日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
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18 巻, 2 号
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総説
  • 堂本 司
    原稿種別: 総説
    2017 年18 巻2 号 p. 56-60
    発行日: 2017/09/01
    公開日: 2022/07/26
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、国内の文献レビューを通して、連携システムやその効果について包括的に整理し、今後の研究の方向性について示唆を得ることである。2015年4月までの文献を対象に、医学中央雑誌を用いて「継続看護」、「看護師」、「連携」の用語を含む、原著論文の文献を検索した。このうち、連携手段が明確であり、導入した結果を報告している15文献を分析対象とした。その結果、カンファレンスや情報提供書による連携が主に活用されており、継続看護をするうえでの活用や連携の強化に効果があった。入院時や退院時のカンファレンスや情報提供書による連携に関しては、質問紙調査や面接調査が近年報告されている一方で、退院後の連携先のフォローに関しては、事例報告のみであった。全ての連携システムに関する調査において、患者と家族を対象とし、患者と家族への効果を立証した文献は少ないことも明らかとなった。今後は、退院後に継続ケアを要する患者を対象に、病院看護師から地域スタッフに向けて、電話等の新たなフォロー体制も視野に入れ、介入研究によって、連携先からのフォロー体制の評価も実施しつつ、患者と家族への効果について、尺度を用いた主観的な評価の必要性が示唆された。

原著
  • 藤田 茂, 永井 庸次, 飯田 修平, 関 利一, 大山 雅樹, 相原 潤二, 小谷野 圭子, 長谷川 友紀
    原稿種別: 原著
    2017 年18 巻2 号 p. 61-66
    発行日: 2017/09/01
    公開日: 2022/07/26
    ジャーナル フリー

     赤外線発信装置(ビーコン)と赤外線感知装置(センサー)を用いて、看護師等の業務量を自動的に計測することが可能であるが、その有効性を示した研究は少ない。本研究は、ビーコンとセンサーを用いた他計式タイムスタディの有効性および利活用の可能性を検証することを目的とした。また、同タイムスタディの利活用の可能性を検証するため、「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)の評価項目の妥当性、簡素化について検討した。

     一般病院の1外科病棟において、2015年12月14日から27日まで、医療従事者のベッドサイド滞在時間を、ビーコンとセンサーを用いて自動的に測定した。多変量解析により交絡を調整し、看護師および看護補助者の患者別のベッドサイド滞在時間と看護必要度の評価項目との関係を解析した。

     延べ687名の入院患者のデータを得た。医療従事者の患者1人1日当りのベッドサイド滞在時間は平均44分であった。看護必要度の評価項目およびその選択肢には、看護師および看護補助者のベッドサイド滞在時間に有意差が認められないものがあった。多変量解析では、看護必要度の評価項目のうち、創傷処置、呼吸ケア、シリンジポンプの管理、寝返り、食事摂取、衣服の着脱の6項目のみが、ベッドサイド滞在時間と有意な関連を示した。

     本研究により、ビーコンとセンサーを用いた他計式タイムスタディの有効性と利活用の可能性を示すことができた。

事例報告
  • 村田 顕至
    原稿種別: 事例報告
    2017 年18 巻2 号 p. 67-70
    発行日: 2017/09/01
    公開日: 2022/07/26
    ジャーナル フリー

     社会医療法人敬和会大分岡病院は大分県大分市の東側に位置する224床の二次救急指定の急性期病院である。立地上の問題として、南海トラフ巨大地震による直接被害と地震により引き起こされる津波による被害が想定されている。その際の事業継続計画を策定しているが、災害時の電子カルテデータの保全と活用について問題があった。今回、その問題を解決するためにクラウドサービスを利用し、データ保全の改善と災害時の診療情報閲覧環境を構築した。構築に際して考慮した要件や構築作業及び利用方法などを事例として報告する。

