日本認知心理学会発表論文集
日本認知心理学会第12回大会
選択された号の論文の156件中101~150を表示しています
ポスター発表3 知覚・感性,感情・動機
  • 齋藤 五大, 行場 次朗
    セッションID: P3-2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    本研究では,自らの手を中心とした座標系情報が双安定性をもつ視覚運動知覚に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。2種類の運動物体が水平方向に交差して通過(stream)、あるいは衝突して反発するような見え方(bounce)のどちらにも知覚可能である刺激を用いて,遭遇点の真下に置いた自分の手掌の向きがそれらの見え方を変容させるかどうかを検討した。その結果,左右の手掌を合わせた条件時のみに反発知覚の頻度がそれ以外の条件に比べて有意に上昇した(実験1)。この現象が視覚情報のみで生じるかを調べるため、ラバーハンドを用いて検討したところ,ラバーハンドの手掌の向きは効果を持たないことが示された(実験2)。一方、遭遇点真下に置いた自らの手を黒布で覆い隠しても,実験1と同様に手掌の向きの効果があらわれた(実験3)。これらの結果から,左右の手掌を合わせた時の自己受容感覚がこの効果に重要な役割を担っていることが示唆された。
  • 光藤 宏行
    セッションID: P3-3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    空間知覚における触覚情報は身体部位を越えて統合されているかを検討するために,本研究では両手による幅の判断に触覚パタンが影響するかを検討した。テスト物体は,手のひらとの接触面が縞状になるように要素を配置した3次元物体であり,要素の間隔を操作した。実験参加者は,両手を真っすぐ平行にした状態で2つの物体に触れ,どちらの物体が幅広く感じられたかを回答した。比較物体の方がテスト物体より幅広いと判断された割合を計算し,テスト物体と比較物体の幅が等しく感じられる主観的等価点を計算した。その結果,テスト物体の種類は主観的等価点に影響を与えなかった。したがって,両手で物体の幅を判断するときには,接触面のパタンの要素間隔の影響は見られず,触覚パタンの両手間の情報統合は起こらないと考えられる。
  • 杉島 一郎, 松田 瀬菜
    セッションID: P3-4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    本研究は,左右の指示をされてもとっさに反応できなかったり,場所を左右で答えるのが困難であったりする左右識別困難について,その原因として認知スタイル(言語優位,視覚優位)が関係あるのではないかとして質問紙による調査を行ったものである。質問紙は谷岡・山下(2005)の左右識別困難質問紙と荒木・木村(2005)のVVQ日本語版,および八田・中塚(1975)の利き手検査を用い,加えて左右識別能力への自信を2件法で質問したものである。99名の大学生を対象に調査を行った結果,左右識別能力に関して性差と認知スタイルの影響がみられた。男性では言語が優位ではなく視覚優位のものほど左右識別が困難で,女性では言語が優位でない方が左右識別困難になりやすいということが示唆された。
  • 平賀 茉莉, 安田 孝, 髙木 幸子, 田中 章浩
    セッションID: P3-5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    本研究では,上から見た顔や下から見た顔(以下,上下回転顔)において部分処理と全体処理のどちらが優位であるかを検討した。実験では,先行刺激である上下回転顔に続いて提示される後続刺激の正面顔が同じか・違うかを参加者に判断させた。後続刺激はモデルの部分情報である「目のサイズ」と全体情報である「目の配置」を操作したものであった。実験の結果,参加者は下から顔を見た時には後続刺激である正面顔の目が大きく操作された顔を同じだと判断し,上から顔を見た時には正面顔の目が小さく操作された顔を同じだと判断する傾向が確認された。また,先行刺激である顔の角度の上下によって後続刺激である目の配置が変化した顔に対する反応には有意差が見られなかった。よって,上下回転顔においては全体処理よりも部分処理の方が優位であることが示唆された。
  • 上田 彩子, 井関 龍太, 蔦森 英史, 勝原 摩耶, 熊田 孝恒
    セッションID: P3-6
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    環境イベントに対応した適切な運動を生成するうえで,視覚運動協応は重要である.上田ら(2013)は,視覚運動協応のメカニズムを検討する代表的な課題である,運動する目標(ターゲット)を入力装置でコントロールできる自己(エフェクター)で追跡する課題を用いて,ターゲットとエフェクターの上下関係の逆転がトラッキング成績を低下させることを示し,その影響が,トラッキングに必要な参照点の検出を要求する,空間的に広がりのあるオブジェクトを用いた場合に最も顕著であることを示した.本研究では,逆転効果が視覚運動協応場面に特有の現象かどうか,オブジェクト運動画面の観察中に自己が操作できないエフェクターのターゲットに対する相対位置を判断する非視覚運動協応課題を用いて検討した.その結果,空間的に広がりのあるオブジェクト条件で,位置の逆転が相対位置判断成績を低下させなかったため,逆転効果は視覚運動協応場面に特有の現象と判断した.
