の非言語的技能があることが明らかになっているが、定量的に研究したものは少ない。演奏場面(ピアノアンサンブル場面)において、より良い演奏をするためには、どのような非言語情報が有効で必要であるのか。本研究ではこの点を探るために、実際の演奏場面においてどのような情報が使用されているのかについて定量的に調べることを目的とした、2台ピアノによる演奏の実験を行った。その結果、演奏条件(異室非対面条件、異室対面条件、同室対面条件)によって使用される情報の頻度は異なり、また演奏回数を重ねるにつれて使用される非言語情報の頻度は高くなり、ピアニストの演奏音に対する満足度も高くなるということが示唆された。これにより、ピアノアンサンブルにおいて、演奏音だけでなく、非言語情報を手がかりとして演奏することの重要性が示唆された。
  • ジョイス テリー, 三宅 真紀
    セッションID: p1-021
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、グラフ理論やネットワーク分析の方法論を適用して、日本語連想語データベース(Joyce, 2005, 2006)によって構築した意味ネットワークの特性について調べる。第一に、日本語連想語データベースの概略を簡潔に説明し、第二に、連想語ネットワークを対象にして、RMCLグラフクラスタリング(Jung, Miyake, & Akama, 2006a, 2006b)を中心とするグラフクラスタリング手法の適用を述べる。ネットワーク分析の結果から、構築された意味ネットワークは、スケールフリー性を持つ構造が確認された。また、他のグラフクラスタリング手法と比較して、RMCL手法の有用性を明らかにし、日本語連想語データベースのような大規模言語資料の視覚化のための道具としても活用可能であることを示す。
  • 三好 一英
    セッションID: p1-022
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    三好・生駒(2005)は,モンティーホールジレンマ( Monty Hall Dilemma: MHD )において最初の選択を変更しないという意思決定理由同士がどのような関係にあるのかを探るため主成分分析を行い検討を行った。本研究では,三好・若林・生駒(2004)で考案した偽MHDにおいても,最初の選択を変更しないという意思決定の偏向に対する意思決定理由がどのような関係にあるのかについても検討を行った。加えて,三好・生駒(2005)との比較を行い,意思決定理由から見たMHDと偽MHDとの異同についても検討が行われた。
  • 小林 由紀
    セッションID: p1-023
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
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    日本語は英語などに比べると比較的語順の制約が緩やかであるとされる。しかしながら,最近は基本語順の文よりも語順を変えたかき混ぜ文の方が読解時間が長くなることを示した研究が多く報告されている。本研究では,かき混ぜ文における負荷と文の内容のもっともらしさとの関係を検討した。9つの句からなる文を80 文用意した。そのうちの半数がターゲット文であった。ターゲット文は全て埋め込み文であり,半数は基本語順文,半数は埋め込み節における目的語を文の先頭へと取り出したかき混ぜ文であった。基本語順文・かき混ぜ文ともに,半数は文の内容のもっともらしさを高く,残り半数はもっともらしさを低くした。その結果,基本語順文においてはもっともらしさが高い文の方が低い文よりも意味のもっともらしさが確定する領域の読解時間が長くなったが,かき混ぜ文においてはもっともらしさの効果が弱くなることが示された。
  • 尾田 政臣
    セッションID: p1-024
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    対称な顔は魅力的であるとする実験的な結果がある。顔は本来対称であり,対称性が崩れるのは免疫的な問題などからであるとし,遺伝的な要因から対称の優位性を説明する。一方,通常人間の顔は多少の対称性の崩れがあり,そのほうが魅力的とする実験結果もある。対称性の魅力に及ぼす効果については,動物を用いた研究が多くなされており,対称性が高い方が繁殖の機会に恵まれるという報告が多くなされている。しかし,人間がある対象の魅力度を判定する場合,繁殖の目的以外の要因にも左右されることが想定される。本稿では,風景,果物,記号といった遺伝的な要因とはならない顔以外の対象も含めて,対称性があるものが好まれるのか否かを実験的に調べた。その結果,総ての対象について対称性のあるものが好まれるわけではないことが明らかになった。
