日本認知心理学会発表論文集
日本認知心理学会第12回大会
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ポスター発表1 知覚・感性,社会的認知,発達・教育・学習,一般
  • 竹島 康博, 行場 次朗
    セッションID: P1-10
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    知覚処理の前に行われる情動処理によって,後続する知覚処理が促進的な影響を受けることが,視覚探索や注意の瞬きといった課題を用いた研究から明らかになっている。事象関連電位 (ERP) による神経基盤の裏付けも行われているが,その中で注意に関連したERP成分よりも短潜時で現れるERP成分も確認されている。したがって,前知覚的情動処理の影響は視覚探索や注意の瞬きよりも低次の過程においても生じると推測される。本研究では,マスキング課題におけるターゲットの検出感度を指標として,前知覚的情動処理が視覚処理過程に与える影響について検討を行ったところ,情動刺激は中性刺激と比べて検出感度が高いことが示された。前知覚的情動処理には扁桃体の活動が大きく関わっていることから,扁桃体において情動に関連する刺激特徴の処理が行われ,後続する知覚処理の低次から高次までの過程において促進的な影響を与えていることが示唆される。
  • 松下 戦具, 野村 真吾
    セッションID: P1-11
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    Keil (1987, 1995) は,楽器間の演奏タイミングの微少な時間差がグルーヴ(音楽に合わせて体を動かしたくなる感覚)を喚起する,と経験に基づく説を唱えた。しかしながらDavies, Madison, Silva, and Gouyon (2013) の実験検証はKeilの説を支持しなかった。Davies et al. の実験では音刺激のグルーヴを一刺激ずつ絶対評価したが,この方法では評定基準が安定せず,評定者の心理が適切に反映されなかった可能性がある。本研究では,二つの音刺激を聞き比べて評定させる方法を採用し,時間差の効果を改めて検討した。その結果,Keilを支持し,楽器間に微少な時間差が有るときにグルーヴが喚起されることが示された。またその時間差の量は,およそ人が知覚できる最小の時間差であり,グルーヴは潜在・顕在の境界付近の時差で発生することが示された。
  • 平田 佐智子, 山田 陽平, 中川 岳, 永井 聖剛
    セッションID: P1-12
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    音象徴とは、音声が感覚経験あるいはこれを基底とした概念と対応関係を持つことである。音象徴と身体性の関連を検討するため、音象徴的性質として既に示されている「有声子音は力強く、無声子音は繊細である」という傾向が、音声を刺激、身体運動を反応とした刺激反応適合性課題を実施した。有声・無声子音を含む音声および触覚センサーを用いた実験を行った結果、有声子音と強く押し込む動作、無声子音と弱く触れる動作が対となる条件において、その他の組み合わせの条件よりも反応時間が短くなり、刺激反応適合性が見られた。先行研究では、本課題において刺激が抽象度の高い次元で処理され、その後運動反応システムへ影響を与える可能性が指摘されている。本研究で用いた音声は単独では意味を成さない刺激であったが、有声―無声という抽象的次元として同様のシステムによって処理が行われた可能性が示唆される。
  • 松井 孝雄, 水野 りか
    セッションID: P1-13
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    文字マッチング課題において英語母語者は音韻、日本語母語者は形態を優先する傾向があるが、日本語母語者のほうが優先コードの個人差が大きい。また、英語母語者は日本語母語者に比べて音韻情報を無視しにくい。本研究では日本語母語者の形態優先傾向の個人差が音韻無視傾向の個人差と関連するかどうかを2つの課題の相関により検討した。その結果、形態優先傾向と音韻無視傾向はこれまでの実験と同様に得られたものの有意な相関はなかった。日本語母語者の優先コードが音韻から形態に変容していく過程は単純なものではないと考えられる。
  • 中尾 敬, 松本 知也, 森田 真智子, 清水 大輔, 吉村 晋平, Northoff Georg, 森信 繁, 岡本 泰昌, 山脇 成人
    セッションID: P1-14
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    幼若期ストレス (early life stress; ELS) はうつ病等の精神疾患を発病する危険因子の一つと考えられている。本研究では、ELSと安静時及び自己の内的基準による意思決定課題 (色の好み判断) 遂行時の内側前頭前野の活動との関連を検討した。NIRS (near-infrared spectroscopy) のデータから、ELSは、安静時及び色の好み判断時の内側前頭の活動の低下と関連していることが明らかとなった。また, ELSと内側前頭前皮質の活動低下は, 自己の基準による意思決定が求められる事態においても, 顕著な外的基準によって判断するという意思決定スタイルと関連していることが示唆された。
  • 相馬 正史, 都築 誉史, 千葉 元気
    セッションID: P1-15
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    道徳ジレンマとは,1人を犠牲にして5人を救うことは道徳的に適切かどうか,というように道徳的な葛藤をもたらす状況を指す。多くの研究では,道徳判断の二重過程理論を支持しており,それは義務論判断(規範や義務感を遵守する行動が道徳的に正しいとする立場)が自動・無意識反応に基づき,功利主義判断(道徳的に正しい行動とは,結果により決定されるという倫理立場)が熟考に基づくというものである。道徳判断の反応時間について,功利主義判断の方が,義務論判断よりも長いことが知られている。この反応時間の説明として,功利主義判断は,認知的葛藤を生じるためと主張されている。本研究は,個人がどの程度,義務論を重要視しているか,功利主義を重要視しているかという道徳判断の程度と,唾液アミラーゼの程度との関連について検討することを目的とした。実験結果,唾液アミラーゼ活性の大きさと義務論判断の多さが関係することが見いだされた。