  • 小代 裕子
    セッションID: P3-7
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    我々は日常生活において,恐怖や嫌悪などネガティブな感情を持つものに対して瞬間的に注意を引きつけられたり,注意をそこから逸らせなくなるといった現象を体験することがある。ヘビやクモなど,一般的に人の恐怖となる刺激を用いた実験は数多く存在するが,人によって恐怖の度合いが異なる刺激を用いた実験は少ない。そこで本研究では恐怖刺激として甲殻類の視覚刺激を用い,認知の個人差を調べた。課題にはGo/No-go課題を用い,反応時間と誤答率を分析した。その結果,恐怖群は統制群よりも甲殻類の検出に優れていること,認知の個人差は周辺情報の影響を受けにくいことが分かった。
  • 吉岡 雄一, 満田 隆
    セッションID: P3-8
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    2枚の画像を見比べて好きな画像を選択する際、視線が徐々に選択する画像に偏り、最終的には選択側に視線が向くことが報告されている。この現象は、音楽のフレーズを聴き比べる場合にも見られることが報告されていることから、感覚の種類に関わらずサンプリング動作が選好形成に関与している可能性がある。本研究では、触覚を用いた選好判断においても同様の現象が生じるかを検証するために、2枚のハンカチの触り心地による二者択一実験を行った。実験の結果、好きなハンカチを選ぶ課題では最後に選択側のハンカチに触れる傾向があったのに対して、嫌いなハンカチを選ぶ課題ではそのような傾向は見られなかった。視覚や聴覚の選好判断と同様に、触動作が触覚の選好形成に影響している可能性が示唆される。
  • 満田 隆, 阪口 遼平
    セッションID: P3-9
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    画像を用いた選好判断において、顔画像では見慣れた画像(親近性画像)が好まれる傾向があるのに対して、風景画像では初めて見る画像(新奇性画像)が好まれる傾向がある事が報告されている。本研究では、嫌いな画像を選択する課題における親近性と新奇性の影響を調べる事を目的として、選好判断と選嫌判断の比較実験を行った。その結果、嫌いな顔画像を選ぶ場合には選好判断とは逆に新奇性画像が選ばれる傾向が生じた。一方、嫌いな風景画像を選ぶ場合には親近性画像と新奇性画像の評価値に有意な偏りは生じなかった。嫌いな画像を選ぶ課題においても画像カテゴリによって親近性と新奇性の影響が異なることが示唆された。
  • 二重高速逐次視覚提示課題を用いた検討
    柴田 芽衣子, 日高 聡太
    セッションID: P3-10
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    これまで、形が持つ複雑さによって注意処理速度が異なることが報告されている。しかし、複数の視覚的特徴が形の構成要素となる場面で、特徴間で注意処理が異なるのかについて検討されていない。本研究は、二重高速逐次視覚提示課題を用いて、色と傾きの特徴が形の知覚に関わる場面での注意負荷の違いについて検討した。様々な色と傾きを持って高速逐次提示される数字から2つの文字を検出させる場面では、文字が連続提示されかつ傾きが不一致な場合に正答率が低下した(実験1)。一方、様々な色と傾きをもって高速逐次提示される文字から、特定の色や傾きを持つ文字を報告させる場面では、特定の傾きを持つ文字を報告する場合に正答率が低下した(実験2)。色と傾きの特徴が課題非関連(実験1:形が検出手がかり)および課題関連(実験2:色と傾きが検出手がかり)の両方の場面で、色よりも傾きの方が処理に多くの注意を必要とすることが示唆された。
  • 三浦 大志, 伊東 裕司
    セッションID: P3-11
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    リベレーション効果は、アナグラムなどの認知的課題を行った直後に再認判断を求められると「old (学習フェイズで見た)」と判断しやすいという効果であり、これまで本効果は、記憶判断を伴う課題でのみ確認されてきた。しかしリベレーション効果が、メタ認知が引き起こす判断基準のシフトであるという理論的背景を鑑みると、本効果が記憶判断以外でも生起する可能性があると考えられる。そこで本研究では、視覚探索課題においてリベレーション効果が生起するかどうかを検討した。54名が参加した実験の結果、アナグラムが視覚探索課題の成績を低下させるとメタ認知した参加者ほどリベレーション効果が大きいという、メタ認知とリベレーション効果の相関が示された。視覚探索課題のような知覚的な課題においても、メタ認知がリベレーション効果を引き起こす可能性があることが示唆された。
  • 新村 知里, 草野 萌, 田中 章浩
    セッションID: P3-12
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    他者の顔を魅力的だと判断するとき、笑顔などの表情の魅力と、顔の形態的魅力のどちらが主要因となっているのだろうか。本研究では、モデルと実験参加者が女性同士の場合に、顔の形態と表情が魅力および印象の評価に及ぼす影響について検討した。笑顔の表出強度は2種類設定した。実験の結果、中立と微笑み表情では美人顔と中間顔の間に魅力に差が生じるが、喜び表情では魅力に差が見られなかった。ただし、微笑み表情のように表出強度が低いときは顔の形態の影響が強いことが示された。また、喜び表情と中立表情の魅力の違いと、中立表情時の顔の形態(美人顔と中間顔)による魅力の違いの効果量を比較した結果、喜び表情による魅力変化のほうが、顔の形態による魅力変化より大きいことが明らかとなった。本研究の結果は、女性同士の場合には顔の形態より表情の方が魅力評価に大きな影響を及ぼすことを示唆している。
  • 遠藤 光男
    セッションID: P3-13
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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     顔の順応効果は順応時の顔と順応後に評定する顔が異なっても生起するが,同一の場合の方が強いことが示されている。今回は,顔の順応効果に対する単純接触効果の影響を検討する目的で,歪曲顔への順応による正常性と魅力の知覚の変化を順応時の歪曲顔と順応後に評定する顔が同一の場合(接触条件)と異なる場合(非接触条件)で比較した。その結果,正常性に対する順応の効果は順応時間(2分,4分)にかかわらず接触条件で有意に強くなったが,魅力に対する順応の効果は4分条件でのみ接触条件で有意に強くなった。したがって,顔順応効果における単純接触効果は,魅力よりも正常性の評定の方に感受性が強いことや,魅力に対する単純接触効果には正常性(平均性)に対する単純接触効果が介在していることが示唆された。
  • 岸本 優里, 有本 早織, 米本 幸代, 高岡 素子, 矢野 円郁
    セッションID: P3-14
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    食べ物の味の弁別や美味しさの判断は,主に味覚によるが,嗅覚,触覚,視覚,聴覚といった他の感覚からの影響も受ける.本研究では,視覚が味覚に与える影響について,よく熟考するタイプか否か(熟慮性/衝動性)や,周囲の影響を受けやすいタイプか否か(被影響性)という個人特性によって,影響の受けやすさが異なるかどうかを調べた.認知的熟慮性および被影響性を測定する質問紙調査を行い,その結果をもとに実験参加者を選出し,ゼリーを用いた味覚判断の実験を行った.熟慮性が高く周囲の影響を受けにくい人では,ゼリーの色にかかわらず,全員が正しい味を回答できたのに対し,衝動性が高く周りの影響を受けやすい人では,見た目の色がゼリーの味の感じ方に影響した人が半数いた.この結果より,衝動的で被影響性の高い人は,味覚判断において視覚情報の影響を受けやすい(味覚と視覚の感覚統合が生じやすい)という可能性が示唆された.
