目的 10代で出産したタイ南部の女性の妊娠前から産褥期までの心理社会的側面からの変化を記述し母性看護の視点からの援助について考察することを目的とした。
方法 質的記述的研究。タイ南部の10代の産褥期の女性9人に妊娠前から産褥にかけての生活や心の変化についての聞き取り調査を行った。データをコード化し類似コードを集めカテゴリー化し分析した。
結果と考察 対象者の平均年齢は16.8歳で初産婦7人、経産婦2人であった。その内4人は義務教育を修了していなかった。全員が無計画妊娠であり、性に関する知識は低かった。妊娠管理が不十分な人がいた。早産が1人、新生児9人の内、5人が低出生体重児であった。対象者達は貧困家庭に育ち«貧困家庭からくる劣等感»を持っていた。人間関係をうまく構築できず、«楽しくない学校生活と学業中断»があった。«学校から離脱後の目標がない生活»の中で、恋愛し妊娠をした。妊娠確定後は動揺し危機に瀕していた。親に告白後、親の主導で結婚した後、«周囲に承認されたことでの安堵と出産への前向きな意識»に大きく変化した。出産後は、«子への愛情の芽生え»«育児への前向きな気持ち»が見られた。また学業に対して出産後は«就職につなげるための学業への前向きな視線»に変化する語りが聞かれた。
医療施設や行政レベルの母子保健体制が整っている地域であったが、対象者達は地域社会でリプロダクティブ・ヘルスに関する教育や相談、保健指導等を受けていなかった。対象者達は未熟で社会資源へのアクセス能力が低い。10代の望まない妊娠を予防するためや、また、出産した場合には、その後の生活のためにも、若者が母子保健の社会資源にアクセスしやすく、主体的に地域社会に参加ができるような働きかけが必要である。特に義務教育修了前に学校を離脱した人へのリプロダクティブ・ヘルスに関する包括的教育は地域でなされる必要がある。ピアサポーターの養成や、地域住民のネットワーク活動の支援、10代育児グループなどの形成促進などが必要である。
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