国際保健医療
Online ISSN : 2436-7559
Print ISSN : 0917-6543
30 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
川原啓美先生追悼特集
[川原啓美先生追悼文]
[第25巻第3号寄稿]
第55回日本熱帯医学会大会・第29回日本国際保健医療学会学術大会英文抄録
資料
  • 吉田 和枝
    2015 年30 巻3 号 p. 241-250
    発行日: 2015/09/20
    公開日: 2015/10/15
    ジャーナル フリー
    目的
      10代で出産したタイ南部の女性の妊娠前から産褥期までの心理社会的側面からの変化を記述し母性看護の視点からの援助について考察することを目的とした。
    方法
      質的記述的研究。タイ南部の10代の産褥期の女性9人に妊娠前から産褥にかけての生活や心の変化についての聞き取り調査を行った。データをコード化し類似コードを集めカテゴリー化し分析した。
    結果と考察
      対象者の平均年齢は16.8歳で初産婦7人、経産婦2人であった。その内4人は義務教育を修了していなかった。全員が無計画妊娠であり、性に関する知識は低かった。妊娠管理が不十分な人がいた。早産が1人、新生児9人の内、5人が低出生体重児であった。対象者達は貧困家庭に育ち«貧困家庭からくる劣等感»を持っていた。人間関係をうまく構築できず、«楽しくない学校生活と学業中断»があった。«学校から離脱後の目標がない生活»の中で、恋愛し妊娠をした。妊娠確定後は動揺し危機に瀕していた。親に告白後、親の主導で結婚した後、«周囲に承認されたことでの安堵と出産への前向きな意識»に大きく変化した。出産後は、«子への愛情の芽生え»«育児への前向きな気持ち»が見られた。また学業に対して出産後は«就職につなげるための学業への前向きな視線»に変化する語りが聞かれた。
      医療施設や行政レベルの母子保健体制が整っている地域であったが、対象者達は地域社会でリプロダクティブ・ヘルスに関する教育や相談、保健指導等を受けていなかった。対象者達は未熟で社会資源へのアクセス能力が低い。10代の望まない妊娠を予防するためや、また、出産した場合には、その後の生活のためにも、若者が母子保健の社会資源にアクセスしやすく、主体的に地域社会に参加ができるような働きかけが必要である。特に義務教育修了前に学校を離脱した人へのリプロダクティブ・ヘルスに関する包括的教育は地域でなされる必要がある。ピアサポーターの養成や、地域住民のネットワーク活動の支援、10代育児グループなどの形成促進などが必要である。
第29回日本国際保健医療学会学術大会合同大会ミニシンポジウム報告
  • 橋本 麻由美, 五十嵐 久美子, 田代 順子, 橋本 千代子
    2015 年30 巻3 号 p. 251-264
    発行日: 2015/09/20
    公開日: 2015/10/15
    ジャーナル フリー
      現在、ポストMDGsとしてユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)達成が挙げられており、保健人材のパフォーマンス向上が求められている。保健人材開発は国家的なUHC戦略として重要視されている。そこで、UHCと看護をテーマに、東南アジア地域における看護の動向を概観し、実践能力強化を目指した看護人材開発の課題と今後の支援の方向性を検討することを目的に本シンポジウムを企画した。
      シンポジウムでは、シンポジストの田代は「UHCにおける看護の役割」と題して、UHCの概念を説明した後、日本の健康課題の変遷とUHC達成における看護職の貢献を述べ、国際協働に必要な日本の看護人材の役割と能力ならびに教育プログラムを提示した。橋本は、「東南アジア地域の開発途上国における看護人材開発の動向-専門職としての規制枠組みを視点として-」と題し、東南アジア地域の保健人材の状況を概観した後、ラオス・カンボジア・ベトナム・ミャンマーの看護人材に関する規制枠組みの状況と法規運用による看護実践能力強化の取り組みを国ごとに説明し、東南アジア地域の開発途上国の看護人材の動向として、過去10年間に急速に法規が制定されたことと、法規を運用した看護実践能力強化の課題を挙げた。五十嵐は、「アジア地域新興国における看護政策の現状」と題し、タイとインドネシアの看護政策を概観した後、インドネシアにおける法規運用による看護実践能力向上の取り組みを説明し、自律的な域内のネットワーク強化支援を提案した。討論では、看護職能団体の立場から職能団体の役割や政策決定に看護職が関与する強固な仕組み、医療施設看護部の立場より看護実践能力を備えた自立した看護師育成の重要性、政府開発援助実施機関の立場より世界的保健課題としての看護人材育成や看護職の法規整備の重要性、看護職の多様性に関する発言があった。
      東南アジア地域のUHCは様々な段階にあり、看護人材は、UHCの全ての段階において重要な役割を担う保健人材の中で最も多数を占める専門職である。看護分野の国際協力は、経済発展に応じて変化する保健システムに対応した戦略的で総合的な看護人材開発支援が求められており、そのアプローチは多様化している。日本からの支援として、国際協力に関わる日本人のネットワーク強化を図り、必要とされる支援の多様性に対応することと、東南アジア域内の自立的なネットワーク強化が示唆された。
書評
feedback
Top