国際保健医療
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21 巻, 3 号
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原著
  • 水元 芳, パンチャランティ ノングラック, パラディパッセン マンダナ, スミタシリ スティラック
    2006 年 21 巻 3 号 p. 161-168
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/02/15
    ジャーナル フリー
    本研究は、近年増加する高血圧症が取り組むべき課題として掲げられるタイにおいて、異なる社会経済的階層人口が混在するナコンパトム県プトモントン地区での高血圧症と生活習慣に起因するリスク因子の究明を試みたものである。40歳以上の女性224名を対象とした症例対象研究であり、データは質問票を用いた面接法で収集された。
    調査対象地区において、高血圧と最も関係の深い因子は肥満であった(OR=2.05, 95% CI=1.62-3.63)。糖尿病もまた同地区における高血圧のリスク因子であり(OR=2.42、95% CI=1.08-5.43)、肥満者で糖尿病を有する対象者が高血圧症を併発するリスクは通常の約4倍も高くなることが認められた(OR=4.10, 95% CI=1.17-15.72)。タイでは、一般的に塩分の過剰摂取が近年の高血圧症増加の主要な原因と考えられている、しかし、本研究結果では、高血圧症の有無と塩分摂取量の間に有意な関係は認められず、今後この対象地域で高血圧症対策のプログラムを展開させる際には体重コントロールを重点的に行うことが効果的であり、生活習慣病予防対策を講じる際には地域の人々の生活習慣に係る特性を踏まえたプログラム作成が効果的であることを示唆している。
  • -国際緊急医療援助活動参加者に対する意識調査-
    福山 由美, 新地 浩一, 新地 豊香, 松崎 由美, 古川 真三子, 高村 政志, 加來 浩器, 小野 健一郎, 山川 裕子, 木村 裕美
    2006 年 21 巻 3 号 p. 169-175
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/02/15
    ジャーナル フリー
    国際緊急援助活動(IDR)における看護師の役割は、派遣された医療チームの状況により様々であり、過去には準医師的業務を実施したという報告もある。本研究は、従来あいまいであったIDRにおける看護師の役割を明確にし、どの様な業務を看護師の役割として考えるべきかを検討した。
    過去にIDRに参加した経験のある医療従事者61名を対象に、自記式質問紙調査票を郵送にて配布した。調査期間は2005年9月1日-12月31日の4ヶ月間である。調査内容は、先行研究等で実際に看護師が実施したと報告された業務内容17項目を抽出し、それぞれの業務が適切であるか、またIDRで求められる看護師の役割についての意識調査を実施した。回収は53名で、有効回答を得た50名(医師24名、看護師17名、医療調整員等9名)を解析対象とした。
    調査の結果、適切な災害看護に関する教育やトレーニングを受けていれば、「トリアージ」および「創洗浄」はIDRにおける看護師の役割として可能であるが、「縫合」、「デブリードメント」、「切開」、「抜糸」に関しては、IDRにおける看護師の役割として困難であろうと、調査対象者が考えていることが判明した。
  • 池田 若葉, 馬 斌, 松葉 剛, 邱 冬梅, 徐 軍, 稲葉 裕
    2006 年 21 巻 3 号 p. 177-183
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/02/15
    ジャーナル フリー
    [目的]
    SARSは、2002年11月に中国広東省で発生し、2003年の3月頃より中国、香港を中心に流行したが、同年7月に拡散は一端終息した。新たな感染症に対する危機意識は、今なお流行地の人々を中心に存在していると思われる。特に外国人就学生は、語学能力、生活習慣の違い等の要因から感染症対策上の感染源としてハイリスクグループと目されている。
    本研究の目的は、外国人就学生を対象に、重症急性呼吸器症候群(SARS)に対する知識・態度・行動について調査し、日本における新興感染症対策の基礎資料とすることである。
    [方法]
    対象は、日本の大学、短大等に進学するために日本語を学ぶ、東京都内の日本語学校に在籍する外国人就学生303人である。自記式質問紙調査票(14項目)を直接配布、回収する方法で2003年6月27日から7月13日にかけて実施した。統計学的解析はχ2検定、t検定、因子分析を用い、有意水準は全て5%とした。
    [結果]
    対象者の平均年齢は、男性22.8歳、女性22.6歳だった。出身地は、中国大陸が76.8%(n=218)と圧倒的に多く、対象者の殆どが来日一年未満であった(70.9%(n=205))。
    SARSの症状等に関する「知識」は、出身地に関係なく96.4%(n=292)と殆どの人が知っていた。
    「態度」では、「SARSに罹るかもしれないので流行地へは渡航しない」と答えた人が51.6%(n=146)と多かった。
    「行動」では、「SARS予防のために頻繁に行う手洗い」が79.8%(n=233)と一番多かった。「知識」の正確さや「行動」、「態度」の全項目において、流行地、非流行地のいずれとの関係も認められなかった。しかし、利用した情報源において「ラジオ(p<0.01)」と「家族(p<0.05)」に差が認められ、流行地出身者の方が非流行地出身者より高い割合であった。また情報源についての因子分析の結果、3つの因子が抽出され(言語因子、コミュニケーション頻度因子、マスメディア因子)、「言語」と「コミュニケーション頻度」は相反する関係であることが示唆された。
