本研究の目的は、在宅医療開始時の経路、問題点を可視化し、在宅医療の推進に求められる取組みを考えることである。まず在宅医療の導入経路と問題点について、関係者へのインタビューを行い、この内容を質的に分析、質問項目を抽出した。その後、奈良県天理市、山添村で継続的に在宅医療を提供していた計12医療機関(10診療所、2病院)に対してアンケート調査を実施した。
その結果、天理地区では計16名の常勤医師が年間468名の患者に対して在宅医療を提供していることが示された。主な在宅医療導入経路は、病院が30%(医師22%、地域医療連携室8%)、自院外来が29%、患者または家族からの直接相談が16%であった。在宅医療に特化した1施設を除いた計11施設の分析では、自院外来からの在宅移行が36%と最も多かった。在宅医療導入時の問題点としては、「24時間体制の維持」が最多で、「家族介護者の不在」、「患者家族の希望がない」、「生活が不安定」、「多忙さ」も指摘された。
今後、限られた医療資源のもとで在宅医療を推進していくためには、24時間体制の維持に加えて、病院および患者や家族からの訪問依頼を地区全体でシェアする仕組み、そして生活支援・介護・福祉とが一体となった地域レベルでのコーディネート機能が求められる。
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