背景ミレニアム開発目標5の「妊産婦の健康の改善」は、2015年までに妊産婦死亡率を3分の2に削減することを目標としている。サブサハラアフリカ地域では、医師不足のため、助産師が出産の介助において、重要な役割を果たしている。従って、開発目標5の達成のためには、助産師の能力強化が必須である。しかし、助産師が行う分娩介助ケアの質については、これまであまり議論されてこなかった。
目的本調査の目的は、タンザニアの公立病院の分娩室において、助産師が行う分娩介助ケアの参与観察を通して、そのケアの質を評価することである。
方法1.分娩記録からのデータ収集
2.分娩室における分娩介助ケアの観察
2008年8月18日から25日の1週間、延べ43時間に渡り、タンザニアの首都ダルエスサラームのムワナニャマラ病院の分娩室において、分娩介助ケアの参与観察を行った。評価と分析には、「WHOの正常な出産ケア59カ条」を基準として用いた。
3.助産師10名に対するインタビュー
結果7日間の分娩件数は257件であり、15件の死産があった。死産の原因で、最も多かったのは臍帯頚部巻絡であった。産婦の平均年齢は23.8才であった。初産婦は55.5%を占めた。スタッフ不足は顕著で、3交代につき、3人の助産師·看護師で、全分娩を介助していた。
分娩ケアの質の評価分析では、主に3つの問題点が明らかになった。(1)産婦中心のケアが行われていない。(2)継続的な母児のモニタリングができていない。(3)薬剤投与や産科処置の危険な実施が見られる。
助産師は出血や感染をリスクとして認識していたが、その対処に関する標準はなかった。
結論MDG5の目標達成のためには、指標のみに着目するのではなく、助産師のケアの質を向上させていく必要がある。
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