国際保健医療
Online ISSN : 2436-7559
Print ISSN : 0917-6543
29 巻, 2 号
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原著
  • Susumu Tanimura, Masayuki Shima
    2014 年29 巻2 号 p. 51-58
    発行日: 2014/06/20
    公開日: 2014/07/17
    ジャーナル フリー
    Objectives: School-based interventions in developing countries typically expect schoolchildren to serve as health messengers to their families as well as to the broader community. This study computationally simulates the dynamics of pervading or disappearing health information in the minds of community members after school-based interventions.
    Methods: A multi-agent-based model was developed as an artificial community in the laboratory. The ripple effect of the school-based intervention was then simulated and monitored for 100 days under various conditions.
    Results: If the probability that health information transmits among family members is greater than 0.05, the school-based intervention influences 60% to 70% of community members; by contrast, if the probability is less than 0.01, the impact disappears from the community. However, repeated interventions at 10-day intervals can shift the trend from disappearing to pervading in this latter case.
    Conclusion: In a community that has lower transmission probabilities, repeated interventions at shorter intervals are necessary to keep health information in the minds of community members.
短報
  • 伊関 千書, 公平 瑠奈, 幅崎 麻紀子, 高橋 賛美, Basant Pant, 加藤 丈夫
    2014 年29 巻2 号 p. 59-67
    発行日: 2014/06/20
    公開日: 2014/07/17
    ジャーナル フリー
    背景と目的
      認知症は、認知機能や行動の障害によって日常生活の中で困難をきたしている症候群で、患者本人以外による日常生活の困難さの判定を要する。患者を囲む社会が症状をどの程度受容するかにより、相対的に認知症の判断がなされる。高齢者の認知症の捉え方に対する、社会による影響を検討するため、ネパールにおける調査を行った。
    方法
      ネパールにおいて、①医師または看護師の10名(地方病院で6名、都市部の病院で4名)を対象として、「認知症」の認識についてインタビューを施行した。②地域在住高齢者6名と、認知症が疑われ病院で診療を受けている高齢者3名を対象に、認知機能スクリーニング(Mini-Mental State Examination, MMSE; Hasegawa Dementia Scale Revised, HDS-R)を行い、それぞれの高齢者の家族9名を対象にClinical Dementia Scale (CDR)を施行した。
    結果
      1.地方の病院の医師または看護師6名のうち3名はDementia(認知症)という言葉を知らなかった。医師または看護師に対して、我々が認知症の概念を紹介した後では、病院患者の中にも地域高齢者の中にも、認知症が疑われる高齢者がいると思うという回答が大半を占めた。認知症患者は病院へ相談に来ると予想した回答は、医師または看護師合計10名のうち5名であった。認知症患者や家族が相談を持ちかけると予想される対象はどこかという質問に対し、地方では祈祷師ではないかという回答があり、都市部では精神科専門病院ではないかとの回答が認められた。2.地域在住高齢者4名における認知機能検査の結果として、MMSEのスコアの平均は16±4.2 (±標準偏差)、HDS-Rのスコアは17±5.0であった。地域在住高齢者の家族から得られたCDRのスコアの平均は0.9であった。認知症が疑われ病院で診療を受けている高齢者3名のうち2名は、CDRが2以上であり認知症と考えられた。地域でも病院においても、高齢者の認知機能が低下していた場合でも、その家族は問題意識をほとんど持っていなかった。
    結論
      ネパールの医療現場の特に地方においては、認知症に対する認識が乏しかった。ネパールの地域や病院において、高齢者の認知機能検査結果は低スコアの傾向があったが、教育歴の低さ、性差、生活習慣が影響していると考えられた。一方、高齢者家族の回答によるCDRのスコアは、地域在住高齢者では低く、認知症と捉えられた高齢者は少なかった。高齢者の家族を含め、ネパール人は加齢や認知機能の低下に対して楽観的、寛容的で、それを障害と捉えない傾向を示した。
資料
  • Yoko Aihara, Iku Sakamoto, Naoki Kondo, Salina Shrestha, Futaba Kazam ...
    2014 年29 巻2 号 p. 69-74
    発行日: 2014/06/20
    公開日: 2014/07/17
    ジャーナル フリー
    Objectives
      More than half of those living in developing countries do not have piped water in their homes. Although handwashing is effective for the elimination of microbes from the surface of the palms, thereby preventing the transmission of infectious diseases, the effect of using poor-quality water for handwashing is unclear. This study measured the water quality and the bacteria count on the hands of preschool children in Kathmandu, Nepal.
