超音波医学
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41 巻, 3 号
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総説
  • 市塚 清健, 長谷川 潤一, 松岡 隆, 仲村 将光, 関沢 明彦
    原稿種別: 第12回教育セッション(産婦人科)
    2014 年 41 巻 3 号 p. 301-308
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    [早期公開] 公開日: 2014/03/21
    ジャーナル 認証あり
    妊娠初期における超音波検査の役割は,妊娠週数・出産予定日の確認,流産,異所性妊娠,胞状奇胎など異常妊娠の診断,比較的大きな胎児形態異常の有無,多胎妊娠の場合の膜性診断,子宮筋腫,卵巣腫瘍など婦人科疾患合併の有無などの検索である.最近では,それらに加え後頸部無エコー領域(nuchal translucency: NT)をはじめとした胎児染色体異常のリスク評価も加わってきた.NT以外の検査項目は,特に倫理的な問題は含んでおらず,基本的には診断した医師は患者に検査結果を伝える必要があるが,NTに関してはいわゆる出生前診断の一部と捉えられるため,検査結果のインパクトが大きい.さらに,その計測には一定の技術が求められる.したがって,検査を行う際には習熟したものが検者である必要があり,さらに検査結果はもとより,検査前に妊婦に本検査を受けてわかること,わからないことなど検査の本質をカウンセリングし,自己決定による希望者のみに行うことが望ましい.本稿では妊娠初期に行う超音波検査の進め方,方法さらに妊娠初期の超音波検査の安全性についても概説する.
特集「造影超音波 up-to date」
  • 住野 泰清, 松清 靖, 佐藤 綾, 和久井 紀貴, 池原 孝, 丸山 憲一
    原稿種別: 造影超音波 up-to date
    2014 年 41 巻 3 号 p. 311-323
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    [早期公開] 公開日: 2014/05/02
    ジャーナル 認証あり
    肝臓の血流は,動脈と門脈で供給され肝静脈へと流出する.栄養に富む門脈血は消化管を経た静脈系低圧血流であり,肝病変の影響で容易に動態は変化し,進行した慢性肝疾患では肝流入困難となって門脈圧亢進症へとつながる.動脈は本来,胆道系の栄養を受け持つが,こちらも病態によって変化し,門脈血と相補的な動態をとるとされている.筆者らはこれら肝栄養血流の動態を造影超音波(arrival-time parametric imaginging, perfusion parametric imaginging, arterialization ratioなど)で解析し,肝疾患の病態理解に役立てているので紹介する.まず,慢性肝疾患であるが,病変の進展とともに実質灌流血が門脈主体から動脈主体へと変化する(実質灌流の動脈化).これを利用し,線維化ステージ診断,門亢症発現,門脈側副血行路発達,hyperdynamic circulationなどの推測が可能である.急性肝障害では門脈血流減少なしの動脈化がみられる.炎症回復とともに門脈血由来の灌流が戻るが,戻りが悪いと予後が悪い.アルコール性肝障害では,動脈化が他疾患より高度で,飲酒により増悪する.飲酒チェッカーとしても応用可能である.以上のごとく,栄養血流の動態把握は疾患の診断だけでなく,病態理解の大きな助けとなることを強調したい.
  • 熊田 卓, 多田 俊史, 金森 明, 乙部 克彦, 竹島 賢治
    原稿種別: 造影超音波 up-to date
    2014 年 41 巻 3 号 p. 325-337
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    [早期公開] 公開日: 2014/05/02
    ジャーナル 認証あり
    本稿は,我国の肝腫瘍の造影超音波診断のためのガイドラインについて記載した.肝腫瘍の日本超音波医学会の診断基準は,最初1988年に出版された.しかし,超音波機器や肝腫瘍の疾患概念の変化や最近の機器の進歩により,以前のガイドラインでは対応できなくなってきた.現在,本邦ではSonazoid®(ペルフルブタン,第一三共,東京,日本)が超音波造影剤として認可されている.今回の改正で,6つの主要な疾患(肝細胞癌,肝内胆管癌[胆管細胞癌],転移性肝腫瘍,肝細胞腺腫,肝血管腫,限局性結節性過形成[FNH])の鑑別診断に必要な,標準的な所見を掲載した.超音波所見はBモード所見,ドプラ所見および造影所見に分けた.Bモード所見は,腫瘍形状,境界線や輪郭,腫瘍マージン,腫瘍内,後方エコー,および付加所見から質的診断を行った.ドプラ所見は,血流,血管,血流特性(拍動波と定在波)および付加所見から質的診断を行った.造影超音波の時相は血管相および後血管相に分類した.血管相は動脈(優位)相と門脈(優位)相分けた.肝腫瘍の鑑別診断は,3つの相所見によって行われる.血管相は腫瘍の質的診断に,後血管相は腫瘍の存在診断に使用される.後血管イメージは「クッパーイメージ」ともよばれ,腫瘍における「クッパー細胞」の有無に密接に関係している.しかし,この言葉は,異論もあり今後の検討に委ねることとなった.