  • 状態不安および家族との同居有無に着目して
    高橋 翠
    セッションID: P1-16
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    男性的な特徴をどのくらい強く備えた顔に魅力を知覚するかということには個人差が存在することが明らかにされている。本研究では、男性的な特徴に対する女性の選好(非選好)を規定する要因として、状態不安および親密な家族(血縁者)との同居有無に着目した。その結果、他の女性に比べて相対的に不安が高まっている、家族と同居していない女性については、有意傾向ではあるものの、比較的中性的な男性顔を選好する傾向(男性的な特徴に対する非選好)が認められた。本研究はこうした結果を、男性的な特徴が伝える繁殖上のベネフィットと2つのリスク(保身、関係性リスク)とのトレード・オフという、進化心理学的観点から解釈を加えた。
  • 向居 暁
    セッションID: P1-17
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    笑顔の表出には様々な効果があることが知られている。はたして、慣用表現にもあるように、「笑ってごまかす」ことは可能なのだろうか。本研究では、「笑ってごまかすことができた」という状態を「対人葛藤場面において笑顔を表出することで、相手がその状況を受容したり、葛藤を回避したりすること」と仮定し、仮想場面を用いた質問紙実験により検討した。その結果、いずれの場面においても、「笑ってごまかすことができる」という証拠は得られなかった。逆に笑わないほうがよい場合もあり、対人関係において、笑ってごまかそうとすることは効果的ではないことが示唆された。
  • 菊地 史倫, 山内 香奈
    セッションID: P1-18
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    列車の運行が停止するなどの輸送障害が発生した場合,鉄道利用者は予定通りに目的地に到着することができるかについて不安や不満を感じる。ただし,適切な情報提供があった場合には鉄道利用者の不安や不満が緩和されることから,輸送障害時の情報提供を改善することは重要である。本研究では刻一刻と変化する輸送障害の状況が鉄道利用者の取得したい情報とその取得量に与える影響を検討した。その結果,列車の運行停止時だけではなく,運行は再開したがダイヤが大きく乱れているときも利用者は目的地に早く着くことを判断するための情報を求めていることが示された。また,輸送障害の状況によって情報の取得量は影響を受けず,取得意図の高い情報ほど取得量は多かった。しかしながら,取得できている量は最大でも“一部の情報が得られた”程度であったことから,迂回情報などの提供可能な情報を積極的に伝えることで利用者の不満が低減する可能性が示された。
  • 北川 悠一, 西 悠之, 田中 孝治, 堀 雅洋
    セッションID: P1-19
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    洪水時は,河川から遠ざかる方向へ避難すべきとされているが,避難時に橋を渡り犠牲となった例も報告されている。紙媒体の洪水ハザードマップでは,避難方向を示す矢印が利用されているが,利用者の所在地が明示されないため最短距離にある河川対岸の避難所へ誘導してしまう恐れもある。一方,Web-GISにGPS機能を実装した洪水ハザードマップでは,利用者の所在地を考慮した矢印の提示が可能である。本研究では,利用者の所在地と同岸で浸水想定区域外にある最も近い避難所への矢印の提示が可能な洪水ハザードマップを作成し,適切な避難所が選択される割合について,現状のハザードマップで利用されている避難方向の提示方法と比較実験を行った。その結果,所在地を考慮した避難方向の矢印を提示した場合に,適切な避難所が選択された割合が最も高かった。これは,本研究で提案する所在地を考慮した避難方向の矢印の提示の効果を示すものと考える。
  • 田中 伸之輔, 長谷川 莉子, 原田 悦子
    セッションID: P1-20
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    高齢者の人工物利用が難しい背景には,運動・知覚・認知機能の加齢があるとされているが,情動的な加齢変化が高齢者の機器利用に与える影響については明らかでない。本研究では,高齢者が示す機器利用に対する「怖がり」のメカニズムを解明するために,外的なリスクを操作し,機器を実際に利用する様子を観察した。参加者はロボット(全長25cm)を操作して,経路のスタートからゴールまで動かすという課題を行った。その際70cmの机上からロボットが落下するリスクの高い状況で課題を行う条件とそのようなリスクの低い状況で課題を行う条件を設け,若年‐高齢者間で比較した。実験の結果,外的なリスクは高齢者の機器利用に直接影響はせず,独立であることが推察された。一方,突発的で心的衝撃の大きな「エラー」出来事が,高齢者の機器利用を一時的に阻害するという外的リスク要因の間接的な影響も示された。
  • -学力低位の子どもをほめられる新たな学習情報-
    山下 加奈恵, 土師 大和, 永井 達弥, 寺澤 孝文
    セッションID: P1-21
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    保護者が家庭において学力低位の子ども学力面でほめることは非常に難しい。「またこんな点数をとって、勉強しなさい」というような言葉がけをするのがせいぜいであろう。この状況を変えるために,学力低位の子どもの成績の上昇を可視化できる新しい技術(マイクロステップ法)により保護者に成績の向上の様子をフィードバックする実践を行った。その結果、子どもの意欲が有意に向上するなど望ましい結果が得られている。本発表では,当該実践が保護者の意識に与える影響をアンケート調査により測定した。その結果,子どもの学習履歴情報を保護者にフィードバックすることで,認知面と情意面において保護者が子どもをほめられる状況を生み出せることが明らかになった。
  • 市村 賢士郎, 井上 裕昭, 太田 裕通, 岡 隆之介, 楠見 孝
    セッションID: P1-22
