超音波医学
Online ISSN : 1881-9311
Print ISSN : 1346-1176
ISSN-L : 1346-1176
40 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
  • 松尾 汎
    原稿種別: 第11回教育セッション(血管)
    2013 年 40 巻 2 号 p. 139-145
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/27
    ジャーナル 認証あり
    「脈管」とは動脈・静脈およびリンパ管の総称であり,動脈と静脈を「血管」と称している.血管疾患には動脈疾患(脳・頸動脈,大動脈,冠・腹部・腎・末梢などの疾患)と静脈疾患(深部静脈血栓症など)がある.近年では動脈硬化性疾患の増加に伴い,無(低)侵襲的に動脈疾患を診断する方法などが注目され関心も高まってきた.動脈は全身に分布するため,全身の臓器とともに,動脈疾患の診断では動脈の特性やその特異性に注目する必要がある.本稿の目的は,高齢化や生活習慣病(糖尿病,脂質異常症,高血圧症,喫煙,肥満など)と関連し増加傾向にある動脈硬化疾患である「大動脈・末梢動脈病変」の超音波検査による標準的な評価方法を提示することである.それぞれの疾患を周知し,その診断基準に応じて確定診断をすることが必要である.
  • 岡庭 信司, 岩下 和広, 井上 貞孝
    原稿種別: 第11 回教育セッション(腹部)
    2013 年 40 巻 2 号 p. 147-156
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/27
    ジャーナル 認証あり
    超音波検査は簡易で低侵襲な検査であるため人間ドックや集団検診といったスクリーニングにも広く用いられており,胆嚢ポリープや壁肥厚はよく遭遇する超音波所見である.一方で,超音波検査の診断能は検査担当者の技能や知識に依存することから,検査担当者は標準的な走査法を習得し鑑別診断に有用な超音波所見を熟知することが必要である.今回は日本消化器がん検診学会より提示された超音波がん検診のカテゴリー分類を引用し,まず腫瘤像や壁肥厚といった直接所見につき解説する.さらに,胆嚢の腫大やデブリなどの所見についても,胆嚢の微小病変のみならず,潜在する胆管や膵頭部領域の病変の拾い上げに有用な間接所見として取り上げる.
原著
  • 明石 尚之, 藤井 尋也
    2013 年 40 巻 2 号 p. 157-165
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/27
    ジャーナル 認証あり
    目的:超音波顕微鏡を用いた生体組織の音響特性測定において,薄膜組織内における多重反射を考慮して生体組織の音響パラメータを正確に決定する方法を提案する.対象と方法:本方法では,超音波顕微鏡によって得られる10種類程度の異なる周波数における位相と振幅から,計算機フィッティング法により音速,減衰係数,音響インピーダンス,密度を決定する.結論:±5%のランダム誤差を与えた模擬データに対して行った計算機シミュレーションにより,音速,減衰係数,音響インピーダンスの決定誤差はそれぞれ,±0.04%,±2.7%,±1.2%であった.
  • 三塚 幸夫, 金澤 真作, 緒方 秀昭, 丸山 憲一, 八鍬 恒芳, 久保田 伊哉, 齊藤 芙美, 根本 哲生, 澁谷 和俊, 金子 弘真
    2013 年 40 巻 2 号 p. 167-174
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/27
    ジャーナル 認証あり
    目的:一般に乳癌術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy: NAC)の臨床的効果判定は病変の最大径の変化によってなされるが,内部の壊死や瘢痕組織の残存により正確にとらえられない症例もある.そこで我々は,Sonazoid®造影超音波(以下,CEUS)を加えることでより正確な効果判定が可能であるか,またどのようなCEUS所見に注目するべきか検討した.対象と方法:対象は2007年7月‐2010年7月に当院でNAC後に手術を施行した乳癌患者のうち,NAC前後にCEUSを行った20症例22結節.Sonazoid®懸濁液0.0075 ml/kgを静脈内投与.投与後1分間の動画とMicro Flow Imagingをもとに,腫瘤内部の染影を染影なし/非腫瘤部と同程度の染影/非腫瘤部よりやや強い染影/非腫瘤部より明らかに強い染影/評価不能の5段階に,腫瘤周囲の染影および腫瘤内部の不染域を無/有/評価不能の3段階に分類し,NACの組織学的効果判定と比較検討した.結果と考察:NAC前にみられた腫瘤内部および周囲の染影がNAC後に低下する傾向がみられ,組織学的効果判定の高い群でその傾向はより強くみられた.腫瘤内部の不染域に関しては組織学的効果判定と一定の傾向はみられず,単に不染域の有無だけでなく,腫瘤サイズの変化や染影部分の状態なども加味しながら評価する必要があると考えられた.結論:CEUSにより腫瘤内部と周囲の染影を評価することで,NACの効果を評価できる可能性が示唆された.
