超音波医学
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34 巻, 3 号
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総説
  • 地挽 隆夫
    2007 年 34 巻 3 号 p. 271-279
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/26
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    現在の超音波診断においては,二種類のハーモニックイメージングが広く使われている.その一つは,超音波が生体内伝搬中に発生する高調波を利用するティッシュハーモニックイメージングで,Bモード画像の方位分解能とコントラスト分解能を改善する.もう一方は,微小気泡から成る造影剤を用いたコントラストハーモニックイメージングであり,腫瘍血管や組織染影を得ることが可能となっている.本稿では,これらを理解するための初歩的な物理を解説する.
特集
  • 石田 秀明
    2007 年 34 巻 3 号 p. 281-282
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/26
    ジャーナル 認証あり
  • 石原 武, 山口 武人, 横須賀 収, 松谷 正一, 齋藤 博文
    2007 年 34 巻 3 号 p. 283-292
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/26
    ジャーナル 認証あり
    急性膵炎,慢性膵炎の画像診断としては,簡便性に優れた体外式腹部超音波検査(US)がfirst choiceの検査法として位置付けられている.形態的な変化を示さないごく軽症の膵炎を除けば,USのみでも急性期の膵炎の診断は可能である.さらに,膵炎の進展とともに併発する多彩な合併症(嚢胞,血管合併症など)も,経時的にUS検査を繰り返すことにより早期に診断することが可能である.また,急性膵炎の重症度診断に欠かせない膵壊死を最新のUS装置で超音波造影剤を併用することによりUSで評価する試みも報告されている.今後さらに検討が必要であるが,放射線被爆が無いこと,CT造影剤に比べ超音波造影剤には腎毒性,膵障害が少ないこと,cost benefitなどの観点からも,CT診断を補佐する有望なmodalityになり得る可能性がある.被検者の身体的条件(肥満)や周囲臓器の影響などによる描出能など種々の制約はあるもの,体外式USは急性膵炎,慢性膵炎の病態把握に有用である.
  • 堀口 祐爾, 末永 昌宏, 久留宮 隆, 井田 有子
    2007 年 34 巻 3 号 p. 293-303
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/26
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    膵腫瘍には,上皮性のものと非上皮性のものがあり,形態的には充実性腫瘍と嚢胞性腫瘍に分かれる.上皮性充実性腫瘍としては膵管癌が代表的で他に腺房細胞腫瘍,多形細胞癌,内分泌腫瘍が含まれる.嚢胞性腫瘍としては漿液性嚢胞腫瘍,粘液性嚢胞腫瘍,膵管内乳頭粘液性腫瘍があり,いずれにも良性腫瘍と悪性腫瘍が存在する.非上皮性腫瘍としてはリンパ腫,脂肪腫,線維腫,血管腫などがあるが,きわめて稀である.超音波検査には,存在診断としてのBモード法,性状診断や進展度診断としてのカラードプラ法(CDI),造影エコー法(CEUS)や内視鏡下超音波(EUS),膵管内超音波(IDUS)があり,それぞれを適切に組み合わせることにより診断能が高まる.例えば,通常型膵管癌においては,まず体外式Bモード超音波で腫瘤を描出し,カラードプラで血流動態を把握し,造影エコーにて内分泌腫瘍や炎症性腫瘤と鑑別し,EUSで膵外進展や脈管浸潤度を評価する.また,膵管内乳頭粘液性癌の診断においては結節の大きさや深達度を診断するためにIDUSが付加される.嚢胞性腫瘍では,粘液性嚢胞腫(MCT)と漿液性嚢胞腺腫のmacrocystic typeとの鑑別,MCTと膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMT)の分枝型との鑑別が特に問題となる.それにはEUSやCEUS,ダイナミックCT,MRI像などを組み合わせて総合的に診断されるが,基本画像は何といっても超音波像である.
  • 榎 真美子, 石田 秀明, 小松田 智也, 渡部 多佳子, 八木澤 仁
    2007 年 34 巻 3 号 p. 305-311
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/26
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    この章では,まず膵の解剖学的位置関係,特に周囲脈管系との関係を述べ,次いで,膵超音波検査で伝統的に用いられてきた走査法に,そして最後に我々が推奨する走査法の工夫について解説する.通常の走査法では,一断面で膵全体を観察するのは困難で,幾つかの走査面を組み合わせざるを得ない.大まかには,次の4走査法が中心となる.a)上腹部横走査:脾静脈を指標として膵頭体部を観察する.b)上腹部矢状走査:この断面では腹腔動脈と上腸間膜動脈に挟まれた膵が見える.これらは全て呼吸性に移動する.c)右上腹部斜走査:門脈本幹を指標にその腹側の頭部と背部の釣部を観察するのに適している.d)左上腹部斜走査:脾動静脈を指標にその腹側の膵尾部を観察するのに適している.我々は,走査法の工夫として,1)プローブを回転させる(回外運動),2)船頭の船こぎ様に手首を背屈させる(背屈運動),3)たすきがけの様に,膵尾部を見る時は頭部に,頭部を見る時は尾部に,プローブを移動させ,目的箇所を斜めに観察する.4)必要に応じ,プローブを円弧状に移動させるなど,1)‐3)を組み合わせたり変法を加える.なお,今まで引水法や体位の変換を推賞しているテキストもあったが,被検者にかかる負担が大きく,その割に効果がなかったのであまりお薦め出来ない.