  • 日高 聡太, 下田 和優
    セッションID: P3-15
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    これまで,色が味覚,特に甘味の判断に影響を及ぼすことが報告されている。しかし,色の効果が,味覚を「評価・判断」する認知的な側面にのみ影響をおよぼすのか,あるいは味覚を「感じる」知覚的な側面にまで影響を及ぼすのかについては十分検討されていない。そこで本研究は,味覚順応法を用いて,色が甘味の判断に及ぼす影響を検討した。無色の甘味溶液に順応させ,着色した甘味溶液に対して味覚判断を行ったところ,順応前後に関わらず,甘味と主観的に一致する色によって甘味がより強いと判断された(実験1)。一方,着色した甘味溶液に順応させ,無色の甘味溶液に対して味覚判断を行ったところ,色の効果はみられなかった(実験2)。判断対象となる刺激が着色されていた場合には色の効果が生じる一方,着色された刺激によって知覚的な順応効果は変化しなかった。したがって,色は主に味覚対象の主観的な印象や認知的な判断に影響を及ぼすと考えられる。
  • 朝岡 陸, 行場 次朗
    セッションID: P3-16
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
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    聴覚刺激が視覚刺激のオンセットを引きつける時間的腹話術効果がある。本研究では視覚的時間知覚での同様の効果の存在を検討した。参加者は視覚刺激だけか,2個の音に挟まれた視覚刺激が提示され,先行訓練にて学習した基準を基に,視覚刺激の継続時間を「長い」,「やや長い」,「やや短い」,「短い」のいずれかで評定した。その結果,視聴覚統合が生起する時間窓の範囲内でのみ,2個の音に挟まれた視覚刺激の継続時間がそうでない場合より長いと評定された。このため,時間的腹話術効果による視覚的時間知覚の伸長が確認された。また,聴覚刺激と視覚刺激のISIが0の時は,視覚的時間知覚が短縮することも示された。実験2では,実験1の視覚刺激と聴覚刺激を入れ替え,聴覚刺激の継続時間を評定してもらった。その結果,視覚刺激は聴覚的時間知覚に影響しないことが示された。これらの非対称な影響は時間知覚課題における聴覚優位性を支持している。
  • 大住 倫弘, 今井 亮太, 森岡 周
    セッションID: P3-17
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    近年,視覚的身体像を操作するリハビリテーションアプローチが慢性疼痛患者に応用されてきている.しかし,視覚的身体像を操作することによって「不快な身体情緒」が生じてしまうと鎮痛効果が得られにくいことも考えられている.そこで今回,ラバーハンド錯覚手法を応用して,健常者の視覚的身体像を操作した時に惹起される不快な身体情緒が痛みを変化させるのかについて調査した.不快な身体情緒を惹起させるような,「傷ついたラバーハンド」,「毛深いラバーハンド」,「腕がねじれているラバーハンド」を作成した.そして,各ラバーハンドに身体所有感の錯覚を生じさせた時の,不快感および痛み閾値を測定した.その結果,「傷ついたラバーハンド」と「毛深いラバーハンド」に不快感は生じたが,痛みが増悪したのは「傷ついたラバーハンド」のみであった.このことから,痛みという文脈における不快な身体情緒が痛みを変化させることが明らかとなった.
  • 池田 華子, 渡邊 克巳
    セッションID: P3-18
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    周辺視野において複数の対象を見るときに,対象同士が近接していると個々の対象の同定が困難になる.クラウディングとして知られるこの現象は人間の関節運動のみから構成されるバイオロジカルモーション(BM)刺激の歩行方向の判断においても生じることが知られている.本研究ではターゲットBMと妨害BMの動作の一致不一致がクラウディングに及ぼす影響を検討した.その結果,BMの方向を判断する場合は動作が一致しているときに3体のBMが異なる方向を向いているとクラウディングが強く起こった.このことから近接する同一動作のBMはBM方向判断を困難にさせることが示された.しかしながらターゲットBMの動作を判断する場合には妨害BMとの動作方向の違いによる影響は示されなかった.以上の結果はBMの方向判断と動作判断のプロセスの部分的な違いの存在を示唆すると考えられる.
