国際保健医療
Online ISSN : 2436-7559
Print ISSN : 0917-6543
33 巻, 4 号
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研究報告
  • 前田 憲次
    2018 年33 巻4 号 p. 303-312
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/15
    ジャーナル フリー

    目的

      本研究は、文化変容方略に着目しつつ、フィリピン人技能実習生のメンタルヘルスに関連するリスク要因を明らかにすることを目的とした。

    方法

      メンタルヘルス(精神健康度、仕事と家庭生活の満足度)、文化変容方略(日本文化の重視度とフィリピン文化の重視度)、文化変容ストレス、ソーシャルサポート、仕事のストレス及び個人の基本的属性を変数として用い、フィリピン人技能実習生に対する(個別)自記式質問紙調査を行った。質問紙に回答した180名(男性115名、女性49名、性別未回答16名)のうち、回答に欠損のなかった132名(男性95名、女性37名)のデータを分析した。

    結果

      分析の結果、性別、婚姻状況、子供の有無、日本語レベル、文化変容方略及び文化変容ストレスが、フィリピン人技能実習生のメンタルヘルスに有意に関連していた。さらに、ソーシャルサポートが、日本語レベルと文化変容方略(日本文化の重視度)に有意に関連していた。

    結論

      (a)性別(女性より男性)、(b)独身であること、(c)子供がいること、(d)日本語レベルが低いこと、(e)日本文化を重視する程度が低いこと、(f)文化変容ストレスの程度が高いことは、フィリピン人技能実習生のメンタルヘルスを悪化させるリスクとなり得ることが示唆される。ソーシャルサポートが低いことは、日本語レベルと日本文化の重視度を下げるリスクとなり得ることが示唆される。したがって、日本語レベルを高めつつ、日本文化に慣れ親しんでもらえるようなサポートを行うことは、フィリピン人技能実習生のメンタルヘルスを保持増進するための方策の1つであると考えられる。さらに、母国の家族からの心理的サポートを得やすい環境づくりも重要であると考えられる。

資料
  • 小林 尚行
    2018 年33 巻4 号 p. 313-324
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/15
    ジャーナル フリー

    目的

      ミャンマーが軍事政権下に置かれていた時代においては援助国による支援活動は停止又は限定的な支援に留まっていたが、この状況は2011年の民主化の動きとともに徐々に打開された。ミャンマー政府は2013年にミャンマー開発協力フォーラムを開催し、開発パートナー(援助国、国際機関、国際的な基金等を含む)に今後の開発の方向性を明示した。保健医療分野については政府予算を増加させ、SDGsのターゲットであるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成を今後の目標として掲げるとともに、その具体化に向けて「国家保健計画2017-2021」を2017年に策定した。これらの環境の変化に応じ、開発パートナーが考慮すべき事項について考察を試みた。

    方法

      現地調査及び文献検索により政府と開発パートナーの動向を調べ、UHCの達成にむけて検討が必要な事項と開発パートナーが考慮すべき事項を整理した。

    結果と結論

      MDGsの下では主に母子保健や特定の疾患対策に焦点が置かれ、特に保健医療サービスの強化に開発パートナーの支援が集中する傾向があった。UHC達成を目標として掲げ、全ての人々に経済的な負担が無く保健医療サービスを展開していくためには、ミャンマー国全体の保健医療における課題を分析した上で総合的な医療政策の策定及び実施を行うことが必要となってきている。この変化に対し開発パートナーはミャンマー国の医療政策課題に対応した形で支援を具体化していくことが必要である。

  • 小寺 さやか, 上谷 真由美, 中島 英, 千場 直美
    2018 年33 巻4 号 p. 325-336
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/15
    ジャーナル フリー

    目的:本研究は、日本の大学に在籍する外国人留学生の保健行動(健康行動及び受診行動)とその関連要因を明らかにすることを目的とした。

    方法:A県内の一国立大学に在籍する外国人留学生274人に、留学生センター等において直接または指導教員を介して研究協力依頼文書を配布した。データ収集には、ウェブサイトを用いた無記名による自記式質問紙調査(英語又は日本語)を用いた。調査内容は、基本属性(出身国、滞在期間、日本語習熟度等)、経済状況(経済的不安、奨学金の有無等)、ソーシャルサポート、健康行動と受診行動の実施状況、ヘルスリテラシー(HLS-EU-Q16)等であった。病気やけがの際に「病院や診療所に行った」経験を持つ者又はその意思を持つ者を受診行動あり群とした。各項目と健康行動合計得点及び受診行動の有無との関連について二変量解析を行った。

    結果:調査回答者は70人で(回収率25.5%)、すべてを分析対象とした。対象者の平均年齢は25.0±4.1歳、出身国は中国が44.3%(31人)で最も多く、滞在期間は「1年以上5年未満」が54.3%(38人)と約半数を占めた。経済的に不安がある者は50.0%(35人)、相談できる日本人友人の数は「5人未満」が40.0%(28人)で最も多かった。健康行動合計得点と関連が見られた項目は、相談できる日本人友人の数であった(p=0.026)。受診行動あり群は41人(58.6%)で、受診行動の有無と関連が見られた項目は、滞在期間のみであった(p=0.034)。また、健康行動及び受診行動ともに経済不安、ヘルスリテラシーとは有意な関連を認めなかった。

    結論:日本の大学に在籍する外国人留学生の保健行動の関連要因として、相談できる日本人友人の数及び滞在期間が明らかとなった。ヘルスリテラシーとは関連が認められなかったことから、本来有しているヘルスリテラシーが日本で活かされていない可能性がある。外国人留学生に望ましい保健行動を促すためには、外国人留学生と日本人学生との交流の機会を増やすこと、早期に外国人留学生が日本の保健医療システムについて学ぶ機会を提供すること等が有効である可能性が示唆された。

地方会報告
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