  • 矢口 幸康
    セッションID: p1-025
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,一対比較法のバリエーションの1つである中屋の変法を用いて,評価者に同一のオノマトペ(擬音語擬態語)から喚起された印象の強度を、笑い声に関するオノマトペは心理量と物理量、歩く動作に関するオノマトペはモダリティの異なる物理量に分けそれぞれ評価させ、順序化を行った。本研究の結果,笑い声に関するオノマトペでは心理量と物理量に関する評価の間で大きな差が生じることが明らかとなった。歩く動作についてのオノマトペを評価する場合,視覚的強度と聴覚的強度では評価に大きな差は見られなかった。
  • 平 知宏, 横森 大輔, 野澤 元, 森本 裕子
    セッションID: p1-026
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    日本語では,ある人物から他の人物への授与行為を表現するために,「あげる」と「くれる」という二つの動詞が存在する.これらは,基本的には話し手への授与は「くれる」,それ以外への授与は「あげる」という形で使い分けられるが(例:祖父は{私/知り合い}に腕時計を{くれた/あげた}),特定の条件では話し手以外への授与にも「くれる」が使えるなど(例:祖父が私の恋人に腕時計をくれた),使い分けの微妙な要因に関して,言語学では様々な理論的な検討がされている. 本研究では,これらの動詞が表すのは,具体物の授与というよりも,抽象的な利益の授与,つまり与益行為であると考え,またその使い分けに影響する要因として,与益者と受益者のそれぞれと,話し手との間の共益性に注目し,心理実験による検討を行った.その結果,与益者の共益性よりも受益者の共益性が高いほど,「くれる」という表現が選好されるということが示された.
  • 大塚 一徳
    セッションID: p1-027
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,ワーキングメモリによる情報の処理と保持が問題解決にどのように影響するのかについて,ディスプレイ上の外的表象の利用という観点から検討を行った。実験では,大塚(2003)と同様の領域に依存しない簡易な課題でワーキングメモリでの情報の一時的な保持と処理が必要な数字の組み合わせを推論する課題が用いられた。70名の実験参加者は,この課題を遂行するにあたり,必要に応じてディスプレイ上に表示される自己の解決プロセスが参照可能であった。実験結果をもとに,課題を効率よく解決し成績の良かった35名の高解決者群と成績の劣った35名の低解決者群に分割し,分析を行った。その結果,高解決者群の参加者はディスプレイ上の外的表象を低解決者よりも長時間利用し,適切に解の推論に利用していたことが示された。
  • 小島 隆次
    セッションID: p1-028
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    投影的空間表現語の指示領域適合度分布に関する認知モデルであるAcceptability computation algorithm for projective spatial terms(ACAP)は、当該表現における最適点に関するモジュール(Pモジュール)と、主として三次元空間での参照対象回転による適合度分布変化への対応を目的とするモジュール(Rモジュール)を組み込んでいる。これらモジュールは心理学実験の結果から導入されたものだが、その認知心理学的意義に関してはまだ十分検討が成されていない。本研究では、過去の様々な実験研究のデータを用いてACAPによるシミュレーションを行い、両モジュールの認知心理学的意味について検討した。その結果、Pモジュールは当該空間表現語及び空間状況でのプロトタイプを反映していることが示唆された。また、Rモジュールはそのプロトタイプからのずれの程度を、視覚情報に基づき量的・空間的に反映していることが示唆された。
  • 井上 雅勝, 松井 理直
    セッションID: p1-029
