日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
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19 巻, 1 号
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事例報告
  • 嶋崎 明美, 山名 由理子
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 19 巻 1 号 p. 2-6
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2023/05/09
    ジャーナル フリー

     国立病院機構姫路医療センター地域医療連携室は、2008年より医師・看護師・MSWで病棟ラウンドを行ってきた。2007年度から2015年度の地域医療連携関連データを統計分析して、ラウンドの効果を検討した。その結果、ラウンドには、①患者・家族の主体的な参加が認められるチーム医療の実践、②医療者間コミュニケーションの改善、③病棟看護師の退院支援に関する知識・意識向上、④病院収益貢献に効果があると考えられた。相関関係から、病棟看護師の退院支援の知識・意識向上が、入院10日以内の退院調整開始率の増加をもたらすことが示唆された。ラウンドは入院早期よりの退院支援を実現する非常に有用な方法である。

  • 吉谷 遼子, 山田 舞, 室岡 明美, 村上 弘子, 橋本 真琴, 水元 一博
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 19 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2023/05/09
    ジャーナル フリー

     2012年度の診療報酬改定において、患者と医療者のコミュニケーションを円滑に行うことを目的とした患者サポート体制充実加算が加えられた。九州大学病院でも、これに伴い患者相談支援室(以下、 支援室)を設置した。相談の初期窓口は専任の医療ソーシャルワーカーが担当するが、相談内容が複雑多岐に渡るため多職種連携が必要である。そこで、相談に対応するための院内連携の方法や重要性を検証した。

     2015年5月から10月までに受け付けた相談を集計し内容を分析したところ、相談内容は医療に関することが大半で、次に苦情・意見が多かった。医療に関する相談は、症状や治療に関する相談など専門的な知識を問われる相談が殆どで、苦情・意見についても医療ソーシャルワーカーだけでは対応困難な相談が多かった。そこで問題解決のためには、医療ソーシャルワーカーから他部署へ協力を依頼し、多職種が連携することが必須だということが明らかになった。

     苦情の多くは、患者・医療者間の意思疎通に起因しており、相談に懇切丁寧に対応することが医療訴訟の減少や患者満足度の向上に繋がる。より迅速に、より適切に患者相談に対応するためには、窓口となる医療ソーシャルワーカーのスキルアップも、継続して検討すべき課題である。

  • 石倉 愛, 青山 直善, 中村 元美, 川谷 弘子, 左右田 哲, 田邉 聡
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 19 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2023/05/09
    ジャーナル フリー

     夜間内科診療の質の向上と労務負担の軽減を目的として、夜間外来診療に特化した救急内科が設立された。以前は、輪番制の当直医がその場限りの個別対応に終始していたが、夜間内科診療の医師が固定されたことから、患者(家族)の社会的背景に配慮した支援を必要とする症例が繰り返し夜間外来に来院していることが判明した。このような症例を支援するため、精神科医師を含めた多職種による患者支援検討会を開始した。この検討会により、職種間の情報共有と連携を推進させるのと同時に、当該患者の状態を精神科医師から病態や疾患としてとらえるべきかなどの助言をもらい、第三者的立場から患者の現状や治療を客観的に判断し、医療従事者の実施すべき方策を具体化して地域を含めた介入職種の対応方針を統一させることが可能となった。社会的に複雑な背景をもつ患者であっても、検討会の合議による一連の支援の実施と継続的なフォローが、介入している医療従事者のストレスを軽減し、患者に必要な疾患特異的な治療の実施を導き、患者の回復とともに医療従事者としての喜びを分かち合える症例もでてきた。今後の人口動態や疾病構造の変化に伴い、多職種検討会による個別的な患者支援を充実させていく必要がある。

  • 大塚 眞哉, 岩垣 博巳
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 19 巻 1 号 p. 16-19
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2023/05/09
    ジャーナル フリー

     急性期病院として在院日数の短縮は病院経営上必要不可欠である。国立病院機構福山医療センターの特徴の一つである癌診療、特に消化器癌について入院期間延長の検討を行った。2015年1月〜2016年12月の消化器癌として代表的な胃癌手術、大腸癌手術症例に絞って検討を行った。胃癌手術(GC)は136例、大腸癌手術(CC)は266例あり、術後平均在院日数はGC 20.0日CC 18.0日であった。DPC入院期間 II 越えはGCでは57例(42%)、CCでは105例(39%)あった。GCではバリアンス分類に従って分析すると患者要因45例(79%)あり、内いわゆる術後合併症に起因するものが約半数を占めた。転院件数は2015年4件、2016年8件あった。DPC入院期間II 越えは2015年35例(50%)あったが、前方支援などによる術前日数の短縮、合併症の予防及び後方連携につとめ2016年には22例(33%)に減少した。CCでは同じく要因分析では患者要因97例(92%)あり、合併症によるものが約半数をしめた。転院件数は2015年7件、2016年15件あった。CCでも合併症予防や後方連携の活用により、DPC入院期間 II 越えは2015年68例(51%)から2016年には37例(28%)に減少した。近年は高齢化に伴い、基礎疾患を持つ患者、また狭窄など高度進行状態で入院となる患者も少なくない。さらなる在院日数の短縮には前方連携の活用、より合併症の少ない手術などが求められる。

