超音波医学
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総説
  • 宇宿 弘輝, 山本 英一郎, 尾池 史, 高潮 征爾, 辻田 賢一
    2024 年 51 巻 2 号 p. 87-96
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/12
    [早期公開] 公開日: 2023/12/26
    ジャーナル 認証あり

    心エコー図検査は心アミロイドーシスのスクリーニングとして重要である.左室granular sparklingは心アミロイドーシスに典型的と言われていたが,心アミロイドーシス以外でも同様の所見のように見えてしまうことがあるため診断意義は薄れている.心エコー図検査における壁肥厚と心電図上の低電位も心アミロイドーシスの特徴的な所見と言われているが,定義上の低電位を認める割合は高くないため,心エコー図検査における心肥大と心電図上の電位の乖離を認めた場合に心アミロイドーシスを疑うべきである.左室Apical sparing現象(左室長軸方向のストレイン値[longitudinal strain: LS]が心基部から低下し,相対的に心尖部のLSが保たれる現象)も心アミロイドーシス診断に有用な所見として注目されているがすべての症例でApical sparing現象を認める訳ではない.また肥大型心筋症,ファブリー病,ミトコンドリア心筋症は,心アミロイドーシスと鑑別を必要とする心筋症として重要であり,これらの疾患における心エコー図所見の特徴を認識しておく必要もある.心エコー図検査は心アミロイドーシスの診断・鑑別に重要であるが限界もあるため,心アミロイドーシスの特徴を理解し,既往歴や家族歴などを「問診」しながら心エコー図検査を行うことが重要である.そして心エコー図検査所見に心電図検査所見や血液検査所見を加えて包括的に検討することで,心アミロイドーシスをスクリーニングすることが可能になる.

症例報告
  • 宇野 矢紀, 成田 晃貴, 加藤 早苗, 吉野 裕美, 竹中 恵美, 舩田 朋子, 永田 純子, 井内 幹人, 田中 仁, 那須 通寛
    2024 年 51 巻 2 号 p. 97-101
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/12
    [早期公開] 公開日: 2024/02/13
    ジャーナル 認証あり

    症例は70代男性.変形性腰椎症に対し硬膜外ブロック注射を4年前から月に1回定期施行していた.入院2日前から多発性関節痛と38.0℃の発熱を認め受診,高度な炎症反応と全身CTで右肩・右腸腰筋に膿瘍像,頭部MRIで左前頭葉に梗塞像を認め感染性心内膜炎を疑い入院となった.入院当日と入院2日目の血液培養からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌が検出,その後の経胸壁心臓超音波検査で大動脈弁左室側に紐状の疣腫像と前壁中隔の壁運動低下を認めた.入院3日目に経食道心臓超音波検査で大動脈弁に疣腫像を認め感染性心内膜炎と確定診断,同日施行された冠動脈CTでは左前下行枝に疣腫によると思われる高度狭窄像を認めた.入院4日目に準緊急手術(大動脈弁置換術,冠動脈バイパス術)が施行された.肩・腸腰筋膿瘍を契機とした感染性心内膜炎に非典型的な疣腫による冠動脈塞栓,脳梗塞を合併した症例を経験したので報告する.

  • 住野 裕子, 竹内 陽史郎, 武本 真由美, 村上 楓佳, 小川 莉沙, 津田 清
    2024 年 51 巻 2 号 p. 103-106
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/12
    [早期公開] 公開日: 2024/02/13
    ジャーナル 認証あり

    症例は90歳代女性.心房細動の基礎心疾患精査のために行われた心エコー図検査にて,左房天蓋部から大動脈後方を通り,心房中隔上部に還流する連続性の血流シグナルを認めた.パルスドプラ法による血流速パターンは収縮末期に1.9 m/secのピークを有し,拡張期は0.9 m/secの連続性の血流速パターンを示し,冠静脈の血流速パターンと一致していた.その解剖学的走行は,過去に報告されている大心静脈還流異常症と一致していた.後日,冠動脈CTにて大心静脈の還流異常を確認できた.また,左上肢からのコントラストエコーにて左上大静脈遺残の合併も診断できた.以上,心エコー図法を用いて,極めてまれな冠静脈奇形である大心静脈還流異常症を診断できたので,ここに報告した.

  • 赤澤 舞衣, 清水 祥子, 閻 国珊, 清水 盛浩, 湯浅 真由美, 小牧 史明, 北川 裕利
    2024 年 51 巻 2 号 p. 107-111
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/12
    [早期公開] 公開日: 2024/02/28
    ジャーナル 認証あり

    心臓手術において経胸壁心臓超音波検査 (transthoracic echocardiography:TTE) は大きな影響を与える.当院では周術期専従の超音波検査士を配置し,緊急手術でも可能な限り術前TTEを施行している.今回,左房粘液腫に合併した僧帽弁逸脱症を術前に検出し,腫瘍切除術と僧帽弁輪形成術 (mitral valve annuloplasty:MVA) を同時に施行した1例を経験した.症例は68歳,女性.うっ血性心不全の診断で近医に入院し,TTEで左房内腫瘤と中等度の僧帽弁閉鎖不全症 (mitral regurgitation:MR) を指摘され手術目的に当院へ搬送された.搬送後の周術期超音波検査 (TTE) でMRの責任部位と考えられる僧帽弁前尖A3の軽度逸脱を認めた.所見は速やかに麻酔科医と心臓血管外科医に伝えられた.腫瘤は有茎性で心房中隔と付着しており,一部心房中隔ごと切除した.僧帽弁は弁輪径の拡大による接合不全を来しており,前尖A3の変性と余剰も認めていた.MVAを施行し,逆流が制御されたことを確認して手術を終了した.術後組織診検査で左房粘液腫と診断された.左房粘液腫ではしばしばMRを合併するが,その正確な検出や重症度評価は困難である.限られた時間の中で速やかにTTEを行い所見を共有できる体制を構築していたことが,適切な術前評価と術式選択に繋がった.

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