  • 廣岡 芳樹, 伊藤 彰浩, 川嶋 啓揮, 大野 栄三郎, 後藤 秀実
    原稿種別: 造影超音波 up-to date
    2014 年 41 巻 3 号 p. 339-351
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    [早期公開] 公開日: 2014/04/24
    ジャーナル 認証あり
    膵臓疾患の超音波検査には体外式超音波検査(ultrasonography: US)と内視鏡下超音波検査(超音波内視鏡検査)(endoscopic ultrasonography: EUS)がある.造影超音波検査には,造影剤を血管外(消化管など)に注入するものと血管内(動脈・静脈)に注入するものがある.前者は消化管を良好なacoustic windowとして膵を観察するという考え方で,US機器の進歩とともにその重要性が見直される必要がある.炭酸ガスマイクロバブルを経動脈性に注入する方法は,経静脈性に注入する造影超音波検査の出現とともに姿を消した.本邦でこれまでに使用された経静脈性投与の超音波造影剤はAlbunex®,Levovist®,Sonazoid®であるが膵疾患に対する造影超音波検査で用いられるものはほとんどがSonazoid®である.Sonazoid®を用いる場合にも,カラードプラ断層法・パワードプラ断層法などをベースにしたものとBモード画像(ハーモニックイメージング法)をベースにしたものがあり,用いる場合にはそれぞれにメリットとデメリットがあり,目的に応じて使い分けることが肝要である.
  • 平井 都始子, 中村 卓, 丸上 亜希, 小林 豊樹
    原稿種別: 造影超音波 up-to date
    2014 年 41 巻 3 号 p. 353-365
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    [早期公開] 公開日: 2014/05/02
    ジャーナル 認証あり
    臨床で唯一使用可能な超音波造影剤Sonazoid®(以下,Sonazoid®)が,乳房腫瘤性病変に対して2012年8月より保険適応となった.現状では,臨床応用は十分に広がっておらず,標準的なプロトコールや診断基準も確立されていない.乳房造影超音波の手法や観察のポイントについてコンセンサスを得ていく必要がある.これまでの臨床経験や文献を踏まえて,肝臓と乳房に対するSonazoid®造影超音波の違い,乳房造影超音波検査の方法や造影所見の評価についての私見を述べた.また,Sonazoid®造影超音波の良悪性の鑑別診断や,乳癌の広がり診断,セカンドルックultrasonography,乳癌薬物療法の効果判定に対する有用性について症例を提示しながら,今後への期待について述べた.
原著
  • 渡辺 泱, 東 勇志, 永井 克弘, 四方 裕之, 田上 雄哉, 三浦 まなみ
    2014 年 41 巻 3 号 p. 367-373
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    [早期公開] 公開日: 2014/04/10
    ジャーナル 認証あり
    目的:経腹的3次元超音波を用いて経時的に膀胱容量を測定する方法を確立する.方法および対象:市販の3次元超音波スキャナを安定して下腹部に接着させる器具を新規開発した.18例を対象として測定値の正確性を吟味し,4例を対象として経時的計測の可能性を検討した.結論:この方法は,膀胱容量が実際より平均18%少なめに計測されるものの,これを較正すると誤差は12%以内に収まり,生理学的研究法として十分な実用的価値を有していた.終夜に亘る経時的計測はきわめて安定して実施できた.
  • 長谷川 英之, 金井 浩
    2014 年 41 巻 3 号 p. 375-388
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    [早期公開] 公開日: 2014/04/07
    ジャーナル 認証あり
    目的:心臓超音波断層法は心臓の診断に広く用いられている.心臓超音波検査により心臓の形状を観察することができ,BモードおよびMモード画像に基づいて駆出率など心臓全体としての機能を評価することができる.また,局所の心機能を評価するために心筋ストレインおよびストレインレートを評価する方法も開発されている.さらに最近,心筋の収縮/弛緩時の壁の変位や心臓弁閉鎖により惹起される振動の伝搬の計測が心筋機能や粘弾性の評価に有用であることが示されている.しかしながら,これらの測定方法は従来の超音波診断装置よりもはるかに高いフレームレートを必要とする.本研究では高フレームレート(300 Hz以上)の心臓超音波断層法を実現するため,並列受信ビームフォーミングに基づいた方法を開発した.方法:フレームレートを高めるために送信角度間隔を6°,1送信当たりの受信ビーム数を16として送信回数を15に減らし,従来のセクタ走査と同等の数および密度の走査線を得られるようにした.さらに,走査線間での送受信感度の差を低減するために,複数の送信をコンパウンドすることによって各走査線を得た.コンパウンドに用いた送信回数は送信ビームの幅を考慮して決定した.送信ビームに関しては,平面波および拡散波について検討を行った.セクタ走査では走査線の間隔がプローブからの距離とともに大きくなるのに対し,平面波の幅は距離とともに増加しないため,距離とともに広くなるセクタ走査における描画範囲に対応できない.一方,拡散波はプローブからの距離とともにビーム幅が広くなるため,平面波よりもセクタ走査における送信ビームに適していることが分かった.結果:ナイロンワイヤを用いて提案法による空間分解能を評価した.拡散波により得られた点拡がり関数の半値幅は従来のビームフォーミングおよび平面波を用いた並列ビームフォーミングにより得られたものよりもやや大きかったが,従来のビームフォーミングにより得られるものに非常に近い点拡がり関数が,送信拡散ビームとコンパウンドによる並列ビームフォーミングにより実現できた.しかし,平面波および拡散波を用いた並列ビームフォーミングの場合には横方向のサイドローブレベルの上昇は認められた.本研究では,23歳健常男性の心臓についても断層像の測定を行った.結論:上昇したサイドローブレベルのために,提案法により得られたBモード断層像のコントラストは劣化したが,横方向描画範囲90°のBモード断層像を,従来のセクタ走査により得られる数十Hzよりははるかに高い316 Hzのフレームレートで測定することができた.
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