日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
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8 巻 , 4 号
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  • 使えない電子化パスを導入しないために
    今田 光一
    2008 年 8 巻 4 号 p. 488-493
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    電子カルテシステムにクリティカルパスを搭載する場合には、その設計において、紙カルテ時代のクリティカルパスの運用方法、病院業務のパターン、母体となる電子カルテシステムの機能などにより制限を受ける。クリティカルパスを電子化することを目的化するのではなく、あくまでもツールとしてとらえ、場合によっては、クリティカルパスの電子化を先送りし、クリティカルパスを紙ベースで残し電子カルテと併用させる、という選択肢も考慮しておかなければならない。電子化することで新たなリスクが発生することは絶対に容認されることではない。特にクリティカルパスを搭載した場合のクリティカルパス機能および電子カルテシステム自体の展開速度は重要で、これが遅くなるような設計は絶対に避けなければならない。
  • 国立病院機構熊本医療センターの取り組み
    片渕 茂
    2008 年 8 巻 4 号 p. 494-499
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    クリティカルパスを使用することにより得られる成果は、EBMに基づく標準医療の実践による医療の質の向上であり、チーム医療の推進であり、効率的な診療である。電子クリティカルパスでは、入院中に行われるすべての診療行為の指示と結果がいっでも、何処でも、誰でも参照可能となり、紙のクリティカルパスを超える情報の共有が実現できた。項目を縮小表示 (1行表示) させる機能により、紙のクリティカルパスと同等の一覧性を実現した。クリティカルパスは評価することが重要であり、個別のオーダからクリティカルパス全体の評価まで、すべてのレベルでバリアンス入力が可能となった。
    優れた機能を付加することにより、効率的な診療が可能となり、全入院患者に対する使用率は43~49%と増加した。標準化のないところに真の改善はない。どんな優れたクリティカルパスでも低い使用率では標準化の効果は得られない。クリティカルパスの使用を促進させる魅力ある機能をもつことが重要であり、電子化により種々の優れた機能が作成可能となった。
  • 医療の質の評価
    井口 厚司
    2008 年 8 巻 4 号 p. 500-507
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    医療の質の客観的評価を目的として、クリティカルパスの評価指標を作成した。指標は医療の質を構成する3つの要素 (構造、過程、結果) からなり、この指標を用いて多施設のクリティカルパスの評価を行なった。その結果、構造と過程の評価ではクリティカルパスの運用における問題点を認識するのに有用であった。結果の評価では今後検討すべき課題があることがわかった。この評価指標はクリティカルパスの質を自己評価する共通の指標として、また医療の質の改善にとって有用と思われる。
  • 勝尾 信一
    2008 年 8 巻 4 号 p. 508-511
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    クリティカルパス大会成功の1番のポイントは、開催の目的をしっかり持つことである。その目的と病院の実情に合わせて、クリティカルパス大会の開催頻度と時間、形式を決定する。形式には、発表・講義・報告・特別講演があり、これらを組み合わせて開催する。また、目的によってはテーマを決めた方がよく、テーマはクリティカルパスであったりクリティカルパス以外の分野であったりする。2番目のポイントは、周到な事前準備である。目的・形式・テーマに合わせたプログラムを検討しなければならない。
  • 北澤 健文, 松本 邦愛, 坂巻 弘之, 長谷川 友紀
    2008 年 8 巻 4 号 p. 512-520
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    医療費の財政的負担は増加を続けており、地方公共団体や保険者による医療費分析の重要性が増している。本研究では2006年5月分の東京都内53区市町村の国民健康保険レセプトデータをもちいて、入院外来別・疾病別に被保険者1人当たり医療費と関連する要因を地域相関研究により明らかにした。