  • 松本 泰弘, 梁 栄治, 鎌田 英男, 綾部 琢哉
    2013 年 40 巻 2 号 p. 175-181
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/27
    ジャーナル 認証あり
    目的:エラストグラフィを用いて,切迫早産および分娩時の子宮筋収縮を,客観的に判断できるか検討した.対象と方法:切迫早産2例と,分娩経過中の妊婦15例の計17例を対象とした.腹壁の脂肪層と子宮筋層を,エラストグラフィの画像として記録し,子宮筋収縮によって筋層の色彩に変化があるか観察した.また,脂肪層と子宮筋層の歪みやすさを,それぞれB,Aとして数値化,B/A比を算出し,子宮筋収縮時と弛緩時のB/A比に差があるかを比較した.さらに,収縮時のB/A比が弛緩時のB/A比の何倍になっているかを算出した.結果と考察:全ての観察例において,子宮筋収縮に伴って,筋層の色彩が変化した.また,切迫早産例におけるB/A比は,子宮筋収縮時に28.2,弛緩時では1.3となり,有意な差を認めた.同様に,分娩第1期潜伏期では,それぞれ31.2と2.5,分娩第1期活動期では49.9と2.64,分娩第2期では47.9と6.13となり,全ての時期においてB/A比に差を認めた.切迫早産における収縮時のB/A比は弛緩時の21.7倍と最高値で,分娩第2期での同じ値は7.8倍と最低値であった.エラストグラフィを用いることで,子宮筋の収縮を客観的かつ定性的に判定できたが,収縮力など定量的評価をするためには,多くの課題があった.結論:エラストグラフィを用いることで子宮筋の収縮を客観的,定性的に評価することが可能である.
症例報告
  • 嶌森 直子, 岸野 智則, 大西 宏明, 多武保 光宏, 寺戸 雄一, 要 伸也, 森 秀明, 奴田原 紀久雄, 東原 英二, 渡邊 卓
    2013 年 40 巻 2 号 p. 183-189
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/27
    ジャーナル 認証あり
    集合管癌は腎癌全体の1%程度とまれであるが予後不良の腫瘍である.今回,右腎全体に腫瘍が浸潤したまれな集合管癌の1例を経験した.症例は60歳代男性.腹部超音波検査で右腎は全体的に腫大し,境界不明瞭で内部エコー不均一な腫瘍性病変が腎全体をびまん性に占拠しており,腎中心部エコー像は極端に縮小していた.しかし,その大きさにも関わらず腎の輪郭は比較的保たれていた.腫瘍のエコーレベルは対側の正常腎皮質と比較して等エコーであり,ドプラ法では血流信号の少ない乏血性腫瘍であった.我々が検索した限り,これまでに集合管癌の超音波画像の特徴を詳細にまとめた報告はない.1988年以降に国内で論文報告された63症例は主にCT画像や病理所見に基づく所見であるが,本症例を含めて集計したところ,29例中21例(72%)で腎の輪郭が保たれており,腫瘍血流は54例中52例(96%)が乏血性であった.本症例のように腎全体にびまん性に浸潤した例は少なく62例中7例(11%)であった.既報と本症例の超音波画像から,集合管癌は1)浸潤性発育の像を呈し,2)腫瘍が増大しても腎の輪郭は保たれ,3)腎中心部エコー像は変形・縮小し,4)腫瘍血流は乏しく,5)腫瘍のエコーレベルは低~高エコーと症例により様々であるという特徴を有すると考察した.このような超音波画像を腎臓に認めた場合,集合管癌を鑑別に入れ精査すべきであると思われる.
feedback
Top