日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
Print ISSN : 1881-2503
ISSN-L : 1881-2503
9 巻 , 2 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 稲垣 春夫
    2008 年 9 巻 2 号 p. 312-315
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    顧客満足 (CS) とは「顧客の抱える問題をいち早く解決すること」によって得られる。よって、健康上の問題を抱える患者は病院にとって顧客と言える。また、CSはその範囲を拡大してCS (患者・家族の満足)、DS (連携先の医療機関、福祉施設等の満足)、ES (自院の職員の満足) の三つの顧客満足と捉えることが出来る。組織のマネジメントとは提供するモノやサービスの質を保証することであり、病院のマネジメントは医療の質を向上し、三つの顧客満足を達成することと定義される。トヨタ記念病院は三つの顧客満足の考え方を「利用される方々の笑顔が私たちの誇りです」として理念の最初に掲げるとともに、CSを病院マネジメントの根幹に置いている。さらに、日常業務の達成のために方針管理の手法を用いているが、トヨタ自動車の方針管理は職員の人材育成に重きが置かれており、能力育成主義と呼ばれるべきものである。
    当院の実施した医療の質向上のための方策の一部である、組織横断的業務活動の推奨、臓器別センター制の導入および、臨床指標の設定と活用について若干の説明を加える。
  • 宮崎 久義, 武藤 正樹, 野村 一俊, 坂本 すが, 松島 照彦, 津村 宏
    2008 年 9 巻 2 号 p. 316-321
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    日本におけるクリティカルパスの普及状況を調べるために、2003年から毎年200床以上の病院にアンケートを郵送し回収した。対象病院数は約2,000で当初の回収率は20%前後と低かったが、2006年以降は約40%と向上し、信頼性の高い結果を得た。回答病院数に対するクリティカルパス導入病院の割合を示す導入率は6年間で10%上昇し、2008年には回答病院の91%にまでになった。2003年調査開始以来、病床規模の大きい病院ほど導入率は高い傾向にあることには変わりなかった。クリティカルパスの種類は50種類以上を使用している病院は2003年は30%に満たなかったが、2008年は50%を超し、200種類以上所有している病院も2003年は、わずか1病院のみであったのが30病院 (4%) にまで増加した。
    クリティカルパス委員会は2003年には69%の病院で行われていたが、2008年は83%の病院で開催されるまでになった。しかしクリティカルパス研究発表会の開催は経年的に大きな変動はなく、約半数の病院で実施されているのみであった。作成基準については2003年は52%の病院が作っていたが、2008年には70%と増加した。
    地域連携クリティカルパスは大きな関心を持たれ、急激に普及し、2008年は回答病院の35%が既に実施し、さらに28%が作成準備中であることがわかった。
    日本医療マネジメント学会が医療情報システム開発センターと共同で運営しているクリティカルパス・ライブラリーの認知度は55%に達したが、そのうちの40%の病院が利用していることがわかった。
  • 楠本 順子, 川崎 浩二
    2008 年 9 巻 2 号 p. 322-326
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    本研究は、某大学病院において退院支援部署が直接支援した患者 (直接支援群) と病棟スタッフを介した支援が行われた患者 (間接支援群) 間で、また、直接支援群の中での支援内容によって患者評価レベルがどのように異なるかを検討することを目的とした。2006年10月~12月に退院した患者のうち、入院時スクリーニングで退院支援が必要とされた患者140名を対象に、患者満足度評価尺度日本語版 (CSQ-8J) に準拠した16項目からなる質問紙調査を行い、直接支援群と間接支援群の2群間の相違を統計的に比較検討した。また直接支援群を、受けた主な支援内容によって「在宅支援二群」「転院支援群」「療養相談群」に分類し、各群の患者評価レベルの相違を検討した。その結果、直接支援群が間接支援群よりも、「福祉サービス利用方法の説明」「介護方法の指導」についての満足度が有意に高く、直接支援の有用性が示唆された。また、直接支援群の中では、「在宅支援群」が、「転院支援群」や「療養相談群」よりも退院後の治療や生活に対する説明等に関する5項目についての満足度が有意に高く、患者・家族と共に退院準備を進めていく「在宅支援」体制が患者の満足度に繋がったと推察された。
  • 受講者の研究結果からみた今後の展望
    石川 雅彦, 種田 憲一郎
    2008 年 9 巻 2 号 p. 327-331