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    物理環境は学習効率に影響する重要な要因である。本研究では,学習者がどのように物理環境を考慮して学習環境を選択するかを明らかにするため,学習者が選択する環境と実際の物理量との関係を調査した。大学図書館で行った物理量測定調査の結果,利用者が多い場所が必ずしも物理量がよい環境ではないことが分かった。この結果を受け,学習環境を選択する際に,学習者がどのような要因を優先しているのかを調べるために,3つの異なる文脈で優先する物理的要因を順位づけするWeb調査を行った。結果,照度・温度・騒音などの知覚しやすい要因の優先度が高いこと,実測値が提示されることで換気量などの知覚しにくい要因の優先度が変化し,学習環境の選択に影響することが明らかになった。このことから,学習環境づくりにおいて,知覚しやすい要因による快適さだけでなく,知覚しにくい要因による学習効率も考慮することの重要性が示唆された。
  • 進藤 将敏
    セッションID: P1-23
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    幼児期では対象のパターン化された標準型が描かれ易いが、次第に特殊な向きを表す非標準型の描き分けも状況に応じて可能になる。本研究は非標準型の描画構成に関わる認知的要因として、描く大きさと位置を捉えるための空間認知能力と標準型への反応を抑制する能力に着目した。実験Ⅰでは4~6歳児が描画課題、空間認知課題、標準型の抑制課題の各々に参加した。結果、描画では通常描かれ難い非標準型が5・6歳児で見られ、標準型よりも非標準型を描いた者の方が空間認知および抑制の両得点が高かったことから、描画構成の発達に空間認知と標準型の抑制が関わることが示された。実験Ⅱでは実験Ⅰで標準型を描いた5・6歳児に対し、空間認知および抑制の訓練課題を行った。結果、空間認知および抑制課題の得点が共に向上し、67%の者が非標準型の描画反応に転化したことから、描画構成と認知的要因の因果性が示唆された。
  • 堀田 千絵, 十一 元三
    セッションID: P1-24
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    自閉症スペクトラム障害者の学習過程について検討した。
  • 小島 隆次, 奥内 啓太, 角所 考
    セッションID: P1-25
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    ニュース番組のような映像を,擬人化エージェントを利用して自動生成するシステムを開発し,新たな情報提供プラットフォームを実現するという試みが近年行われている.こうしたシステムでの情報提供効率向上のためには,映像内の各出演者が誰に関心を向けているのかという関心指向性を,視聴者がどのように認知しているのかを明らかにする必要がある.そこで本研究では,ニュース番組の出演者の関心指向性に対する視聴者の認知特性について,言語情報と非言語情報のいずれが観測特徴として重要かという点に注目して検討した.実験の結果,視聴者が利用する関心指向性判断のための観測特徴としては,基本的に言語情報よりも非言語情報が重視される傾向にあることが示唆された.
  • 大橋 智樹, 松井 裕子, 高橋 信
    セッションID: P1-26
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    東日本大震災において発生した津波は,事前の想定をはるかに越える規模で来襲し,甚大な被害をもたらした。沿岸部に展開していた多くの産業現場においては,事前の想定をはるかに越える事象への対処を迫られた。
    このような事象に直面した際の人間の行動は,従来の研究で明らかにされてきた緊急時や非常時の特性とは異なるのではないだろうか。本研究では,想定外事象における人間の行動特性を明らかにし,そのような際においても最善の結果が得られるような教育・訓練等の対策立案に資する基礎的な知見を得ることを目的としている。
    本報告はその端緒として,想定外場面を実験的に模擬する行動測定手法の開発を目的とした。具体的には,1)実験参加者に特段の知識や能力を要求しないがある程度没頭できる課題の開発と,2)その課題遂行中に不自然ではなく発生する想定外事象の設定,さらに,3)適切な行動指標の選定を検討した。
  • 田中 孝治, 園田 一貴, 小川 泰右, 堀 雅洋, 池田 満
    セッションID: P1-27
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    家庭内における共助は,各家族構成員が持つ防災行動に対する価値観の交互作用と考えることができる。そのため,防災行動の指針となる価値観の表出によって適切な防災行動が選択されることが期待できる。本研究では,防災行動の指針となる価値観表出のための価値観再考の契機として,価値観に関する前提知識の教示が家庭防災行動意図に与える影響について検討を加えた。その結果,災害リスク認知,災害不安,主観的規範(家庭),防災行動意図(家庭)の4項目において,価値観知識が提示された方が,防災知識を提示されるよりも評価値が高かった。一方,災害への関心,ベネフィット認知(家庭),コスト認知(家庭)については,有意差は見られなかった。これらの結果は,防災教育として防災知識を与えるだけでなく,価値観に関する前提知識を与えることが家庭内防災行動意図を高めることを示すものであるといえる。
  • 長期間の利用から
    高橋 秀明
    セッションID: P1-28
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    ライフログ収集ツールを日常生活において利用し、その使いやすさを評価した。調査協力者1名に、あるツールを6ヶ月間使用することを求め、その記録内容と記録方法の変化を記述した。イベント性の高い記録を残す、三人称カメラの記録も残す、などの結果が得られ、本ツールの独自性として、道具の暴力性や権力性、自己効力性が示された。
ポスター発表2 記憶,思考・言語
  • 漁田 武雄, 陳 暁蕾, 漁田 俊子
    セッションID: P2-1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
