日本医療マネジメント学会雑誌
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事例報告
  • 退院支援クリティカルパスで多職種連携を目指す
    田中 知子, 中村 祐子, 飯田 登美子, 山崎 洋
    原稿種別: 事例報告
    2019 年 20 巻 1 号 p. 2-7
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2024/02/26
    ジャーナル フリー

     その人が、暮らしてきた地域の中で、その人の人生を最後まで生き切るために、医療、介護、福祉の多職種がチームとなり協働することが、地域包括ケアの根幹を支える。そのため、チームを構成する多職種は同じ目的をもち、プロフェッショナルとして各々の役割を理解しあい、目的を達成するために共有できる指標が必要である。この指標の1つとして、退院支援クリティカルパスの検討を挙げ円滑な入退院支援を目指すことは、多職種チームの連携強化や地域包括ケアへの貢献をもたらす。

  • 沢内 節子, 須藤 隆之
    原稿種別: 事例報告
    2019 年 20 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2024/02/26
    ジャーナル フリー

     パス大会とは、クリティカルパス(以下、CP)および医療の質に関する事項を施設内外のすべての職種で発表・検討する場とされている。盛岡市立病院(以下、当院)における院内CP大会(以下、CP大会)を中心としたCP委員会活動の効果を評価する目的で、アンケート結果を含め検討した。当院は2002年にCPを導入し、2006年4月にCP委員会を発足した。CP普及を目的にCP大会を、2008年6月から2016年12月までに70回開催した。CP大会終了時に参加者アンケート調査を行い、2008年と2016年に全職員へCPに対する意識調査を行った。第1回CP大会開催時のCP数は55、適用率は26.2%、第70回CP大会開催時のCP数は271、適用率は55.5%に増加した。CP数、適用率が少なくCPに消極的な診療科がみられた。参加者アンケートでは、8年間で研修の満足度、理解度が倍増した。全職員への意識調査では、CPの利点とされる項目に対する肯定的意見が増加したが、自己学習の努力低下が微増した。CP大会により、職員全体のCP理解、CP数、適用率の増加がみられ、CPは職員に広く浸透していると思われた。CP委員会活動は、院内のCP推進に不可欠で、CP大会の教育効果は有用であると思われた。職員の自己学習、CPに消極的な診療科に対し、従来のCP大会のみでは限界があり、新たな工夫が必要と思われた。

  • 大鳥 和子, 福島 和代
    原稿種別: 事例報告
    2019 年 20 巻 1 号 p. 14-18
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2024/02/26
    ジャーナル フリー

     本研究は、地域包括ケア病棟における在宅復帰支援対策の一環として、当該病棟入院患者の転帰先とその関連要因を明らかにすることを目的に実施した。九州圏内に所在するA病院ならびにB病院の地域包括ケア病棟に入退院した患者485人を対象に年齢、性別、入院前の居住場所、入院目的、入院日数、入退院時の看護必要度(A項目およびB項目)、転帰先を調査し、転帰先との関連要因を調べた。転帰先が自宅や居住系介護施設の在宅であった患者をⅠ群、Ⅰ群以外の施設であった患者をⅡ群、入院中に死亡した患者をⅢ群とした。A病院の地域包括ケア病棟入院患者(以下、a病棟患者)はⅠ群からⅢ群の3つに分類され、B病院の地域包括ケア病棟入院患者(以下、b病棟患者)はⅠ群とⅡ群に分類された。a病棟患者では、年齢はⅢ群が最も高かった。入院日数はⅡ群が最も長かった。看護必要度A項目は入院時、退院時ともにⅢ群が最も高かった。看護必要度B項目も入院時、退院時ともにⅢ群が最も高かった。b病棟患者では、入院日数はⅡ群がⅠ群よりも長かった。看護必要度B項目も入院時と退院時ともにⅡ群がⅠ群よりも高かった。転帰先と年齢、入院日数、看護必要度との関連性があったことから、年齢、入院日数、看護必要度は在宅退院に影響を及ぼす因子である可能性が示唆された。