    医療費の規定要因として、後期高齢化率、性別、医療提供体制、所得、教育を取り上げ、分析モデルに用いた。分析対象とした疾患は4つの生活習慣病 (糖尿病、高血圧、虚血性心疾患、脳血管疾患)、5つの悪性新生物 (胃、結腸、直腸、肝、肺) と2つの精神疾患 (認知症、気分障害) である。疾病名はレセプト毎に1つを選択し複数の傷病名を有する場合には主傷病を用いた。
    重回帰分析の結果、疾病毎に医療費と関連する要因は異なることが示唆された。入院・外来ともに、最も多くの疾病との関連がみられた要因は後期高齢化率であり、入院では5疾患、外来では8疾患と関連していた。また、性別や教育と関連する疾病は多くなかった。なお、自由度調整済み決定係数は入院では0.165~0.326、外来では0.141~0.434であった。
    医療費と関連する要因は疾病やその療養形態によって異なることが示唆された。今後、保険者等が医療費分析をすすめるにあたっては、疾病別、療養区分別に分析することが重要と考えられた。
  • 池田 俊也, 小林 慎
    2008 年 8 巻 4 号 p. 521-525
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    60歳男性の高コレステロール血症患者 (HL患者) の予後に関するマルコフモデルを構築し、一般的なHL患者と重症HL患者の2種類の患者に対する複数のHMG-CoA還元酵素阻害剤 (スタチン) 治療の費用対効果を評価した。一般的なHL患者に対するスタチンは、ロスバスタチン2.5mg/日、アトルバスタチン10mg/日、ピタバスタチン2mg/日、プラバスタチン10mg/日を分析対象とした。重症HL患者に対しては、ロスバスタチン5mg/日、アトルバスタチン20mg/日、ピタバスタチン4mg/日を分析対象とした。分析は、支払い者の立場で実施し、医療費と質調整生存年を推計した。一般的なHL患者を対象とした場合の質調整生存年は、アトルバスタチンが最も大きかったが、ロスバスタチンに対するアトルバスタチンの増分費用対効果比は11億円と非常に高額であった。重症HL患者を対象とした場合は、ロスバスタチンは他の2つの薬剤よりも費用が小さく、かっ質調整生存年が大きかった。一般的なHL患者及び重症HL患者ともに、費用対効果の観点からは、ロスバスタチンが最も好ましい薬物療法であると評価された。
  • 渡邊 聖, 藤田 茂, 瀬戸 加奈子, 城川 美佳, 長谷川 友紀
    2008 年 8 巻 4 号 p. 526-533
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    患者参加は、医療安全だけでなく、さまざまな医療の現場において、医療の質を担保するうえで重要である。しかし、患者参加に関する定量的な分析を行った研究は少ない。本研究の目的は、医療安全活動において、患者がインシデント・アクシデントの発見者としての役割を果たすことができるかどうかを明らかにすることである。
    特定機能病院 (約1000床)、一般病院 (約180床)、ケアミックス病院 (約160床) の3病院においてアンケート調査を実施した。
    外来患者の回収率は85.4%(1,506/1,764)、入院患者の回収率は47.9%(516/1,078) であった。外来患者の8.7%、入院患者の11.0%がインシデント・アクシデントや不安・不満事象を経験していた。入院患者のうち、インシデント・アクシデントを経験した者は、在院日数が1-7日の者で7.1%、8-14日の者で10.6%、15日以上の者で10.8%であり、在院日数が長くなるほど割合が高くなっていた。経験した出来事を患者が医療者に伝えたのは、外来患者の30.4%、入院患者の23.6%のみであった。患者が経験したインシデント・アクシデントのうち、医療者がインシデントレポートを提出していたのは14.3%であった。患者が発見できたインシデント・アクシデントは、「患者取り違い与薬」「点滴の滴下速度違い」「禁忌薬の処方」「副作用の発生」「点滴漏れ」などであった。
    本研究では、患者の経験したインシデント・アクシデントや非安全事象のうち、医療者が発見もしくは報告できるのは、ごく一部に過ぎないということが示唆された。患者が発見した有害事象の情報を活かすことができれば、医療安全を向上させることができると考えられた。
  • 近藤 暁子, 西林 和美, 門脇 りえこ, 穴井 邦子, 菅田 勝也
    2008 年 8 巻 4 号 p. 534-542
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は、わが国の65歳以上の大腿骨近位部骨折患者について、家族と同居していることが入院治療後、自宅への退院と関連があるかどうか、さらに入院期間と関連があるかどうかについて検証することである。
