日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
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14 巻, 3 号
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解説
  • 勝尾 信一
    原稿種別: 解説
    2013 年14 巻3 号 p. 102-106
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     バリアンス判断はアウトカム判断と同じで、アウトカムの判断基準が明示され、それがマスタ化されていれば自動判定も可能である。オールバリアンス方式では、すべての患者状態の異常や医療者の介入行為の変更もバリアンスと捉えなければならない。しかし、電子クリティカルパスではすべてをバリアンスと捉えることはできず、オーダの変更をバリアンスとするのが限界である。バリアンスと判断した時点でバリアンス登録が可能である。登録を促す画面が自動的に立ち上がるように使用している施設が多い。登録内容は、バリアンス内容と発生要因分類コードが一般的である。オールバリアンス方式では、変更されたオーダ内容がそのまま登録されても集計に使えないため、内容の入力が別途必要になる。登録されたバリアンスは、バリアンスごとに自動集計される。一部の電子クリティカルパスでは、コード別にアウトカムごとのバリアンス発生数を集計できる。そうすることによって、コード別に重要度を加味して検討する順番を決めていくことができる。電子クリティカルパスになるとこの集計の作業は大幅に省力化される。改善策の検討は、医療者の知的作業である。電子クリティカルパスが肩代わりできるものではない。電子クリティカルパスになっても、バリアンス分析をいつ誰がするかは、大きな課題である。継続的にバリアンス分析ができるように、各施設の努力が必要である。

事例報告
  • 塚本 達雄, 重田 由美, 米本 智美, 武曾 惠理
    原稿種別: 事例報告
    2013 年14 巻3 号 p. 107-112
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     北野病院において慢性腎臓病(CKD)地域連携クリティカルパスを連携診療におけるアウトカムおよびバリアンスに関しての検討を行い、この連携診療の問題点に関して考察した。2008年12月から2010年12月までに看護師による生活指導と管理栄養士による栄養指導を含む当院の連携診療に参加した患者211例およびかかりつけ医148名を対象として、腎機能悪化予防および心血管イベント予防の2つのアウトカムを検証し、48例のバリアンスを後ろ向きに調査した。この結果、(1)CKD 重症度分類ではステージ G1:36例(17.1%)、G2:43例(20.4%)、G3:71例(33.6%)、G4:51例(24.2%)、G5:10例(4.7%)、年令別では男性では60才代、女性では70才代が最も多かった。(2)G5でも緊急透析導入なく運用できた。(3)連携診療した標榜科は内科系70.4%、外科系その他が29.6%であった。(4)疾患特異的なバリアンスと運用上のバリアンスが発生し他診療科への入院例も認められた。(5)22例の自己中断による脱落が認められた。以上の結果から、バリアンスとその対応の適切性や心血管合併症の発症および重症化の予防効果については、まだまだ不明な点も多いものの、バリアンスを考慮した連携診療のあり方や双方の負担軽減度調査、時間対効果、患者満足度等に関してもさらに検討していく必要があると考えられた。

  • 池尻 朋, 上間 あおい, 中島 和江, 高橋 りょう子, 團 寛子
    原稿種別: 事例報告
    2013 年14 巻3 号 p. 113-120
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     大阪大学医学部附属病院では、医療および医療安全への積極的な患者参加を支援し、患者と医療者のパートナーシップ(協働)を推進するため、患者参加支援プログラム阪大病院「いろはうた」を開発し、院内へ導入した。まず、インシデントレポート及び文献に基づき医療安全と患者参加に関わる7項目(①患者確認②転倒予防③日常生活に欠かせないものの紛失予防④自己決定⑤信頼できる人への相談⑥服薬管理⑦自己管理)を抽出した。次に、これら7項目をオリジナルの句とイラストで表現した「いろはうた」ツールを制作した。開発したツールを院内へ導入するにあたっては、看護師用の患者説明シナリオを作成し、一般病棟で2週間の試験的運用を実施し、説明内容の標準化を行った。試行病棟における患者アンケートからは回答者の9割からツールがよい、看護師の説明がわかりやすい、話かけやすくなった等、前向きな回答が見られた。また、全職員が着用する取り組みバッジや院内掲示用ポスターを制作し、医療者への啓発と病院全体で実施するための広報準備を行った。ツールの開発とその導入までは約9カ月を要した。医療および医療安全への患者参加を具体的なツールを用いて表現したこと、標準説明手順を作成し、プログラムの運用方法を追求し、病院全体で取り組んだことが今回の取り組みの大きな特徴である。本取り組みは、2010年6月より本運用として開始、2013年8月現在も継続して実施している。