  • 秦 浩信, 江戸 美奈子, 今待 賢治, 渡邊 健一, 菊地 久美子, 加藤 秀則
    原稿種別: 事例報告
    2019 年 20 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2024/02/26
    ジャーナル フリー

     がん治療における医科歯科連携の推進を目的に、2012年以降がん医科歯科連携講習が全国各地で実施され、がん診療連携歯科医師が全国で多数登録されている。がん治療医から院内歯科への口腔機能管理依頼は増加する一方で、がん治療医から地域歯科診療所への口腔管理依頼は遅々として進んでいないのが現状である。そのため我々はがん治療の開始前に、がん治療医から地域歯科診療所に口腔管理を依頼する医療連携システムの構築を目指した。

     まず、がん手術前患者12名を対象に、第1期医科歯科前連携トライアルを行った。続けて化学療法前、骨修飾薬投与前の患者25名を対象に、第2期医科歯科前連携トライアルを行った。第2期には歯科衛生士による患者オリエンテーションの機会を設けた。

     本システムの評価のために患者、歯科医師、医師に対してアンケート調査を行った。アンケートの結果から患者の満足度も高くシステム上の問題はないことが判明した。

     2期に亘るトライアル期間を経て、がん治療医から地域歯科診療所への医科歯科連携システムを構築したので報告する。

  • 倉田 里衣子, 田口 敦子, 松永 篤志, 山内 悦子, 浦山 美輪, 永田 智子
    原稿種別: 事例報告
    2019 年 20 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2024/02/26
    ジャーナル フリー

     外来患者が在宅療養支援の内容を理解し、必要な時に在宅療養支援を求めやすいよう働きかけることを目的に、啓発ツールとしてパンフレットを作成した。作成したパンフレットについてX病院の外来看護師95名を対象とした質問紙調査を実施し、パンフレットの有用性を検討した。

     「在宅療養支援必要者を把握していく方法の一つとして、パンフレットは効果的か」等の、パンフレットの有用性に関する質問3項目全てにおいて、質問対象者の80%以上から肯定的な回答を得た。改善点としてパンフレットの内容のシンプル化の必要性や、実用の課題として、看護師自身の在宅療養支援に関する知識不足や、院内における多職種間の役割分担の不明確さが明らかになった。

  • 里吉 浩子, 荒川 裕貴, 久田 達也, 石木 良治
    原稿種別: 事例報告
    2019 年 20 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2024/02/26
    ジャーナル フリー

     転倒を予防することは極めて重要であるが、スリッパなどの踵の無い履物を使用することの危険性についての認識は、患者のみならず医療者においても乏しい。トヨタ記念病院では、多職種より構成された「トライアングルの会」が院内の医療事故防止活動を主導的に行っており、履物に特化した転倒防止活動に取り組んだ。歩行に関する安全な療養環境を標準化するための見本となる「療養環境のベストショット」を作成し、ラウンドによる巡視活動を行った。患者への啓発活動として、履物リーフレットを作成、院内イントラネットを利用しスリッパにおける転倒リスクを掲示し職員全体への注意喚起を行った。

     その結果、転倒件数の有意な減少はなかったが、高い身体損傷レベルの事例は発生しなかった。履物に起因する転倒リスクを排除する防止活動は、有用な方法であることが示唆された。

  • 収支面から
    川角 朝美, 村上 敬子, 稲垣 優, 岩垣 博巳, 沖田 哲美
    原稿種別: 事例報告
    2019 年 20 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2024/02/26
    ジャーナル フリー

     医師事務作業補助者(Doctor Assistant:DA)体制加算が2008年度の診療報酬改定にて初めて導入された。このDA加算のみでは人件費を賄うことは難しく、病院の経営に影響を及ぼすのではないかとの懸念からDAの導入に至っていない病院もある。2014年4月現在、国立病院機構福山医療センターは33人のDAを雇用している。雇用に関わる経費(年間給与・雇用保険等)の合計は、6438.3万円である。一方、2013年度実績は、年間収益がDPC基礎点数と医師事務補助体制加算(15:1)係数に基づいて算定すると6583.8万円、DPC以外の実績720.9万円を加え、合計7304.7万円であり、年間利益は866.4万円と算定された。加え、DAの導入により医師の事務作業が軽減された結果、外来患者の予約枠・手術枠の増加ももたらされ、DA の導入は病院の経常収益に寄与することが示された。