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    国立保健医療科学院における、医療安全研修の長期コース「安全管理研究科」は、医療安全の基本的・専門的知識と技術を身につける、約6ヶ月に渡る長期研修である。本研修は、例年10月に開講し、安全管理、危機管理、質管理の講義・演習が12月下旬まで実施される。また、この期間内に、1週間自院に戻って、学習した内容を実践し、また科学院に帰ってきて、その結果を発表するという自院研修を行うことになっている。年明けの1~2月は、主に研究期間となっており、医療安全に関連した研究を実施して、3月にその研究結果を発表し、同時にその内容を研究論文にまとめて提出し、修了となる。
    今回、過去5年間に修了した86名の受講者が実施した研究内容を総括して、本研修の将来展望を行った。研究内容は、本研修の開講当初は、医療安全システム構築に関するものが多かったが、最近は、質管理に関する内容が研究主題として挙げられることが多い傾向にあった。危機管理、医療安全教育、分析手法に関する研究は、増減はあるものの、常に研究課題として取り上げられていた。
    本研修は、約6ヶ月に渡る長期研修のため、口常勤務の調整が難しく、参加しにくいということはあるが、医療安全に関する様々な知識・技術の獲得が可能であり、自院研修を通して、自院における医療安全の現状把握や、自ら決めたテーマで研究も実施可能な研修である。
  • NST薬剤師からみた静脈栄養の問題点
    東 敬一朗
    2008 年 9 巻 2 号 p. 332-337
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    静脈栄養を用いた栄養管理では、処方内容が病態に適合していない場合、そのリスクは経管栄養に比べて格段に増大する。われわれは、グルコースの過剰投与によって重篤な低リン血症を呈した慢性腎不全症例を経験した。当院においてハイカリックRF (R) を用いて施行された静脈栄養の栄養組成を調査したところ、アミノ酸投与量が不足していた。また、脂肪乳剤が併用されていないことが多く、その結果熱量はグルコースに偏重する傾向が認められた。このようにインバランスな静脈栄養が行われる原因の一つとして、至適栄養投与量は個々の症例や病態によって異なるにも拘わらず、輸液製剤に画一的な用法・用量が設定されていることが考えられた。そこで重要となるのは、栄養の専門知識を有したNST薬剤師による適切な情報の提供と静脈栄養の実践である。これは、静脈栄養に付随するリスクマネジメントに直結すると思われる。NSTは栄養の専門知識を有したスタッフの集まりである。NSTが栄養管理を行うことは輸液製剤の適正使用につながり、患者のみならず病院経営面においても有益な結果をもたらすと考えられる。
  • 佐藤 志美子, 鈴木 節子, 堀口 剛, 浅沼 義博
    2008 年 9 巻 2 号 p. 338-340
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    手術部で発生する医療事故のうち、看護師が深く関わる体内ガーゼ遺残問題について、われわれが実施している対策とその成果について報告する。当院ではガーゼ遺残防止対策として、市販の製氷皿を利用し、かっガーゼカウントタイムを実施している。この製氷皿は、穴の数が10個、穴の大きさが縦40mm、横38mm、深さ30mmであり、ガーゼが1枚しか入らない。ガーゼを数えるという作業から、穴を埋めるという単純作業に変換し看護師の労力を減じた。またガーゼカウントタイムを設定し、この時には、術者は手術の手を止め、器械台に滅菌した製氷皿を置いてそこに清潔区域で使用しているガーゼを入れるようにした。このガーゼ遺残対策の成果を検証するため、2002年10月以降2007年9月までの5年間のガーゼカウントに係るインシデントレポートを検討した。
    1. 5年間に手術部から入力されたインシデントレポートは362件であり、そのうちガーゼカウントに係るレポートは12件であった。12件の内訳は、ガーゼカウント用紙の記載漏れ1件、ガーゼカウント不一致11件であった。
    2. ガーゼカウント不一致11件はすべてガーゼ1枚不足であった。内訳は、圧布の間や患者周囲 (5件)、手術野内 (2件)、迅速診断用標本や胎盤等とともに手術室外 (4件) にガーゼを認めた。
    3.12件中、確認のため閉創前にX線撮影を行ったのは8件であった。いずれも、撮影上患者体内にガーゼは認めなかった。
    4.体内ガーゼ遺残の事故は、1件も起こしていない。
    以上より、われわれのガーゼ遺残対策は有効であると推測される。
  • 水摩 明美
    2008 年 9 巻 2 号 p. 341-345
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    医療紛争における裁判外紛争解決手法のひとつとして院内メディエーションがある。メディエーションとは、対立する当事者に対して、中立的な第三者であるメディエーターのスキルを用いて、当事者たちの話し合いを促進して当事者自身が合意形成へと到達する方法である。今回、約2年間にクレームとして提起された医療紛争のうち院内メディエーションを実施した26事例について報告する。
