映像に映る人物を特定する人物識別技術は,スマートフォンにおける個人認証や,イベント会場での入退場管理,映像データへの索引付けなどにおいて非常に有用な技術である.人物識別における課題のひとつとして,顔の隠ぺいによる精度低下が挙げられる.近年,新型コロナウイルス感染症の影響によってマスクを着用する機会が増えており,マスクによる隠ぺいに対応した手法が求められている.そこで本稿では,マスクを着用している人物についても,精度よく認識できる顔認識手法を提案する.具体的には,マスクの合成による学習データの拡張手法と,ニューラルネットワークの構造,補助タスクを用いた学習手法を提案する.評価実験では,テレビ番組映像から作成した独自のデータセット,顔認識用のベンチマークデータセット,およびマスク実画像データセットを用いて既存手法との性能比較を実施し,提案手法の有効性を検証する.
オンラインの対面コミュニケーションなどで期待される,人物などを透明なスクリーンに3D表示できる,新しいAR-3Dディスプレイシステムを提案する.本ディスプレイは,ホログラムプリント技術によって今回新規に開発した機能性反射フィルムと,複数のプロジェクタから構成される.試作機では水平に2度間隔で配列した32台の小型プロジェクタを用い,対角35cmの大きさのスクリーンに視差を生じさせる要素画像群を投影した.再生される3次元映像は,元のプロジェクタ解像度と同等かつフルカラーであり,像に対して水平64度,垂直約10度の範囲内で,3Dメガネを着用せずに複数人が同時に観察できる.さらには,形状の取得–伝送–表示を行うシステムの初期実装を行い,実証実験では特定人物を高精細に計測した顔データを入力として,透過した背景越しに自然な顔の表情を映し出すことに成功した.
フットステップ錯視の生起には,背景となる格子パターンの輝度差によって,その上を動くパターンの見かけの速度が変化することが大きな要因であると主張されている.この「輝度コントラストの関与」を定量的に明らかにするために,本研究では,等輝度に設定した格子パターンを用いて,フットステップ錯視の強度を評定法によって求めた.その結果,必ずしも等輝度で錯視が最小とはならず,また,背景の輝度コントラストの増加が必ずしも錯視強度の増加を引き起こさないという結果が得られた.