超音波医学
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34 巻, 1 号
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総説
  • ―ドプラガイドワイヤ法から経胸壁ドプラ法へ―
    皆越 眞一
    2007 年 34 巻 1 号 p. 3-17
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/27
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    ドプラ法による冠動脈血流へのアプローチはこれまでintravascular ultrasound (IVUS) やドプラワイヤ法など観血的手段によって行われていたが, 近年の超音波機器の技術革新により, 経胸壁カラードプラ法による冠血流の描出が可能となり, 冠動脈血流パターンの非観血的記録が容易となった. その結果, 狭心症における冠動脈の狭窄度の評価, 急性心筋梗塞でのno-reflow現象の検出, 慢性閉塞性冠動脈における側副血行路の検出, 冠動脈ステント留置後やバイバス術後の再狭窄の評価などが報告されている. さらに, 同方法で得られる冠血流速予備能の検出は, 心筋微小循環の検討も可能とし, これまで不明瞭であった領域での冠循環動態が明らかにされつつある.
  • 石井 正浩
    2007 年 34 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル 認証あり
    川崎富作先生による世界で最初の川崎病の原著論文が発表されたのは1967年である. 川崎病は, 出生数の減少にも関わらず, 近年増加しており2004年には9992人となり, この数は史上3番目である. 先進国においては, 川崎病が後天性心疾患の第1の原因である. 川崎病の診断の手引きを満足しない川崎病不全型が一定の割合で存在する. 川崎病不全型は, 決して川崎病の軽症型ではなく, 心血管後遺症が発生する割合は完全型に比し高い. これら川崎病不全型を, 迅速に診断し治療することが心血管後遺症の発生予防の点から重要である. 我々は, integrated backscatter (IB) 法を用いて, 冠状動脈周囲のエコー輝度を定量評価し川崎病の早期診断に役立ててきた. IB法の, 川崎病不全型の診断における有用性について報告する. 遠隔期の川崎病では動脈硬化病変への進展が問題となる. 我々は, intravascular ultrasound (IVUS) imagingを用いて, 遠隔期の川崎病の冠状動脈の病理組織学的検索を行っている. 川崎病の冠状動脈病変に対してローターブレーターをはじめとするnew deviceによるカテーテル治療が開始され10年以上経過した. このカテーテル治療において, IVUSによる狭窄部位の病理組織学的な検討がdeviceの選択に非常に有用である. また, 経静脈的心筋コントラストエコー法や経胸壁心エコー図による冠状動脈血流の評価を行い, 早期に心筋虚血を捉えることが患者管理の上で重要である. これら, 川崎病における心エコー法の有用性について自験例を中心に述べたい.
  • 松尾 汎
    2007 年 34 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/27
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    近年, 肺塞栓症 (PE) または奇異性脳塞栓症の塞栓源にもなる深部静脈血栓症 (DVT) は下肢の腫脹を主訴にすることが多いが, 全く無症状の場合もある. DVTの検索には種々の診断法が応用されているが, 超音波検査が無侵襲且つ「血栓」を証明できることから有用である. しかし, エコー検査は検査手技の習熟が必須で, 本稿では静脈エコー検査の汎用化を期して, その基本的手技を紹介する. 仰臥位で大腿静脈 (高周波リニア型探触子) を中心に腸骨静脈 (コンベックス型) を, 座位または臥位で膝窩 (リニア型) および筋肉枝 (ひらめ静脈, 腓腹静脈) を含む下腿静脈 (コンベックス型・リニア型併用) を観察するが, 集中治療室などでは仰臥位のままでも観察が可能である. 基本的検査法は断層法で, 静脈内腔の観察 (急性期は拡張, 血栓エコーの存在), および圧迫法 (乱暴な操作は禁忌) により容易に静脈内腔が圧縮されないことから血栓 (急性期は拡張のまま, 慢性期は一部内腔が残存) を判定できる. また, カラードプラ法 (流速レンジは10cm/sec) での観察も, 血栓 (血流シグナルの欠損) の判定に有効である. パルスドプラ法も間接所見としてではあるが, 中枢側 (呼吸性変動の有無) および末梢側 (ミルキング反応の有無) の推定に応用できる.
原著
  • 椎名 毅, 新田 尚隆, 山川 誠, 近藤 健悟, 千田 彰一, 舛形 尚
    2007 年 34 巻 1 号 p. 35-56
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/27
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    心筋梗塞などの心筋虚血性疾患では, 早期に心筋壁運動に異常が現れるため, 心筋収縮能を客観的, 定量的に把握することが, これらの心疾患の病態評価と適切な治療の上で重要となる. このため従来から超音波像により壁運動異常を診断する様々な手法が用いられている. その多くは, 実時間で空間分布が得られる利点から組織ドプラ法や, 心筋ストレイン法のようにドプラ法を基本にしたものであるが, これらは超音波ビーム方向成分のみの動きの検出であるため, ドプラ角が90°に近い領域では推定不能となるなど, 局所的な異常を適切に把握することは難しい. 我々は, 従来手法の問題点を克服して心筋壁運動の客観的, 定量的な診断を可能とすることを目的に, 二次元アレイプローブを用いて, 心筋のような変動範囲が大きい場合についても各部の三次元的変位ベクトルを高速且つ高精度に計測し, ひずみテンソルに基づくパラメータを導入して, 局所収縮率分布を画像化する三次元心筋ストレインイメージング法を提案した. 本論文では, その原理を概説し, また梗塞心筋モデルを用いたシミュレーションにより本手法の有効性を検証した. また, 現状の超音波診断システムにも適用が容易な形として一次元アレイプローブ用に簡便化する方法を示した. さらに, その結果をもとに基礎実験システムを構成し, 心筋ファントムの計測を行った. これらにより提案手法の有効性の検証と, 実用化の方向を示した.
  • 安田 英明, 坪井 英之, 曽根 孝仁
    2007 年 34 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/27
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    目的 : 頸動脈硬化に影響をおよぼす危険因子を検討する. 対象および方法 : 頸動脈超音波検査を施行した678例を対象とし, 総頸動脈の内中膜複合体厚 (以下IMT) および, 頸動脈全体のプラークの高さの総和 (プラークスコア : PS) が, 性, 年齢, 喫煙, 糖尿病, 高脂血症, 高血圧, 肥満とどのような関係があるのか検討した. 結果 : 1) IMTに関与する因子は, 男性では年齢 (p<0.0001), 糖尿病 (p=0.0015), 喫煙 (p=0.0027) であった. 女性では年齢 (p<0.0001), 高血圧 (p=0.0247) であった. PSに関与する因子は, 男性では年齢 (p<0.0001), 喫煙 (p<0.0001), 糖尿病 (p=0.0038), 高脂血症 (p=0.0064), 高血圧 (p=0.0069) であった. 女性では年齢 (p<0.0001), 高脂血症 (p=0.0123) であった. 2) 保有因子数による影響は, 男性においてIMTでは, 因子数が5個になると有意 (p<0.005) に肥厚した. PSは, 因子数が3個以上になると有意 (p<0.05) に増大した. 女性はIMT, PS共に危険因子数による差は認めなかった. 結語 : 頸動脈硬化に強く関与する因子は加齢, 糖尿病, 喫煙であった. また, 女性より男性の方が, 影響を受けやすかった.
症例報告
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