映像情報メディア学会誌
Online ISSN : 1881-6908
Print ISSN : 1342-6907
ISSN-L : 1342-6907
77 巻, 3 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
論文特集 選奨(技術振興賞/映像情報メディア未来賞)受賞者論文
招待論文
技術振興賞 進歩開発賞(研究開発部門)受賞
  • 堀内 俊治, 大久保 翔太, 小林 達也
    2023 年 77 巻 3 号 p. 388-393
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

    筆者らはこれまでに,360度動画のインタラクティブ視聴向けに,指定した任意の角度範囲の音場を合成する音場の選択的合成手法を提案し,提案手法を組み込んだモバイルデバイス向けの「新音楽視聴体験 音のVR」と呼称する360度動画再生アプリを開発,公開した.提案手法は,円状または球状マイクロホンアレイなどにより収音されたマルチチャネルサラウンド音響から,任意の方向を中心とした最小30度程度から最大360度の任意の角度範囲の音場を,一定のステレオ幅を持つ拡大縮小および再配置した2チャネルステレオ音響に合成することができる.開発したアプリでは,タッチスクリーンなどの操作により,視聴者が指定した任意の角度範囲の360度動画を楽しむことができ,再生される2チャネルステレオ音響はその範囲に応じて空間同期の観点から変化する.本稿では,提案手法と実用に至ったアプリの概要,コンテンツの制作方法を述べるとともに,活用事例を中心に紹介する.

論文
  • 大久保 柚希, 村岡 丈一郎, 佐藤 美恵, 橋本 直己
    2023 年 77 巻 3 号 p. 394-400
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

    近年,VR技術の発展により,容易に人の外見を変化させる体験が可能となった.それに伴い,アバタを用いてVR空間に没入することで自己認知が変化し,重さ知覚にも影響を及ぼすことが示されている.しかし,それらの報告の多くは,限定的なアバタを用いた定性的な評価に留まっている.そこで本研究では,ユーザがアバタに抱く力強さの印象を数値で表現するための指標を作成し,多様なアバタを用いてVR空間に没入したときに,ユーザが受ける力強さの印象と重さ知覚の関係を定量的に分析する.実際の室内環境を再現した仮想空間にアバタを用いて没入した状態で,一定の重さの物体を持ち上げる実験を行った結果,アバタの力強さの印象と,同じ物体をより軽く感じる重さ錯覚の間には,特定のアバタに依存しない相関関係が確認できた.

フィールド論文
  • ~スキンケア製品群のアーキテクチャ知識をめぐる企業とユーザの攻防~
    長内 厚, 土屋 裕太郎, 大野 貴弘
    2023 年 77 巻 3 号 p. 401-408
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

    従来のユーザ・イノベーションは,ユーザの情報発信力は限定され,個別のユーザの情報は企業が集約して拾い集めることを前提として,ユーザを巻き込みながらも,製品や製品に関する情報は企業が統制し,市場に提供するという形態であった.

    しかし,ソーシャルメディアが個人の発信力を強化し,ユーチューバーが職業として成立するように個人の発信が収益化を伴うビジネスになると,製品情報の統制は企業の専有物ではなくなり,企業のコントロールの効かないところで個人が発信し,個人が発信した情報が収益化に結びつく状況になっている.ソーシャルメディアの普及に伴い,ユーザ・イノベーションは必ずしも企業の収益に結びつくとは限らず,ユーザ・イノベーションが企業の利害と対立する状況があるのではないかということが,本研究の大きな問いである.この問いを検討するため,ロバート・インの個別事例研究法を用い,資生堂とアルビオンの化粧品開発事例の定性分析から探索的な問いを求めた.

  • 鈴木 克実
    2023 年 77 巻 3 号 p. 409-414
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー

    テレビの視聴時間は年々減少している.これに伴い,民間テレビ局は厳しい経営環境に置かれ,特に地方局は厳しい状況にある.そのような中,アニメ番組を中心に特色ある編成を行っている地方局も存在する.しかし,その内容は大人向けで放送時間も深夜帯となっているほか,制作方式にも変化が生じている.本稿ではインタビューを中心に地方局の有効な番組編成戦略はいかなるものかを,系列局と独立局2社のアニメ番組編成の事例から考察した.番組テーマの選別や編成時間の工夫,番組スキームの選択など,組織的な学習と戦略の実行により,番組視聴者を増やす可能性を示した.アニメのような特定のファン層を持つ内容の番組編成については,地域特性を見極め,環境や生活スタイルに合ったテーマを採用する.そして地域リソースを最大限に活かしつつ番組調達を行い,最適な枠に番組を編成することができれば,地方局は長期的な競争優位を獲得しうる.

feedback
Top