      本研究は,既知楽曲を3水準設定し,さらに未知楽曲も加えて,各条件の楽曲の手がかり効果を調べた。実験に先行して,本実験に参加しなかった12名の大学生が,熟知度を評価した。先行研究で使用した既知・未知の楽曲をもとに選定した17曲を対象として,本実験に参加しなかった12名の大学生が,7段階で熟知度を評価した。その結果をもとに,4段階の熟知度条件を選定した。各熟知度条件には,15名の大学生を割り当てた。各大学生は,16個の有意味単語の提示を受け,項目に対する自由連想を行った。2.5分の保持期間後,自由再生テストを行った。偶発学習時と自由再生テスト時に,割り当てられた同一楽曲を提示した。その結果,熟知度の関数として,自由再生成績は有意に低下した。楽曲の熟知度が高くなるほど,様々な過去のエピソード画素の楽曲と連合しているため,実験エピソードの手がかりとなりにくくなるのであろう。
  • 馬 微, 漁田 俊子, 漁田 武雄
    セッションID: P2-2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
  • 森井 康幸, 三島 慧子, 漁田 俊子, 漁田 武雄
    セッションID: P2-3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    Smith & Manzano(2010)は,自由再生課題において実験参加者内で文脈を操作して,非常に大きなビデオ文脈依存効果を報告しているが,不明な点も多い。彼らの実験では,ビデオ文脈は局所文脈として機能することが前提となっているが,グローバル文脈として機能している可能性も残る。本研究では,実験参加者間でビデオ文脈を操作した場合でも文脈依存効果が生じるかを確認するとともに,ビデオ文脈が局所文脈として機能しているのか,グローバル文脈として機能しているのかを検討することを目的とした。各条件20名の大学生が実験に参加し,20個のビデオ映像とともに対提示された20個の単語を意図学習した後、学習時と同じまたは初めてのビデオ映像を見ながら,口頭自由再生を行った。その結果、実験参加者間の操作でも文脈依存効果が生じることは確認されたが,ビデオの局所文脈としての機能はかなり限定的であることが示唆された。
  • 久保田 貴之, 平野 由紀子, 漁田 俊子, 漁田 武雄
    セッションID: P2-4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,対連合学習における項目対とビデオ文脈の意味的関連性が記憶成績に与える影響の方向性を調べた。先行研究では,項目対とビデオ文脈の関連性が記憶成績に与える影響の方向性が明らかにされていなかった。そこで,本研究は,項目対とビデオの関連がある条件(関連あり条件),項目対とビデオの関連がない条件(関連なし条件)に,グレー背景を用いる統制条件(グレー文脈条件)を加えた。実験の結果,関連あり条件およびグレー文脈条件の平均再生率が,関連なし条件に比べて有意に高かった。また,関連あり条件とグレー条件の平均再生率に有意な差は見られなかった。これらの結果は,(a)項目対とビデオ文脈間の関連性によって記憶成績が引き上げられること,(b)1回提示では,引き上げられた成績が,統制条件を上回らないことを示唆している。
  • 尹 艶楠, 漁田 俊子, 漁田 武雄
    セッションID: P2-5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,外国語単語の学習の促進法の開発を目的として行った。外国語単語の学習とは,外国語単語とそれに対応する日本語を対にした対連合学習である。これまで,外国語と日本語をつなぐキーワードを使う方法が有力であった。けれども,単語ごとにキーワードを作るのはとても大変である。そこで,単語対とは無関係なビデオや写真でも,多数回背景として提示すると,対連合学習が促進されるか否かを調べた。66名の静岡大学生が,イタリア語(刺激項)と日本語訳(反応項)の30対を,4回反復学習した。各対ごとに,異なるビデオクリップ,異なる背景写真,あるいは灰色背景色とともに提示した。テストでは,刺激項のみをプリントしたテスト用紙に,反応項を書かせた。実験の結果,ビデオと背景写真の条件が,灰色背景色の条件よりも良い成績を示した。この結果は,偶発的な背景ビデオや写真が,対連合学習を促進することを示している。
  • 吉井 英理子, 漁田 武雄
    セッションID: P2-6
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    検索誘導性忘却とは,ある情報の検索に伴い,それと関連する他の情報の記憶成績が低下する現象を言う。本研究では,この現象の抑制が時間経過によって解除されるか否かを検討した。MacLeod & Macrae(2001)は,人物名と性格特性語を材料とし,検索経験の5分後に再生を行う場合に生じた検索誘導性忘却が,24時間後には生起しないことを見出した。しかしこの24時間後の結果は,ベースラインの再生成績が低いため検索誘導性忘却が十分に検出できなかった可能性がある。そこで本実験では,再生成績を上げるため,MacLeod & Macrae(2001)の条件を以下2点で改善し実験した。(1)反復学習回数を増やす。(2)人物名ではなく性顔写真を用いる。その結果,5分後条件で生じた検索誘導性忘却が, 24時間後条件においても認められ,時間経過によって検索誘導性忘却の抑制は解除されないことが分かった。
  • 佐藤 浩一, 小池 仁美
    セッションID: P2-7
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    血液型A型のステレオタイプに合致する性格特性語リストで生じる虚記憶について、思考抑制の影響を検討した。参加者はA型ステレオタイプの特性語を含むリストを記銘した。抑制群の参加者はリスト提示に先立ち「血液型のことだけは考えないように」と指示された。A型CL(几帳面、真面目、計画的)に対する虚再認は、思考抑制群と統制群で差が無かった。また思考抑制群の参加者による「抑制度」評定と虚再認の間にも関連は認められなかった。性格特性語リストで生じる虚記憶は、血液型ステレオタイプによるものではなく、特性語相互の意味連関による可能性が示唆された。
  • 喜び顔と真顔との比較
    伊藤 美加
    セッションID: P2-8
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