  • 川本 俊治, 田村 律, 松田 守弘
    原稿種別: 事例報告
    2013 年14 巻3 号 p. 121-126
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     今回、我々は電子カルテに入力された様々な情報をデータウェアハウス経由で活用する褥瘡管理システムを構築したので、その利用者評価を明らかにする。

     入力項目は栄養評価項目や患者 ADL 項目などをフィジカルアセスメント項目として標準化し、電子カルテの患者基本情報に組み込んだ。褥瘡管理システムの機能は褥瘡リスクスクリーニング、褥瘡リスク管理、褥瘡治療管理で構成した。褥瘡リスクスクリーニングはデータウェアハウスより該当項目を抽出し、診療計画書を作成した。褥瘡リスク管理では褥瘡リスク、疾病、身体情報を表示した。褥瘡治療管理ではDESIGNを使った褥瘡評価と褥瘡局所写真の登録を行った。

     システム稼働後半年時点で、看護師経験5年以上の242名を対象として利用者アンケートを実施した。その結果、褥瘡管理システムは利用者にとって「改善」と「やや改善」の評価比率は80%、「褥瘡ケアに対する意識」は95%が「改善」/「やや改善」と評価した。

     以上から、データウェアハウスを活用した褥瘡管理システムは、利用者の利便性が向上し、褥瘡への意識を向上させた。

  • 岩穴口 孝, 宇都 由美子, 熊本 一朗
    原稿種別: 事例報告
    2013 年14 巻3 号 p. 127-132
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     鹿児島大学病院では、医療情報部が医師事務作業補助者(医療クラーク)の管理・教育を行っている。医療クラークは、主な業務部署として各診療科や病棟に配置したが、業務量の差により医療情報部の判断で他部署の支援を行うという流動的な活用を導入当初より行ってきた。HIS(Hospital Information System:病院情報システム)のログデータを用いた分析では、HISを活用することにより自部署を離れることなく他部署の支援が可能であること、支援可能な業務と支援を必要とする業務を明確にすることにより、さらなる支援体制の強化が可能であることが明らかとなった。医療クラークの教育は、これまでの医療情報部による業務の手順指導から、医療クラーク自身が企画・運営する学習会や他職種による指導へシフトしている。学習会では業務の質向上と支援体制の強化を目的として、標準化を意識した学習会が開催されている。業務の標準化により他部署の支援が容易になったことは、医療クラークの有給取得率の増加や離職率が低いという成果に繋がっている。

  • 井上 光朗
    原稿種別: 事例報告
    2013 年14 巻3 号 p. 133-137
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     病院の理念や運営方針、目標等の浸透度による医療従事者の意識の違い、属性による理念等の浸透度の差異を明らかにするため、医師会立病院に勤務する全職員(480名)を対象に意識調査を行った。分析対象者とした224名の回答を分析した結果、年齢階層、役職階層、勤務年数といった各要因の水準間で理念等の浸透度に有意な差が認められた。また、理念等を理解している職員は能力と仕事の適合感及び病院に対する帰属意識が高く、理念等を踏まえた活動を実践している職員は、それらに加えてやりがいや勤続意欲といった仕事に対するモチベーションが高いことが示唆された。

     病院職員の組織への一体感や士気の向上を図るためには、理念等は単に示されるだけではなく、具体的な運営方針や目標を併せて設定するなどして職員への浸透を図ることが不可欠であると考えられる。

