緒言 静岡てんかん神経医療センターは 2002年から WHO(国際保健機構)、ILAE(国際抗てんかん連盟)、 IBE(国際てんかん協会)のてんかんに関する世界的キャンペーンの一環としてモンゴル国への医療協力事業を行っている。活動について報告すると共に、モンゴル国におけるてんかんケアの現状を紹介し、今後の課題を考察する。
モンゴル国におけるてんかん モンゴルではてんかん患者は増加しているが、その主な原因となっているのは交通事故などによる頭部外傷である。
モンゴル国のてんかん患者をとりまく問題点 モンゴル国のてんかん診療の問題点として、てんかん外科医を含む専門医が殆どいないことにより、国内で十分な治療が受けられないことが挙げられる。また首都ウランバートルですら脳波計、 CT、MRIなどの診断機器が不足しており、さらに検査は非常に高額である。治療薬の供給不足や保険適応範囲の狭さから、継続的な診療が難しい患者も多い。またインフラの未整備による中枢病院へのアクセスの悪さから、診断や治療に困難を来たしている。
当院の活動 我々は医療職に対する啓発活動や教育を通じて専門医の育成に努めている。また診断機器などについても援助を行った。
現状の考察とこれからの課題 人材の育成が最も重要であると考えられることから、今後も現地での啓発活動や日本への研修医師の受け入れ、技師の育成などを通じて同国のてんかん診療への協力を行う予定である。慢性的な人的、物的医療資源の不足があるため、ウランバートルにセンターを設立して薬剤や消費財の安定供給を図り、情報網やインフラの整備を行うのがよいと考える。近年はモンゴル人の手によるてんかんに関する啓発活動などの取り組みも行われつつある。てんかんに関する啓発活動は疾患への偏見や差別の解消、疾患そのものの予防という視点から特に有効と考えられる。モンゴル国のてんかん患者の置かれている厳しい状況の改善のためにさらに協力を続けたい。
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