  • 効率化の工夫
    石田 泰史, 松本 昌美, 川野 貴弘, 小畠 康宣, 下川 充, 吉村 淳, 明石 陽介
    原稿種別: 事例報告
    2019 年 20 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2024/02/26
    ジャーナル フリー

     へき地で救急医療を実践するには様々な困難が存在する。医師・看護師等のモチベーションを維持する為には無駄を排し効率よく運営することが重要となる。今回奈良県南部約64%の広大な医療圏で唯一の2次救急病院として2016年4月1日に南奈良総合医療センターが開院した。院内に救急センターを設置し救急対応を担うこととなったが、開院前から様々な問題点が想定された。これらの問題点を解決すべく開院前に準備した効率化の工夫がどのような効果があり機能したかを後視的に検証した。我々が取り組んだ工夫は、まず救急医療に精通しているスタッフとそうでないスタッフをペアにした勤務体系を構成して勤務を通して救急医療を学べる体制、いわゆるon the job training(OJT)の体制としたことである。また安全で安価なinformation and communication technology(ICT)を利用しタブレットによる画像等を情報共有したコンサルト体制を構築し医師の時間外登院頻度を減じた。この体制によりスタッフはいつでも院外の専門診療科医にもコンサルトが可能となった。2016年4月1日から2017年12月末までに当院では22369件の救急患者の受け入れを行ったがそのうち救急車搬入6929件(31.0%)、ドクターヘリ272件(1.2%)であった。これは以前の南和地区での救急車受け入れ件数の約2倍であることが奈良県広域消防のデータから明らかになった。へき地での救急医療は効率化・安全性をマネジメントすることが重要で十分な救急体制の構築・維持ができる可能性が示唆された。

速報
  • 宮﨑 久義, 野村 一俊, 武藤 正樹, 坂本 すが, 勝尾 信一, 田代 清美, 津村 宏
    原稿種別: 速報
    2019 年 20 巻 1 号 p. 45-52
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2024/02/26
    ジャーナル フリー

     日本医療マネジメント学会は、日本におけるクリティカルパスの普及状況を調べるために、2003年から200床以上の約2000病院にアンケート調査を実施している。回答病院数に対するクリティカルパス導入病院の割合を示す導入率は、2003年は82%だったが2018年には93%となり、15年間で11%上昇した。作成・運用されているクリティカルパスの種類が50種類以上の病院は2018年には71%に、200種類以上の病院も2018年には140病院(22%)にまで増加した。

     クリティカルパス委員会は、2018年には89%の病院で開催されるまでになった。しかしクリティカルパス研究発表会を開催している病院は、2005年の57%が最高で、以後減少し、2018年は36%であった。作成基準は、2003年は52%の病院が有し、以後次第に増加したが、2012年の72%を最高とし、以後減少に転じ2018年は64%であった。

     クリティカルパス導入の目的も少しずつ変化し、それに応じてメリットも変わってきた。

     地域連携クリティカルパスを運用している病院は、2012年の535病院が最多で、以後減少に転じ、2018年は457病院であった。地域連携クリティカルパスを運用している病院数が減少している一方で、運用件数の多い病院の数は増加している。

     電子カルテは、2018年には回答病院の90%が導入し、その93%が電子カルテでクリティカルパスを運用していた。

     2018年施行の調査でクリティカルパスの作成・運用上の困っていることについての意見を求めたところ、最も多かったのが、クリティカルパスの質管理に関する課題で、特にアウトカム評価やバリアンス分析が行えないことが挙げられた。クリティカルパスの作成・運用が行いにくい環境であること、医師の協力が得られないとの指摘も多かった。電子カルテへの移行でクリティカルパスの作成・運用がうまくいかないこと、教育・研修のあり方等も課題として挙げられた。

     本調査は、クリティカルパスに取り組む各病院が組織として取り組む課題を示すとともに、今後の日本における当学会の果たす役割について示唆を与えた。

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