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、日本語の非正規語順効果に対するプロソディ情報の相互作用が検討された。(1a/b) 渡辺を佐藤が/中野が殴った(非正規語順)。(2a/b) 渡辺が佐藤を/中野を殴った(正規語順)。関西方言で、低起平板音調を持つ第1語(渡辺を/が)の後に、高起音調を持つ第2語(佐藤が/佐藤を)が現れる非正規(1a)/正規(2a)語順文と、音高変化がほとんどなく第2語(中野が/中野を)が現れる条件(1b, 2b) について、語句毎の読文時間が測定された。その結果、(1a)の第2語の読文時間だけが増加し、同じ非正規語順でもプロソディ変化がない(1b)や正規語順文(2a,b)では読文時間は増加しなかった。この語順×プロソディの交互作用は、ヲ格目的語が先行することによる第1語への焦点化と、第2語の音調が高起変化したことよる焦点化とが競合する条件(1a)で、処理負荷が増大したことを示すものと解釈される。
  • 今野 晃嗣, 仁平 義明
    セッションID: p1-030
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    Thomas & Chessの気質9次元に4次元を加え、イヌとネコの気質を測定する尺度を作成した。飼い主の評定から、計226個体(イヌ140、ネコ86)のデータを得た。全サンプルで各次元の内的整合性を検討したところ、活動性・接近・順応性・反応強度・気分の質・攻撃性・支配性・知性・愛着の9次元についてはα=0.6以上の値が得られた。また、活動性と動物の月齢との間には有意な負の相関があった。各次元の性差を検討したところ、イヌのオスはメスよりも活動性・攻撃性・支配性が高く順応性が低い傾向が見られ、反対にネコのオスはメスよりも順応性が高く攻撃性が低い傾向が見られた。次に気質類型を求めたところ、全サンプル中36%がEASYに、10%がDIFFICULTに、10%がSLOW-TO-WARM-UPに分類された。これはヒトの結果に類似した割合である。さらに、因子分析による次元の抽出と種間比較を行った。
  • 京屋 郁子
    セッションID: p1-031
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、2カテゴリからなる架空の動物の線画を用い、ルールと事例が同時にカテゴリ判断に使用されるか否かを検証した。それぞれの事例にカテゴリ判断の手がかりとはならない特徴を付随させ、その特徴の影響を分析した結果、カテゴリ判断にはカテゴリ判断の手がかりとはならない特徴は影響を与えず、ルールが使用されていたことが示された。一方、カテゴリ判断に対する確信度にはカテゴリ判断の手がかりとはならない特徴が影響を与え、当該カテゴリにおける中心的な事例と同じカテゴリ判断の手がかりとはならない特徴をもつ事例は、同じ特徴をもたない事例よりも確信度が高く、中心的事例そのものが使用されていたことが示された。これらの結果より、カテゴリにおいてルールと事例が同時に存在し、カテゴリ化に際しては両者が使用されることが示された。
  • 予測に用いる情報の差異
    藤島 喜嗣
    セッションID: p1-032
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、自分および他者の課題遂行予測の正確性について検討した。女子大学生30人が、3人一組で実験に参加し、文章作成課題を行った。実験参加者は、文書作成中のお互いの様子を観察し、その後、別のレポート課題の遂行について自分に関する予測と他者に関する予測を行った。その結果、自分による予測と他者による予測に差は認められず、いずれの予測も実際よりも楽観的な予測を行っていた。また、自分のパーソナリティ評定は自分の予測に影響しなかったが、他者によるパーソナリティ評定は他者のパーソナリティ評定に影響していた。人は、自分に関する予測を行う際に、自分の内的情報を用いると考えられているが、自己概念を優先的に用いないようだ。その一方で、人は、他者に関する予測を行う際には、わずかな時間で推測した肯定的な特性を用いて予測し、状況による制約に注目しないかもしれない。
  • 加藤 由樹, 加藤 尚吾
    セッションID: p1-033
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    携帯メールコミュニケーションにおいて,感情のすれ違いの一要因になりうると思われる,返信時期について分析した.相手の立場や相手に対する親しさが異なる場合について検討した.最初に,ポジティブ感情を生じる内容とネガティブ感情を生じる内容の携帯メールを受け取り,その携帯メールに対して返信を行ったときに注目した.更に,相手に落ち度がある場合と,自分に落ち度がある場合のやりとりに関して同様の分析を行った.結果,ポジティブ感情に関するやりとりのほうが,ネガティブ感情に関するやりとりよりも早く返信する傾向が見られた.また,親しい相手に対してのほうが,親しくない相手よりも,早く返信する傾向が見られた.さらに,自分に落ち度がある場合のほうが,相手に落ち度がある場合よりも,早く返信する傾向が見られた.
