国際保健医療
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22 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
オピニオン
  • 明石 秀親
    2007 年 22 巻 3 号 p. 123-126
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/05
    ジャーナル フリー
    “What should be taught in the lectures of International Health?” is the important issue in the field of education on health, because there is few standard, guideline, or consensus about the contents of lectures on International Health now in Japan. Therefore, each school, such as medical university, nursing school, post-graduate school, and so on, has different curriculums on International Health.
    In this occasion, I would like to propose that the Association of International Health should formulate some recommendations on “what should be taught” in this field of International Health for the students of different specialties. These recommendations can be meaningful to standardize the curriculums on International Health in schools on health and to be the first step to provide the study opportunities for the students who are interested in International Health but have few opportunities to learn it. In addition, some “new point of view or sense” which we can learn through the humanitarian assistance activities for developing countries should be included in the lectures for fostering the humanities of the students.
  • 湯浅 資之, 中馬 潤子, 蝋山 はるみ, 建野 正毅
    2007 年 22 巻 3 号 p. 127-132
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/05
    ジャーナル フリー
    健康は、個人の医学生物学的特性のほかに行動要因や社会環境的要因によっても大きく影響を受けている。世界保健機関は1986年にカナダのオタワでヘルスプロモーションに関する憲章を公表した。それは、人々が健康を規定するこうした様々な要因を自らコントロールし、健康を改善していくことができるようにさせる戦略であった。従って、リスクのある行動や不適切な社会的、自然的環境に由来する疾病や傷害を予防するには、ヘルスプロモーションは不可欠な戦略であると言える。全ての開発途上国は行動と環境に関係する多くの健康問題を抱えているので、この戦略は有用であると思われる。我が国はこれまで多くの健康教育や環境改善の諸活動を通じてかかる健康の決定要因を制御してきた経験を有している。このため、途上国に対する政府開発援助による国際保健医療協力において、我が国はヘルスプロモーションに基づくプロジェクトを一層促進していくことが望まれる。
原著
  • 峯岸 道人, 藤盛 啓成, 中島 範昭, 渡辺 道雄, 土井 秀之, 大友 浩志, 大内 憲明, 里見 進
    2007 年 22 巻 3 号 p. 133-141
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/05
    ジャーナル フリー
    背景
    太平洋諸島は世界で最も肥満と糖尿病の有病率が高い地域のひとつである。マーシャル諸島共和国(RMI)は北緯4°から18°、東経160°から174°に位置するミクロネシア人の独立国である。過去に太平洋諸島の住民の糖尿病に関する報告は幾つかある、しかし、RMIの首都Majuroにおける糖尿病の報告は未だ無い。RMIにおいても糖尿病と肥満は深刻な問題と認識されているが、実態を把握できないでいる現状がある。
    目的
    Majuroにおける糖尿病と肥満の実態の調査、および有病率に関する初歩的研究。
    方法
    Majuroで行った甲状腺癌検診受診者のうち850人に対してBMIおよびHbA1cの測定を行った。HbA1c 6.5%以上を糖尿病、BMI 30以上を肥満として扱った。有病率の年齢調整は1999年RMI国勢調査の人口に基づいて行った。標準化はSegiの世界人口を用いた。
    結果
    Majuroにおける糖尿病の年齢調整有病率は20歳以上で22.1%(男性27.1%、女性20.5%)であった。標準化有病率は31.0%(男性35.4%、女性29.4%)であった。
    結語
    RMIにおいても、他の熱帯諸島と同様に糖尿病の有病率は高率であることが示唆された。更にランダマイズされた集団での疫学的研究が必要である。
  • Agustin KUSUMAYATI, Yasuhide NAKAMURA
    2007 年 22 巻 3 号 p. 143-151
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/05
    ジャーナル フリー
    Objective
    To assess the effects of the utilization of Maternal and Child Health Handbook (MCHH) in West Sumatra on the utilization of maternal health services.
    Methods
    A repeated cross sectional study design was used. Three consecutive surveys were conducted in two districts, in 1999, 2001 and 2003, involving respectively 611, 621, and 630 mothers (pregnant and/or with one or more children under age three) as respondents. Respondents for each survey were selected from the same sub-districts and villages, using a multistage random sampling method. Data were collected primarily by using a pre-tested structured questionnaire. Multiple logistic regression analyses were carried out to estimate the net effects of the MCHH on mother's use of maternal health services.
    Results
    After controlling for other influencing factors, utilization of MCHH was found to be associated with better maternal knowledge regarding antenatal care (ANC), tetanus toxoid (TT) immunization and skilled birth attendance. MCHH utilization was also associated with higher likelihood of mothers' utilizing ANC, TT immunization and family planning services, and of use or planned use of skilled birth attendance. Simply owning the handbook did not affect maternal knowledge and was only associated with higher utilization of skilled birth attendance.
    Discussion
    The MCHH needs some modification, taking into account the educational level of the targeted mothers. Appropriate health care provider training is needed to promote the use of the MCHH as a tool for encouraging and focusing communication between mothers and health care providers, as well as to ensure that health care providers are able to use the handbook.
    Conclusion
    Utilization of the MCHH has the potential both to improve maternal knowledge and to increase the utilization of maternal health services. For maximum benefits, the handbook should be actively used by both mothers and health care providers.
