日本医療マネジメント学会雑誌
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8 巻, 2 号
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  • 宮崎 久義, 武藤 正樹, 野村 一俊, 坂本 すが, 松島 照彦, 津村 宏
    2007 年 8 巻 2 号 p. 320-324
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    日本におけるクリティカルパスの普及状況を調べるために、2003年から毎年3月に200床以上の病院を対象にアンケートを郵送し回収した。対象病院は約2,000病院で当初の回収率は20%前後であったが後半になると40%を越え、信頼性の高い結果を得た。
    導入率は5年間で約10%上昇し、2007年には92%にまでなった。病床規模の大きい病院ほど導入率は高い傾向をみた。クリティカルパスの種類は約半数の病院で50種類以上を使用し、200種類以上所有している病院も27病院 (3%) あった。
    クリティカルパス委員会の開催、作成基準の作成は大半の病院で行われていたが、クリティカルパス研究発表会は約半数の病院で実施されている状況であった。
    地域連携クリティカルパスは大きな関心を持たれ、急速に普及しつつある。
    日本医療マネジメント学会が医療情報システム開発センターと共同で運営しているクリティカルパス・ライブラリーの認知度は50%に達したが、そのうちの1/3病院が利用しているにとどまっていることがわかった。今後の取り組みを更に強化する必要がある。これからIT化の進むなか、電子化社会におけるクリティカルパス、地域連携クリティカルパスの活用が注目されてくるであろう。
  • 野口 華奈子, 北村 幸子, 小西 陽子, 長 久恵, 田中 静榮, 吉田 政之
    2007 年 8 巻 2 号 p. 325-329
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    イレウスは様々な原因により、腸管内容物の通過が阻害された状態である。イレウスの治療においては、保存的治療と手術による外科的治療のどちらが適応であるか決定するために、病態のきめ細かい観察と原因の推定が重要である。更に、重症度や治療経過により様々な経過をたどるため、単一のクリティカルパスで対応することは困難である。
    当センターでは以下の4つのクリティカルパスを作成し使用している。今回1) の患者用イレウスアルゴリズムクリティカルパスを新しく開発、使用した。
    1) 患者用イレウスアルゴリズムクリティカルパス
    2) 発症から3日目までのイレウス保存療法・初期治療クリティカルパス
    3) 4日目以降のイレウス保存療法・継続クリティカルパス
    4) 手術療法クリティカルパス
    これらの短期間のクリティカルパスをアルゴリズムクリティカルパスと組み合わせて使用することにより、患者の状態に対応可能なクリティカルパスを提供することができた。また電子カルテ上にクリティカルパスを搭載することも容易になる。
  • 小林 紀子, 渕野 泰秀
    2007 年 8 巻 2 号 p. 330-334
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    ケアミックス型病院 (一般病床299床、療養病床167床) の地域医療連携課として、“病床の有効利用”を目的に平成2005年10月より病床管理回診を開始した。8病棟を4週に分けて、各々月1回の回診を行った。回診メンバーは地域医療連携課5名、病床管理委員3名、病棟看護課長の計9名体制とした。対象を急性期病床は在院日数30日以上、療養病床は在院日数3ヶ月以上の患者とした。回診前日までに、主治医より長期入院となった理由を記した理由書を回収した。回診で今後の方向性を提案し、1週間後にその進捗状況を確認した。回診により長期入院患者の現状を把握できた。また、スタッフに病床有効利用の意識付けができた。回診で方向性を見出し、転床・転院退院の手続きが開始されるケースも多々みられた。回診が近づくと主治医が自発的に転床・転院させるケースも増加した。社会的適応で退院を延期することが減少した。地域のニーズに合致した診療活動を行うためには、医療連携をうまく行い、病床を有効に利用することが大切である。
  • 病院経営に及ぼす影響
    小林 利彦
    2007 年 8 巻 2 号 p. 335-339
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    2004年4月の国立大学法人化ならびに急性期病院の平均在院日数低下、病床稼働率低下にともない、当院 (浜松医科大学付属病院) でも経営努力が求められるようになり、その一環として2005年4月に病院内に地域連携室が立ち上げられた。主たる業務は開業医 (診療所) からの初診紹介患者の事前予約受付と開放病床の利用案内である。同連携室を立ち上げるにあたり、新しいスタッフの参画、紹介元施設のマーケティング調査、各種サービス改善活動のほか、開業医師とはホットラインによる直接連絡を可能にした。結果的に、1日外来患者数は約100人増加し患者紹介率は約10%増加した。また、平均在院日数が18日台へと低下する中、病床稼働率はなんとか80-85%と現状維持している。さらに、地域連携室経由の初診紹介患者数は急増し、現在、初診紹介患者全体の55%が地域連携室を経由している。
    今回のような積極的活動は国立大学病院ではこれまで考えにくいことであったが、国立大学法人化が大きなきっかけとなって可能となった。しかし、民間病院ほかでは当たり前の経営活動に過ぎず、むしろこれからの継続的努力が重要であると考える。
