超音波医学
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38 巻, 2 号
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総説
  • 林 英宰
    原稿種別: 総説
    2011 年 38 巻 2 号 p. 97-102
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/01
    ジャーナル 認証あり
    壁運動異常といえば収縮異常だけを考えがちだが,収縮異常と拡張異常の二つの面から壁運動異常を考えねばならない.心エコー的にも収縮能を評価する指標と拡張能を評価する指標との二つに分類することが出来る.また,収縮異常はある程度肉眼で評価可能であるが,拡張異常は肉眼では評価することが困難であり,様々な心エコー手法が現在提案されている.壁運動異常の出現から心筋虚血を評価する運動負荷心エコー法やドブタミン負荷心エコー法などの負荷心エコー法も臨床の現場で用いられている.壁運動と心筋潅流を同時に評価しようとする心筋コントラストエコー法もある.また,心臓全体として捉えるのか,局所の変化を抽出して捉えるのかでアプローチも変わる.最近では壁運動異常を3次元的に解析しようとする試みもある.
原著
  • 江口 明世, 中坊 亜由美, 合田 亜希子, 正木 充, 大塚 美里, 吉田 千佳子, 廣谷 信一, 川端 正明, 辻野 健, 増山 理
    原稿種別: 原著
    2011 年 38 巻 2 号 p. 103-110
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/01
    ジャーナル 認証あり
    目的:収縮不全心では心機能の悪化に伴い左室内腔形態は細長から球形へと変化する.一方,拡張不全心(heart failure with preserved EF: HFPEF)における左室内腔形態については明らかではない.HFPEFにおける左室内腔形態と予後との関連について明らかにすることを目的とした.対象と方法:急性心不全にて入院となり軽快退院したHFPEF 患者(左室駆出率≧50%)52人(男性29名,平均72±10歳)を対象とした.心エコー検査にて心尖部四腔像における左室長径を短径で除した値(sphericity index: SI)を算出し,左室内腔形態の指標とした.総死亡とうっ血性心不全による再入院をエンドポイントとして予後を検討した.結果と考察:平均690日の観察期間の間に14人にエンドポイントを認めた.Kaplan-Meier曲線では球形群(SI≦1.7)が楕円群(SI>1.7)より死亡・心不全による再入院が多く予後不良であった(log-rank, p<0.05)多変量ロジスティック回帰解析では,SI≦1.7が唯一の予後規定因子であった.結論:HFPEFにおいても左室内腔形態が球形に近いほど予後不良であり,左室内腔形態により予後を予測出来る可能性が示唆された.
  • 小林 さゆき, 林 輝美, 薬袋 路子, 善利 博子, 市原 美知子, 林 亜紀子, 酒井 良彦, 高柳 寛
    原稿種別: 原著
    2011 年 38 巻 2 号 p. 111-117
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/01
    ジャーナル 認証あり
    目的:右室リードのペースメーカ植込み術後の合併症の一つである三尖弁逆流(TR)の成因について心エコー図を用い検討した.対象と方法:対象はVVIあるいはVVIRモードの恒久式ペースメーカ植込み術を受け,術前,術後に経胸壁心エコー図検査を施行した37例.TRが術前に認めない,あるいは軽度のTR(trace TR)で,術後TRが中等度以上新たに出現,あるいは増悪した8例をTR群とし,術前,術後ともにTRが軽度以下の29例を正常群とし,両群間にて以下の項目を比較検討した.観察期間は平均63ヵ月.2Dエコー図四腔像にて三尖弁接合部中央と右室心尖部を結ぶ線を基準線とし,基準線とリードのなす角度(挿入角度)を測定した.また,左室長軸像にてMモードエコー図を用い,リードの電気的刺激により生成される心室中隔の収縮早期notchが最大となる位置を同定し,さらに心室中隔を基部,中間部,心尖部において 最大となるnotchの大きさを測定した.結果と考察:(1)TR群は正常群に比べ,リードの挿入角度が有意に大であった.(2)Mモードエコー図にて心室中隔の収縮早期notchが最大となる位置は,TR群で心室中隔中間部あるいは基部であるのに対し,正常群では心室中隔下部であった.結論:右室ペーシング症例において,術後TRが増悪する成因は,リードが三尖弁接合部を斜めに横切り,心室中隔の高位にanchorし,三尖弁の主に中隔尖を圧排することにより,弁接合を障害することによると思われた.
  • 吉岡 二三, 田中 幸子, 北村 次男, 浜田 好弘, 平岡 締, 橋本 正史
    原稿種別: 原著
    2011 年 38 巻 2 号 p. 119-127
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/01
    ジャーナル 認証あり
    目的:非ホジキンリンパ腫の再発を早期診断出来る超音波所見を検討する.対象:発症時から経過観察した完全寛解中の18例125リンパ節(寛解リンパ節)及び寛解から再発または寛解せず増悪した計5例57リンパ節(再発リンパ節)である.方法:1.寛解リンパ節の大きさを測定した.2.寛解リンパ節の領域による大きさの相違をunpaired student T-testで検討した.3.ロジスティック回帰分析を用いた症例対照研究を施行した.超音波所見の(1)から(3)には,寛解リンパ節を用い,説明変数は(1)から(8)の場合を1,その他を0とした.(1)長径,(2)横径,(3)厚み径は,平均(M)+1標準偏差値(SD)以上,(4)厚み径/長径比は0.5以上,(5)境界は全周性に明瞭,(6)周囲の筋肉と比較したエコーレベルは同等かそれ以上に低い,(7)リンパ門域は広い,(8)血流は描出あり.結果:寛解リンパ節の大きさは,上頸部群の横径及び厚み径が中頸部以下尾側の領域より有意(P<0.01)に大きかった.M+1SDの概数は横径,厚み径についてはそれぞれ上頸部では11 mm,6 mm,中頸部以下では9 mm,4 mmであった.単ロジスティック回帰分析での有意な項目のオッズ比は厚み径11.9,横径11.0,血流4.1,厚み径/長径比3.7,長径3.1,エコーレベル3.0,境界2.8であった.多重ロジスティック回帰分析による有意な項目のオッズ比は,横径6.2(P<0.001)及び厚み径4.1(P<0.01)であった.結論:再発所見として最も有用な項目は横径であり,有用な項目の組み合わせは横径と厚み径であった.