     伊藤(2012,認知心;2013,認知心)に引き続き,アイテム法による指示忘却パラダイムを用いて,顔刺激において指示忘却が認められるのか,顔刺激の情動価によって指示忘却効果に違いは認められるのかを検討した。実験参加者は,32人の人物の怒り顔または真顔からなる刺激リストを学習した。リストの半数は顔刺激提示後に「忘れろ」と忘却手がかりが,残り半数は顔刺激提示後に「憶えろ」と記銘手がかりが提示された。リスト学習後,全ての顔刺激に対する再認テストが行われた。再認テスト時の顔刺激はすべて怒り顔であった(異画像再認課題)。その結果,喜び顔・真顔ともにおいて,忘却手がかりが提示された刺激は記銘手がかりが提示された刺激よりも記憶成績が低くなるという指示忘却効果が認められた。
  • 本間 喜子, 川口 潤
    セッションID: P2-9
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    自己制御能力を表す概念のひとつとして,エフォートフル・コントロール (EC, Rothbart & Bates, 1998) というものがある。ECを測定する尺度は,行動の始発制御,抑制制御,注意の制御の3つの下位尺度で構成され,EC得点の低さは,抑うつや不安などと関連があるとされており (山形ら,2005),制御能力の低下が要因の1つとなるような問題行動との関係が示唆されている。問題行動以外にも,制御能力を必要とする課題である指示忘却において,制御能力の違いが指示忘却の効果に影響を及ぼすと考えられる。忘却教示が与えられた際に,行動を起こすための能力である始発能力が低下している場合,指示忘却効果を得ることが困難であると考えられる。そこで,本実験では制御能力と指示忘却の効果に関連性があるかどうかを検討を行った。その結果,注意の制御能力が指示忘却の効果と負の相関関係があることが示された。
  • 中山 友則
    セッションID: P2-10
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,実験では意図・偶発学習パラダイムとDRMパラダイムを組み合わせ,さらに指示忘却教示を与えた。この二つの組み合わされたパラダイムでは単語を対呈示し,一方を意図的に学習し,もう一方を偶発的に学習することで,相対的により意識的な処理と,より自動的な処理を参加者内で同時に検討する。これまでの研究から,虚再認は意識的な側面に影響されることが明らかとなっている。そこで本研究では,意識的に忘れることを要求する指示忘却の影響を検討した。実験の結果,これまでの実験と同様に,意識的な処理によって虚再認が増加することと自動的な処理も影響していることが追認された。しかし,指示忘却教示の影響を見ることはできなかった。指示忘却教示はDRMパラダイムにおける虚再認の減少に有効ではないと考えられる。ただし,指示忘却をうまくできなかったという内省報告も多く,さらなる検討が必要である。
  • 大塚 幸生, 東 亮太, 齋木 潤
    セッションID: P2-11
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,統計的規則性の学習が顔刺激の情動情報に基づいて生じるのかを検討した。実験参加者は,幸福,怒り,嫌悪,悲しみ,驚き,恐怖に属する6つの情動顔,および中立顔を用いて作成された刺激列を観察した。刺激の連続は,2つの顔が常に同一の順序で呈示されるペアで構成され,情動顔からなる情動条件,中立顔からなる中立条件が設定された。その後,学習フェイズで呈示されたペア,学習フェイズでペアとしては呈示されなかったfoilを対呈示し,強制選択によるfamiliarity判断を行った。実験の結果,情動条件,中立条件ともに,foilよりもペアの方がfamiliarityが高いと判断された。しかしながら,情動条件,中立条件の間で有意な差は見られなかった。本研究の結果,顔刺激に基づいて規則性を学習できることが示された。しかしながら,情動情報ではなく顔の特徴情報に基づいて規則性を学習していた可能性が考えられる。
  • ――解釈レベルと検索誘導性忘却――
    小林 正法, 池田 賢司, 服部 陽介
    セッションID: P2-12
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,解釈レベルの違いが検索誘導性忘却に影響するかどうかを検討した。検索誘導性忘却とは,ある記憶の検索が他の関連する記憶の抑制を導く現象である。解釈レベル理論から,高次解釈(e.g., Why思考)では関連付け符号化,低次解釈(e.g., How思考)では項目特定的な符号化を導くとされている。学習項目を関連付けることが検索誘導性忘却を減少するという知見から,本研究では高次解釈を行った場合,検索誘導性忘却が生じないと予測した。実験1,2を行い,得られた検索誘導性忘却効果を統合したメタ分析を行った。分析の結果,低次解釈群では検索誘導性忘却が生じたが,高次解釈群では生じなかった。このように,本研究は学習に直接影響しない操作である高次解釈(Why思考)が,検索誘導性忘却を減少させることを初めて明らかにした。
  • 仙田 恵, 青島 由樹, 中村 紘子, 川口 潤
    セッションID: P2-13
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    ノスタルジアはその喚起の手法によって個人的ノスタルジアと社会的ノスタルジアの2種類に分けられる。近年,個人的ノスタルジアについては心理的健康を保つ役割が明らかになるなど,心理学の研究対象として多く取り上げられてきた。だがその一方で,社会的ノスタルジアについては心理学的に実証的な研究がほとんどなされていない状況である。本研究ではこの2種類のノスタルジアについて,喚起後の向社会的行動への影響の測定を通して比較検討することを目的とした。そのため,まず社会的ノスタルジア喚起の刺激を作成し,その後個人的ノスタルジア条件・社会的ノスタルジア条件・統制条件を設定して,喚起による向社会的行動への影響を調査した。その結果,援助行動への影響に差は見られなかったが,2つのノスタルジア間で罰行動において違いが見られた。
  • 林 美都子
    セッションID: P2-14
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    林・斎藤(2013)は、懐かしさを感じさせる音楽を用いて実験を行い、懐かしさは楽しくリラックスした擬似的なまどろみ状態をもたらすため、認知的作業の活動が低下するというNEMURICO(Nostalgic Enhancements Make Us in a state of Relief in an Inactive COgnition)仮説(林・斎藤,2013)を提唱した。本研究ではこの仮説を検討するため、昨日を思い出させた非懐かしさ群と小学校時代を思い出させた懐かしさ群それぞれに、思い出す前後に1ケタの足し算課題を2分間ずつ行わせ、その計算量を比較した。その結果、思い出す前の両群の計算量には差がないが、思い出した後では、懐かしさ群のほうが非懐かしさ群よりも計算量が少ないことが示された。すなわち、記憶に基づく懐かしさによっても認知的活動が低下することが示され、仮説の適用範囲が拡大された。