  • 向井 志緒子
    セッションID: P3-19
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,ロゴに用いられるフォントと商品特性の印象の等価性を共分散構造分析によって統計的に明らかにし,デザイン要素の類似性が評価に及ぼす影響を検討した。先行研究では,類似性は記憶の再生率,視覚的処理の活性化,対象への嗜好を高めると指摘されている。印象評価調査では,フォント,お茶飲料それぞれ4種について,SD法による印象評価得点を用いて,両者間の印象の等価性を検討することを目的とした。各形容対に等値制約を課して分析した結果,6項目に共通性が見出され,共通性が認められた項目得点より類似性を設定した。デザイン評価実験では,調査と同様のお茶飲料とフォントを用いて実験刺激を作成した。美的印象項目に可読性を加えた質問紙に回答を求めた結果,類似性が高いほどデザイン評価が高まった。本研究は,先行研究が示した類似性の効果に相似するとともに,類似性を共分散構造分析による設定が可能であることを新たに示唆した。
  • 社会心理的要因に関する考察
    北岡 勇紀, 片平 建史, 長田 典子
    セッションID: P3-20
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    自己がイメージする自分の年齢を主観年齢と定義し研究を行ってきた。顔画像を用いた主観年齢の推定課題により,様々な文化で自己若年視の傾向を確認している。この傾向自体は文化によらない普遍的なものである一方で,自己若年視の量には国籍による違いが存在しており,社会心理的要因の影響が考えられる。本研究ではこの可能性を検討するために,主観年齢の推定課題と関係流動性(Yukiら, 2007)の測定を同じ実験参加者に対して実施し,両者の関係を調べた。関係流動性得点,およびYuki et al.に準拠した関係流動性の2因子それぞれについて,年齢層別に各因子と自己若年視量との関係を調べたが,一貫した相関関係は確認されなかった。これらの結果から,自己若年視に影響する社会心理的要因としては,関係流動性が対象とするような個人を取り巻く社会構造レベルではなく,より個人の内的なレベルの特性に注目する必要性が示された。
  • 鈴木 直弥, 寺本 渉, 浅井 暢子
    セッションID: P3-21
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    遠く離れた他者と1つのバーチャル・リアリティ(VR)空間を共有し,共同で作業を行う際には,他者の存在のリアリティ(臨(隣)人感)を高めることが重要である。我々の行った先行研究では,事前に他者(のアバター)とVR空間内でコミュニケーションをとることで臨(隣)人感が高まることが示された。本研究では,その事前コミュニケーションに含まれていた要素のうち,他者の動きに関する情報だけでどの程度臨(隣)人感を高めることができるかを社会的サイモン効果を指標として計測した。実験では,社会的サイモン課題遂行前にVR空間内で他者と十分なコミュニケーションを取らせる条件と,コミュニケーションを行わせず,アバターの動きのみを呈示する条件を設けた。その結果,両条件間の社会的サイモン効果に有意な差異は見いだせなかった。このことは,他者の動き情報が臨(隣)人感生起にとって重要な役割を果たしていることを示唆する。
  • -Navon課題遂行成績・パーソナリティ特性との関連-
    関口 理久子, 山田 尚子
    セッションID: P3-22
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、実行機能質問紙(EFQ)により測定した実行機能の個人差とNavon課題の遂行成績およびBig Fivパーソナリティ特性との関連を検討した。研究の結果、以下2点が示された。第一に、局所処理か全体処理かの遂行方略の切り替えを要求されるNavon課題とは切り替え能力が最も関連があり、特に局所判断でその影響が示された。Navon課題では大域優先性が示されるので、局所判断はより難しく、個人差が認められたと考える。第二に、パーソナリティ特性では、誠実性と注意維持との正の相関は高いが、効率・切り替え・会話維持能力とは相関がなく、切り替えは誠実性以外のパーソナリティ特性と相関を示したことから、EFQは実行機能の異なる認知的機能の側面を測定可能であることが示唆されるが、今後詳細な検討が必要である。
  • ―2種類の評定項目による検討―
    加藤 みずき
    セッションID: P3-23
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,国際的な写真画像のデータベースであるInternational Affective Picture System(IAPS)に対して,2種類の評定項目を用いて感情価および覚醒度の評定を行った。
    従来の評定方法では,参加者が評定している感情が,「刺激の呈示によって喚起される参加者の感情(情動喚起条件)」を評定しているのか,「呈示された刺激の内容に含まれる感情(刺激感情価条件)」を評定しているのかが不明瞭であった。
    そこで,この2種類の感情を評定する項目を設定し,同じ刺激に対して感情価と覚醒度の評定をそれぞれ2回行い,2種類の評定値の関連について検討した。
    その結果,感情価・覚醒度評定の両方で,評定値に正の相関がみられたが,覚醒度評定に関しては,刺激感情価条件の方が,情動喚起条件よりも高い値を示すことが確認された。
  • 中川 小耶加, 三宅 祐美, 風井 浩志, 片平 建史, 長田 典子
    セッションID: P3-24
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    近年学習における満足感や充実感を価値の内面化の指標としての課題価値に関する研究が行われている。そこで本研究ではプロの演奏家ではない者のピアノ練習中の課題価値とフロー体験の関連性について検討する。音楽的素養がある者5名に、課題曲に対し1時間の練習を5回行ってもらった。毎練習前には課題価値測定尺度へ、練習後にはフロー体験チェックリストへの回答を求めた。フロー体験チェックリストと課題価値測定尺度の3因子の相関係数を算出した。課題価値測定尺度の1因子である興味価値とフロー体験チェックリストの全ての因子間にのみ有意な正の相関関係があった(r=.581-.846, p<.01)。本研究では、課題に対し満足感や充実感を感じることで、プロの演奏家ではなくともフロー体験を経験することが示唆された。今後は、興味価値やフロー体験の継続性について検討し、さらに日常生活により愉しみや幸福感を高める課題の検討もする。
  • 栗延 孟, 藤原 健志, 田中 伸之輔, 須藤 智, 原田 悦子
    セッションID: P3-25
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    特に高齢者が情報機器・電気機器を使用する際に観察される「怖がり」行動(どう扱えばいいかわからないから怖くて触れない等の発話や不安に特徴づけられた行動特性)について明らかにするため,その強度をとらえる尺度の攻勢を試みた.郵送法による質問紙調査の結果,作成した9項目の尺度のうち,7項目が「人工物利用に対する怖がり」を反映していると考えられた。その平均評価値は,性差は認められなかったが,年齢については,より高い年代で「怖がり」を示す傾向が認められた。今後,怖がりが人工物利用に及ぼす影響について検討するために,各種のデータとの関係性の分析を行うとともに,怖がりと実際に新奇な人工物を利用する際の時間や操作のエラーなど達成との関連を検討する必要がある。