  • 石橋 悟
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 19 巻 1 号 p. 20-23
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2023/05/09
    ジャーナル フリー

     東日本大震災を契機に救急車搬送患者だけではなく軽症含む直接来院患者も集中するようになり重症患者に対する集中した医療資源投入が困難な状況が続いたため、2015年10月時間外選定療養費2700円(消費税200円を含む)の徴収を開始した。時間外選定療養費導入の効果を検討したので報告する。

     時間外選定療養費導入後2015年10月から2016年9月まで1年間と導入前2014年10月から2015年9月まで1年間の救急患者について患者数を比較した。

     時間外総救急患者数は26629名から22597名と15.1%減少、時間外直接来院患者数は22155名から18118名と18.2%減少した。時間外救急車搬送患者数は4474名から4477名とほぼ変わらず、時間外入院患者数は3449名から3365名と2.4%減少した。急性上気道炎はそれぞれ3116名、2435名で約21.9%減少し、急性胃腸炎はそれぞれ1649名、1214名で約26.4%減少した。支払い拒否患者はいなかった。

     時間外選定療養費の導入により入院患者は維持しつつ、軽症患者を中心に時間外救急患者数を約15%減少することができた。

  • 前川 一恵
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 19 巻 1 号 p. 24-29
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2023/05/09
    ジャーナル フリー

     日本の医療提供体制には地域格差があり、在宅看取り数や平均在院日数に地域間の差異が見られている。医療介護資源の少ない地域は、看護師が行う在宅療養支援は試行錯誤の状態であることが推察されるが、その現状は明らかにされていない。本研究で、地方圏の中で医療介護資源の少ない地域にある地域包括ケア病棟(以下、包括病棟)で、看護師が取り組む在宅療養支援の現状について事例報告する。

     地方圏の3県3病院の包括病床で在宅療養支援を行っている看護師3名に、半構造化面接を行い、質的帰納的に分析した。その結果、【今後の療養継続に向けた早期介入】【ADL促しと介護者へのケア指導】【多職種による進捗状況の評価】【円滑な連携を考えた情報提供】【患者・家族の持てる力での在宅療養を見守る】【家族に現状を受け入れてもらう関わり】【上手く今後の療養継続に向ける支援】【在宅療養支援の実践力向上】【今後の在宅療養支援への思案】の9カテゴリーが抽出された。

     包括病棟はADLの低下した高齢者が多く、在宅復帰に向け準備期間を取りつつ、入院の長期化による弊害を防止しなければならない難しい在宅復帰支援である。そのため、看護師は院内多職種や地域のケアチームと協働しながら在宅療養支援を行っており、多職種連携が重要であることが示唆された。

  • 齋藤 潤栄, 新村 美恵, 吉永 拓真
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 19 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2023/05/09
    ジャーナル フリー

     近年、超高齢化社会に向け、医科歯科連携の重要性は増してきている。がん対策推進基本計画の見直しにより、がん治療における副作用の予防や軽減、患者のさらなる生活の質の向上のために医科歯科連携による口腔ケアの推進が盛り込まれた。しかし、医科歯科連携は、歯科・口腔外科の標榜のない病院における取組みには課題が多いのが現状である。そこで、著者らは多職種で構成したメンバーの活動によるがん患者の医科歯科連携の導入と入院患者全体の口腔管理体制の構築に取組んだ。体制は、コーディネーターの役割も担う歯科衛生士を中心に構築した。地域歯科医療機関との連携を基礎とし、全身麻酔手術患者の口腔ケア全般、入院患者の口腔ケア(教育を含む)、地域歯科との連携およびシステム開発による歯科衛生士活動支援を実施した。2015年4月1日から2016年7月31日までに歯科医療機関連携197件、周術期口腔機能管理加算算定件数139件、介入件数312件の実績に繋がった。今後も医科歯科連携の発展に向け、知識や技術の向上、地域歯科医療機関や歯科医師会とのさらなる連携強化を図っていきたい。

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