  • 廣田 美江, 工藤 幹子, 今村 康子
    2007 年 8 巻 2 号 p. 340-343
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    入院患者の高齢化に伴って、病院内における高齢者の転倒転落事故が大きな問題になっている。今回われわれは転倒転落アセスメントスコアシート危険度IIの患者を対象にその評価スコアが転倒にどう影響し、かつ身体機能を評価するFunctional Balance Scaleと10m最大努力歩行スピードが転倒とどのように関連づけられるかについて理学療法士の視点より検討を行った。その結果、上記の3因子と転倒転落が相関を示すことが示唆された。これらの指標を今後活用することで、入院患者の転倒転落予防につながるのではないかと考える。
  • 杉田 塩, 大澤 俊也, 安部 勝美, 戸島 郁子, 大坂 顯通
    2007 年 8 巻 2 号 p. 344-349
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    輸血療法の過程で発生するヒューマンエラーによる過誤輸血およびABO型不適合輸血は、輸血療法における最大の問題である。当院では輸血の安全な運用を目的に患者リストバンドと血液製剤のバーコードを照合する輸血照合システムを導入した。今回、輸血照合システム導入の有効性と課題を明らかにすることを目的に、輸血照合システムを使用する医療スタッフおよび輸血療法を受ける患者を対象に質問紙調査を行った。その結果、輸血照合システムを使用する医療スタッフと患者の安全性への評価が高かった。また、輸血をする患者だけでなく医療スタッフの安心感も高まることが明らかになり、医療サービス向上および医療スタッフの業務支援に有益であると評価できた。また、運用の改善により血液製剤の返却率や廃棄率も減少した。輸血照合システム導入と運用の再構築は、ヒューマンエラー防止による安全性の向上に加え、患者サービスの向上や血液製剤の適正使用に繋がると考えられる。
  • マスタ管理ツールの開発とOAツール利用による効率的運用
    東 禎二, 梅村 俊彦, 下川 和輝, 山田 浩司
    2007 年 8 巻 2 号 p. 350-355
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    医療現場におけるIT化の進展に伴って、電子カルテを始めとして関連する部門システムおよびそのデータベースであるマスタの数も増加している。特に医薬品に関わるマスタ (以下薬品マスタ) はオーダリングシステム、医事システムはもとよりほぼすべての部門システムに関連しており、その不整合は在庫管理だけでなく、安全管理面でも問題となり得る。
    当院では1999年11月物流システムの導入によりそのマスタ管理ツールを用いて物流、医事、オーダリングの3システムについて一元管理を実施してきた。しかし2003年9月の電子カルテおよび関連する部門システムの導入により薬品マスタも増加し、またマスタ情報がタイムリーに各部門に伝わらないことによるマスタメンテナンスの作業遅延が実務医療に支障をきたすことも想定された。さらに当院では電子カルテに連携した薬品在庫管理を目指しており、管理精度の向上が必須課題となっていることからも運用を含めたさらなる改善が必要となった。
    そこで同時期に更新される物流システムのマスタ管理ツールを全面改良し、同時に従来の伝票運用から院内Eメールおよび院内イントラネットの共有ファイルを活用した運用に変更した。結果トータル作業時間と登録完了までの所要日数の実質的な短縮が可能となった。
    本稿では、当時は未解決であった調剤システムとの連携部分が完了したので、その報告をする。
  • 近藤 由利, 京野 忍
    2007 年 8 巻 2 号 p. 356-360
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    小規模療養型病院である姉崎病院のNST活動効果を報告する。学術活動とは無縁だった姉崎病院が、日本静脈経腸栄養学会NSTプロジェクトに参加し開始したNST活動は、次のような大きな効果をもたらした。
    NSTが介入することにより個々の患者に最善の栄養法が提示されたため、侵襲の大きい完全静脈栄養法が減少し、より生理的な経腸栄養法が増加した。この完全静脈栄養法から経腸栄養法への移行は2006年6月までの診療報酬体系で増収という経済効果をもたらした。必要なカロリーが適切な栄養法で投与されることにより、低栄養状態の指標である血清アルブミン値3.0g/dl以下の患者数が減少した。同時に死亡退院数は減少し、経口摂取可能になった患者が併設ケアセンターに入所する人数が増加した。完全静脈栄養法や経腸栄養法で寝たきりの患者が経口摂取出来るようになり退院していくことは、ほとんどの患者が死亡退院だった当院の職員にやりがいと喜びを与えた。
  • 嶋崎 明美, 野村 千恵, 内海 寿子, 藤田 貴子, 前田 正一
    2007 年 8 巻 2 号 p. 361-364
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    カルテ記載の重要性を理解する目的で模擬カルテ開示を行った。研修医・医療安全管理者・カルテ開示事務担当者・診療情報管理士・研修プログラム責任者が参加し、個人を特定できないように加工した実際のカルテを用いて、カルテ開示申請者・主治医・指導医役でロールプレイ後、カルテ記載について討議する。模擬カルテ開示には、1. カルテ記載の重要性を認識できる、2. カルテ開示に値する記載方法を教育できる、3. カルテの内容を検証できる、4. チーム医療を推進できる、5. 実際のカルテ開示に備えることができるという意義がある。また、1年次研修医が記載したカルテを用いて、カルテ記載の良否を検討するカルテ勉強会も行った。カルテ院内監査で、これらの取り組みにより研修医のカルテ記載が改善し、上級医より良好に記載できていることが証明された。模擬カルテ開示は、カルテ記載を充実する有効な手段である。
