日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
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17 巻, 4 号
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事例報告
  • 退院計画の重要性とチェック機構構築の有用性
    仲田 紀彦, 侭田 敏且
    原稿種別: 事例報告
    2017 年 17 巻 4 号 p. 185-191
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     我々は2005年 9 月以降クリティカルパス (以降 「パス」) を適応し棘突起縦割法頸椎椎弓形成術の周術期医療を進めてきた。 バリアンス分析に基づいたパスの改訂、 運用方法の変更を随時行っている。 頸椎椎弓形成術は手術成績は比較的安定しているが、 創部治癒やリハビリテーションなどにより比較的長い術後入院期間を要する。 パス適応症例についてアウトカムおよび術後在院日数についてバリアンス分析を行った所、 術前に合併症のコントロールを良好に行えば設定したアウトカムに対するバリアンスが生じにくい一方、 術後在院日数をアウトカムとした場合、 患者とその家族の希望や都合が負のバリアンスの74%を占め、 戦略的な退院計画の重要性が浮き彫りとなった。 退院支援の一環として2012年12月より運用方法を変更し、 入院時点で退院基準および退院予定日を明確化し、 術後早期から退院後生活指導を開始した。 その結果術後在院日数延長に大きく関与した患者とその家族の希望や都合による負のバリアンスが大きく減少した。 2 週間を超える長い期間を対象とするパスの円滑な運用には、 患者とその家族の疾患及び治療経過の理解への術前からの配慮が重要である。 また2014年 9 月より術後観察項目を充実させ、 パスにチェック機能を持たせることで術後神経合併症が早期発見可能なツールへの変革を図った。 術後神経症状の悪化を早期に覚知でき周術期医療の安全性向上に効果が得られている。

  • 次橋 幸男
    原稿種別: 事例報告
    2017 年 17 巻 4 号 p. 192-196
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、在宅医療開始時の経路、問題点を可視化し、在宅医療の推進に求められる取組みを考えることである。まず在宅医療の導入経路と問題点について、関係者へのインタビューを行い、この内容を質的に分析、質問項目を抽出した。その後、奈良県天理市、山添村で継続的に在宅医療を提供していた計12医療機関(10診療所、2病院)に対してアンケート調査を実施した。

     その結果、天理地区では計16名の常勤医師が年間468名の患者に対して在宅医療を提供していることが示された。主な在宅医療導入経路は、病院が30%(医師22%、地域医療連携室8%)、自院外来が29%、患者または家族からの直接相談が16%であった。在宅医療に特化した1施設を除いた計11施設の分析では、自院外来からの在宅移行が36%と最も多かった。在宅医療導入時の問題点としては、「24時間体制の維持」が最多で、「家族介護者の不在」、「患者家族の希望がない」、「生活が不安定」、「多忙さ」も指摘された。

     今後、限られた医療資源のもとで在宅医療を推進していくためには、24時間体制の維持に加えて、病院および患者や家族からの訪問依頼を地区全体でシェアする仕組み、そして生活支援・介護・福祉とが一体となった地域レベルでのコーディネート機能が求められる。

  • 活動を通じて見えてきたもの
    是村 利幸, 新井 成俊, 川井 信孝, 湯澤 八江
    原稿種別: 事例報告
    2017 年 17 巻 4 号 p. 197-201
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     院内の医療安全委員会において、病院内で頻回に起こる重要なエラーに対して、その要因を探り、エラーの未然防止、再発防止に役立つビデオ教材を作製して職員に注意喚起していく対策が提案された。テーマを「ダブルチェックミス」とし、医師、看護師、薬剤師の三職種が関わる場面を設定した。

     作製期間は約11ヶ月で、職員に対して身近に学べるビデオ教材が作製できた。ビデオ教材を用いた教育により98.1%の職員がダブルチェックミスの発生する過程を理解し、83.6%がダブルチェックに見直す点があると回答した。準備からDVD完成までの過程を通じて、職種の垣根を越えて多職種の連携を強化することができた。

     更に活動を成功させる鍵として全体を見通して段取りすることの重要さを知ることができた。

  • 大場 久照
    原稿種別: 事例報告
    2017 年 17 巻 4 号 p. 202-207
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     本研究では北海道の21のがん診療連携拠点病院ウェブサイトを事例に情報アクセシビリティを検証することを目的とする。ウェブサイトでのウェブアクセシビリティ基本方針の公表状況を調査した。miCheckerを用いてJIS X 8341-3:2010の一般的原則である知覚可能、操作可能、理解可能および頑健性の4原則に基づき各0〜100点でトップページのウェブアクセシビリティを評価し、JIS達成等級Aの25項目に基づく詳細分析により問題ありの箇所を抽出した。次に2つの医療情報(セカンドオピニオン、がん手術・治療実績)の有無と到達するまでの経路を調査するとともに、公的な医療情報サイト(北海道医療機能情報システム、がん情報サービス)へのリンク状況も調査した。その結果、ウェブアクセシビリティ基本方針を策定・公表している病院はなかった。操作可能と知覚可能が全体的に低評価であり、特に知覚可能の「非テキストコンテンツに対する達成基準」に関する問題が7割弱を占めた。がん手術・治療実績の情報はセカンドオピニオンの情報に比べ情報量が少なく情報到達までに時間を要するとともに、9病院でがん手術・治療実績の情報がなかった。北海道医療機能情報システムまたはがん情報サービスにリンクを張っていたのは各4病院であった。北海道のがん診療連携拠点病院ウェブサイトの多くは住民(特に、障害者・高齢者)視点のウェブコンテンツでないことが示唆される。