  • 学生の満足度とその授業に対する意識の関係
    加藤 尚吾, 加藤 由樹, 立野 貴之
    セッションID: p1-034
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    大学の情報基礎科目で、次回実施される小テストに関する予習教材を、携帯電話を用いて配信する実践を行った。本取り組みに対して、満足した学生群、どちらでもない学生群、満足しなかった学生群それぞれの、4回の小テストそれぞれに関して、予習した学生の割合を調べた。さらに、それぞれの学生群の本授業に対する意識、同じクラスの受講生の存在の意識、担当教員の存在の意識についても調べた。その結果、本取り組みに満足した学生は、満足しなかった学生に比べて、予習をしており、また本授業や本授業を担当していた教員の存在を意識していたと思われる。
  • 伊東 裕司, 小日向 史成
    セッションID: p1-035
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    族類似構造を持つカテゴリーの学習において,冗長な特徴次元が加わることで刺激が複雑になった場合に,学習がより速く進行することが,視覚呈示された線画刺激(架空の生物)を用いた実験によって示されている。本研究では,特徴次元数の効果について,線画刺激と言語による特徴リストを用いて比較した(実験1)。その結果,特徴リストを用いた条件では,線画刺激を用いた条件より少ない試行数で学習は進行したが,特徴次元数の効果は消失した。実験2で,学習時にカテゴリーの事例を呈示する時間を長くしたところ,線画刺激を用いた条件で,特徴次元数の効果が逆転し,次元数が少ない方が学習は速くなった。これらの結果について,部分的・分析的な情報処理と全体的な情報処理という観点から考察する。また,言語使用と処理の様式の関連についても考察を行う。
  • 上田 卓司
    セッションID: p1-036
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    概念形成あるいはカテゴリー化の能力を検討する際に多く用いられる実験課題として2カテゴリーへの分類(学習)課題がある.実験者が想定するものに対応した概念・カテゴリー表象に基づいてカテゴリーへの分類判断が行われることを仮定する課題形式である.しかし,この形式では,二つのカテゴリー表象を想定せずとも,一つのカテゴリー(表象)に対する異同判断によっても課題遂行が可能である.本研究では具象線画に対する自由分類(free sorting / clustering)課題ならびに一対比較による類似度評定課題の二種の課題遂行を比較することにより,分類判断を行うことと,概念・カテゴリー表象との関係を検討した.分類パタンもしくはクラスター構造や課題遂行過程についての結果からは,両課題における属性への着目の仕方に相違がある事が示唆された.
  • -談話焦点が人物の好ましさに及ぼす効果-
    井関 龍太, 菊地 正
    セッションID: p1-037
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    文の中の従属節で述べられた内容は,主節で述べられた内容に比べて,誤りを含んでいても気づかれにくいことが知られている。このことは,従属節に焦点が当たりにくいためであると説明されてきた。本研究では,文全体の内容を参照して判断を行う必要がある場合にも同様の効果が見られるかを調べるため,逆接または順接を含む文によって紹介された人物の好ましさを評定してもらった。実験の結果,ネガティブな性格特性の場合には,逆接文の従属節の中でその特性に言及したとき(例えば,“和也は「知ったかぶりをする」が,欲がない”)に,他の条件(“和也は欲がないが,「知ったかぶりをする」”や“和也は「知ったかぶりをし」,欲がない”)に比べて,好ましさが高くなった。一方,ポジティブな性格特性(“がまん強い”など)の場合には,そのような効果は見られなかった。したがって,文全体に基づく判断でも,ネガティブ特性では焦点の効果が見られた。
  • 高橋 麻衣子, 田中 章浩
    セッションID: p1-038