  • 高橋 弘明, 遠野 千尋, 加藤 博孝, 望月 泉
    原稿種別: 事例報告
    2017 年18 巻2 号 p. 71-74
    発行日: 2017/09/01
    公開日: 2022/07/26
    ジャーナル フリー

     岩手県では2010年から全基幹型臨床研修病院は研修協力病院として届け出を行い、相互研修を可能にした。これに伴い各病院の臨床研修の質保証が必要になり、相互評価を2013年から開始した。評価を行う病院の組み合わせは臨床研修実務者で構成するいわてイーハトーヴ臨床研修ワーキンググループが決定した。方法は2病院ごとに組を作り、審査を受けない病院の臨床研修プログラム責任者と事務担当者がNPO法人卒後臨床研修評価機構(JCEP)の評価者とともに4〜5名で訪問調査をする。評価はJCEPの自己評価調査票を使用し、1日の訪問調査を行った。調査後は報告書と県知事による受審証を評価受審病院に授与し、結果は県内の研修病院で情報共有した。訪問調査による相互評価は、県内各研修病院の質向上に寄与できる可能性がある。その取り組みを紹介する。

  • 大津 佐知江
    原稿種別: 事例報告
    2017 年18 巻2 号 p. 75-78
    発行日: 2017/09/01
    公開日: 2022/07/26
    ジャーナル フリー

     入職から半年経過した頃に研修医による患者誤認や採血時の針刺し等の報告が増加したことを契機に、研修医補完研修を実施している。研修内容は、研修医から報告の多いインシデントレポート、針刺し切創・体液曝露事例、輸血時の注意点等の説明、その後の採血・点滴・輸血の3点に関する技術演習である。研修医2〜3人に対し医療安全委員、感染防止委員から1人を指導者として割り当て、それぞれが患者役医師役を交替し演習した。質問紙調査を実施し、研修前後のインシデント、針刺し切創・体液曝露報告件数を比較した。質問紙では、研修時期、内容等いずれも好評であり今後の継続が望まれた。研修後のインシデントレポート件数が減少していること等から一定の効果があったと考える。

     点滴・輸血等の技術演習を主体とした研修医対象の補完研修は、研修医が自身の技術を確認する機会となりインシデントレポート件数や針刺し切創・体液曝露報告件数の減少に繋がることが示唆された。

  • 中山 サツキ, 山田 晃子, 渡邉 めぐみ
    原稿種別: 事例報告
    2017 年18 巻2 号 p. 79-84
    発行日: 2017/09/01
    公開日: 2022/07/26
    ジャーナル フリー

     新人看護師を指導する看護師への支援について示唆を得るために実地指導者を対象に、新人看護師への支援状況の評価および実地指導者が受けた他者からの支援について明らかにすることを目的に調査を行った。2013年度に大阪医科大学附属病院で実地指導者の役割を担った看護師110名を対象に質問紙調査を実施した。分析は、単純集計および同年度の実地指導者研修受講の有無による回答の差については、SPSS.Ver(20)でMann-WhitneyのU検定を実施し分析した。結果として、新人看護師への支援では 「看護技術の手本を示した」(97.6%)など、肯定的な回答が80%以上であったものが35項目中29項目であった。他者から指導者への支援では、80%以上が全5項目において支援を受けていると肯定的な回答であった。実地指導者自身の役割に対する思いでは、「自己の成長につながった」(95.3%)、という一方で「指導者の役割を担うことでストレスを感じることがあった」(68.2%)であった。実地指導者研修受講の有無において有意差(P<0.05)を認めたのは、「実地指導者としてのやりがい」等の3項目であり、いずれも研修受講者の方が肯定的な回答が多い傾向にあった。実地指導者は、やりがいや自己成長を感じつつも同時にストレスを感じながら指導に臨んでいるため、指導者自身のメンタルサポートも配慮した支援が非常に重要であることが示唆された。