  • 若齢者と高齢者への質問紙調査による検討
    秋山 学, 清水 寛之
    セッションID: P2-15
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    若齢者と高齢者を対象に記憶特性質問紙(MCQ)の質問項目を含む質問紙を用い,購買満足と自伝的記憶の関連を検討した。調査参加者は,購買に関するもっとも深く記憶に残る印象的な出来事を一つ選んだ。そうした出来事の記憶特性は,主に調査参加者の年齢や購買満足との関連において検討された。若齢者として大学生394 名,高齢者として高齢者大学の学生207名による質問紙データが分析された。若齢者においては,購買満足が高まると,時間的・空間的情報に関して,鮮明な出来事と感じるようになった。しかしながら,高齢者においては,不満足な購買の出来事に関しても,満足な購買に関する出来事と同様に鮮明に想起され,その出来事には意味や意義を感じていた。これらの結果は自伝的記憶における購買行動に関する更なる研究の必要性を示唆している。
  • 池田 和浩, 佐藤 拓, 荒木 剛, 菊地 史倫
    セッションID: P2-16
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、個々人の自伝的記憶の語り直しに関するポジティブな信念が、日常的なしあわせ感への認識にどのように影響するのかを明らかにした。大学生278名は語り直しに関するポジティブな信念尺度(20項目)および幸福感尺度33項目に回答した。分析の結果、語り直しの信念は、記憶を語ることによる心理的効果の認識に関する“効用感”と、語り直しを行うことへの責任感に関する“道義的信念”の2因子から構成されることが確認された。しあわせ感については“好奇心”“些細な幸せ”“全体的満足感”の3因子に分かれた。また、語り直しの効用を高く維持することと、語り直しの道義的信念の高さは、相反的に全体的なしあわせ感に影響を与えていた。つまり、語り直さねばという語り直しへの責任感がしあわせ感を減少させると推察される。このことは語り直しの効果が、語り手のパーソナリティのなかのある種の楽観性に影響を受ける可能性を示唆する。
  • -日常記憶質問紙(EMQ)による検討-
    清水 寛之, 金城 光
    セッションID: P2-17
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は、日常記憶質問紙(the Everyday Memory Questionnaire, EMQ)を用いて、成人期における日常記憶の自己評価に関する成人発達的変化のパターンを明らかにすることである。19-25歳の若齢者99名,38-55歳の中年者97名,63-75歳の高齢者103名が本調査に参加し、日常生活における記憶活動の忘却や記憶失敗に関する28の記述文のそれぞれに対して「最近6か月で1回もない」から「日に1回以上」までの9件法で発生頻度を評定することが求められた。その結果、調査参加者の評定値は、(a)若齢者群=中年者群=高齢者群,(b)若齢者群>中年者群>高齢者群,(c)若齢者群=中年者群>高齢者群,(d)若齢者群>中年者群=高齢者群、の主に四つのパターンに分かれることが示された。
  • 菅谷 奈津恵
    セッションID: P2-18
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    形態素の処理を検証したプライミング実験では、接辞つきの語が、それぞれの形態素に分解されるかどうかが検討されている。語幹と活用語尾が別々に心的辞書に貯蔵され処理されるならば、過去形を呈示した場合に各形態素が活性化され、基本形に対する反応が促進されると考えられる。本研究では、テスト条件(過去形プライム)と同一語形をプライムとした場合(同一条件)、関連のない語をプライムとした場合(非関連条件)の3条件を設定し、語彙性判断課題を行った。対象者は大学生15名で、刺激には活用規則の複雑さとタイプ頻度の異なる動詞3タイプ(eru, ru, ku)を用いた。反応時間を分析した結果、動詞タイプによる違いは見られず、弱いプライミング効果(同一>過去形>非関連)が確認された。したがって、過去形を呈示された場合には語幹と活用語尾への分解が行われるが、同時に心的辞書には活用形自体も貯蔵されていることが推測される。
  • 千葉 元気, 都築 誉史, 相馬 正史
    セッションID: P2-19
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    多属性意思決定において,非合理な選択を促す文脈効果として,妥協効果と魅力効果をあげることができる。 ストループ課題などにより自我消耗を引き起こすパラダイムを用いた研究では,自我消耗効果により妥協効果は減少し,魅力効果は増加することが示されてきた。また近年,自我消耗を引き起こす課題への適応が自我消耗効果を打ち消すことが示唆されている。本研究では文脈効果の生起プロセスについて詳細に検討するため,自我消耗と適応の操作を行い,意思決定課題中の眼球運動の測定を行った。実験の結果,妥協効果群では各条件で停留割合に差は見られなかったが,魅力効果群では各条件で選択率と対応する停留割合が示された。したがって,自我消耗は魅力効果群において非補償的な情報探索を促し,選択率へ影響を及ぼすが,適応はその影響を打ち消し両文脈効果群で補償的な情報探索と選択を促すと考えられる。
  • 海老原 聡子, 行場 次朗
    セッションID: P2-20
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    さまざまな形容詞について、「もの」「人」「時間」「空間」という認知の基本的な概念カテゴリーを修飾するのにどの程度適しているのか(適合度)を、形容詞が各概念カテゴリーを修飾した表現の理解度として測定した。さらに、特定の概念カテゴリーを修飾したときにのみ理解度が高くなる形容詞についてモダリティ・ディファレンシャル法を用いて感覚関連性を測定し、クラスター分析をおこなった。その結果、「もの」と「空間」、「人」と「時間」を修飾したときに理解度が高くなる形容詞がそれぞれ類似した感覚関連性をもつことが示された。また、前者には後者よりも全体的に強い感覚関連性が見られた。
