国際保健医療
Online ISSN : 2436-7559
Print ISSN : 0917-6543
37 巻, 4 号
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原著
  • Chie Koh, Takako Chiba, Ryoko Yoshida, Misato Kato, Maho Mori, Akiko M ...
    2022 年37 巻4 号 p. 179-188
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/12
    ジャーナル フリー

    Objectives

      High gestational weight gain (GWG) is associated with perinatal risks to mother and child. Research shows that non-Japanese Asian women have higher GWG than Japanese women. However, no studies have compared GWG in these two populations using GWG recommendations in accordance with Japanese and Institute of Medicine (IOM) guidelines. The study aim was to compare GWG in non-Japanese Asian and Japanese pregnant women.

    Methods

      This was a retrospective observational study. All participants were aged ≥20 years and gave birth between September 2019 and the end of October 2020 at one perinatal medical center in Japan. Medical record data were analyzed for 170 non-Japanese Asian and 316 Japanese pregnant women. We used t-tests and chi-square tests to examine differences in age, parity, smoking status, antenatal checkups, pre-pregnancy body mass index, and GWG. Logistic regression analysis was used to estimate odds ratios (95% confidence intervals) for above- and below-recommended GWG by non-Japanese Asian and Japanese status. We also analyzed differences in delivery type, abnormal blood loss, and birth size according to GWG.

    Results

      After adjustment for confounding factors, the multivariable-adjusted OR and 95% CI for GWG above the Japanese guidelines recommendations was 1.86 (1.23-2.81) and that for GWG above IOM guidelines recommendations was 2.46 (1.45-4.16) for non-Japanese Asian women, as compared with Japanese women. Conversely, the multivariable-adjusted OR and 95% CI for GWG below Japanese guidelines recommendations was 1.55 (1.03-2.32) and that for GWG below IOM guidelines recommendations was 1.87 (1.26-2.76) for Japanese women, compared with non-Japanese Asian women.

    Conclusion

      Because Japanese women tend to be below recommended GWG and non-Japanese Asian women tend to be above recommended GWG, midwives need to provide careful guidance to reduce perinatal risks.

  • 淺野 いずみ, 柳澤 理子
    2022 年37 巻4 号 p. 189-198
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/12
    ジャーナル フリー

    目的

      発達障害児を育てる在留ブラジル人の母親が、「健常児を育てる母親」から「日本の保健医療福祉システムの中で発達障害児を育てる母親」に至るまでのトランジションプロセスを明らかにすることを目的とした。

    方法

      小学生以下の児で、発達障害と診断もしくは疑われてから1年以上当該児を育てている在留ブラジル人の母親11名を対象に、インタビューガイドに基づき、半構造化面接を行った。発達障害の疑いをもった時からの育児や療育の状況、母親の思いの変化の語りを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用い分析した。

    結果および考察

      研究参加者の平均年齢は37.4歳、子どもの年齢は2~8歳、男児9名、女児2名、全員が自閉スペクトラム症であった。発達障害児を育てる在留ブラジル人の母親が「健常児を育てる母親」から「日本の保健医療福祉システムの中で発達障害児を育てる母親」に至るまでのトランジションプロセスとして、19の概念、4つのカテゴリー« »、1つのコアカテゴリー【 】が生成された。

      母親は、1歳半前後より子どもの発達に«半信半疑の胸中»になっていた。実際に自閉症と診断がついたことで«混迷へのダイビング»をする感覚に陥っている母親もいた。診断前より、母親の思いの根底には«子どもに障害があることで引きずる痛み»があり、この思いは時間が経っても減少することはなかった。信頼できる人々との出会いが«強くしてくれる後押し»になり、前向きに育児へ向かうことができ、小さいことに囚われずただただ子どもの幸せを望み、子どものためなら何でもする母親、すなわち【子どものためのスーパーウーマン】へと変化していくプロセスが明らかになった。

      «半信半疑の胸中»を繰り返すこと、診断によって«混迷へのダイビング»を経験すること、やがて【子どものためのスーパーウーマン】になろうと決意していくプロセスは、日本人の母親を対象とした先行研究の報告と類似していた。最初に子どもの発達に疑いを抱いた時から初診にかかる期間の短さ、診断を求めて積極的に動く「待てない」心理は、ブラジル人の母親の特徴であった。

    結論

      ブラジル人の母親のトランジションプロセスは、日本人の母親と類似していたが、いくつかの特徴も見出された。待てない気持ちに対応し診断を契機に介入すること、後押ししてくれる存在を見出すことで、トランジションを進める支援ができると考える。

研究報告
  • 池田 絹代, 山﨑 恭子
    2022 年37 巻4 号 p. 199-209
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/12
    ジャーナル フリー

    目的

      首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)にある保健行政機関に所属する保健師が近年増加する在留外国人への母子保健活動を行うときに感じる異文化体験とそのとき起こる困難さについて、保健師の業務経験や語学力、国際経験などの個人的背景と所属機関の管轄人口や利用できる社会資源などの所属する機関の特徴を明らかにする。