  • 成島 道昭
    原稿種別: 事例報告
    2013 年14 巻3 号 p. 138-141
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     昭和大学横浜市北部病院の2009年1月から12月までの人間ドック受診者における喫煙状況および禁煙理由について検討を行った。対象総数は1535名(男性947名、女性588名)、喫煙者は総数273名(男性231名、女性42名)、禁煙継続者は総数513名(男性443名、女性70名)であった。喫煙率は男性24.4%、女性7.1%と全国平均と比べ、男女とも低値であった。また喫煙期間(男性29.2年、女性24.3年)および喫煙本数(男性19.8本、女性15.0本)において男女差を認めた。禁煙継続者における禁煙理由については、I.健康理由、II.家族への配慮、III.喫煙環境、IV.健康志向、V.その他、の5項目に分類し検討を行い、各項目間に男女差を認めなかった。また禁煙継続に関与する因子の検討から、喫煙本数が少なく喫煙開始年齢が低いほど、また年齢が高いほど禁煙継続が難しく、より禁煙に対する動機づけを強化する必要性があることが示唆された。

紹介
  • 小林 正幸, 石黒 眞吾
    原稿種別: 紹介
    2013 年14 巻3 号 p. 142-146
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     2011年7月より、院外電子カルテシステムを導入しその現状と問題点などにつき検討した。

     院外電子カルテシステムでオーダリングまで全ての電子カルテ機能を実施したのは日本初の試みと思われる。

     院外電子カルテシステムは、通常の電子カルテの端末と同様の作業が出来る事が確認できた。

     通信システムの確立と、接続には十分なセキュリティパスを設定することによりセキュリティ対策は十分確保できた。

     しかし、実際に使用している医師の使用頻度はやや低く、医師へのアンケートの結果では、院外電子カルテシステムの有用性は感じるが、起動の際の煩雑さや処理スピードに課題があるとの結果であった。

  • 山崎 友義, 鈴木 斎王, 奥村 智子
    原稿種別: 紹介
    2013 年14 巻3 号 p. 147-150
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     宮崎大学医学部附属病院は2006年より、携帯情報端末(Personal Digital Assistant:PDA)を用いた看護入力業務を簡便に行える独自開発の電子カルテシステムを開発・運用していたが、PDAは携帯性、操作性や視認性に問題があると看護師より指摘されていた。この問題を解決するとともに、ベッドサイドでの電子カルテ運用の利便性向上を目的として、当院はアンドロイドOSのスマートフォンをモバイル端末として用いた電子カルテと一体化した入力・参照システムを開発し、2011年5月に電子カルテの更新と同時に導入した。本稿では4月からモバイル端末とPDAを並行運用した病棟での入力業務負荷(患者認証、観察項目入力、注射実施入力)の変化を調査し、その効果についての検討を行った。

     調査は、同一入力者達によるPDAとモバイル端末の入力時間のタイムスタディ、利用者へのアンケート調査とインタビューで行った。

     タイムスタディの結果は、入力業務(患者1人あたり)に要する時間の短縮を認めた。アンケート調査は、携帯性、操作性、視認性の項目で高い評価を得た。インタビューでは入力時間の大幅な短縮を感じた、電卓やタイマーなどの端末に付随する機能が利用できたなどの評価を得た。モバイル端末を用いた電子カルテ入力業務負荷軽減の調査では、従来のPDAと比べ、入力業務負荷が軽減できた結果を得られた。さらに、個人モバイル端末をもちいる新たな電子カルテ運用の可能性を示唆できた。

  • 遠藤 周一郎, 白井 洋平, 鈴木 千賀子, 中野 義宏
    原稿種別: 紹介
    2013 年14 巻3 号 p. 151-155
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

     近年、産科医師数や分娩取り扱い施設数の減少をはじめとした産科医療疲弊問題が深刻化しており、様々なアプローチからの早急な解決策を探る事が急務である。一方一般社会では、急速に発達した情報通信技術を活用し、大幅な労力削減やコストカットを実現している会社がいくつも存在する。筆者らは、この様な技術の一つであるステップメール配信システムを産科医療現場に応用するという全く新しい視点からの産科医療問題への取り組みとして【ママケアメール配信システム】を考案し、2012年6月に立ち上げ運用開始した。2013年 6月までに蓄積された妊娠10ヶ月時に配信されるアンケート調査では、95.2%の妊婦から満足したという結果が得られた。さらに80.9%の妊婦が各週数における生活習慣指導を有用な記事としてあげており、当システムの記事内容が妊婦の需要に適していると考えられた。

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