日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
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19 巻, 4 号
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原著
  • 池本 美智子, 辻 麻理子, 竹尾 貞徳
    原稿種別: 原著
    2019 年 19 巻 4 号 p. 190-193
    発行日: 2019/03/01
    公開日: 2023/11/02
    ジャーナル フリー

     病院栄養士の職業性ストレスについては、先行研究において田中らが業務内容、勤務実態を調査し、直営・委託という所属や管理栄養士・栄養士という資格が職業性ストレスに影響することを報告している。しかし、病院管理栄養士の職位別職業性ストレスに関する報告は他にみられない。そこで今回、病院栄養管理部門における職場長、副職場長、役職なしの管理栄養士、勤務年数4年未満の若手管理栄養士について、職位別職業性ストレスを調査した。どの職位においても半数以上が仕事の量的質的負担感を有していた。職位別には、勤務年数4年未満の若手管理栄養士は心理的・身体的ストレスを有する者が多かった。副職場長は仕事のコントロール度が高く、仕事ストレスの要因は最も低かった。職場長は上司などからの職場の支援が少ないと感じる者が多く、仕事の負担感に繋がっていることが推察された。また、職場長は総合健康リスクが全国労働者の標準よりも高い状況にあった。こうしたことから職位別の職業性ストレスの違いを把握し、対象者に応じたストレス軽減に向けた組織による対策が必要と考えられた。

事例報告
  • 福田 誠司
    原稿種別: 事例報告
    2019 年 19 巻 4 号 p. 194-197
    発行日: 2019/03/01
    公開日: 2023/11/02
    ジャーナル フリー

     医師事務作業補助者の目的の一つは、医師負担の軽減を通して医療安全など医療の質を向上することである。本研究では、筆者の大学病院において、当事者が医師であるインシデントを医師事務作業補助者導入前後で比較し、医師事務作業補助者が医療安全へ有効であるかを検証した。

     医師事務作業補助者を導入していない診療科(非導入科)では、インシデント数は対照時期と比較して有意に増加したが、医師事務作業補助者を導入した診療科(導入科)では導入後のインシデント数は導入前と比較して増加しなかった。インシデント数が減少した診療科は導入科で多く、インシデント数が増加した診療科は非導入科で有意に多かった。医師の「多忙、慌てていた、寝不足」が背景のインシデント数は、非導入科では比較前後で不変であったが、導入科では導入後に減少した。医師事務作業補助者の有無はインシデントレベルには影響しなかったが、非導入科では3b以上のインシデント数が対照時期と比べて有意に増加したのに対し、導入科では導入前と比較して導入後に増加しなかった。医師事務作業補助者を導入した診療科において、インシデント発生数と3b以上のインシデント発生数が非導入科と比較して有意に減少したことは、医師事務作業補助者が医療安全向上に有効であったことを示す。

  • 岡 公美, 岡 美希, 増田 佳代, 福井 智子, 伊藤 裕子, 高倉 美里
    原稿種別: 事例報告
    2019 年 19 巻 4 号 p. 198-201
    発行日: 2019/03/01
    公開日: 2023/11/02
    ジャーナル フリー

     久留米大学医療センターにおける2015年度の転倒・転落のうち、患者側の要因が絡むものは78.7%であった。患者・家族と看護師がリスクと予防策を共有する必要があると考え、患者参加型予防策の導入に取り組んだ。

     患者参加型予防策として、患者や家族が記入した転びやすさチェック表をもとに危険度を評価し、患者参加型説明用紙と転倒・転落予防リーフレットを用いてリスクと予防策を共有した。15歳以上の新入院患者のうち、患者参加型予防策を導入した2016年10月から3ヶ月の511人を介入群、前年度同時期の539人をコントロール群とした。分析の結果、年齢、性別、危険度に有意差はなかった。転倒・転落発生率は、コントロール群4.9%、介入群5.7%で有意差を認めなかった。転倒・転落発生率の低下には繋がらなかったが、患者特性を考慮した介入方法の検討など、長期的な評価を行う必要がある。

  • 栗林 武志, 和田 梨奈, 池田 公
    原稿種別: 事例報告
    2019 年 19 巻 4 号 p. 202-207
    発行日: 2019/03/01
    公開日: 2023/11/02
    ジャーナル フリー

