日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
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16 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
事例報告
  • 網野 祐子, 横田 恵弥, 草薙 美那子, 生熊 久敬
    原稿種別: 事例報告
    2016 年16 巻4 号 p. 181-184
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2021/12/10
    ジャーナル フリー

     香川労災病院では整形外科疾患の中でも重症と考えられる頚髄損傷患者に対して、手術方法で分類したクリティカルパス(以下パス)を適応してきた。しかし、重症度が高いほど情報伝達の共有と統一化は重要であると考え、今回頚髄損傷の形態や麻痺の程度に対応できる頚髄損傷パスを作成したので報告する。これは、大きく骨傷の有無で分類し、緊急手術を要する骨傷有りは術前・術後に分類している。さらに呼吸筋麻痺の可能性がある第5頚髄以上と以下で細分類し全5種類のパスを作成した。神経学的所見の記入方法は、評価者によってさまざまであり、評価を統一するためASIA評価を導入した。また、障害予後の告知時期やそこに至る過程はさまざまで、精神的サポートが重要である。そこで、精神的サポートに着目し、障害予後の告知欄、定期的なカンファレンスの実施、Finkの危機理論の活用の設定を行った。本パスを使用することで、頚髄損傷に携わる医療従事者の情報共有や統一したケアが期待でき、さらに患者の精神状態を簡便に把握する事が可能になると思われる。

  • 池田 登顕, 井上 俊之, 菊谷 武, 呉屋 朝幸, 田中 良典, 呉屋 弘美, 佐野 広美, 庄司 幸江, 須藤 紀子, 長島 文夫, 藤 ...
    原稿種別: 事例報告
    2016 年16 巻4 号 p. 185-189
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2021/12/10
    ジャーナル フリー

     在宅医療・緩和ケアカンファレンス(以下、本会という)は、北多摩南部医療圏にて多職種連携推進研修を開催してきた。今回、阿部らが開発した「医療介護福祉の地域連携尺度」を一部本地域に合わせて改変したものを用いて、本会の取組みを客観的に評価した結果、有用な知見が得られたので報告する。

     調査は、75名を対象とし多職種が集まる本会以外の研修会への参加頻度も含め、過去3年間で、「本会の研修会参加6回以上」、「本会以外の研修会も含めて6回以上参加」、「多職種連携の研修会参加6回未満」の3群に分け、連携尺度スコアをKruskal-Wallis検定にて検証した。post-hoc testとしては、Scheffe法を用いた。

     最終的に、15%以上の欠損値が存在した1名を除外した、74名の回答を分析した。過去3年間において、「本会の研修会参加6回以上」、「本会以外の研修会も含めて6回以上参加」、「多職種連携の研修会参加6回未満」の3群間における連携尺度スコアのKruskal-Wallis検定の結果、有意差がみられた。また、多重比較の結果「本会の研修会参加6回以上」群の連携尺度スコアは、「本会以外の研修会も含めて6回以上参加」群および「多職種連携の研修会参加6回未満」群と比較して有意に高かった(P<0.001)。

     地域での多職種連携推進には、その地域で開催されている研修会へ年2回以上の参加が推奨されると考えた。

  • 遠野 千尋, 遠藤 秀彦
    原稿種別: 事例報告
    2016 年16 巻4 号 p. 190-193
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2021/12/10
    ジャーナル フリー

     岩手県立釜石病院は2011年の東日本大震災における被災地の釜石市にあり、釜石医療圏では唯一の地域中核病院で272床を有する。震災の影響もあり釜石医療圏はもとより、当院でも医師不足は以前より深刻化している。2014年12月現在、常勤医は18名である。岩手県医療局では被災地支援の志のある定年退職後の医師(以下、シニアドクターと通称)の募集を行い採用に成功し、当院での勤務を斡旋した。その結果、2012年から放射線科治療医、2013年から麻酔科医、2014年から放射線科読影医、産婦人科医の合計4人が着任した。いずれの医師もそれまで勤務していた病院での定年を迎え、第2の人生として、献身的に勤務している。各医師の勤務により当院の診療機能は向上し、その実績から、岩手県医療局では2015年4月以降の制度としてシニアドクターについて、3年間にわたり正規職員待遇で雇用できる任期付職員採用制度を東北地方で初めて導入した。今回は、その4人のシニアドクターの勤務状況について報告する。

  • 藤井 文子
    原稿種別: 事例報告
    2016 年16 巻4 号 p. 194-199
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2021/12/10
    ジャーナル フリー

     市立宇和島病院は愛媛県の西南地域に位置する435床の急性期病院である。1日約1000食の病院食を提供している。安全で美味しく、患者満足度の高い食事提供で喫食率向上を図り、栄養ケア・マネジメントにつなげている。