  • 飯島 尋子, 森安 史典
    2007 年 34 巻 3 号 p. 313-318
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/26
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    膵腫瘤性病変では通常のBモード法に加え,造影超音波法を行うことで病変部の微細な血流動態のより正確且つ詳細な診断が期待出来る.造影超音波とは,マイクロバブルであるLevovist®やSonazoid®の造影剤を経静脈性に投与し膵臓では主に血流診断を行う.通常型の膵癌では,後述の3種類の染影パターンに分類される.その中でも最も多いパターンはhypovascularである.膵癌との鑑別が問題となる腫瘤形成性膵炎であるが,特にperfusion imageにおける染影態度が重要である.びまん均一なisoperfusionを呈することが多い.また典型的な膵内分泌腫瘍では,辺縁明瞭でhypervascular / hyperperfusionのhypervascularityな染影パターンを示す.
  • 廣岡 芳樹, 伊藤 彰浩, 川嶋 啓揮, 丹羽 康正, 後藤 秀実
    2007 年 34 巻 3 号 p. 319-328
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/26
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    膵疾患診断における超音波内視鏡(EUS)の有用性はすでに確立されており,必須の検査法であると考えられている.基本となるBモード画像で同等以上の画質が得られることが証明されたことで,EUSがメカニカルラジアル走査方式から電子走査方式(電子ラジアル型,電子コンベックス型)に変化することは必然的なものとなった.電子走査方式になることで,ティッシュハーモニックイメージング法,カラードプラ断層法・パワードプラ断層法,造影ハーモニックイメージング法,三次元画像,real time tissue elastography®などがEUSで行えるようになった.このように多方面からのtissue characterizationが可能になったことは膵疾患診断に関する有用性がさらに向上したことを意味する.今後はさらに症例を蓄積し明確な臨床的有用性を証明してゆく必要がある.本稿では,電子走査型EUSで可能になった種々の画像診断法に関して概説する.
  • 伊藤 彰浩, 廣岡 芳樹, 川嶋 啓揮, 丹羽 康正, 後藤 秀実
    2007 年 34 巻 3 号 p. 329-342
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/26
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    教室では,1991年より膵管内超音波検査法(IDUS)を臨床応用し,膵疾患診断に際し積極的に施行してきた.本稿ではその歴史と進歩に併せ,具体的な走査法や正常画像および各種膵疾患診断におけるその臨床的意義について言及する.膵管内IDUSは,元々,血管内用に開発された超音波プローブを消化器領域に応用し,膵管内へアプローチしたことに端を発するものである.現在は,オリンパス社製またはアロカ社製の20MHzあるいは30MHzの超音波プローブが主として用いられ,臨床的には乳頭切開術を付加することなく,内視鏡的逆行性膵管造影検査に引き続き施行される.開発当初は走査性や画質にやや問題があったが,基本的に安全且つ容易に実施し得,リアルタイムに膵の精密横断画像が安定して得られるようになっている.本検査法の最もよい適応疾患の一つとして膵管内乳頭腫瘍が挙げられ,主膵管型では浸潤の有無や外科的切離線の決定,分枝型では質的診断や局在診断により手術適応の決定に有用である.主膵管狭窄例の診断に際しては,悪性例では狭窄部近傍において描出される癌部と非癌部の辺縁不整な境界の存在が膵炎との鑑別点となる.また膵島細胞腫の診断に際しては病変の局在診断に有用であり,主膵管と病変の距離も正確に認識可能である.膵管内IDUSはこれら臨床上頻度の高い膵疾患の診断に際し,有用な情報を提供する精密検査法と位置付けられる.