    クレーム申し立て者は、家族が17件で一番多く、申し立てられた対象のうち、一番多いのは医師で22件であった。患者の状態は、死亡・永久的身体障害・一時的身体障害であった。身体に影響がなかったのは5件であった。クレームの内容は、診断、治療、手術、説明、観察ミスであった。院内メディエーションの平均所要時問は72.4分であり、和解率は80.8%であった。クレーム申し立て後90日以内に84.6%が解決し、訴訟提起はなかった。
    医療者側は合併症や偶発症、適切な医療の結果と認識するなど、患者側と医療者側の認識の差が当事者間の感情的対立姿勢を強くしており、クレームとして提起された医療紛争は、院内メディエーションによって感情的側面から派生するさまざまな問題を含めて早期に解決することができた。院内メディエーションは、組織全体として紛争の拡大を防止するという意識を高め、患者への説明や対応に関する教育的効果があることが示唆された。
  • 毛利 豊, 下川 文子, 川副 博子, 葦原 義典
    2008 年 9 巻 2 号 p. 346-349
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    安全な抗菌薬静脈投与のために、病院の方針として抗菌薬皮内反応試験を廃止するに至った。エビデンスに基づいた皮内反応試験廃止の必要性を認識し、病院全体の働きで取り組むことが不可欠である。
    当院では皮内反応試験廃止後1640例中20例 (1.22%) に抗菌薬静脈投与に伴うアレルギー症状を認め、バンコマイシンを投与した1例 (0.06%) はアナフィラキシーショックを呈した。アレルギー症状を認めた20例中10例は皮内反応試験を推奨されていないグリコペプチド系抗菌薬であった。
    皮内反応試験が推奨されていない抗菌薬においても、試験を義務付けられていた抗菌薬と同様にアナフィラキシー発現の危険性にっいての認識を持っ必要がある。ガイドラインに沿って皮内反応試験が必要と判断される患者には適切に行うべきであり、アナフィラキシー発現に対する準備と抗菌薬投与中の患者の観察が重要と考えられる。
  • 多賀 俊明, 岩嶋 美津子, 立松 末子
    2008 年 9 巻 2 号 p. 350-353
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    「かかりっけ医情報提供同意書」を返書管理の一手段として構築したが、今回は2006年9月から2007年3月までに入院した患者5,086名のうち「かかりつけ医情報提供同意書」を回収し得た3,821名を対象にかかりつけ医に対する意識について検討した。
    かかりつけ医を持っているという回答が多かった診療科は総合内科69.3%、心臓血管外科64.8%、眼科63.3%で、少なかった診療科は産婦人科22.6%、形成外科37.5%であった。入院患者の約半数の54.6%がかかりっけ医を持っていた。かかりつけ医を持っていないと回答した患者の73.6%は今後もかかりつけ医を持っことを希望していなかった。
    紹介入院患者に限れば94.5%にかかりつけ医があった。しかし、紹介なしの入院患者でも44.6%はかかりつけ医を持っていると回答しており、さらにその57.9%はかかりつけ医に診療情報を提供して欲しいと考えていた。この57.9%の患者には今後逆紹介をさらに積極的に推進してゆくべきであると考えている。
  • 米井 敏郎
    2008 年 9 巻 2 号 p. 354-358
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    今日クリティカルパスの多くは、スプレッドシート型表計算ソフトで作成されているが、そのほとんどはスプレッドシートを単なる印刷用ツールとしてしか使用しておらず、スプレッドシートのもつ多様な機能のほんの一部しか利用していない。例えば、あるクリティカルパスの年間の使用件数が知りたいという要求に即座に応えられるファイリング機能を組み込んだクリティカルパスは日常臨床において有用と考えられる。エクセルのプログラミング機能を利用し、クリティカルパスの印刷機能に加え、患者ID、患者名、スタッフ名等のデータファイリングを簡単に行うことができる仕組みを考案した。カルボプラチンとイリノテカンによる化学療法用クリティカルパスをそのプロトタイプとし、化学療法の副作用発現時期を示すシェーマや説明と同意文書等も組み込みオール・イン・ワン型のクリティカルパスを作成した。ワークシートの1頁目が入力画面となっており、実際の運用においてはこの頁しか使用しない。入力画面の右側にクリティカルパスの閲覧、印刷、ファイリング等のためのボタンを配置し、必要項目を入力するだけで、カスタム・メイドのクリティカルパスシートを出力可能とした。このクリティカルパスの使用件数はファイリング機能により一目瞭然、となった。このクリティカルパスを使用することにより、入院から退院までの包括的なサポートが可能となった。
  • 芳賀 克夫, 山内 健, 松倉 史朗, 永松 佳憲, 吉留 幸一, 深野 久美, 川野 美代子, 精松 由美子, 的場 浩二, 古賀 敏子, ...