     2008年10月の病院の改築を契機として、新調理システムを導入し、朝食メニューの開発を試みた。新調理システムの導入によって朝食メニュー数の増加、朝食の野菜提供量が増加した。また、食材料費の低減、減塩食への応用が可能となり、病院食に関する患者満足度にも良好な影響があった。

     一方、調理従事者にとっても安全な食事づくりが可能なシステムであるとの認識が強く、労働環境の整備にもつながった。

     新調理システムは患者側、食事提供側の両者にとってメリットがあることが判明し病院食の調理方法としても、また、食材料費や調理従事者の労務管理など給食経営のマネジメント手法としても有用性が示された。

  • 高瀬 昌浩, 宇治原 誠
    原稿種別: 事例報告
    2016 年16 巻4 号 p. 200-204
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2021/12/10
    ジャーナル フリー

     組織における情報共有は重要な課題である。国立病院機構横浜医療センターでは2013年1月より職員への情報共有、および意識向上を目的に、院内デジタル掲示板(ナースステーションや医局などで、ネットワークに接続したテレビモニターを使って情報を発信するシステム)を導入した。放送する情報(コンテンツ)は、「病院全体の患者数」、「診療科・病棟ごとの患者数」、「目標達成状況」「業務連絡」の4つに大きく分けられる。導入後1〜2ヶ月間にモニターアンケートを行い、問題点を発見し解決策を講じた。そして導入半年後、職員全員を対象にアンケートを行い、院内デジタル掲示板の視聴頻度、病院全体患者数に対する意識評価、高視聴率コンテンツ、自身の職場に対する院内デジタル掲示板の必要性などについて調査した。その結果、院内デジタル掲示板は情報共有に一定の役割を果たすと考えられた。また、導入後大きく患者数が増加し、査定率も大幅に低下していることから、院内デジタル掲示板で患者数、目標達成状況、査定率等を放送することは職員の意識向上に貢献することが示唆された。

     院内デジタル掲示板は、医療機関における導入事例が少ないため、活用方法が明らかではない。導入については、ディスプレイパネル費用と配信費用がかかるものの院内職員の労力は1名(兼職)のみと大きくなく情報共有の促進ならびに、職員の意識向上という視点から導入の効果は大きいものと思われる。今後は、さらなる改良や新たな利用法の構築が求められる。

紹介
  • 三好 研
    原稿種別: 紹介
    2016 年16 巻4 号 p. 205-208
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2021/12/10
    ジャーナル フリー

     一般的に診察室の掲示物が多くなるにつれて、掲示板は煩雑となり見やすさは損なわれていく。そこで、 掲示物を見やすくするために、4台のiPadを掲示板として利用することにした。それぞれのiPadに、①カレンダー、②更新される頻度が高い掲示物、③更新される頻度の少ない掲示物、④手術予定表の各内容を表示するのに適するアプリをインストールし、マグネット付きのタブレットホルダーを用いてホワイトボード上に固定した。その結果、以前と比べて目的の情報に簡単に素早くアクセスできるようになった。また、毎年カレンダーを用意する必要もなくなり、医局からでも掲示内容の変更が可能となった。実用的なアプリが豊富に揃っているiPadは、電子掲示板としても十分役にたつと思われる。

  • 荒井 耕, 古井 健太郎, 渡邊 亮, 阪口 博政, 横谷 進
    原稿種別: 紹介
    2016 年16 巻4 号 p. 209-212
    発行日: 2016/03/01
    公開日: 2021/12/10
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、診療プロセスと費用及び採算性との関係性を推測することである。2014年6〜7月に、DPC/PDPS(Diagnosis Procedure Combination/Per-Diem Payment System)対象1585病院の管理職に対する質問票調査として実施した(回収率16.7%)。その結果、同一DPCにおいて在院日数が標準から外れて長い症例で費用が高く採算が悪いと認識している傾向があり、また在院日数のばらつきが大きいDPC症例群の方で採算が悪いと認識している傾向もあることが判明した。さらにクリティカルパス(以下、パス)が設定されているDPCにおいて、パスから外れた症例の方で費用が高く採算が悪いと認識している傾向があり、加えて対応するパスのないDPCの方で採算が悪いと認識している傾向もあることが判明した。これらの結果は、パス等によって診療プロセスを標準管理することが、病院の採算管理にとって重要であることを意味している。また、診療報酬抑制下での病院の採算管理行動に対処するために、診療報酬制度等の工夫が必要である可能性を示唆している。しかし診療プロセスと費用及び採算とのこれらの関係性は、原価計算に基づく財務的証拠に支えられた事実ではなく、あくまでも病院管理職の経験に基づく知見(認識)でしかない。こうした認識が事実であるかを今後検証する必要がある。

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