症例報告
  • 宮本 亜矢子, 湯田 聡, 高木 覚, 小林 みち子, 中原 学史, 板垣 恭嗣
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 38 巻 2 号 p. 129-134
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/01
    ジャーナル 認証あり
    症例は74歳,男性.当院糖尿病内科に通院中,発作性心房細動を認めたため,2008年12月心エコー検査を施行したところ,左室後壁に2×5 cmの腫瘤を指摘された.手術歴や外傷歴はなく,3ヵ月後の心エコー検査でも腫瘤径は変化せず,全身のCT検査で悪性腫瘍を示唆する所見を認めないことから,良性心臓腫瘍と判断し,経過観察を行っていた.冠動脈CT検査で前下行枝に狭窄病変の存在が疑われたため,2009年12月に腫瘍精査も兼ねて入院となった.臨床所見及び,その形態やエコー輝度,CT所見から鑑別した結果,線維腫である可能性が最も考えられた.入院時の心エコー検査で,2次元(2D)スペックルトラッキング法を用いて長軸,短軸及び円周方向のstrain解析を行ったところ,腫瘍部位に一致する後壁基部に限局した局所心機能異常が認められた.冠動脈造影では,後壁を灌流する右冠動脈及び左回旋枝に狭窄病変を認めなかったことから,腫瘍の存在そのものが,局所心機能異常の原因の一つとなる可能性が考えられた.2Dスペックルトラッキング法は,左室腫瘍周囲の潜在的心機能異常の検出に有用である可能性が示唆された.
  • 福間 麻子, 佐藤 秀一, 新田 江里, 花岡 拓哉, 石根 潤一, 飛田 博史, 三宅 達也, 柴田 宏, 長井 篤, 木下 芳一
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 38 巻 2 号 p. 135-139
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/01
    ジャーナル 認証あり
    超音波診断用造影剤であるSonazoid®は,肝腫瘍性病変の造影剤として2007年以来広く使用されている.超音波の最大の長所であるリアルタイム画像を取得でき,今までにない詳細な血管イメージ及び灌流イメージと後血管イメージを得ることにより各種肝腫瘍性病変の質的診断と存在診断が可能となった.症例は50歳代,男性.腹部膨満感,腹痛を主訴に来院.腹部造影CTで膵尾部に5 cm大の低濃度腫瘍を認め,間接所見及び病理組織所見から最終的に膵尾部癌と診断された.術前の造影CTでは肝転移は認められなかったが,超音波検査では限局性低脂肪化域(focal spared area: FSA)を疑う複数の低エコー域を認めた.そのうち胆嚢近傍S4領域の病変は境界が比較的明瞭であったため,腫瘍性病変との鑑別が必要と考えSonazoid®造影超音波検査を行ったところ,動脈優位相で全体に淡く染影され,門脈優位相ではwashout,後血管相で欠損像を呈した.一方,他の低エコー域は欠損とはならなかった.よって,S4の病変は転移性肝腫瘍,その他はFSAと診断した.Sonazoid®造影超音波検査は,脂肪肝を背景に存在とする腫瘍性病変とFSAとの鑑別に有用と考える.
  • 伊藤 弘昭, 辻本 文雄, 市瀬 雅寿, 桜井 正児, 小池 淳樹
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 38 巻 2 号 p. 141-147
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/01
    ジャーナル 認証あり
    胸壁デスモイド腫瘍が乳腺内発育を示したきわめて稀な症例を経験したので報告する.症例は30歳,女性.2006年2月に左乳房に腫瘤を自ら触知した.しだいに疼痛が増強してきたため,7月に当院を受診した.マンモグラフィは両側とも腫瘤及び悪性石灰化を示唆する所見は認めなかった.超音波検査は左乳房の深部に不整形の低エコー腫瘤を認め,硬癌を疑った.穿刺吸引細胞診はclassIIで,明らかな細胞異型は認めなかった.経皮的針生検は間質膠原線維の増殖と炎症細胞浸潤を認めたのみで悪性所見を認めなかった.MRIでは漸増型の造影パターンを呈し,MRSではコリンピークを認めないことから良性の線維組織が疑われた.再度施行された超音波検査ではエラストグラフィ及びダイナミックテストが追加された.エラストグラフィでは胸壁の横方向に広い腫瘤部は硬く,乳腺内の腫瘤部は相対的に軟らかく描出された.MRI,超音波検査,針生検の所見から,胸壁デスモイド腫瘍の乳腺浸潤が疑われた.大胸筋を一部含めた腫瘍摘出術を施行した.病理組織診断は異型の乏しい線維芽細胞様細胞で構成された病変で,免疫染色の結果からもデスモイド腫瘍と診断した.
今月の超音波像
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