    2008 年 9 巻 2 号 p. 359-363
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    経鼻栄養胃管は、早期の経管栄養ルートとして広く用いられているが、稀に、気道内に誤挿入され、栄養剤が注入されると、肺炎、膿胸、胸水症などの重篤な合併症を引き起こす。しかし、経鼻栄養胃管の気道内誤挿入防止のための位置確認法については、世界的に見てもまだ確立されていない。今回、われわれ国立病院機構本部九州ブロック事務所では2回の研修会と半年間におよぶフォローアップ調査を行い、管内の病院の代表者と協議し、以下の指針を作成した。
    1. 初めて栄養チューブを挿入した時は、X線による位置確認を必ず行う。
    2. チューブを再挿入した時は、基本的に、吸引液のpH5.5以下の確認、または、X線による位置確認を行う。
    3. 栄養剤注入前は毎回、(1) 口腔内の観察、(2) チューブのマーキングの位置確認を行い、チューブの逸脱がないか確認する。
    以上の確認ができたら、栄養剤を注入してよい。
  • 深野 久美, 七井 裕子, 芳賀 克夫
    2008 年 9 巻 2 号 p. 364-368
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    医療事故に関わった医療従事者のサポートの必要性は従来から述べられているが、病院が系統的なサポートを実践するための手順を示したマニュアルの報告は少ない。今回、国立病院機構本部九州ブロック事務所では、事故当事者に対するサポートマニュアルを作成したので、その内容を紹介する。(1) 幹部管理者は事故直後から現場を積極的に支援し、現場スタッフが行った的確な行動を認める発言に心がける。(2) 最初の家族への説明は、主治医や看護師長、幹部管理者等で行い、事故当事者となった看護師や経験の浅い医師等は同席させない。(3) 事故当事者に過失があるかどうかは、十分な検証作業が終るまで結論を出さない。(4) 院内で事故当事者を含めて事故の検証委員会を開催し、厳正に、且つ、配慮を持って事故を検証する。(5) 検証作業で事故当事者の過失が明らかになっても、幹部管理者は事故当事者を非難・叱責するような言動を慎む。事故当事者と事故を振り返り、同じような事故を再び起こさないためには、どうしたらいいかを話し合う。上記内容を、12回に及ぶ研修会で管内の病院職員に周知したが、病院職員からは病院、ブロック事務所への信頼感が増したとの声が多く寄せられた。従って、本マニュアルは、病院職員の組織への信頼感醸成に有用であると考えられる。今後、本マニュアルが事故当事者の離職率の減少などに貢献したか検討していきたい。
  • 浦川 将一, 木村 正美, 土肥 秀子, 中村 やす子
    2008 年 9 巻 2 号 p. 369-372
    発行日: 2008/09/01
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    「院内がん登録」を開始するに当たって、市販のFileMaker Pro (FileMaker社) を基本ソフトとした院内がん登録支援システムを構築し、業務専用LANを利用し2006年10月から運用を開始した。院内がん登録業務の「見っけ出し」、「登録」、「標準項目入力」、「予後調査」、「地域がん登録」の部分を担い、アクセス権限を持っスタッフがどこからでも登録が行えるようにした。当院では「受動的腫瘍見つけ出し」と「能動的腫瘍見つけ出し」を組み合わせて運用し、特に仮登録を許可する事で初期登録を簡便化した。入力必須項目に目印をつけ、入力内容の説明を画面に示し操作を簡単にできるよう工夫した。また、熊本県地域がん登録に対応し予後調査に活かせるようにした。本システムはFileMaker Proの基本的な知識があればカスタマイズが容易で、これから「院内がん登録」を始めようと考えている中小医療施設で使用可能な、簡便で有用なシステムと考える。特に、医事病名が完全にコーディングされていない (フリー入力を許可している) 施設や紙ベースでの運用を考えている施設、ネットワーク上の各部門から登録したいと考えている施設には適したシステムと考える。
feedback
Top