  • 布井 雅人, 吉川 左紀子
    セッションID: P3-26
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    複数の他者の表情 (喜び・嫌悪) と人数 (1人・2人・4人) および人数情報の違い (割合・絶対数) が選好判断に及ぼす影響について検討した。実験では、ターゲット刺激の周囲に顔画像が複数枚呈示され、その表情が喜びまたは嫌悪に変化した。その際、4枚の真顔画像の内で0人・1人・2人・4人のいずれかが表情を変化させる割合操作と、0人・1人・2人・4人の真顔画像が呈示され、その全ての人物の表情が変化する絶対数操作のいずれかが行われた。その結果、喜びへの表情変化に関しては、割合操作では4人中2人・4人の表情が変化した際に好意度評定が上昇し、1人の変化では好意度評定は上昇しなかった。一方絶対数操作では、1人・2人・4人全ての条件で好意度評定が上昇した。嫌悪への表情変化に関しては、割合操作・絶対数操作のいずれにおいても1人・2人・4人全ての条件で好意度の低下が見られた。
  • 髙木 幸子, 宮澤 史穂, 田中 章浩
    セッションID: P3-27
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は,高次感情についての概念と表出および知覚の間の関連性を検討することであった。本研究では高次感情について,概念構造(研究1),表出(研究2)および知覚(研究3)の3つの側面から,質問紙調査と実験を用いて検討をおこなった。研究1では質問紙を用い,高次感情にどの程度基本6感情が含まれているかを,それぞれ7段階で回答させた。研究2では,参加者に基本6感情をあらわす表情と音声を組み合わせて,指定された感情をもっとも適切にあらわすような発話動画を作成することを求めた。研究3では,参加者に表情と音声の示す感情が異なる表情音声動画刺激を提示し,知覚される高次感情を回答することを求めた。各研究の比較から,本研究で扱った高次感情の少なくとも一部は,基本感情の組み合わせで説明され,概念と表出に類似性があることが示唆された。一方で,高次感情の表出と知覚は必ずしも一致しない可能性が示唆された。
  • 佐々木 恭志郎, 山田 祐樹, 三浦 佳世
    セッションID: P3-28
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    感情は身体空間と連合しており,快感情は上方向へ,不快感情は下方向へのバイアスを身体動作に与えるというような感情による身体感覚の変容が生じる。本研究では,このような身体感覚の変容が,無意識に処理された感情情報でも起こるのかを検討した。感情刺激を意識から除去するために,本研究では連続フラッシュ抑制を利用した。参加者は,感情を喚起する画像刺激 (快,不快,中性) を2500 ms観察した後,画面上のドットをジョイスティックにより任意の位置に移動させることを求められた。刺激呈示条件はマスク有条件とマスク無条件の二種類であった。実験の結果,マスク無条件において,快画像観察後の方が,不快画像観察後に比べて,ドットの平均位置は有意に高かった。一方,マスク有条件ではこのような効果は消失した。これら結果は,身体空間と感情の概念的連合の賦活には,意識的にアクセス可能な感情情報が必要であることを示唆する。
  • ―法廷配置と利き手が生み出す量刑判断バイアス―
    山田 祐樹, 佐々木 恭志郎, 三浦 佳世
    セッションID: P3-29
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    わが国の刑事法廷の座席配置は,法壇から見て右側が検察官,左側が弁護人であることが一般的だが,配置が逆転する事例もある。認知心理学研究では,人間が利き手側に位置する対象には肯定的な,非利き手側の対象には否定的な評価を下すことが知られている。本研究では,この空間認知的性質が刑事裁判の量刑判断に影響を与えている可能性について検討を行った。403名の参加者は裁判風景を模した写真を観察後,2種類の裁判シナリオを読み,被告人の量刑を判断した。写真は,通常配置(右:検察官,左:弁護人),逆配置(右:弁護人,左:検察官),統制配置(位置関係は通常と同様だが検察官と弁護人が外向している)の3種類であった。結果として,右利きの参加者は正配置よりも逆配置の量刑を有意に短く(約1年)見積もることが明らかになった。このバイアスは,参加者が利き手側の弁護人あるいは検察官を肯定的に評価したことに起因すると考えられる。
ポスター発表4 記憶,注意,人格・臨床
  • 大藤 弘典
    セッションID: P4-1
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では空間ワーキングメモリ能力と認知距離の歪みの関係について調べた。実験では、コルシーブロックテストを用いて実験参加者の空間ワーキングメモリ能力が測定された。次いで、彼らは記憶した地図を頼りに、対になった地点間の距離を推定した。2地点の間の通過点数は、0から2であった。推定距離は、空間ワーキングメモリ能力に関係なく、通過点数に応じて増加した。本結果は、先行研究において、視覚ワーキングメモリ能力が高い実験参加者の推定距離では通過点の効果が示されず、視覚ワーキングメモリの能力が低い実験参加者の推定距離では効果が示されたこととは対象的であった。これらの結果は、視覚ワーキングメモリは空間ワーキングメモリと比較して、視覚的に憶えた距離の認知により強く関わるという観点から考察された。
  • 酒井 徹也, 須藤 智
    セッションID: P4-2
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    2つの実験により項目リストの学習中に背景色文脈が切り替わった場合,背景色を手がかりに切り替えの前後を異なるエピソードとして弁別されるか否か,および加齢の影響としてその効果が変化するか否かを検証した。実験1は大学生(N=20)を対象とした学習リスト中のターゲットの干渉とリスト中の前後半部での背景色文脈の異同を要因とした2要因参加者内計画とし,実験2は高齢者(N=34)を対象に,実験1に演算スパンを加えた3要因混合計画とした。実験参加者は8項目からなる学習リストとフィラーリスト(各30試行)を意図学習した。項目リストの提示ごとに再認手がかりを提示し,直近の4項目の中に同じカテゴリーの名詞が含まれていたか否かを判断させた。結果,高齢者においてはリスト学習中に背景色文脈が切り替わることで,再認判断の正確さ,早さを促進すること,若齢者においては正確さを促進しないが反応速度は促進することを見出した。
  • 神谷 俊次
    セッションID: P4-3
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は,不随意記憶の生起頻度とワーキングメモリの諸側面との関係を検討することであった。45人の実験協力者が,はじめにワーキングメモリ検査を受け,その後,不随意記憶現象を的確に把握できるフィールドインタビューに参加した。収集された不随意記憶はその感情価によって快・不快・中立に分類された。不随意記憶の全想起数ならびに感情カテゴリ別の想起数とワーキングメモリの下位尺度得点との相関を求めたところ,ワーキングメモリ能力が低いほど,不随意記憶の生起頻度が高い関係が見られた。とくに,認知能力のなかでも,注意制御能力が不随意記憶の生起の規定要因であることが示唆された。
