超音波医学
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42 巻, 2 号
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症例報告
  • 原田 昌彦, 藤井 悠一郎, 煙草 敏, 寶田 雄一, 林 京子, 原 文彦
    2015 年 42 巻 2 号 p. 165-170
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/13
    [早期公開] 公開日: 2015/02/10
    ジャーナル 認証あり
    整形外科手術のための術前検査で,左房内腫瘤が偶然に発見された.抗凝固療法によって完全に消失したため,左房内血栓と診断できた1例を経験したので報告する.症例は74歳,女性.変形性膝関節症手術目的のため当院整形外科を受診し,術前検査で心拡大と心房細動を認め循環器内科へ紹介された.経胸壁心エコー図検査で左房内腫瘤の存在が疑われ,経食道心エコー図検査(transesophageal echocardiography: TEE)を施行した.左房内にはもやもやエコーが充満しており,大動脈から上大静脈に近接した左房前壁側に径24×18 mmの球状腫瘤性病変を認めた.腫瘤に可動性はなく,表面は平滑で,内部に低エコー域を伴っていた.慢性心房細動と左房内もやもやエコーがあるため,腫瘍よりも血栓を疑ったが,付着部位が心房中隔にも達していることから粘液腫など心臓腫瘍の可能性も否定できなかった.ワルファリンは3 mg/日より開始し,治療経過中のプロトロンビン時間の国際標準比は1.6‐2.0を推移した.抗凝固療法開始5ヵ月後のTEEで,血栓が完全に消失したことを確認できた.左房内血栓は左心耳やその付近,左房後壁にできやすいとされている.しかし,左房が拡大し血液がうっ滞する場所であれば,本症例のように左房前壁側にも血栓を生じる可能性がある.腫瘤の鑑別診断に付着部位が重要であり,その評価にTEEは有用である.
  • 年森 明子, 宮田 英樹, 相引 利彦, 奥平 知成, 畔元 信明, 平岡 淳, 二宮 朋之, 前田 智治, 河崎 秀樹, 道堯 浩二郎
    2015 年 42 巻 2 号 p. 171-176
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/13
    [早期公開] 公開日: 2015/01/23
    ジャーナル 認証あり
    症例は77歳,女性.増大傾向を示す胃粘膜下隆起または胃壁外性圧迫病変の精査目的に当院へ紹介された.造影CTでは膵体部に門脈相で最も強い内部均一な造影効果を有する直径25 mm大の類円形の腫瘤を認めた.MRIで同腫瘤は境界明瞭,内部均一でT1WI低信号,T2WI低信号.FDG-PET/CTでは軽度のFDG集積(SUV max 2.8)あり.超音波内視鏡(endoscopic ultrasonography: EUS)では,腫瘤は内部均一,境界明瞭で脾静脈を圧排し,辺縁に低エコー帯と,一部にそれに連続する低エコー性の部位を認め,被膜外浸潤を疑った.画像診断上,確定診断が得られず,EUS-FNA(endoscopic ultrasonography fine needle aspiration)を行い,pancreas neuroendocrine tumor(PNET)と診断して,膵体尾部切除を施行した.摘出標本は径28 × 26 mmで,腫瘍は線維性被膜を有し,一部に被膜外浸潤を伴っており,術前検査時にEUSで観察された一部肥厚した低エコー域と一致した.相当する部位はEUSでのみ描出でき,膵腫瘤診断におけるEUSおよび関連手技の有用性が確認された.
  • 大場 智洋, 長谷川 潤一, 新垣 達也, 仲村 将光, 松岡 隆, 市塚 清健, 関沢 明彦
    2015 年 42 巻 2 号 p. 177-182
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/13
    [早期公開] 公開日: 2015/02/06
    ジャーナル 認証あり
    妊娠28週に卵管角部の子宮破裂を生じた1例を報告する.30歳,0回経妊,子宮手術の既往はない.妊娠26週2日,頻回な子宮収縮と性器出血を認め当科紹介になった.左側腹部に軟な腫瘤を触知した.経腹超音波検査で,腫瘤は,子宮卵管角から突出しており,中には胎盤が折りたたまれたように存在した.胎盤と子宮筋層にecho free spaceはなかった.左卵管角部の切迫子宮破裂を疑った.妊娠27週3日,超音波検査で胎盤辺縁に39×24 mm大,網状のlow echo areaを認め,胎盤辺縁血腫と診断した.妊娠28週1日,子宮収縮が頻回となり,腫瘤に圧痛を認め,超音波検査では胎盤辺縁のlow echo areaは2ヵ所あり68×19 mmと93×36 mm大と拡大していた.胎児心拍数陣痛図では,prolonged decelerationを認めた.子宮破裂,胎盤早期剥離を疑い,緊急帝王切開術を施行した.術中出血量1,065 g,出生児体重1,173 g,Apgar score(1/5分値)8/9点,臍帯動脈血pH 7.231であった.子宮左卵管角は6×7 cmに膨隆しており,子宮筋層は菲薄,断裂していた.卵管角の胎盤付着による子宮破裂と診断した.卵管角部を楔状に切除し,子宮筋層を3層縫合した.既往歴や妊娠の経過から子宮破裂の危険性が低い症例であっても,胎盤位置の異常によっては,子宮破裂に至ることもあり,その危険性を念頭に置くことが重要である.
今月の超音波像
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