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    文を読解する際に,書かれた文字の音韻情報が活性化するとの知見はさまざまに提出されてきた。本研究では,この音韻情報が文理解のどの側面において特に必要とされるのかを検討した。実験参加者は7分節からなる刺激文を読み,その文に関する質問に答えることを求められた。刺激文は動作主と被動作主とそれぞれに対する修飾語を含み(例:公園で小さいネズミが大きいキツネを一生懸命追いかけた。),質問は動作主を問うもの(例:追いかけたのは?)と,ある修飾語が修飾している内容を問うもの(例:大きいのは?)の2種類であった。各参加者は刺激文を黙読する条件と,音韻変換を阻害する構音抑制を行う条件を遂行した。その結果,構音抑制は質問の正答率を全体的に低下させ,特に動作主を問う質問の正答率を大きく低下させることが示された。以上から,文理解において音韻情報は動作主と被動作主の関係性を理解するために特に必要であることが考察できた。
  • 山本 幸子
    セッションID: p1-039
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    口頭言語獲得の早期に、養育者が象徴的動作を教えることで早期から豊かなコミュニケーションができることが示されており、口頭言語獲得に促進的な影響があることが示されている (Goodwyn et al., 2000)。本研究では日本国内でこの育児法を行った養育者にアンケート調査 (N = 108) と追跡調査(N = 4)を行い、実態について調べた。アンケート調査の結果、児は平均月齢 10.97 ヶ月で養育者が意味があると判断できるゼスチャー (以下、サイン) を獲得し、平均 57.53 (SD 42.8 範囲5-150) 個のサインを使用できるようになった。児が最大数のサインを使用する時期の口頭の単語数が平均 21.89 (SD 35.08 範囲 0-170) 個であった。追跡調査の結果、12ヶ月時に平均的な口頭言語よりも多くのサインを使用できることが示された。
  • 廣瀬 直哉
    セッションID: p1-040
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,行為の推移という観点からマイクロスリップの表記と分類を試みたものである.マイクロスリップとは系列的な日常行為において顕著に見られる微小な修正運動であるが,これまでの研究では,行為の推移に着目した表記・分類が行なわれてこなかった.本研究では,行為の推移を記述するために,動作という基本ユニットを導入した.マイクロスリップはこの動作がスムーズに完結しない運動とみなすことができ,マイクロスリップを含む行為の推移は,完結しなかった動作と完結した動作の組み合わせで表現できる.コーヒー作成課題においてマイクロスリップを含む行為の推移パターンを収集・分類した結果,続行,反復,返戻,代替,転換の5つの基本パターンが見出された.また,それ以外のパターンとして,延期,循環,再行などが見出された.これらは,系列パターンとして明確に定義できることから,今後の研究において活用されることが期待される.
  • 今井 章, 藤江 順子, 嶋崎 裕志
    セッションID: p1-041
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
     視覚的に提示されたターゲット単語と意味的,ないしは表記形態的に関連する対象の画像が,その画像に対する眼球運動を促進するかどうかを検討した.ターゲット語は仮名表記のみ(仮名条件),または仮名と漢字表記が混在(混在条件)の何れかの条件群で提示された.実験1ではターゲット語と同一,意味的に関連,および意味的に無関連の3種類の対象画像が提示された.実験2ではターゲット語と同一,意味的関連語と表記形態が類似,および意味的関連語と表記形態が非類似の3種類の対象画像が提示された.実験1の結果,同一画像に対する固視時間が仮名・混在両条件において有意に長く,さらに,意味関連画像に対する固視時間も画像提示から800-1000ms後には,無関連画像よりも有意に増大していた.一方,実験2では,同一画像に対する固視時間が仮名・混在両条件において有意に長かったが,表記形態の類似・非類似による固視時間の差は有意ではなかった.