  • 日隈 美代子, 漁田 武雄
    セッションID: P4-4
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    意味的関連性を持たせた学習刺激を提示し,再認実験を行った。再認判断と確信度評定を同時行った場合でも,正答率と確信度評定の乖離が起こるのかを調べた。実験参加者 (N = 32) は,カセットデッキから聴覚提示される24単語を学習した。学習セットには意味的関連性が持たせてあり,単語提示間隔は,単語の朗読開始から,次の単語の朗読開始までを1.6秒に制御した。5分間の保持期間後に48単語 (旧項目24単語,新項目24単語) の視覚提示による再認判断と確信度評定を行わせた。刺激提示と再認判断,確信度評定には数直線の書かれた冊子を用いた。その結果,学習セットと意味的関連性が高い新項目について,正答率と確信度評定の乖離が生じた。信号検出理論を当てはめて検討すると,確信度評定と正確さの間に乖離は引き起こされないと考えられていたが,さらなる検討が必要であることを示唆した。
  • 山根 嵩史, 中條 和光
    セッションID: P4-5
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,記銘前のメタ認知的な記憶モニタリングである学習容易性(EOL)判断について,Koriat(1997)の手がかり利用仮説における,内在手がかりの利用を検討した。実験では,客観的な特徴であるモーラ数,単語頻度,単語新密度を操作した刺激項目に対して,EOL判断,親密度判断,表記親密度判断,具象性判断を求めた。分析では,EOL判断の評定値を目的変数とし,Step1では客観的な変数を,Step2では全ての変数を説明変数として投入した階層的重回帰分析を行った。その結果,主観的な指標がより強くEOL判断を予測することが示された。記銘項目に内在する性質に関する知識がEOLに関与することを示すこの結果は,Koriat(1997)の手がかり利用仮説が,EOL判断にも適用できることを示している。
  • 符号化時,検索時ともに行為の実演を行うことによる検討
    長 大介, 藤田 哲也
    セッションID: P4-6
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    Jacoby, Shimizu, Daniels, & Rhodes(2005)は再認テスト時にテスト項目が特定の情報源で提示されたかどうかに基づいて判断した場合,学習項目だけでなく新項目にも処理水準効果が生じることを報告した。長・藤田(2012)は刺激材料として行為文を用いて,符号化時に行為の実演を操作したところ,処理水準効果の持ち越しは見られなかった。この結果は検索時に行為を実演したことで,検索時の再認判断が容易になったため,処理モードを再現せずに再認判断を行ったと考えられた。そこで本研究は検索時にも行為の実演を求めることで,処理モードが再現されやすくなるかどうかを検討することを目的とした。その結果,学習項目と新項目の両方に処理水準効果が見られた。今後は符号化時と検索時の処理の一致と検索時の実演による示差性の減少によって処理モードを再現したかを明らかにする必要がある。
  • 検索時のみに行為の実演をすることによる検討
    藤田 哲也, 長 大介
    セッションID: P4-7
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    Jacoby, Shimizu, Daniels, & Rhodes(2005)は再認テスト時にテスト項目が特定の情報源で提示されたかどうかに基づいて判断した場合,学習項目だけでなく新項目にも処理水準効果が生じることを報告した。長・藤田(2014, 前件発表)では符号化時と検索時の行為を実演した場合,新項目に処理水準効果が生じることを報告した。これは符号化時と検索時の処理が一致した,もしくは検索時の実演が符号化時の実演による示差性を消失させ,処理モードを再現したかによって説明される。そこで本研究では長・藤田(2014, 前件発表)の示した結果が,符号化時と検索時の処理が一致したことによるものか,それとも検索時に実演することの効果なのかを,検索にのみ行為を実演することで検討した。その結果,新項目に処理水準効果が生起し,長・藤田(2014, 前件発表)は検索時に実演する効果である可能性が示唆された。
  • 粗大協応運動能力との関連
    蒔苗 詩歌, 山崎 圭子, 河西 哲子
    セッションID: P4-8
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    近年,心的回転課題における身体化認知 (embodied cognition)の効果が,手や足を刺激とした心的回転課題成績が対応する部位と運動能力の相関から示されている。本研究は,心的回転課題における身体化認知の効果と粗大協応運動能力の関わりを検討した。立方体図形に頭部がある条件とない条件での心的回転課題成績を比較するとともに,日本版BCT検査により粗大協応運動能力を測定した。結果,頭部による反応時間の短縮から,身体化認知の効果を確認した。頭部による正答率増加はBCT成績低群で高群より大きかったが,回転角度に伴う効果はなかった。したがって,回転ではなく,図形の照合操作における効果と考えられる。さらに,BCT下位検査では,この効果が特に,巧緻性を要する動作に関わることが示された。
  • 丹藤 克也, 木村 ゆみ
    セッションID: P4-9
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究ではデジャビュの生起機序として,単一要素にもとづく親近感の誤帰属説について検討した。もしこの説が妥当であれば,親近感の低いシンボル図形や新奇な図形とともに,親近感の高いシンボル図形を提示することで親近感の誤帰属が生じ,これらの図形を単独で提示するよりも,親近感の評定が高まることが予想される。実験の結果,高親近感の図形とペアで提示することで,新奇図形では単独提示よりも親近感の評定値が有意に向上したが,低親近感の図形では誤帰属は認められなかった。また,この誤帰属はターゲット以外の図形に影響されないよう警告を与えても認められた。さらに,誤帰属の程度と干渉抑制能力の相関を検討したところ,両者に有意な相関は認められなかった。
  • 手がかりの効果に関する年齢群間比較
    大門 貴之, 原田 悦子, 須藤 智
    セッションID: P4-10
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    人が新奇な人工物を利用する際,何をどのように学習しているのか明らかにするため,Groton Maze Learning Test (GMLT)を用いて実験を行い,特に課題に埋め込まれた手がかりの意味獲得の効果について検討した.本研究では特に問題解決の結果生じる学習に注目し,本試行後に経路の全体像の偶発的な再生課題を実施した.若年成人・高齢者とも24名の参加者が半数ずつ手がかりあり/なし群に割当てられた.経路偶発再生課題について再生エラー率を算出したところ,若年成人では手がかり有無の効果がみられなかったが,高齢者では手がかりにより若年成人と同レベルまで再生エラー率が低下し,意味検出が容易な手がかりの提示が年齢差を消失しうることを示した.今後,こうした問題解決・学習上の手がかりの効果が得られる過程・メカニズムを明らかにしていくことが必要と考えられる.