  • 徳永 誠
    2007 年 8 巻 2 号 p. 365-368
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    患者満足度調査では、満足度の平均点だけを問題にするのではなく、病院への総合満足度に直結した項目は何かを明らかにする必要がある。そのため外来患者134例、入院患者165例を対象として、満足度調査の8項目が総合満足度にどの程度影響しているのかについて変数選択重回帰分析による検討を行った。その結果、外来では、外来待ち時間、プライバシーへの配慮、看護師の応対の順に、入院では、医師の応対、病室の清潔、ベッドの快適性、食事の味の順に回帰係数が大きく、総合満足度への影響が大きいと考えられた。外来と入院を合わせた中では、外来待ち時間が、回帰係数が最も高値で満足度が最も低く、早急な対応を必要とする項目と考えられた。患者満足度は病院経営に直結するという意識を持ち、問題点が明らかとなるような患者満足度調査を行う必要がある。
  • プライバシーマーク認証取得のための組織的アプローチ
    森川 富昭, 森口 博基, 能瀬 高明, 田木 真和, 大岡 裕子, 石山 由紀子
    2007 年 8 巻 2 号 p. 369-374
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    徳島大学病院では、2006年4月28日に、個人情報を保護するためにプライバシーマークを取得した。病院内には機微な個人情報が多く、その情報をどのように取り扱うか問題であった。そこで、個人情報保護を実施する上で、実際どのようなことを各部署が行う必要があるのかなどのコンプライァンス・プログラム (マニュァル、規定) を構築し個人情報を漏洩させない体制作りおよび仕組み作りを行った。認証取得にあたって、コンプライアンス・プログラムを実施したために、職員へ個人情報保護対策を浸透させることができた。大学病院では人の出入りが多いために今後もコンプライアンス・プログラムによる継続的改善が必要である。
  • 岡本 泰岳, 稲垣 春夫
    2007 年 8 巻 2 号 p. 375-380
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    医療の質の向上を戦略的に継続して行っていく上で、臨床指標 (以下CI) の活用は欠かせないと考える。しかしながら、どんなCIが自施設に必要なのか、さらには具体的にどのように質の向上に活用していくのかは大きな課題である。また日々蓄積される膨大な医療情報の中から必要なデータを抽出し、CIとして公表することは容易ではなく、多大な労力を要することも問題である。2005年6月にCIの必要性や当院における考え方を院内職員に啓蒙後、トップダウンにより各部署へその提出を求めた。提出に当たっては医療情報マネジメントグループが各部署とヒアリングを行い、CIに関する情報提供とともに各指標の定義・目的などを設定し管理を行った。CI算出に必要なデータの収集や解析に伴う多大な労力を減少させるため、電子カルテ機能とData Ware Houseシステムを利用した。2006年12月現在、56指標を定期的に算出し、電子カルテ端末を利用して院内職員に広く公表している。CIの向上を目標に、各部署において具体的な取り組みがなされるようになった。またそれに伴いアウトカム指標に大きく影響するプロセス指標の院内エビデンスが見出される事例も認めた。
  • 赤倉 功一郎, 松崎 香奈子, 中島 敏彦, 加藤 智規, 木藤 宏樹, 溝口 研一, 中村 剛
    2007 年 8 巻 2 号 p. 381-385
    発行日: 2007/09/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    血清前立腺特異抗原 (PSA) 高値で生検陰性例を地域において適切にかつ効率的に経過観察していくために、地域かかりつけ医と泌尿器科医が情報を共有して患者を経過観察する地域連携クリティカルパスの作成を試みた。東京都新宿区牛込地区の開業医48人にアンケートを依頼し、前立腺がんの検査、経過観察などに関して、診療を依頼可能であるかを検討した。この結果に基づき、地域連携クリティカルパス (案) を提案した。さらに、かかりつけ医との地域連携のための会合を通じて、検討および修正を加えた。回答を得た28人のかかりつけ医のうち23人 (82%) が、前立腺がん疑い例に対するPSAの経過観察を積極的にあるいは条件により受け入れ可能であると回答した。そこで、かかりつけ医でスクリーニングPSA検査、泌尿器科専門医で精密検査および前立腺生検、がん陰性であれば再びかかりつけ医でPSAの経過観察をする地域連携クリティカルパスを作成した。かかりつけ医への逆紹介の際には、泌尿器科医が、個々の症例に対して、PSAの検査間隔を指示し、再紹介の条件となるPSA値を明らかにした。以上より、地域かかりつけ医と連携し、前立腺がん検査患者を対象として、経過観察、再紹介などの方法や評価を共有する地域連携クリティカルパスを作成した。これにより、前立腺がん疑い患者を地域にて適切に効率よく経過観察可能であると期待される。
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