  • 岡本 康子, 宇野 めぐみ, 鄭 起孝, 松本 昭英
    原稿種別: 事例報告
    2017 年 17 巻 4 号 p. 208-213
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     透析患者を中心にケアを行っている病院では、透析室看護師と病棟看護師間で透析の専門知識に関しての情報共有が必要である。我々はモバイル端末を使用して、院内勉強会や自己学習のためのプログラムを考案し、従来のOff the Job Training (Off-JT)との比較検討を行った。対象は病棟看護師21名で、評価にはアンケートを用いた。導入後のアンケート結果では、病棟看護師が透析知識に触れる機会が増え、知識が深まったとの感想が得られた。また、学習意欲の向上も認められた。モバイル端末を用いたOff-JTでは閲覧制限が無く、疑問点が生じた時に随時アクセス可能であり、質問事項もチャット機能を用いれば的確な回答を得ることが可能で、意見交換も容易に行えるなど利点が多い。今回の検討から、モバイル端末を用いたOff-JTは透析知識取得に有用であるだけでなく他の病棟ケアに関しての教育ツールとしても活用可能であることが示された。

  • 平井 利幸, 寺門 祐介, 関 利一
    原稿種別: 事例報告
    2017 年 17 巻 4 号 p. 214-219
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     現在、がん化学療法の多くが外来で行われている。株式会社日立製作所ひたちなか総合病院では、外来化学療法室に薬剤師を配置し、治療中のすべての患者に面接を行っている。それにより、薬剤師は治療期間中の患者状態の確認や医師への提案を行っている。今回、これら活動による医師への提案とそれによる患者の副作用の変化について調査した。調査は2011年7月から2013年6月までに外来化学療法室でがん化学療法を実施した患者を対象に行った。副作用の変化は、医師への提案時に副作用のGradeが1以上の患者を対象にして、提案前後でのGradeを比較した。なお、Gradeは患者自身が来院時に記載する症状確認表から、嘔気、嘔吐、食欲不振、口内炎、下痢、皮膚や爪の症状、便秘、末梢神経症状について評価した。調査期間の薬剤師による患者面接は335人について延べ3902件行われ、医師への提案は342件であった。提案内容は、副作用52.0%、がん化学療法の治療内容17.0%、合併症疾患13.5%、疼痛8.8%、がん化学療法に関する検査5.3%、経口抗がん薬の投与日数変更2.0%、薬物相互作用1.5%であり、提案に対する医師の受け入れ率は88.0%であった。医師への提案時Grade1以上の副作用が発現していたのは延べ84件であり、Gradeの改善が得られたのは51%、症状消失は38%であった。外来化学療法室に薬剤師が常駐することで、患者状態の変化を直接評価することができる。それにより、薬剤師が薬学的観点から適切と考えられる対応を提案することが可能になっているものと考える。

  • 増本 陽秀, 佐藤 直市, 古賀 秀信, 稗島 武, 皆元 裕樹, 眞名子 順一, 古谷 秀文, 福村 文雄, 橋本 新平, 重茂 浩美, ...
    原稿種別: 事例報告
    2017 年 17 巻 4 号 p. 220-225
    発行日: 2017/03/01
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     糖尿病診療における医療費の適正化に資することを目的として、2006年1月〜2013年3月の間に飯塚病院内分泌・糖尿病内科を受診した2型糖尿病患者の中で、1年以上の通院歴のある798症例を対象に電子カルテ情報と診療情報明細書情報を収集し、各検査値と月平均医療費との関係を解析した。

     症例は男性420例、女性378例で、年齢17〜93歳(63.1±12.9歳)であった。各検査指標と医療費との関係は、血糖値(r=0.0563, p=0.0011)、グリコアルブミン値(r=0.0698, p=0.0002)が医療費と正の相関を、推算糸球体濾過量(r=-0.2751, p<0.0001)が医療費と負の相関を示した。さらに日本腎臓学会ガイドラインによる糸球体濾過量(GFR)区分別の検討では、GFR区分G1〜G3bの間では医療費に有意差を認めず、G3bとG4の間(p=0.002)およびG4とG5の間(p<0.001)で医療費が有意に増加した。2型糖尿病性腎症においてGFR低下の進行が速いことを考慮すると、G3aで管理を強化し腎障害の進行を抑えることが医療費を適正化する上で効果的であると考えられた。

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