  • 今岡 信介, 佐藤 浩二, 森 照明
    原稿種別: 事例報告
    2017 年18 巻2 号 p. 85-89
    発行日: 2017/09/01
    公開日: 2022/07/26
    ジャーナル フリー

     誤嚥性肺炎(aspiration pneumonia:以下AP)に対する早期リハビリテーション介入の効果として、全身状態や心身機能の改善に寄与することが報告されているが、在宅復帰との関連性に関する報告は少ない。本研究では、AP患者のリハビリテーション介入が在宅復帰に与える影響について検討した。

     対象はAPの診断で入院しリハ処方のあった221名中、死亡退院、入院前のADL状況が全介助の者を除く107名とし、年齢、性別、在院日数、Barthel Index、平均提供単位数、認知症の有無、血清アルブミン値、Body Mass Index、栄養摂取方法、移動能力を後方視的に調査した。分析は、在宅群、施設群に分類し2群間の比較において有意差を認めた項目についてロジスティック回帰分析を行った。結果、認知症の有無、栄養摂取方法、リハ提供単位数、移動能力の4項目が選択された。在宅退院に向けては、リハ提供単位数、認知症の有無、移動能力、栄養摂取方法が重要な要素であったがその中で、リハ提供単位数が高く影響していた事は興味深い。今後、高密度なリハサービスを提供する上では、介入方法の検討と併せ療法士の増員などハード面への働きかけが必要と考えられた。

  • 寺尾 奈歩子, 中村 慶子
    原稿種別: 事例報告
    2017 年18 巻2 号 p. 90-94
    発行日: 2017/09/01
    公開日: 2022/07/26
    ジャーナル フリー

     看護師の定年退職後の職業継続意思の現状と退職後の再就業における課題について検討することを目的に、A県下の病院に勤務する55-60歳の定年前看護師229名と30-40歳の中堅看護師401名を対象に調査した。調査内容は、属性と定年退職後(以下定年後)の職業継続意思、再就業時に希望する職場環境、定年後の生活設計に関する考え方である。分析は記述統計後、定年退職前看護師群と中堅看護師群に分け、各質問項目を比較した。

     結果、定年退職前看護師の約4割が再就業意思「あり」と回答した。職業継続の理由は「経済的に豊かな生活をするため」、「まだまだ働けると思うから」が挙げられた。再就業後の職場環境は、現在の職場で日勤のみで働きたいという回答が多かった。定年後も働く意欲のある看護師を活用するための方策としては、個々の看護師の経験や知識を活かした職場配置の考慮、労働条件に関する雇用側と定年後看護師側双方の十分な検討の必要性が示唆された。さらに、地域全体の情報を共有し組織的な戦略のもとで定年後看護師の活用を展開することも重要である。

紹介
  • 三好 研
    原稿種別: 紹介
    2017 年18 巻2 号 p. 95-97
    発行日: 2017/09/01
    公開日: 2022/07/26
    ジャーナル フリー

     待合室やロビーなどのアメニティ空間における情報発信の手段として、電子掲示板システムが普及している。土佐市民病院でも総合受付カウンターにインフォメーションディスプレイが設置されているが、患者が最も待たされることになる各診療科の待合室までは設置されていなかった。そこで、待ち時間を利用して皮膚疾患の啓発を行うために、皮膚科外来待合室に電子掲示板を設置することにした。掲示板で流すコンテンツをKeynoteで作成し、それをiCloud上に保存することにより診察室のiPadに同期させ、iPadからAirPlayを使ってApple TVと接続した液晶テレビに表示させた。掲示内容の変更も、MacのKeynoteファイルを更新するだけでよく、いつでも簡単にコンテンツの入れ替えができる。掲示板を設置することによって、患者への情報伝達力は向上し、疾患に対する理解度も高まることが期待される。また、すべての診療科の待合室に掲示板を設置することができれば、待ち時間に関するクレームが減少し、病院全体のイメージも向上すると思われる。

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