    [結論]
    本研究により、外国人就学生の重症急性呼吸器症候群(SARS)に対する知識・態度・行動が明らかになった。この知見は、新興感染症対策の基礎資料として有用となるに違いない。
総説
  • 古藤 吾郎, 嶋根 卓也, 吉田 智子, 三砂 ちづる
    2006 年 21 巻 3 号 p. 185-195
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/02/15
    ジャーナル フリー
    This article presents harm reduction, which was recently developed in response to the expansion of injection drug use and the HIV/AIDS epidemic. The authors describe the essence of harm reduction, proposing that harm reduction is a pragmatic strategy from a public health perspective to deal with injection drug use. Also, how harm reduction complements the traditional strategies to eradicate illicit drug use based on abstinence (so called, War on Drugs, or Just Say NO) is discussed. By describing key principles of harm reduction, such as low-threshold programs, non-judgmental attitudes, priority of immediate goals, and balancing costs and benefits, the authors introduce major harm reduction programs, which include needle/syringe exchange, outreach, counseling and education, supervised injection sites, and substitution treatment. Substantial evidence demonstrates harm reduction is effective in preventing the spread of HIV. Although international bodies, such as UNAIDS and WHO, advocate harm reduction strategies for the better prevention from the spread of HIV/AIDS, and some countries have adopted national harm reduction policies, United States discourages harm reduction policies in fighting the global HIV/AIDS pandemic. Finally, the authors address the effectiveness of harm reduction from the public health perspectives to deal with AIDS epidemic among injection drug users and the necessity of comprehensive understanding and multifaceted application of harm reduction. They also present the need to rethink Japanese government policies and social programs to meet drug users' health needs.
フォーラム
資料
  • 香取 さやか
    2006 年 21 巻 3 号 p. 201-209
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/02/15
    ジャーナル フリー
    目的:本調査は、ビエンチャン市に暮らす学齢期の脳性まひ児について、その生活や介護の様子を記述することを目的とした。特に児を取り巻くコミュニティーのあり方について検討することを重点に置いた。
    方法:ビエンチャン市に住む学齢期の脳性まひ児で、特に日常生活動作全般にわたり介助の必要な者20名とその家族を対象に家庭訪問とインタビューを行い、うち15名について分析を行った。更に、そのうち2名について5日間ずつのケーススタディ観察を行い、日常生活や関与者を記録した。
    結果:多くの児で日常的な公的サービスの利用はなく、家族が介護の全般を担っていた。児の活動圏は家の周りに限られていたが、親戚や地域の人々による児の生活への関与は大人も子供も非常に大きく、児が1人になる時間はほとんどない事が明らかになった。
    考察:福祉サービスが未発達なビエンチャン市であるが、今後地域を基盤とした障害児ケアのあり方を考える際、住民による子供の見守りに関する既存のネットワークは非常に有意義であると思われた。
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