  • 山田 陽平, 仲嶺 真, 平田 佐智子, 永井 聖剛
    セッションID: P4-11
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,“捨てる”という身体動作によって,記憶を忘れることができるかどうかを検討した。学習段階では,15単語が印字された用紙を呈示し,後のテストのために覚えた。記銘時間は30秒であった。その後,実験者が「ゴミ箱」と言ったら,刺激が印字された用紙をクシャクシャにしてゴミ箱に捨てる,実験者が「ポケット」と言ったら,四つ折りにして自分の服のポケットにしまった。テスト段階では,学習語の自由再生テストを行った。その結果,「捨てる/しまう」動作によって学習語の再生に違いは生じなかったが,ルアー語の虚再生に違いが認められた。これは,捨てる動作によって学習エピソード情報が使いにくくなったために,ルアー語が棄却できず,その結果,誤って再生しやすくなったと考えられる。
  • 森田 泰介, 金野 和弘
    セッションID: P4-12
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は日常場面における過去事象の想起,未来事象の想像,予定の想起が有する方向づけ機能を規定する要因を明らかにすることであった。191名の大学生に対し,日常場面においてふだんよく想起・思考する過去事象,未来事象,予定を報告することを求め,さらにそれらの想起頻度や方向づけ機能の高さ,感情価や感情強度などを評定するよう求めた。調査の結果,意図的想起頻度や感情強度が指示的機能の強さの規定因として有意なものであることが示された。本研究の結果と先行研究の知見に基づき,日常場面における過去事象や未来事象の想起・思考が有する方向づけ機能の規定因につき考察を行った。
  • -人名を求める質問紙調査の分析から-
    長谷川 千洋, 清水 寛之
    セッションID: P4-13
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    人名想起時に生じる「のどまで出かかっているのに出てこない現象(tip-of-the-tongue phenomenon)」(TOT)は,日常的に観察される現象である。本研究は大学生を対象に日本の有名人に対するTOTの特徴について調査し,TOT解消方略との関係について検討した。調査参加に同意した大学生549名に対し30人の有名人物(歴史上の有名人物15名,現在の有名人物15名)の氏名の想起を求める質問紙調査を実施し,視覚イメージ,既知感,文字情報,音韻情報の有無について回答を求め,また,個人の特性傾向として,TOT現象に対する感受性や不快感の程度,TOTの解消方略についても調べた。結果,人名に対するTOT現象は、歴史上,現在の有名人物ともに同様に生起しており,人名の想起されやすさと視覚的イメージの鮮明さ及び音韻・文字情報との関連性に比べ、TOT現象の発生率は比較的一定に保たれている可能性が示唆された。また,TOTが増えれば,能動的なTOT解消方略を用いる傾向が高くなる可能性が考えられた。
  • 意図存在表象と時機表象の連合強度が展望的記憶の検索に与える影響
    花村 光貴, 厳島 行雄
    セッションID: P4-14
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    展望的記憶とは,次回Aに会ったらお礼を言うといった,未来の特定の時点で特定の行動を行う意図の記憶である。従来の展望的記憶のモデルとして,意図した行為を実行するきっかけである事象の記憶表象(時機表象)と,行為の記憶表象とそれらの間の連合を仮定し,両表象と連合の活性化を以て展望的記憶の想起とみなすというものがある。この2つの表象に「するべきことが存在する」ことに関する記憶である意図存在表象を加えた3表象モデル(森田,2005)が提案された。本研究では意図存在表象の存在を検証するために,時機表象と意図存在表象との連合強度を操作した実験を行った。モデルによると,連合が強い場合には展望的記憶の想起可能性が高くなることが予測されるが,実験の結果に連合強度の影響は見られなかった。展望的記憶の反応を行うために,別の反応の抑制で必要であったことが,予測された現象が見られなかった原因である可能性が示唆された。
  • 西山 めぐみ, 大塚 幸生, 齋木 潤
    セッションID: P4-15
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,規則性のある刺激列を構成する刺激,及び規則性のある刺激列に挿入された刺激の記憶成績について検討した。参加者は,学習フェイズにおいて3つのオブジェクトが一定の順序で呈示されるトリプレット刺激列,ランダムに呈示されるランダム刺激列からなる刺激列を観察した。その後,学習フェイズで呈示された刺激に対する再認課題を行った結果,ランダム刺激列よりもトリプレット刺激列を構成する刺激に対する記憶成績が高くなることが示された(実験1)。実験2では,学習フェイズの最後においてトリプレットおよびランダム刺激列の間に文字刺激が挿入され,文字に対する再認課題を求めた。その結果,ランダム刺激列よりも,トリプレット刺激列に挿入された文字に対する記憶成績が低いことが示された。したがって,規則性のある刺激に対する記憶処理は促進されるが,規則性を壊す刺激に対する処理は潜在的に抑制される可能性が示唆された。
  • 津田 裕之, 斎木 潤
    セッションID: P4-16
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    照明の違いが質感の"知覚"に与える影響については比較的多くの研究があるものの、"記憶"については知見がほとんど無く、質感認知現象の理解を不明瞭にしている。そこで本研究では、光沢感や粗さといった物体の表面質感について、これを人はどの程度正確に記憶ができるのか、照明が変化した際に質感を思い出すことがどの程度正確に可能なのか、という問題について検討した。実験の結果、照明が同じ条件では、(おそらく低レベルの画像特徴を用いて)かなり正確な知覚マッチングが可能であるため、それと比較した時の記憶マッチングの精度の低下率(記憶コスト)は大きくなった。他方で、照明が変化する条件では知覚と記憶でマッチング精度の差は比較的小さく、画像から抽出された、質感を表現する照明に依存しない何らかの特徴量が、少なくとも短期的には比較的良く記憶されていることが示された。
  • 松野 隆則, 山本 理恵子
    セッションID: P4-17
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