活動報告
  • 清水 育子
    2007 年 22 巻 3 号 p. 153-161
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/05
    ジャーナル フリー
    方法・目的
    ドミニカ共和国の北西、ハイチ国境沿いに位置するダハボン州において、保健省ダハボン州事務所と米州開発銀行(IDB)ジャパンプログラムは、母子保健向上パイロットプロジェクトの主要ツールとして母子健康手帳(以下、母子手帳)を導入した。本稿では、筆者がIDBコンサルタントとして本プロジェクトに携わった経験を基に、母子手帳の普及活動と結果を述べ、その持続性と波及性に言及し、他地域で類似活動を行う上で参考になる一例としたい。
    活 動
    プロジェクトの活動は大きく3つのフェーズ(段階)に分けることができる。第1フェーズは母子手帳の開発、地元の人々の意識向上と保健従事者のキャパシティー・ビルディング、そしてモニタリング等の体制づくりがその主な活動となった。第2フェーズは継続的な能力開発とユーザーの視点に立った母子手帳の内容と使用システムの改善で特徴づけられる。第3フェーズはプロジェクトの持続性向上が主な課題となり、州が自立的・安定的にプロジェクトを運営するための人材と資金の確保が試みられた。
    結 果
    359人の保健従事者がトレーニングを受け、母子手帳は州の22の保健医療機関と私立クリニックにおいても普及し、普及率は98%前後に達した。母子保健サービスの状況においては妊産婦の出産前後の受診率が増加し、子どもの定期健診システムも導入され、予防接種など予防医療の面で改善が見られた。また、母子手帳というシンプルなツールが、保健従事者や妊産婦・父親の態度と行動に変化をもたらすことが観察された。
    結 論
    本プロジェクトはIDBの技術協力が終了した現在、自立的に運営されている。この背景には、ボトムアップ・アプローチでユーザー主体型の母子手帳改善を図り、ユーザーの継続的能力開発に努め、現場レベルで母子手帳の使用が浸透し制度化(institutionalize)されたこと、またトップダウン・アプローチで中央政府から資金と人件面のサポートを得て、母子手帳が地域保健サービスのシステムのなかに組み入れられた(systematize)ことが挙げられる。母子手帳がドミニカ共和国の他の州、ゆくゆくは中南米カリブの隣国に波及する為には、母子手帳を活用できる保健サービスの体系と人材が必要条件だと思われる。
  • 瀧口 徹, 宮原 勇二, 小林 秀弥, 井上 琴比, Francisco P. FLORES, L. Shereen M.Y. PERERA ...
    2007 年 22 巻 3 号 p. 163-171
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/05
    ジャーナル フリー
    背 景
    スリランカは南アジアの赤道直下に位置する開発途上の多民族国家で、人口約2,000万人で面積は北海道より少し小さい島国である。社会体制は社会主義国で1,200余の病院のうち8割強が国営で医療費は無料である。周辺国と比べて識字率が高く、母子保健や成人に対する政府の保健指導が成果を上げてきている。我が国(JICA)の専門チームの協力による分析に基づき最近公表されたスリランカ保健省のヘルスマスタープラン(HMP)によると、この国の健康問題は疫学と医療経済の視点から3つの健康問題に類型化され、それらは母子感染症、デング熱などの感染症等のi)継続的な問題(Continuing Problems)、HIV/AIDS等のii)近年出現し脅威となってきている問題(Emerging Problems)および近年の経済的発展、長寿化に伴い台頭してきた生活習慣病等のiii)進化してきている問題(Evolving Problems)である。近未来にこれらの問題がスリランカの国民の健康と経済および国家の医療経済等に多重の負荷を強いることが懸念されている。
    JICA技術支援プロジェクト
    こうした未来の多重負荷による破局的状態を回避するための第1段として、スリランカ政府の要請を受けたJICAによって第一次予防による非感染性疾患を対象とした保健指導技術支援プロジェクトが既に開始されている。更に第2段として重点的に援助すべき医療保健の技術支援新プロジェクトのターゲットとプロジェクト内容を提言すべく、代表的感染性疾患、非感染性疾患59種類の1983-2003年の入院患者の推移の傾向分析を行った。その結果、統計学的に増加傾向が明らかな疾患は15あり、このうち9疾患が非感染性疾患であった。そのうち生活習慣病である虚血性心疾患、脳血管障害等はスリランカのおける直近の5大死因のうちの4つを占めている。これらのことから第一次予防を基本に、生活習慣病のハイリスク者の発見と早期改善システムを組み合わせるプロジェクトが保健省に提言された。プロジェクトの基本的な流れは生活習慣病に対する第一次予防が定着しつつある複数の地域において2段階スクリーニングにより、肥満、高血圧、高コレステロール、高血糖、不良生活習慣等のハイリスク者を選別し、もよりの病院において精査し通院、定期検査、入院群の3群に分け、継続的に健康管理の支援を行うシステムである。
    幸い、保健省はこの提言に基づき我が国に生活習慣病予防、ハイリスク者対策技術支援プロジェクト要請し、その結果予算化され本年度から正式に開始すべくJICAの具体的準備が進んでいる。
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