原著
  • 近藤 修二, 細合 浩司, 藤原 聡子, 横山 雅子, 山下 毅, 船津 和夫, 中村 治雄
    2007 年 34 巻 3 号 p. 343-348
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/26
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    左室収縮機能だけでなく拡張機能には性差があるという報告がある.しかし日本人の左室拡張機能についても同様の性差が存在するかどうかについての報告は見当たらない.この研究の目的は左室駆出率正常者で心エコー所見ほぼ正常者の左室拡張機能を含めた男女差について検討することである.左室駆出率65%以上で心エコー所見正常の,60歳以下の男108例,女55例,計163例を対象にした.さらに高血圧や糖尿病の影響を除くため,これらの症例を除いた134例(男85例,女49例)でも結果を解析した.左室駆出率(LVEF),拡張早期波(E),心房収縮期波(A),E/A比,E波の減速時間deceleration time(DcT),Tei index,駆出時間(ET),等容拡張時間(IRT),等容収縮時間(ICT)および左室心筋重量係数(LV mass index)を求めた.残りの134例ではLVEFには男女で有意差は無かった.E波(79±19 vs 69±15 cm/s)は女性が男性に比べ有意(p<0.005)に速かった.しかしA波,E/A比,DcTには有意差は無かった.ET(311±23 vs 292±31 ms)は女性が男性に比べ有意(p<0.005)に長かったが,ICT, IRTに有意差は無かった.そのためか,Tei index(0.38±0.11 vs 0.44±0.12)は女性が男性に比べ有意(p<0.005)に小さかった.LV mass index(102±29 vs 119±25 g/m2)は女性が男性に比べ有意(p<0.005)に小さかった.心機能の評価には性差に注意する必要がある.
症例報告
  • 土田 佳代子, 岡田 昌子, 牧野 隆雄, 内山 なおみ, 嶺田 志保, 玉田 淳, 五十嵐 康己, 福田 洋之, 加藤 法喜, 三神 大世
    2007 年 34 巻 3 号 p. 349-354
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/26
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    症例は29歳女性.肺塞栓のため入院.肥満とインターネットで個人輸入した経口避妊薬の服用が発症の危険因子であった.初日の心エコー図検査で右室圧負荷所見を認め,翌日の心エコー図検査にて右房から左房に繋がる蛇状の可動性ひも状エコーを認めた.第3病日に低酸素血症が増悪し,施行した経食道心エコー図検査では血栓は消失しており,右房拡大ならびに卵円孔開存,右‐左シャントを認めた.入院時,CTにより上下大静脈内に多量の血栓の存在が疑われたため外科的治療は行わず,抗凝固・血栓溶解療法を行った.肺塞栓による肺高血圧が小さな卵円孔開存を介する右‐左シャントをもたらし,右房内に流入した浮遊血栓が卵円孔に捕捉され,その後,肺動脈に新たな塞栓を来たしたと推測された.肺塞栓に卵円孔開存が合併した場合予後不良とされているが,本症例は幸いにも内科的治療が著効し,無事退院することが出来た. 肺塞栓における刻一刻と変化する血栓や血行動態を経胸壁心エコー図で繰り返し評価することは,より迅速な治療法選択や治療の効果判定に有用であると考えられた.
速報
  • 松浦 秀哲, 山田 晶, 高橋 礼子, 杉本 恵子, 石川 隆志, 岩瀬 正嗣, 菱田 仁, 大島 久二
    2007 年 34 巻 3 号 p. 355-358
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/26
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    背景:近年,心エコー図検査における左室拡張能の指標として,パルスドプラ心エコー図法を用いた僧帽弁血流速波形の拡張早期波(E波)と組織ドプラエコー法を用いた拡張早期僧帽弁輪速度(E')の比であるE/E'の有用性が認められており,左室拡張末期圧(LVEDP)や肺動脈楔入圧(PAWP)と相関することが知られている.しかし,E/E'の上昇が軽度(8≤E/E'≤15)の場合,その意義は小さいことが報告されている.また,拡張能に関する指標として,左房容積係数(LAVI)が注目されている.目的:E/E'軽度上昇例に対しLAVIを併せて計測することでPAWP上昇を推定できるか検討した.方法:当院CCUに入院しスワンガンツカテーテルを挿入された冠動脈疾患患者のうち心房細動および高度僧帽弁閉鎖不全症例を除外した連続58例を対象に心エコー図検査を施行した(Philips社製SONOS5500および7500,S3探触子).全症例でE/E'とLAVIの計測を行った.結果:23症例がE/E'軽度上昇に該当した.E/E'軽度上昇の23症例では,E/E'とPAWPとの間に有意の相関を認めなかった.一方,LAVIは全症例でもE/E'軽度上昇例に限定してもPAWPとの間に有意な相関関係が維持された.結論:E/E'軽度上昇例では,LAVIによりPAWPを推定でき,その測定が有用である可能性が示唆された.
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