    Methods
      Sixty-two children were asked to follow their normal handwashing technique, and the counts of 3 microbial bacteria—viable bacteria, Escherichia coli, and total coliforms—were measured in the water source and on the children’s palms. Microbial samples from the children’s palms were collected before and after handwashing. The Wilcoxon signed-rank test was used to compare the number of bacteria on the palms before and after handwashing.
    Results
      The children washed their hands with a low volume of stored water without soap. Viable bacteria, E. coli, and total coliforms were detected in the water source. The number of viable bacteria and total coliforms on the palms increased after handwashing. In contrast, the numbers of E. coli colonies did not change after handwashing.
    Conclusion
      Handwashing with poor quality of water did not have effect on removal of bacteria from hands. In areas with limited water sources, intervention for handwashing requires strategies for not only promoting hygiene behaviors also water storage management.
  • 谷村 晋
    2014 年29 巻2 号 p. 75-79
    発行日: 2014/06/20
    公開日: 2014/07/17
    ジャーナル フリー
    日本国際保健医療学会(JAIH)による国際保健用語集が公式ウェブサイトで公開されており、誰でも用語を調べることが可能である。しかし、これにはインターネット接続が必要である。開発途上国の現地調査ではインターネット接続環境がない場合も多く、国際保健用語集を活用することができない。そこで、公式ウェブサイトの国際保健用語集を電子辞書形式に変換するコンピュータプログラムを開発した。これにより、最新の国際保健用語集を開発途上国の現場で持ち歩くことができる。
  • —インドネシア首都圏における横断的研究—
    木村 暁, 中村 安秀
    2014 年29 巻2 号 p. 81-90
    発行日: 2014/06/20
    公開日: 2014/07/17
    ジャーナル フリー
    目的
      途上国では処方箋を必要とする薬剤の販売規制が不十分であり、薬剤耐性の発現という視点からも、抗生物質による自己治療は世界の公衆衛生の大きな問題である。インドネシアにおいては処方箋薬による自己治療は一般的であるうえに危険な偽造医薬品の流通も社会問題となっている。インドネシア首都圏において抗生物質を買い求める顧客の行動様式とそれに対する薬剤師の対応を明らかにし、抗生物質を用いた自己治療に係る要因を考察することを目的とした。
    方法
      南タンゲラン市チプタ地区における地域薬局6店で抗生物質を求めた200名の顧客に出口調査を行った。調査項目は健康保険加入・非加入を含めた一般属性のほか、来店時の処方箋の有無、購入にあたっての薬剤師の指示の有無など構造化質問表を用いた。また薬局に勤務する薬剤師、薬局経営者ら8名に半構造化インタビューを行った。調査項目は一日に抗生物質を買い求める顧客数、そのうち処方箋を持たない顧客の割合、薬剤師の顧客対応、経験した健康被害の有無などとした。調査は2012年5月下旬から7月初めにかけて実施した。
    結果
      薬局に抗生物質を買い求めに来た顧客の48.5% (97/200)が処方箋を持っていなかった。医師の受診か自己治療か、という選択は健康保険の加入の有無と有意に関連していなかった。処方箋を持たない患者が抗生物質を購入するときは飲み残しサンプルを薬局で提示するケースが51.9% (54/104)を占め、家族・友人あるいは薬剤師の推薦などに従うケースに比べて有意に多かった。薬剤師は薬剤耐性とアレルギー発現に留意して問診を行い,処方箋を持たない顧客に抗生物質を交付することは慎重であった。薬剤師は自己治療の問題を軽減するために顧客や地域への働きかけと患者教育が重要であると考えていた。
    結論
      健康保険の加入状況が処方箋の有無及び医師の受診頻度と有意に相関しなかったことは自己治療の選択が経済的要因だけではないことを示すものと考えられた。
    顧客の自信過剰な態度、飲み残しサンプルでの購入、家族・友人の勧めを薬剤師の勧めに優先させる傾向などから自己治療は限られた経験や情報に基づくヒューリスティックな選択であると同時に限られた選択肢の中でのリスクマネジメントであると考えらえた。
      抗生物質は治療効果が短期間で明白となることから高い学習効果と成功体験をもたらして自己治療に好都合である。この成功体験が自己治療の選択行動を強化していることが考えられた。行動変容を促す患者教育は薬剤師の新たな役割と期待される。
書評
特別企画第1回「21世紀のプラリマイヘルスケア」
第32回西日本地方会 講演・シンポジウム
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