日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
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19 巻, 3 号
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原著
  • DPCデータを用いた膵がん症例の治療内容と死亡までの期間
    桵澤 邦男, 藤森 研司, 伏見 清秀
    原稿種別: 原著
    2018 年 19 巻 3 号 p. 145-150
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2023/08/29
    ジャーナル フリー

     超高齢社会を迎えた日本において、国民の約半数が自宅で最期を迎えることを希望する一方、実際に死亡する場所の大半は病院であり、特にがんによる病院死の割合は高い。今後、がん患者が在宅で療養し最期まで過ごすことを希望する場合、それを実現していくことが重要である。本研究は、入院前の在宅医療の有無に着目し、入院から死亡までの治療内容や期間の違いを明らかにすることで、在宅療養の継続や看取りを実現するための方策について検討した。厚生労働科学研究費研究事業における3か年のDPC データより、膵がんステージ4で病院死した症例について入院前の在宅医療の有無別に入院から死亡までの治療内容や期間の違いをみた。その結果、在宅医療がある場合はない場合と比較して、心肺蘇生や化学療法などの延命治療および積極的治療の実施割合が低く、また入院から死亡までの日数が短いことがわかった。本結果より、在宅医療がある症例は、延命治療および積極的治療を行わない旨の方針を決めており、かつ生命の危機に直結する状態となる直前まで在宅療養を継続しその後病院へ搬送され早期に死亡したものが多く含まれると考えられた。今後、早期からの緩和ケアおよび多職種による介入を推進し情報提供や病状説明の強化により、在宅療養を行うがん患者やその家族の療養上の不安を取り除き入院への意思決定を回避することで、在宅での療養継続や看取りを実現していくことが重要と考えられた。

事例報告
  • 緒方 聖友, 荒金 太, 小山 美晴, 寺崎 修司
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 19 巻 3 号 p. 151-156
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2023/08/29
    ジャーナル フリー

     基礎疾患や入院時合併症を有する手術患者に対して、主たる手術用クリティカルパス(以下パス)に加えて、基礎疾患に応じた個別の対応が必要となる場合がある。電子カルテには、パスに組み合わせて使用するオプショナルパスがあるが、熊本赤十字病院ではこれまで作成していなかった。今回、術前の抗凝固薬のヘパリンブリッジングについて、多職種で協議の上、投与方法と指示を統一したオプショナルパスを作成し、使用したので報告する。

     これまでに9例の手術用パスとオプショナルパスを併用した。オプショナルパスの導入によって、抗凝固薬の中止と再開が確実に行われ、ヘパリンの投与方法が統一された。看護指示も統一し、同時に作成した患者用リーフレットにより患者ケアの向上に繋がり、標準化された医療提供が可能となった。一方で、適切な活性化トロンボプラスチン時間の延長が得られなかった例があったこと、オプショナルパスの逸脱例の評価がなされていなかったことが課題だった。

     PDCA サイクルを回すことで、さらに医療の向上を目指したい。また、オプショナルパスは柔軟に運用が可能であり、主たるパスと組み合わせて使用することで、様々な疾患に対する標準化された治療の提供に努めたい。

  • 鳥羽 三佳代, 森脇 睦子, 相曽 啓史, 貫井 陽子, 尾林 聡, 伏見 清秀
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 19 巻 3 号 p. 157-160
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2023/08/29
    ジャーナル フリー

     2016年4月から東京医科歯科大学医学部附属病院産婦人科において「術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン」に準じた予防抗菌薬の適正使用化活動(以下活動)を実施した。活動にあたって、医師・看護師・薬剤師から成るワーキンググループを結成した。まずDPC(Diagnosis Procedure Combination)データを用いて術後抗菌薬使用状況を可視化した。可視化により、リンパ節郭清を実施した子宮全摘術は抗菌薬の選択と投与期間はほぼ標準化されていたが、リンパ節郭清を実施しなかった子宮全摘術の抗菌薬選択はガイドラインとは異なり、投与期間も長いことが明らかとなった。そこで診療科医師と結果を共有し、ガイドラインに準じて抗菌薬を変更し、投与期間を短縮することになった。

