国際保健医療
Online ISSN : 2436-7559
Print ISSN : 0917-6543
35 巻, 1 号
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中村哲先生追悼特集
原著
  • Aurora G. Querri, Akihiro Ohkado, Lisa Kawatsu, Jesse Bermejo, Armie V ...
    2020 年 35 巻 1 号 p. 15-25
    発行日: 2020/03/20
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    Introduction

      The Philippines adopted the primary health care (PHC) strategy in 1978 to deliver essential health services in the community related to prevention and control of prevalent health problems. The barangay health workers (BHWs) are expected to play a key role in profiling the health of the community by maintaining and updating a comprehensive dataset of the community, called the “thirteen folders”, through conducting routine house visits (Appendix A). This study aimed to determine the utilization and challenges in updating the 13-folders and its usefulness in conducting community activities of BHWs at the primary care level.

    Methods

      This study utilized a mixed- method of descriptive epidemiology and qualitative analysis, whereby data was collected from various resources as well as structured interview with 20 nurses and 31 BHWs in Districts I and VI, of Manila City. Questions related to activities of BHWs in identifying and profiling communities through house visits, utilization of feedback report and the challenges encountered were asked.

    Results

      None of the health centers met the BHW to community ratio of 1: 20 residents. Only one out of 31 BHWs conducted community visits as required or four times a week. In fact, irregular visits resulted to failure in conducting community profiling and in delays in updating the 13-folder with missing information noted in some folders. The BHWs’ role is perceived by both nurses and BHWs as assisting in objective-specific activities and as health educators. Delays in honorarium and duplicating tasks in updating the 13-folders were revealed as potential issues that could hamper their performance.

    Conclusion

      The BHWs are crucial in assisting health staff towards provision of responsive health services; however, lack of human resource should be addressed to reduce additional workload among BHWs. The 13-Folder is an imperative tool to identify the needs of the community other than health concerns but careful assessment is required to reduce repetitive tasks and to determine its value in improving community health outcomes. The delayed provision of honorarium should be dealt with to avoid further demotivation among BHWs. Finally, a refresher training should be considered to optimized the role of BHWs at the PHC level.

研究報告
  • 上林 千佳, 近藤 暁子, 小泉 麻美, 二見 茜
    2020 年 35 巻 1 号 p. 27-38
    発行日: 2020/03/20
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    目的

      看護師の外国人患者対応研修に関するニーズおよび参加意欲とその関連要因を明らかにすることを目的とする。

    方法

      都内の1つの大学病院と1つの総合病院に勤務している看護師全員を対象にGoogleフォームを使用して質問調査を実施した。ニーズ、参加意欲のある研修内容については記述統計で集計し、関連要因はFisherの直接法、t検定、Mann-Whitney U検定、Spearmanの相関係数を使用して分析した。

    結果

      大学病院から98名(回収率11.3%)、総合病院から40名(回収率11.4%)、合計138名から回答があり(回収率11.3%)、全回答を分析対象とした。大学病院の方が学士課程を卒業した看護師が多く、主観的英語能力が高かった。外国人の看護にストレスや不安を感じるかは、「非常に感じる」と「感じる」を合わせて59.7%であり、研修が「必要だと思う」は77.5%であった。

      参加意欲のある研修内容は「語学研修」が最も多く、次いで「異文化・宗教への対応」であった。希望する語学研修の内容は、「一般的なコミュニケーション」が最も多く、続いて「専門的な言語」であった。参加したいと思う言語は、英語が最も多く、次いで中国語であった。研修への参加意欲は「予定を合わせて参加したい」は24.6%、「予定が合えば参加したい」は59.4%であった。研修の形式は「講義・演習の組み合わせ」、研修場所は「病院の講義室」の希望が最も多かった。

      研修へのニーズは英語が全く話せないと回答した対象者(z=−2.352、p=0.019)、外国人対応能力を上げたいと思っている対象者(ρ=0.473、p<0.001)、外国人患者の看護にストレス/不安を感じている対象者が(ρ=0.280、p=0.001)より高く感じていた。また、研修への参加意欲は、現在外国語を定期的に学習している対象者の方が、していない対象よりも高かった。学位・経験年数とニーズ及び参加意欲との関連は見られなかった。

    結論

      外国人患者対応研修に関するニーズとして最も高かったのは英語による一般的なコミュニケーションであった。研修への参加意欲は「予定が合えば参加したい」が最も多く、研修の参加数を確保するためには業務時間内での実施、院内での開催など参加しやすい環境を整備計画する必要があると考えられる。

