映像情報メディア学会誌
Online ISSN : 1881-6908
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72 巻, 10 号
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論文特集 ディスプレイ ~IDW'17を中心に~
巻頭言
特集論文
  • 大前 秀樹, 澤田 享, 松川 和生, 冨田 佳宏
    2018 年 72 巻 10 号 p. J126-J130
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/26
    ジャーナル フリー

    われわれは,伸縮可能で,折り曲げ可能なパッシブマトリクスタイプのディスプレイを開発した.RGBのチップを1パッケージにしたLEDを,フレキシブル回路基板上に,45×80個をマトリクス状に表面実装して,新規な渦巻き配線を形成し,ポリウレタンフィルムに埋め込んだ.この渦巻き配線は感光性ポリイミドをフォトプロセスで形成し,電気的,機械的に最適化した.3 mmピッチディスプレイは50%以上の伸縮性を有し,駆動電圧5 Vで,輝度200 cd/m2以上が可能である.さらにこの技術を1 mmピッチディスプレイに適用して,解像度を高め,輝度1200 cd/m2以上に向上することに成功した.

  • 本田 秀一, 石鍋 隆宏, 高橋 昇吾, 柴田 陽生, 藤掛 英夫
    2018 年 72 巻 10 号 p. J131-J135
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/26
    ジャーナル フリー

    湾曲時において,高画質な画像表示を可能とするフレキシブル液晶ディスプレイの実現に向けて,湾曲時に生じるプラスチック基板の変形とセル厚の変化のメカニズムの解析と,その抑制方法について検討を行った.この結果,液晶デバイスの湾曲時にシール剤部分に生じた基板を回転させる力によって端部に部分的な基板の変形が生じ,セル厚の増加が生じることを明らかにした.また,接合スペーサを用いて上下基板を接着し,液晶層を湾曲の中立面とすることでセル厚の変化を抑制できることを示した.

  • 丸山 純一, 桶 隆太郎, 村社 智宏, 石井 正宏, 檜山 郁夫, 加藤 剛久, 梅澤 康昭, 佐藤 達弥, 高橋 通, 山下 紘正, 谷 ...
    2018 年 72 巻 10 号 p. J136-J141
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/26
    ジャーナル フリー

    3D偏光フィルタ方式を採用した8K-3D IPS液晶ディスプレイを開発した.近年,医療分野では,カメラとディスプレイにより医師の目をサポートする技術の開発が進んでいる.今回われわれは,立体視による奥行感の把握が可能な,内視鏡/顕微鏡手術向け「3D対応8K手術システム」の実現を目的に,3D偏光フィルタ方式8K-3D液晶ディスプレイの開発に取り組んだ.55インチ8K IPS液晶パネルの採用により,高精細,高画質な立体視を可能とした.手術室のレイアウトを考慮し,視距離1.0~1.5 mの範囲で使用することを目標に3D偏光フィルタを設計した結果,3D視野角8.6゚の範囲で3Dクロストークのない立体視を可能とした.本論文では,同ディスプレイの開発におけるポイントについて報告する.

  • 関谷 俊, 諸橋 一夫, 川合 健, 笠原 毅
    2018 年 72 巻 10 号 p. J142-J147
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/26
    ジャーナル フリー

    HUD(Head-up display)は自動車のフロントガラス越しにスピードや警告を虚像として表示される表示装置である,その視認性の高さから安全にドライバに情報を提示する手段として,近年急速に搭載車種が拡大している.今後はより安全かつ直観的に情報提示できる表示装置が求められ,HUDは視認性に加えて認知性が重要になってくる.このような将来的要求に訴求する二つの虚像面を有する2-Plane HUDを考案した.実現手段として,バイフォーカルミラーによって一つのDLP-PGU(Picture Generation Unit)から二つの中間像を得る手法および二つの中間像を一対の自由曲面鏡で拡大投影する手法を採用した.虚像の幾何光学的なシミュレーションの結果として,像歪み,結像性能を満足するHUDの成立性を示した.

  • 菅井 淳平, 志賀 智一
    2018 年 72 巻 10 号 p. J148-J153
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/26
    ジャーナル フリー

    OLEDの消費電力が表示輝度に依存することを考慮し,スマートフォン向けゲームアプリ画像の背景領域を暗くすることでゲーム時の画像表示に関する電力を低減する方法を提案する.本方式では,ゲーム画像が自然画に比べ単純かつ明確に色分けされているという特徴を利用して色の類似性を基に画像をオブジェクト分割する.その後画像中の多くの領域を占めるオブジェクトを背景領域として抽出しその信号を減らす.これらの処理の際には,代表的なスマートフォンゲームアプリ10種から選んだ50枚の画像の調査から得た特徴量を用いる.提案方式で抜き出した背景領域と手作業で抜き出した背景領域の一致率,抽出率はそれぞれ平均で88%, 76%となった.OLEDの表示特性を考慮した電力のコンピュータシミュレーションでは,背景領域の信号値を20%, 30%低減すると,電力低減率がそれぞれ平均で18%, 25%であった.

  • 小林 潤平, 川嶋 稔夫
    2018 年 72 巻 10 号 p. J154-J159
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/26
    ジャーナル フリー

    飛ばし読みをしない通常読みについて,読み速度と眼球運動の関係を詳細に分析した.大学生200名の通常読みの速度は,約300~1200文字/分の範囲で単峰形に分布しており,平均値は653文字/分であった.このとき,最も速い速度と最も遅い速度の差は3倍以上であった.眼球運動分析より,読み速度の個人差は,停留時間の差ではなく,停留数の差によって生じていることがわかった.また,停留数の差は,主に順行サッカードの平均長の差によって生じていることがわかった.すなわち,通常読みにおいては,読み速度の個人差をもたらす主要因は順行サッカードの平均長であり,読み速度が速いほど順行サッカードが長く,読み速度が遅いほど順行サッカードが短いことがわかった.