  • 長岡 千賀, 桑原 知子, 吉川 左紀子, 渡部 幹
    セッションID: p1-042
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    心理臨床面接(以下カウンセリング)の中で臨床家がクライエントの話を聴く聴き方は一般的な聞き方と多くの点で異なることが,熟達した臨床家によって記述されてきた(例えば,氏原, 2002).しかし,臨床家が何をクライエントの話をどのように聴き理解しているかについて実証的に検証した研究はほとんどない.この点を検討するための予備的調査として,本研究では,臨床家が,第3者としてカウンセリング映像を視聴するとき,どのようにクライエントを理解するかについて検討した.カウンセリング映像視聴後の臨床家と非臨床家のそれぞれに,クライエントについて感じたことや考えたこと等を自由に述べさせ,そのプロトコル内容を,クライエント理解の方略の観点から分析することを試みる.また,結果と熟達した臨床家による記述との対応についても言及する.
  • 五十嵐 拓也
    セッションID: p1-043
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    この研究の目的は読書行動に影響を与える要因を検討することである。そこで,読書行動と関係があると考えられる,読解力,読書イメージ,情報探索手段(読書・他人・インターネットの3つ),知的好奇心,読書娯楽という7つの要因を挙げ,これらの要因が読書行動に与える影響と,各要因間の関係を共分散構造分析によって検討した。調査参加者は東京の私立大学の学生164名であり,調査参加者の読書行動と先に挙げた7つの要因の側面を調べるため,3つのパートからなる質問紙に回答してもらった。分析の結果,(1)読書行動に影響を与える要因は「読書娯楽」と「情報探索・読書」という2つの要因だけであった。(2)読書行動が読解力に影響を及ぼすということ。(3)情報探索の3つの手段の関係は,「情報探索・読書」と「情報探索・他人」・「インターネット」に分かれるということが明らかとなった。
  • 柳沢 昌義, 安永 一香, 加藤 由樹, 加藤 尚吾
    セッションID: p1-044
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    携帯電話での電子メールコミュニケーションでは、画面が小さく、キー入力操作がパソコンに比べて容易でないため、メール作成の際にメッセージが短くなる。逆にこの短いメールゆえに受信者には送信者の感情が強調され伝わる可能性がある。被験者に7つの感情を表現するための、長いメールと短いメールを作成してもらった。これらメールを第三者に提示し、どの感情をどの程度感じだかについて評価してもらった。結果、悲しみに「短文効果」がみられ、愛にはその傾向がみられた。怒りの感情では長いメール文の方が短いメール文よりも感情がより強く伝わるという真逆の結果が見られた。悲しいと口数が少なく、うれしいと口数が多くなるなど、文字を介さないコミュニケーションにおける影響や、日常、非日常などの感情に対する意識なども関係していることが示唆された。
  • 山 祐嗣, 川崎 弥生, 足立 邦子
    セッションID: p1-045
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    後知恵バイアスとは、結果を知ったときに、それがあたかも最初から予想できていたかのように考えてしまう傾向である。本研究では、結果を知った場合と知らない場合の主観的生起確率の差として定義した。日韓英仏比較文化研究を行ったところ、東洋人は比較的後知恵バイアスが強い。これは、西洋人が分析的思考傾向であるのに対して、東洋人が全体的思考としての複雑なモデルを抱いているという仮説で説明可能である。
  • 文章理解テストを用いた検証
    後藤 靖宏
    セッションID: p1-046
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    会議録・要旨集 フリー
    コンピュータ非熟達者がコンピュータを使う際に生じる思考力の一時的低下をコンピュータ副作用と定義し、それより容易に検出し,副作用の度合いを数値化するためにはどうしたらよいのかを検証した。不慣れなキーボーディングにより注意容量が多く割かれるのであれば,同時に文章を理解し内容を記憶するような深い処理を行うことが困難であろうと推測し,コンピュータを用いた文章入力をさせた後に,その文章に対する問題を解かせた.その結果,キーボーディング非熟達者と熟達者との間には正答率に差があり,非熟達者の正答率は熟達者のそれを大きく下回った.また,文章を打つ早さと正答数に強い相関がみられ,キーボーディングの熟達度に応じて正答数が上がることが示された.非熟達者にキーボーディング練習を2ヶ月行わせて再度同じテストを行ったところ、テストの成績が向上した.これらのことから,コンピュータ副作用は,一定期間キーボーディングの練習を行うことによってある程度低減されることが示された.
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