強誘電性ネマティック液晶(FNLC)は,その高い比誘電率.流動性,および柔軟性により,液晶の応答速度の向上やフレキシブルな電子デバイスへの応用が期待されている.しかし,デバイス応用において重要なFNLCの常光屈折率no(λ)と異常光屈折率ne(λ)の波長分散の決定が従来のネマティック液晶と比較して困難とされていた.そこで本研究では,くさび形セルを利用した屈折率測定法とブリュースター角反射法の両方から,任意の波長におけるFNLCのno(λ)とne(λ)について決定できることを実験的に示した.求められたno(λ)とne(λ)は,ネマティック液晶の屈折率波長分散の決定手法として実績のある透過型繰り込みエリプソメトリーにおける解析の初期値として使用し,可視光域でのFNLCの屈折率波長分散を求めることができた.
2013年から開始されたAM放送の補完としてのFM放送(以下FM補完放送)では主としてアナログTV放送の跡地である90~95 MHzが利用されている.この周波数帯は韓国や中国においても大電力型のFM放送帯として利用されているため,この周波数帯を利用する送信局を親局とする放送波中継局では外国波混信対策が必要となる場合がある.そして将来のAM放送のFM放送への転換(F転)の計画において新たな中継局の整備の必要性が検討されており,使用する周波数帯の受信状況によっては混信対策が必須の課題となる場合がある.今回,混信やマルチパス干渉のある受信環境において高品質な放送波中継を実現する,FM干渉抑圧装置を開発し中継局で運用を開始した.
本論文は,SC-FDE(Single Carrier-Frequency Domain Equalization)無線伝送方式をマイクロ波帯FPU(Field Pick-up Unit)に適用するための技術的検討を行った結果を述べている.マイクロ波帯FPU用SC-FDE方式の伝送パラメータを検討するとともに,耐非線形特性や耐フェージング特性に関してOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式と定量的な比較を行い,SC-FDE方式を用いたマイクロ波帯FPUの有用性について考察している.FPU運用の用途ごとに固定伝送,準移動伝送,移動伝送の三つに分類し,送信側増幅器の入力バックオフ値と受信機の所要C/Nを加算することでOFDMに対するSC-FDEの利得の値を求めた.その値を評価した結果,固定伝送の場合はSC-FDEが有利となり,準移動伝送の場合はOFDM方式とSC-FDE方式はほぼ同等となり,移動伝送の場合はOFDM方式が有利となる結果が得られた.