  • 大寺 亮介, カランタル カリル, 若生 一広, 内田 龍男
    2018 年 72 巻 10 号 p. J160-J167
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/26
    ジャーナル フリー

    個人用,小規模会議でのプロジェクタ投影や自動車のピラーへの投影用途などに,指向性投影スクリーンを考案・開発した.スクリーン指向特性は,プロジェクタの方向からθviewずれた方向を中心とし,±Δθview拡散反射させるものである.例えば自動車ピラーに応用すれば,運転者から少しずれた位置にプロジェクタを設置することによって,運転者の顔を中心としてその近傍のある範囲に反射映像光を戻すことができる.このような特性を実現するために,中空再帰反射コーナーキューブを改良した.すなわち,反射光を再帰反射方向からθview方向偏向させるために,CCRの底面をθview/2傾斜させ,±Δθview拡散をさせるために面内接線角を–Δθview/2~+Δθview/2として曲面化した.この偏向CCRをD-CCRと呼び,一例として,θview=10゚およびΔθview=8゚のサンプルを試作し,光学シミュレーションと実験によって所望の特性が得られることを確認し,スクリーンゲイン16を得た.

  • 高橋 昇吾, 柴田 陽生, 石鍋 隆宏, 藤掛 英夫
    2018 年 72 巻 10 号 p. J168-J173
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/26
    ジャーナル フリー

    高い調光比を有する液晶調光デバイスの実現に向けて,色素ドープブルー相液晶の配向安定化に必要な紫外線の照射条件,およびモノマ濃度について検討を行った.この結果,配向安定化に必要なモノマ濃度は色素濃度に比例し,色素濃度が高い場合においてもモノマ濃度を増加することで低温下におけるブルー相の保持が可能であることを明らかにした.また,色素濃度の増加により,暗状態における透過率を低くすることができるが,安定化に必要なモノマ濃度が増加することから,高分子ネットワークによるアンカリング力が強まり駆動電圧が上昇することを示した.

特集フィールド論文
  • 石川 彰夫, 奥井 誠人, 山本 健詞, 井ノ上 直己, 寺谷 メヘルダド, 高橋 桂太, 藤井 俊彰
    2018 年 72 巻 10 号 p. J174-J182
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/26
    ジャーナル フリー

    近年,臨場感を高めるため,人物を等身大で表示できる大型のディスプレイが注目されている.さらに大型の裸眼立体ディスプレイも研究開発が進められており,臨場感のある視聴体験が期待されている.しかし,大型ディスプレイで裸眼立体のための運動視差を実現するためには,100~200視点の映像が必要になる.一方,2020年頃に第5世代移動通信システム(5G)の実用化が予定されており,この通信帯域で数百視点の映像を視覚的な劣化が少なく伝送できれば,場所を限らず視聴できることになる.筆者らは数百視点の映像を圧縮伝送するアルゴリズムSecond-MVDを開発し,既に開発していた200視点の多視点映像伝送システム「REI」に実装して,5Gで想定されている大量のデバイスとの同時通信環境における平均スループットである100Mbps以下の環境を想定した主観評価実験を行った.その結果,想定環境下で4以上のMOSを達成する結果が得られた.

論文
  • 上浦 拓人, 山田 昇平, ナイワラP. チャンドラシリ
    2018 年 72 巻 10 号 p. J183-J188
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/26
    ジャーナル フリー

    近年,スマートフォンやタブレット端末・電子書籍リーダーといった電子端末で利用できる電子書籍が普及してきている.それに伴い小説を電子書籍で読む機会も増えているが,従来の電子書籍アプリケーションは紙媒体の本と同様に背景色が白,文字色が黒という場合が多く,電子書籍がディジタル端末で展開されている利点を充分活かしきれているとは言えない.そこで本研究では,小説文章に含まれる単語から小説文章の情景に適した背景色を生成し表示するシステムを開発した.これにより電子書籍端末の持つ表現力を充分に活用し読者へより場面の情景を伝え,感情移入を促す効果を実現した.また,16人の実験協力者を対象に実際に構築した電子書籍アプリケーションの評価実験を行った.その結果,読みやすさについて改善の必要があるものの,感情移入のしやすさにおいて従来の表示形式の評価を上回る結果となり,本システムの読書体験における有用性が確認できた.

フィールド論文
  • 林 正樹, スティーブン バチェルダー, 中嶋 正之
    2018 年 72 巻 10 号 p. J189-J196
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/26
    ジャーナル フリー

    Webサイトをはじめとする様々な情報をテレビ番組的なCGアニメーションに自動変換する研究開発を進めている.今回,その試みの一つとして,「2ちゃんねる掲示板」からコンピュータ・グラフィックス (CG) アニメーションを自動生成するアプリケーションを開発した.基本的な方法は,実際のテレビ番組映像を分析し,そこで使われている制作ノウハウを抽出して,これをルール化および数値化し,ソフトウェアに実装することで,テレビ番組を真似たCGアニメーションを得るというものである.今回,実際に放送された1時間分の討論番組映像のカメラスイッチングを解析しアルゴリズム化した.本論文では,このプロセスの詳細を説明し,この方法により作成した実際のアプリケーションについて述べる.また,得られたCGアニメーションについて評価実験を行い,本手法の有効性と今後の課題を明らかにしたので,これについて述べる.

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