日本医療マネジメント学会は、日本におけるクリティカルパスの普及状況を調べるために、2003年から200床以上の約2000病院にアンケート調査を実施している。回答病院数に対するクリティカルパス導入病院の割合を示す導入率は、2003年は82%だったが2018年には93%となり、15年間で11%上昇した。作成・運用されているクリティカルパスの種類が50種類以上の病院は2018年には71%に、200種類以上の病院も2018年には140病院(22%)にまで増加した。
クリティカルパス委員会は、2018年には89%の病院で開催されるまでになった。しかしクリティカルパス研究発表会を開催している病院は、2005年の57%が最高で、以後減少し、2018年は36%であった。作成基準は、2003年は52%の病院が有し、以後次第に増加したが、2012年の72%を最高とし、以後減少に転じ2018年は64%であった。
クリティカルパス導入の目的も少しずつ変化し、それに応じてメリットも変わってきた。
地域連携クリティカルパスを運用している病院は、2012年の535病院が最多で、以後減少に転じ、2018年は457病院であった。地域連携クリティカルパスを運用している病院数が減少している一方で、運用件数の多い病院の数は増加している。
電子カルテは、2018年には回答病院の90%が導入し、その93%が電子カルテでクリティカルパスを運用していた。
2018年施行の調査でクリティカルパスの作成・運用上の困っていることについての意見を求めたところ、最も多かったのが、クリティカルパスの質管理に関する課題で、特にアウトカム評価やバリアンス分析が行えないことが挙げられた。クリティカルパスの作成・運用が行いにくい環境であること、医師の協力が得られないとの指摘も多かった。電子カルテへの移行でクリティカルパスの作成・運用がうまくいかないこと、教育・研修のあり方等も課題として挙げられた。
本調査は、クリティカルパスに取り組む各病院が組織として取り組む課題を示すとともに、今後の日本における当学会の果たす役割について示唆を与えた。
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