  • 宇野 智己, 奥村 安寿子, 河西 哲子
    セッションID: P2-21
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    助数詞は対応する名詞の意味的カテゴリーを規定する意味的性質だけでなく,主要部として名詞句を要求する統語的性質も持つ。しかし,これまでの事象関連電位を用いた研究では,単語の対提示された名詞と助数詞の照合過程が意味的処理のみに依存することが示唆されている。本研究は文中に提示された助数詞と名詞の照合過程が,意味的処理と統語的処理のいずれに依存するのかを検討した。結果として,先行する助数詞と対応しない名詞句が提示された時,意味的統合処理を反映するN400に加え,文構造の処理過程を反映するP600,及び刺激提示後200 ms前後に前頭部に分布する陽性電位が惹起された。このことは,助数詞と名詞の照合過程において,課題状況によって異なる処理が関わることを示唆する。また,本研究で観察された前頭の陽性電位はこれまで報告されておらず,助数詞特有の何らかの処理を反映するかもしれない。
  • 中嶋 友紀, 大友 康輝, 柴田 寛
    セッションID: P2-22
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    物品の視覚情報と触覚情報から思いつくことばを表出する実験を行い、各感覚モダリティからことばを喚起するときの情報処理過程を検討した。視覚条件では目の前の物品を見て思いつく単語をできるだけたくさん答えてもらった。触覚条件では物品を触っている間に思いつく単語を答えてもらった。視覚条件では色彩と運動に関することば、触覚条件では材質に関することばが多くみられた。ことばの反応カテゴリの表出順位を調べたところ、視覚条件では色彩に関することば、触覚条件では材質に関することばが名称のことばの前後に表出される割合が高かった。これらの結果からは、物品の特徴が脳内でそれぞれどのような情報と繋がっているかは、感覚モダリティによって異なることを示唆する。視覚情報の入力では色彩と名称に関することばのつながりが、触覚情報の入力では材質と名称に関することばのつながりが強いのではないかと考えられる。
  • 新国 佳祐, 安永 大地
    セッションID: P2-23
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,一時的に統語構造の曖昧性が生じるため,一般に処理の際により多くの認知的負荷がかかるとされる日本語関係節構文の処理において,そのような曖昧性の解消を促進すると考えられる意味的情報および読点(カンマ)の効果について,文処理研究においてこれまでほとんど用いられることのなかった瞳孔径を指標として検討した。瞳孔径は高度な認知的処理にかかる負荷の量を直接的に反映して変化することが知られている。実験の結果,意味的情報・カンマがいずれも無い条件と比較して,意味的情報・カンマのいずれかもしくは両方が有る条件では曖昧性が解消される領域での瞳孔径の変化量が小さく,これら二つの情報はそれぞれ曖昧性の処理にかかる認知的負荷を軽減させる効果をもつことが示された。また,意味的情報とカンマの間の交互作用が確認され,我々は少なくとも処理水準の異なるこれら二つの情報を独立して用いていないことが示唆された。
  • 日本語が第二言語話者の場合
    福田 由紀
    セッションID: P2-24
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    福田(2012a,b)は,短歌や俳句を特徴付けている五七調のリズムを含んでいる文とそうでないリズムを持った文の再生率を比較した結果,五七調の文の方が非五七調の文よりも,項目でも文でも再生成績も有意に高いことを示した。また,聴覚的に提示された文を覚えている過程で,五七調のリズムを含む文の条件では左脳が優位に働き,非五七調のリズムの条件では右脳が優位に活性化していた(福田,2013)。つまり,日本語母語話者の暗唱の材料として,五七調の材料の方が適している。では,第二言語話者も母語話者と同様に,脳の活性状態が材料のリズムによって影響されるか,NIRSを使用して本研究で検討をした。その結果,母語話者を対象とした場合と異なり,第二言語話者では,五七調条件でも非五七調条件でも言語脳である左脳の働きが活性化されていた。第二言語話者は,まず,言葉の意味に認知処理を割き,準言語的な情報まで処理資源を割り当てることができないと考えられる。
  • 秋元 頼孝, 杉浦 元亮, 鈴木 瑞恵, 野澤 孝之, 塙 杉子, 宮澤 志保, 川島 隆太
    セッションID: P2-25
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    我々は、円滑な人間関係を確立・維持するために言語的配慮(ポライトネス)を行っている。ポライトネスには、他者に邪魔されたくないという欲求に配慮する方略(ネガティブポライトネス)と、他者に認められたいという欲求に配慮する方略(ポジティブポライトネス)の2方向の方略がある。本研究では、fMRIを用いて発話産出におけるポライトネスの神経基盤を検討した。実験参加者は、MRIの中で、日常場面で些細な失敗をした架空の友人に対して、 (1)ポジティブポライトネスを用いる、(2)ネガティブポライトネスを用いる条件、(3)ポライトネスを用いない、のいずれかの条件で発話の産出を行った。その結果、ネガティブポライトネス特異的な領域として左眼窩前頭皮質前部および右眼窩前頭皮質後部を、ネガティブポライトネス特異的な領域として右扁桃体を、両方のポライトネスに共通して関与する領域として右外側眼窩前頭皮質後部を同定した。
  • 岡 隆之介, 楠見 孝
    セッションID: P2-26
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    テキスト読解時に似通った構造を持つ文が繰り返され、それが崩されることによって、面白さが生じることが明らかになっている。こうした面白さを喚起するテキストの構造を、繰り返し-崩壊構造(RBP構造)というが、RBP構造のテキストがいつ面白さを喚起しているのかは明らかになっていない。本研究では、RBP構造のオチの文において先行テキストの規則を発見するために面白さが喚起されるという仮説を立てた。参加者はテキストを一文ずつ読み、その後にテキストの面白さを評定した。呈示するテキストはイベントの回数が操作されており、参加者は繰り返し-崩壊(2回以上)・対照(1回)・オチのみ(なし)の3条件のテキストを1文ずつ読んだ。実験の結果、繰り返し-崩壊のテキストがもっとも読解時間が長かった。このことから、RBP構造文においてオチの文で先行するテキストの規則を発見している可能性が示唆された。