     地域医療機能推進機構中京病院のMRI検査室にて点滴棒の吸着事故と患者搬送用ストレッチャー上に酸素ボンベを載せたまま入室した事例が発生した。このような吸引、吸着事故を未然に防ぎ安全にMRI検査が行える環境を整える事を目的に、磁場体験を含むMRI安全講習会を定期的に開催し啓発活動を行った。講習会の開催前後においてMRIチェックリスト(検査時に持ち物等の確認を目的とする)の運用状況の調査を行ったが、開催後はMRIチェックリストの運用状況が改善された。さらに講習会の定期的な開催は改善された状況の維持にも繋がった。定期的な講習会の開催は MRI 検査を安全に運用するうえで、院内スタッフに対しMRI検査の危険意識の変化に効果的であり、今後も定期的な開催の継続が必須と考えられる。

  • 鈴木 聡, 三科 武
    原稿種別: 事例報告
    2019 年 19 巻 4 号 p. 208-214
    発行日: 2019/03/01
    公開日: 2023/11/02
    ジャーナル フリー

     この研究の目的は、鶴岡市立荘内病院(以下、当院)で発生したアミノ酸輸液製剤による敗血症事例をもとに、感染対策チーム(ICT)が院内感染対策の実効性を上げるために、医師に対しどのようにアプローチすべきか検討することである。アミノ酸輸液製剤中で増殖したセレウス菌汚染による菌血症が発生したことを踏まえ、従来のカテーテル関連血流感染予防対策の徹底とともにICTはあらたに2つの感染対策を医師に提案した。すなわち、1)アミノ酸製剤(製剤)への薬液の混合調製は行わない、2)製剤の点滴時間を最長8時間とする、の2点である。アンケートの結果、製剤への薬剤混合調製の禁止については賛成が78%、点滴時間については賛成が68%に上った。この結果をふまえ感染対策を実施した結果、入院棟内の薬液の混合調製はほとんどなくなった。さらに、1,000ml製剤を8時間以内に使い切ることの妥当性を考慮した結果、同製剤の処方数が大幅に減少し(前年同月の2.8%)、逆に500ml製剤が1.75倍に増加した。当院ではその後セレウス菌による血流感染事例を認めていない。このように、ICTは臨床現場の医師の意向を十分に反映させるための手段の一つとして、事前にアンケート調査等を行い、その結果を医師にフィードバックすることで比較的容易に対策の実施が可能になるものと思われた。医師が主としてかかわる感染予防対策では、病院管理職等からのいわゆるトップダウンで強制される対策では「やらされ感」が強くなるため医師への感染対策の浸透には不十分であると思われる。医師の行動変容を促すためには、医師の考え、戸惑い等を十分に把握したうえで解決策を提案する、いわゆるボトムアップの問題解決法が有効な場合があると思われた。

  • 救命場面を想定した救命行動における推測
    入江 浩子, 森川 奈緒美, 糸井 裕子
    原稿種別: 事例報告
    2019 年 19 巻 4 号 p. 215-219
    発行日: 2019/03/01
    公開日: 2023/11/02
    ジャーナル フリー

     医療・福祉系大学学生3827名に対し、想定された救命場面での一次救命処置に対する認識を把握し、教育的示唆を得ることを目的に、無記名による自己記入式質問紙調査を行った。学科間における一次救命に対する知識・自信の程度は看護学科が有意に高い結果となった。その認識の違いは、講義・講習の実際と職種の役割によることが考えられ、また、確実な救命行動を実施できる者の育成のためには、医療者としての自覚と、全学を挙げた継続的BLS教育が重要である。

紹介
  • 曽我 香織, 西本 祐子, 引田 紅花, 斎藤 恵一
    原稿種別: 紹介
    2019 年 19 巻 4 号 p. 220-225
    発行日: 2019/03/01
    公開日: 2023/11/02
    ジャーナル フリー

     医療の質を把握する試みの一つとしてわが国では患者満足度(PS)調査が広く行われている。しかしながら現状のPS調査では一時点での患者の主観を尋ねる設問が多く、具体的な改善行動に結びつけることが困難である。近年、欧米の病院を中心に「PX(Patient eXperience:ペイシェント・エクスペリエンス、患者経験価値)」が注目されている。PX調査は具体的且つ客観的事実を問う設問が多いため医療サービスの実態を把握しやすく、その結果が医療安全や臨床の質を反映することが報告されている。日本でもPX調査を実施するために、わが国の状況に適合した「日本版PX調査票」が開発されている。

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