     また活動の実施状況を評価するために①抗菌薬投与期間適正率と②抗菌薬適正選択率を計測し、活動のアウトカムを評価するために③抗菌薬再開率、④術後入院日数、⑤抗菌薬医療費、⑥手術部位感染発生率、⑦術後3日目以降の38.5℃以上の発熱発生率を計測することとした。①-⑤はDPCデータを用いて計測し、⑥、⑦は診療録調査も実施した。活動に伴い、抗菌薬投与量および医療費は減少したが、SSI発生率、抗菌薬再開率、発熱率、術後入院日数に変化は無かった。

     以上の産婦人科での活動を受けて、現在他の診療科においても術後感染予防抗菌薬の適正使用化活動を開始している。

  • 櫻庭 優子, 杉山 直幸
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 19 巻 3 号 p. 161-166
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2023/08/29
    ジャーナル フリー

     バランスト・スコアカード(BSC)は戦略的マネジメントツールであり、スタッフによる活動状況の追跡やそれらの活動から得られる成果をモニタリングすることが可能となる。我々は2015年よりBSCを医療安全のマネジメントツールとして導入した。BSC作成において到達目標をQuality indicator(QI)として設定した。2016年には能代厚生医療センター独自の「危険度分類ABC」を作成した。この分類では、患者影響レベルに関係なく未然に防いだ事例をA、警鐘事例はC、AとC以外はBとした。結果、インシデントの報告が814件増加(総数2689件)した。報告されたインシデントのうちレベル0は30.8%となり、目標値として設定した30%を超える成果が得られた。BSCとQIの導入による客観的な指標を用いての職員への周知が、このような医療安全活動の促進に寄与したと考えられた。BSCは医療安全活動のマネジメントツールとして有用である。

  • 中道 哲朗, 鈴木 俊明
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 19 巻 3 号 p. 167-172
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2023/08/29
    ジャーナル フリー

     今回、ひかりメディカルグループに在籍する常勤セラピスト182名の残業時間を短縮するため、2016年8月(以下、第1回調査)から2017年3月(以下、第2回調査)にかけて取り組みを実施した。対象は、経験年数を元にカテゴリーAは新卒者、Bは2年目以降、Cはリーダー、Dは役職者の4つに分類した。残業時間短縮への取り組みは、1)「残業5時間未満/月の達成」の目標設定、2)残業時間と自己研鑚の区分け基準の設定と残業事前申請制度の導入、3)A・Bの取得単位数の調整、4)リハビリテーション部主催の勉強会の業務時間内開催の4項目を実施した。結果、A・Bでは第1回調査と第2回調査で平均残業時間が有意に短縮し目標を達成した。一方C・Dは、残業時間は短縮したが目標達成には至らず、特にCは第1回調査と比較して第2回調査で有意な差を認めなかった。今回実施した取り組みは、リハビリテーション部としての時間の使い方が主であり、他部署との関わりが少ないA・Bには有効であった。CとDの残業要因は他部署との関わりや患者、家族への対応に加えAのフォローなど、今回の取り組み以外の業務であると考えられる。特にCでは第1回調査と比較して第2回調査で有意な差を認めず、業務の集中が推測される。残業時間の短縮は、職場環境への満足度やストレスケアの観点、自己実現に向けた研鑚時間を確保するためにも必要であり、今後Cの残業時間短縮を課題として取り組む。

  • 武山 真弓, 村井 はるか
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 19 巻 3 号 p. 173-176
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2023/08/29
    ジャーナル フリー

     診療情報管理士の働きがいについての意識調査を行った。有効回答数は113、有効回答率は71.5%であった。働きがいへの影響要因として、上司から働きかけがある、他部署に業務が理解されている、他部署に感謝されている、に有意な差が見られた。上司との関係に有意差が見られた一方、部下や同僚との関係と働きがいには有意な差は見られなかった。働きがいの向上対策として、個々の職員が他部署に働きかけること、他者、特に上司から自身は気にかけられていると捉えられることの重要性を認識し、他部署に役立つ業務成果を出すことと部署内外の交流に積極的になれる職場の良好な人間関係を作ることが必要である。

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