  • 空書と漢字構成課題
    板口 典弘, 山田 千晴
    セッションID: P2-27
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,空書行動が漢字構成課題に及ぼす効果を検討した。空書が科学的に“発見”されてから30年が経ったが,そのメカニズムは未だ解明されていない。そこで本研究では空書が認知処理に与える効果を再検討した。実験では,従来用いられてきた空書許可条件,不許可条件に加え,無関係な指運動を行う統制条件を設定した。実験1では,漢字構成パーツを同時に提示し,刺激提示時間を1秒,3秒,10秒とした。実験2では,漢字構成パーツを継時的に2秒ずつ提示した。実験3では,佐々木・渡辺(1983)と同じ刺激・提示方法・回答時間を設定し実験をおこなった。実験の結果,いずれの実験においても,空書許可条件が他の条件よりも正答数と反応時間において有意に上回ることはなかった。本実験結果は,少なくとも現代の若年者においては,空書行動が漢字構成課題に対して促進的な効果を及ぼさないことを示唆した。
  • 折り図作成プロセスの検討
    丸山 真名美
    セッションID: P2-28
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は、三次元変換イメージをどのように形成するのかとそのイメージを2次元にどのように表現するのかを検討することであった。被験者は、工学研究者で、日常的に2次元で表示されたものを立体イメージに変換することを行っているものであった。顔の白い奴さんという、被験者がこれまでに見たり折ったりしたことのない折り紙作品を提示し、折り図を作成するよう求めた。被験者は、よく知られている一般的な奴さんをおることには熟達していた。その結果、顔の部分を白くすることを最優先にし、その部分から作成し、残りの部分は目指す形にすることが可能になるように2ステップ先の形を想定して、頭の中で折り紙を操作しながら折り紙をおっていったこと、折り図作成の際には実際に折ったプロセスを2次元でも分かりやすいように工夫されたことが示された。ある形を作成ためには、数ステップ先の形をイメージすることが重要なことが示された。
  • 板垣 文彦, TURK DAVE
    セッションID: P2-29
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    対象の左側を過大視する傾向(pseudoneglect)は視覚的線分と心的数直線の両方で生じるが、線分2等分課題(LB課題)における分割点の左右への逸脱傾向と乱数生成(RNG)課題における平均マグニチュードからの逸脱傾向には対応関係がないことが指摘されている。先行研究では線分に補助斜線を加えて左右に奥行のある3次元情報を付与したLB課題で、視空間と数表象空間に関連が生じることを明らかにした。本研究では男が左方向、女が右方向への奥行きへの偏好があるという知見に基づき、数表象空間の3次元性について男女別に検討を行った。その結果、男性では、左方向の奥行を付与したLB課題でのみRNG課題の数マグニチュードとの関連が認められたが、その関連は空間の左右と数の大小の逆転した関連であった。女性については明確な対応関係は認められなかったが、数表象空間における3次元性に男女差があることが示唆される。
  • 外的刺激による注意の焦点化への妨害からの検討
    大塚 翔
    セッションID: P2-30
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,外的刺激によりマインドワンダリング(MW)に気づく(メタ覚知)仕組みを,外的刺激による注意の焦点化への妨害に着目し,検討した。実験では,参加者に次々に現れるターゲットの呈示位置を同定させ,その反応時間を測定した。また,この課題中,目立つ視覚刺激(キュー)を疑似ランダムなタイミングで呈示した。そして,キューによりMWに気づいた時を抽出するため,課題中,無関連思考の生起に気づいた時にそれを自己報告させ,一方で,キューを呈示してもMWに気づかなかった時を抽出するため,40%のキュー呈示後に,プローブ画面によりMW生起の有無をt尋ねた。実験の結果,キュー呈示後にMWの自己報告があった時でのみ,キュー呈示直後の反応が遅延していた。この遅延は,外的刺激により現在の心的活動(MW)への注意の焦点化が妨害されたことを反映しており,この妨害がマインドワンダリングのメタ覚知を促した可能性を示唆している。
ポスター発表3 知覚・感性,感情・動機
  • 寺本 渉, 角谷 友朗, 積山 薫
    セッションID: P3-1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    身体近傍空間の加齢変化を明らかにするため,視触覚干渉課題を用いて視触覚相互作用の生じる身体からの距離が若齢者と高齢者でどのように異なるかを調べた。触覚刺激は右または左手に提示し,同時に視覚刺激を触覚刺激と同側または反対側の様々な距離(近:5cm, 中:37.5cm,遠:70cm)から提示した。被験者には視覚刺激を無視しつつ,触覚刺激が左右どちらの手に提示されたかを素早く回答するよう教示した。ベースラインとして触覚単独条件も行ない,各視覚条件と比較した。その結果,若齢者群では近距離条件でのみ干渉効果が見られたのに対して,高齢者群では近および中距離条件で干渉効果が見られた。さらに,運動機能検査として行ったTimed Up & Go (TUG)テストの成績によって2群に分けて分析を行ったところ,高齢者の高成績群では近距離条件でのみ干渉効果があったのに対し,低成績群では,近および中距離条件で干渉効果が見られた。一方,若齢者はTUG成績によらず近距離条件のみで干渉効果があった。以上の結果は,視触覚相互作用が生起する身体からの距離とTUGで測定される運動機能との間には何らかの関係がある可能性を示唆する。
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