     想起された自動車走行の速度推定に及ぼす2種類のバイアスの影響を実験により検討した。
     59名の女子大学生が実験に参加した。数台の自動車が走行する動画を観察させた後、小冊子を使用して質問に回答させた。従属変数はターゲット車の走行速度の推定値である。質問文でターゲット車の走行の様子を記述する言語表現を2種類用意して語法の要因とし、ターゲット車の速度推定の直前に高低いずれかのアンカー速度と比較判断させた。
     参加者の運転免許の有無(2)×アンカー速度(2)×質問の語法(2)の3要因被験者間計画の分散分析の結果、アンカー速度の主効果が顕著に有意であり、また3要因交互作用も有意であった。運転免許の有無にかかわらず、速度推定は直前の比較対象であったアンカー速度に大きく引きずられ、アンカリング効果が確認された。また、質問の語法は、運転免許無し群の低アンカー条件における速度推定にのみ影響を及ぼしていた。
  • 顔と名前の記憶(2)
    上田 卓司, 安田 孝, 椎名 乾平
    セッションID: P4-18
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    McWeeny, et al. (1987) によって発見された Baker-baker パラドックスは,同じ名でも職業名として憶えるより名字として憶える方が顔との対連合記憶成績が低下する,という現象であり,しばしば固有名の記憶の難しさを示すものとして扱われている.本研究では,文化的背景や名前の多様性等の条件が異なる日本語圏において同様の現象が生起するかを確認するため,人物属性(座右の銘・お気に入りの物事)を表す名詞を用いて,日本語版 Baker-baker パラドックスが見られるか検討することを目的とした.実験において40名の参加者は,印象評定,偶発再生,意図的再生の各課題で顔写真とともに記された人物プロフィール(氏名,人物属性)を学習し,顔写真を手がかりとした再生を行った.その結果,名詞を人物名として記憶する場合と,人物属性を表す名詞として記憶する場合とに顕著な差は認められなかった.
  • 田中 愛子, 奥村 安寿子, 河西 哲子
    セッションID: P4-19
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    これまで先行手がかりを用いて,単語はユニットとして空間的注意に選択されるが,非語では1文字1文字が選択されることが示唆されている (Sieroff & Posner, 1988) 。本研究は,類似の実験において,音-文字対応が英語と異なる平仮名文字列中の文字同定に,空間的注意がどう関わるのかを検討した。刺激として平仮名4文字からなる文字列刺激が瞬間提示され,参加者は全ての平仮名文字と,その両端の文字いずれかの直下に直前に提示された手がかり刺激(数字)を記入式で答えることを求められた。結果において,手がかりによる促進効果が見られなかったことに関しては,左右の手がかり位置間の距離を改善する余地がある。しかし本研究において,両端の文字の同定率が同様に内側の文字より高いことを見出した。この結果は,左側の文字同定率が高かった先行研究とは異なるため,書記体系の違いによって空間的注意の配置が異なる可能性が示された。
  • 佐藤 史織, 河原 純一郎
    セッションID: P4-20
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,従来の研究では交絡していた課題の構えと顔刺激の有無を分離した上で,負荷理論(Forster & Lavie, 2008)が予測するように,高負荷条件下で完全に課題非関連な周辺の顔刺激は,中央の文字弁別課題の遂行中でも注意を捕捉するかを検証した。負荷理論に一致するのであれば顔の注意捕捉はなくなるか,もしくは減少するはずであった。しかし結果は,周辺に呈示された顔画像は文字弁別課題を妨害した。加えて,この効果は正立顔にのみ観察でき,倒立顔や食べ物画像を使用した条件では観察できなかった。さらに,探索課題のオンセットと顔画像の呈示タイミングという時間的要因を双方が共有しなかった条件でも顔固有の効果が見られた。従って,顔は観察者の構え,知覚負荷,呈示タイミングに関わらず刺激駆動的に注意捕捉する特殊な刺激であると結論できる。
  • 蔵冨 恵, 加藤 公子, 吉崎 一人
    セッションID: P4-21
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    これまでの研究では,刺激反応適合性パラダイムを用いて,一致試行出現確率が高い事態に比べて,それらが低い事態には干渉量が減少することが明らかとなっている。本研究では,一致試行出現確率の異なる刺激が,それぞれの文脈に及ぼす影響を検討した。実験では,2種類の刺激を用いて,一つの刺激の一致試行出現確率は75%もしくは25%(変動刺激)にし,もう一方の刺激のそれは50%(固定刺激)にした。参加者の課題は,左右いずれかに呈示されるそれらの刺激が縦縞か横縞かを判断するサイモン課題であった。もし,異なる文脈間の相互作用によって視覚情報選択性の調整が行われるのであれば,変動刺激だけではなく,固定刺激においても,PC効果が生起することが予測された。実験の結果,仮説を支持し,視覚情報の選択性は,刺激に依拠するのではなく,異なる文脈間の相互作用によって調整されていることが明らかとなった。
  • 立花 良, 行場 次朗
    セッションID: P4-22
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/05
    会議録・要旨集 フリー
    近年の視覚的注意研究では、基礎研究と応用研究に共通したメカニズムを解明するアプローチの一つとして、ミスディレクションが注目されている。ミスディレクションとは手品師が用いる技法であり、観客の注意を操作できる。日常場面で人の注意を統制する技術に応用すべく、実際に手品を利用したミスディレクションの研究が行われてきた。しかし、どのようなミスディレクションがより注意を誘導できるかいまだ不明確である。本研究では、代表的な3つの手品手法 (物体の出現・消失・変化) を実験刺激として用い、眼球運動測定によって注意がどのように誘導されるかを検討した。結果から、「物体の出現」が最も強くミスディレクションを引き起こすとわかった。一方で、眼球運動からは「物体の消失」によるミスディレクションへの注視時間が最も長いとわかった。これらの結果は、注意と眼球運動が乖離し、手品手法ごとに注意に及ぼす影響が異なることを示している。
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