    2000年から2002年の間に2つの病院で大腿骨近位部骨折で入院して外科治療を受けた患者の診療記録から後ろ向きにデータを収集した (N=105)。2変量解析にて自宅への退院と入院期間に関連している変数を選択した。自宅への退院と有意であった変数についてロジスティック解析にて調整し、家族との同居が自宅への退院を予測しているかどうか検定した。
    ロジスティック回帰分析の結果、家族との同居は、骨折前の居住地、認知症の有無、退院時歩行能力を調整後、独立して自宅への退院と関連していた。しかし、歩行能力の低下を調整した場合は家族との同居と自宅への退院は有意な関連は見られなかった。また、家族との同居と入院期間との関連は見られなかった。自宅に退院した患者は老人ホームに退院した患者に比べて入院期間が長く、退院時の歩行能力も高かった。全体として家族との同居は自宅への退院を予測していたが、入院期間はむしろ増加傾向にあった。娘と同居の場合は入院期間が短縮する傾向にあったが、娘と同居している患者は多くはなく、実際は難しいと考えられる。患者は家族と同居している場合は歩行能力が回復後、自宅に帰ることができると言える。
  • 藤本 俊一郎
    2008 年 8 巻 4 号 p. 543-548
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    香川労災病院では1999年7月より紙ベースで140のクリティカルパスを作成、退院患者の25%で使用された。その後、オーダリングシステム導入を検討した際、クリティカルパスソフトは指示入力の一手段という扱いであった。そこで2004年のオーダリングシステム導入、2007年の電子カルテ導入に際してクリティカルパスソフトの改良を行った結果、クリティカルパスが日常診療に浸透し、現在約450のクリティカルパスが退院患者の約70%で使用されるようになった。
    クリティカルパスソフトの改良は以下のように行った。1) クリティカルパス画面に各医療部門の情報が反映され、情報の共有化が図れる。2) クリティカルパス画面から全ての業務が可能である。3) 個別性への対応が可能である。4) 重複記載の削減などで効率化が図れる。5) 臨床指標を用いたアウトカム評価を行える。6) DPC対応の原価計算が可能である。
    上記のソフト改良を行った電子クリティカルパス使用の実際を報告した。
  • 黒木 副武, 船崎 満春
    2008 年 8 巻 4 号 p. 549-553
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    脳卒中は、早期のリハビリが大切であり、そのためにも急性期、回復期、維持期の円滑な連携が重要である。病院間の連携だけでなく、患者にも理解される連携が大切である。回復期病院では、急性期病院との連携が特に大事であるが、東京周辺では、脳卒中の地域連携クリティカルパスの試みがなかった。そこで、回復期ハビリテーション病院である当院が主導で、地域連携クリティカルパスの作成を試み、運用を開始した。地域連携クリティカルパスは、患者の情報が、簡潔でしかも十分なことが求められる。回復期の部分の地域連携クリティカルパスでは、院内クリティカルパスも兼ねて作成し、入院期間の短縮を図ることを目的とした。今後、バリアンスの集積、分析を重ねて、最善のものにしていきたい。
  • 芳賀 克夫
    2008 年 8 巻 4 号 p. 554-557
    発行日: 2008/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    医療は万能ではなく、必ずしも患者の期待している結果になるとは限らない。また、医師は、根拠となる臨床データが十分ない不確実な状況の中、治療法を選択せざるを得ないことも多い。このような状況を背景に、医事紛争が発生する訳だが、医療事故が起こった場合、自らの行った診療行為に過失があるのかどうかを院内のメンバーだけで検証することは難しい。国立病院機構九州ブロック (以下、九州ブロック) では、2004年度から、重大な医療事故に対して、院外の専門委員を含めて第三者的立場で事故の原因を究明し、過失の有無と再発防止策を検証する拡大医療安全管理委員会を開催してきた。専門委員は、主に九州ブロック内の医師を中心に、看護師、薬剤師、理学療法士、臨床工学技士等のコメディカルを選定しているが、事案によっては機構外からも招聘している。委員会を開催する前に、診療録と画像フィルムを出席者全員で詳細に吟味し、問題点を整理した上で、最新の資料を準備する。委員会では、事案を厳正に、医学的、法的立場から検証する。同委員会で検証した内容を患者側に丁寧に説明することにより、医事紛争が解決することも多い。また、その教訓を医療安全管理研修会で各病院に周知し、情報の共有化を図っている。これらの努力により、九州ブロック内の医事紛争件数は減少してきている。
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