活動報告
  • 藤田 さやか, 立部 知保里, 森田 耕平, 中水 かおる
    2020 年 35 巻 1 号 p. 39-47
    発行日: 2020/03/20
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    目的

      独立行政法人日本学生支援機構の委託事業の一環として、2017年12月に兵庫県内で、産官学連携による「留学生・在住外国人と日本人学生・日本人がともに学ぶ防災ワークショップ(以下、ワークショップ)」を開催し、避難所における災害時の健康被害の予防および生活の維持を軸にした避難所体験を企画した。日本在留外国人の防災教育における課題と備えの支援の検討につながる資料とすることを目的とし、参加者に質問紙調査を行ったため報告する。

    方法

      ワークショップの参加者に、避難所における健康問題に関する知識の有無、避難所内での健康相談を体験した感想などについて質問紙で回答を得た。

    結果

      ワークショップ参加者48名中25名(外国籍14、日本国籍11)から回答が得られた。回答者の約半数が、避難所における心身の健康問題をワークショップに参加したことで知ったと答えた。回答者の48%が避難所における健康相談の体験をし、そのうち外国籍者は相談時の困難性として「言葉やコミュニケーション」「日本の医療や医療用語の理解のなさ」を挙げた。また体験者は「避難所に看護職がいることを知ることができた」「自分の健康状態を知ることができた」など、日本の災害時の避難所における医療体制や疾患に対する知識を得たほか、「安心する」「不安が解決できる」という感覚を持つことができた。避難所での健康維持のために必要な支援について、外国籍参加者からは、薬・衛生環境や基本的な生活資源などの物的支援、身体面精神面のサポート、情報提供と共有に関するニーズが挙げられた。

    考察

      日本在留外国人に対し、災害後の中長期的な避難生活を想定した訓練の実績はなかったが、本ワークショップは多領域の専門家を含む産官学連携による開催であり、外国人の災害時の生活健康課題に対し網羅的に内容を検討することができた。レクチャーや避難所での生活体験を通した平時との生活の変化や健康面への影響の理解および、健康相談の体験を通した言語面や自身の健康状態への課題の発見が、災害時を想定した具体的な支援ニーズをもたらしたものと考える。外国人は言語面の不安から相談を躊躇する傾向があり、不安を軽減するため避難所における支援体制や診療体制を明確にして提示すること、使用頻度の多い医療用語や病名・症状、および健康指導内容などは多言語化しておく必要がある。

資料
  • 村上 仁, 神田 未和, 中島 玖, 澤柳 孝浩, 曽我 建太, 濱田 憲和, 池上 清子
    2020 年 35 巻 1 号 p. 49-64
    発行日: 2020/03/20
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

    目的

      本研究の目的は、日本でSDGsの保健目標(目標3)とジェンダー目標(目標5)を相乗的に達成していくために日本が取るべき具体的方策を、ジェンダー分析に基づいた日本とイギリスの比較から明確化することである。

    方法

      日本では、ジェンダー平等を目指して活動する機関のジェンダー専門家8名と産婦人科医2名に、イギリスでは、保健とジェンダーの分野に深く関わりのある政府組織、市民社会、アカデミアから9名に、性と生殖に関わる健康・権利ならびにジェンダーに基づく暴力対策の現状につき、詳細面談および文献調査を実施した。テープ起こしをした原稿につき、質的内容分析を実施した。

    結果

      「避妊・人工妊娠中絶」、「性感染症対策」、「性教育」、「婦人科系がん対策」、「ジェンダーに基づく暴力対策」の各項目につき、ジェンダー視点からみた日英の現状を明らかにした。比較の結果、特に「避妊・人工妊娠中絶」、「性教育」、「ジェンダーに基づく暴力対策」につき、両国の取り組みに差が見られた。イギリスではジェンダー・トランスフォーマティブ(女性の状況の改善だけでなく女性の社会的地位を改善し、彼女たちが権利を十分に行使できることを目指す)な取り組みが行われている一方、日本ではそのような取り組みに未だ踏み出していない施策として、1)避妊法の選択肢の確保と費用の低減化(緊急避妊薬へのアクセス改善を含む)、2)人工妊娠中絶を女性の意志のみで実施できるようにすること、3)人間関係を含めた包括的な性教育の体系的な実施、4)ジェンダーに基づく暴力に対応する戦略策定の4点が明らかとなった。

    結論

      結果から導かれた4点を進めることで、日本においてSDGsの目標3と目標5を相乗的に達成していけると思われる。そのためには、政策決定への市民社会の参画の拡大と、女性議員比率の向上が助けになると考えられる。

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