手術部で発生する医療事故のうち、看護師が深く関わる体内ガーゼ遺残問題について、われわれが実施している対策とその成果について報告する。当院ではガーゼ遺残防止対策として、市販の製氷皿を利用し、かっガーゼカウントタイムを実施している。この製氷皿は、穴の数が10個、穴の大きさが縦40mm、横38mm、深さ30mmであり、ガーゼが1枚しか入らない。ガーゼを数えるという作業から、穴を埋めるという単純作業に変換し看護師の労力を減じた。またガーゼカウントタイムを設定し、この時には、術者は手術の手を止め、器械台に滅菌した製氷皿を置いてそこに清潔区域で使用しているガーゼを入れるようにした。このガーゼ遺残対策の成果を検証するため、2002年10月以降2007年9月までの5年間のガーゼカウントに係るインシデントレポートを検討した。
1. 5年間に手術部から入力されたインシデントレポートは362件であり、そのうちガーゼカウントに係るレポートは12件であった。12件の内訳は、ガーゼカウント用紙の記載漏れ1件、ガーゼカウント不一致11件であった。
2. ガーゼカウント不一致11件はすべてガーゼ1枚不足であった。内訳は、圧布の間や患者周囲 (5件)、手術野内 (2件)、迅速診断用標本や胎盤等とともに手術室外 (4件) にガーゼを認めた。
3.12件中、確認のため閉創前にX線撮影を行ったのは8件であった。いずれも、撮影上患者体内にガーゼは認めなかった。
4.体内ガーゼ遺残の事故は、1件も起こしていない。
以上より、われわれのガーゼ遺残対策は有効であると推測される。
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