    方法

      2019年12月中旬に母子保健事業を実施している首都圏の保健行政機関に質問紙を送付し、個別返送による郵送調査を実施した。保健師の個人的背景と所属機関の背景を記述統計で集計し、異文化体験とその時に困難さを感じた経験の有無で、χ²検定、フィッシャーの正確確率検定、Mann-WhitneyのU検定を行った。

    結果

      有効回答数は、265通(17.7%)で、外国人居住者への母子保健活動を通して言語以外で異文化を感じたことがあると回答したものは246人(92.8%)、そのうち困難さを感じたものは212人(80.0%)と多くの保健師が言語以外の異文化でも困難さを抱えていた。外国人居住者への支援は47.9%の保健師が、「他の業務と同じ」と回答し、特別な活動ではなくなっているが、25.3%の保健師は、「どうしてよいかわからない」「できれば避けたい」と苦手意識を抱えていた。9割の保健師には海外旅行経験があったが、3か月以上の在留経験は5%と少なかった。

      異文化体験の有無は、保健師業務歴と母子保健活動歴の長さ、 外国人居住者への継続的な関わりの有無と母子保健事業一覧(英語・その他の言語)の有無、通訳の有無に有意な差がみられた。異文化体験による業務上の困難さの有無は、所属機関の外国人人口割合の多さに有意な差がみられた。一方、保健師の語学力、渡航経験などとの関連は見られなかった。また、随時通訳が利用できる保健師は10.6%で、所属機関での研修の実施が3.0%と低かった。

    結論

      外国人人口割合の高い地域の保健師は、有意に業務上の困難さを抱えやすい傾向がみられたが、語学力や渡航経験などには関係なく、どのような保健師であっても困難さを抱える可能性があることがうかがえた。

      今後は、保健師の異文化や多様性への対応能力を養うために研修などの充実を図りつつ、より多様な社会資源を必要な時に利用できるように情報通信技術などを取り入れながら外国人居住者への対応を強化していく必要があると思われる。

活動報告
  • 神田 浩路, 伊藤 俊弘, 藤井 智子, 塩川 幸子, 吉田 貴彦
    2022 年37 巻4 号 p. 211-221
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/12
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    目的

      旭川医科大学では2008年より来日によるJICA課題別研修「アフリカ地域 地域保健担当官のための保健行政」を実施しているが、世界的なCOVID-19流行の影響を受けて2020年度は遠隔研修と翌年度の来日研修へと計画変更した。来日研修はCOVID-19流行継続により中止となったが、本稿ではこれまでとは異なるアプローチ・手段が求められる中での遠隔研修について、得られた教訓を報告する。

    方法:事前準備

      従来の7週間の来日研修から4週間の遠隔研修及び後日の来日研修に変更となったため、カリキュラムの見直しを行った。遠隔研修は2021年1~2月に開講され、5か国8名の研修員と2か国9名のオブザーバーが参加した。研修は1回90分、1日あたり2~3コマを基本とした音声付きパワーポイント資料に基づく自主学習を合計27コマ設定するとともにカントリーレポート発表及び自主学習に対する質疑応答を主な目的としたzoomセッションで構成した。Zoomセッションは1回あたり2~3時間とし、カントリーレポート発表2回、自主学習に対する質疑応答4回、ライブ講義を含めた質疑応答4回の合計10回を開催した。資料はGoogle Driveにて専用アカウントを作成し、指定されたURLより自由に閲覧できる状態にした。

    結果:研修実施

      自主学習で使用する音声付きパワーポイント資料は通信環境の制限から閲覧できない事象が発生したため、該当する27コマ中24コマを動画変換して急遽開設したYoutubeチャンネルにて公開した。動画は半コマ分13分から4コマ分211分までのものを作成した(1動画当たりの平均時間58分)。残りの3コマは音声なし資料(pdf)の提供とした。また、zoomセッションは時差を考慮して日本時間の午後5時、アフリカ時間の午前中から実施したが、研修員の多くは勤務中や移動中の参加であり、また通信状況が脆弱で参加が中断する場面もあった。しかしながら、研修員の学習意欲や積極的な議論参加、質疑応答の内容により、講義内容は理解できていたと推察される。

    考察

      今回の遠隔研修は、通信環境の脆弱さや執務時間中の参加等、研修実施側で改善できない事例が散見された。しかしながら、オンライン開催により容易にオブザーバー参加が可能となったことから、通常の来日研修よりも多くの参加者が一堂に会することができ、多様な交流、討論の機会を提供できた。今後、より良い研修成果を生むためにも、ホテルの借り上げ等による研修場所及び通信環境の確保等の工夫が求められる。

会員の声
再掲 「ネパール人の食事に関するスコーピングレビュー」
「国際保健医療」査読者一覧 2022年
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