超音波医学
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50 巻, 3 号
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特集「Quantitative assessment of liver steatosis using ultrasound」
  • 黒田 英克, 阿部 珠美, 藤原 裕大, 長澤 倫明, 滝川 康裕
    2023 年 50 巻 3 号 p. 161-169
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/12
    [早期公開] 公開日: 2023/04/07
    ジャーナル 認証あり

    本研究は,非アルコール性脂肪肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)の肝脂肪化診断におけるultrasound-guided attenuation parameter(UGAP)の診断精度を評価し,attenuation imaging(ATI)およびcontrolled attenuation parameter(CAP)と直接比較することを目的に実施された.対象は,2019年10月から2021年4月に当院でUGAP,ATI,CAPおよび肝生検検査を同日に施行されたNAFLD症例105名である.UGAPによって推定された超音波減衰係数(attenuation coefficient:AC)の肝脂肪化診断能は,肝病理組織学的所見をリファレンスにROC解析を用いて評価され,ATI,CAPによって測定されたACならびにCAP値と比較された.UGAPの測定成功率は100%であった.複数回測定によるIQR/medの中央値は4.0%で,ATIおよびCAPよりも有意に低値を示した(P < 0.0001).肝脂肪化grade別のUGAPで測定したACの中央値は,S0 (n=20) / S1 (51) / S2 (28) / S3(26):0.590 / 0.670 / 0.750 / 0.845 dB/cm/MHzと肝脂肪化に伴い高値を示した(P < 0.0001).肝脂肪化grade S1以上,S2以上およびS3を識別するためのUGAPのAUROCは 0.890,0.906,0.912であり,肝脂肪化grade S3診断におけるUGAPのAUROCはCAPより高値を示した(P < 0.05).UGAPとATI間の相関係数は0.803で強い相関関係が示された(P < 0.0001).UGAPは,高い測定成功率と再現性が特徴で,NAFLD患者に対する高精度な肝脂肪化診断能を有する可能性が示唆された.

  • 玉城 信治, 黒崎 雅之, 安井 豊, 土谷 薫, 泉 並木
    2023 年 50 巻 3 号 p. 171-177
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/12
    [早期公開] 公開日: 2023/02/20
    ジャーナル 認証あり

    肝脂肪は,慢性肝疾患の主な臨床的特徴の1つであり,脂肪肝患者数は,世界中で肥満およびメタボリックシンドロームの罹患率の上昇に伴って増加している.近年の技術的進歩によって,肝脂肪量の非侵襲な定量的評価が可能になった.減衰係数(attenuation coefficient:ATT)測定は,臨床診療で使用される非侵襲的な定量的肝脂肪測定である.ATT値は,組織学的脂肪化グレードと有意な関連がある.組織学的脂肪化グレードに対するATTの診断精度は,controlled attenuation parameter(CAP)と同等であり,ATTはBモード画像上で,関心領域の正確に設定し測定できるため,CAPと比較して測定失敗率が低い.さらに,ATT測定は,観察者間の再現性が高い.ATT測定およびその他の肝脂肪定量化に用いる超音波ベースのモダリティは実施が容易で,経済的であるため,point-of-careおよびスクリーニングに適している.近年の研究では,定量的な脂肪肝量とその経時変化は,非アルコール性脂肪肝疾患の進行と関連している可能性を示唆しているが,ATTと病気の進行の関連は十分に評価が行われていない.したがって,慢性肝疾患でのATT測定の臨床的有意性を強化するためには,さらなる研究が必要である.

  • 吉澤 恵里子, 山田 哲
    2023 年 50 巻 3 号 p. 179-188
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/12
    [早期公開] 公開日: 2023/03/10
    ジャーナル 認証あり

    近年,非アルコール性脂肪肝疾患の早期診断への高い関心を反映し,非侵襲的で信頼できる脂肪定量化法の開発が必要とされている.磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging:MRI),特に多点ディクソン法などの定量的ケミカルシフトイメージングで取得したMRIによるプロトン密度脂肪分画(MRI-derived proton density fat fraction:MRI-PDFF)による脂肪定量化は,磁気共鳴スペクトロスコピー(magnetic resonance spectroscopy:MRS)を使用した脂肪定量化および組織学的評価と高い相関がある.近年,MRI-PDFFは,一回の息止めで肝臓全体を評価できるため,MRSに代わる画像ベースの脂肪定量化の参照基準としてこれまで以上に広く使用されている.さらに,MR画像の近年の進歩により,非アルコール性脂肪性肝疾患の診断に,脂肪,鉄および線維化などの特有の肝組織性状変化を定量化するマルチパラメトリックMRIが利用されるようになった.マルチパラメトリックMRIの長所の1つは,臓器全体を画像化することによるサンプリングエラーの排除と,肝固有の組織性状変化の定量化が同時に実現できることである.したがって,マルチパラメトリックMRIは,肝脂肪沈着の定量的評価の枠を超えて非侵襲的また包括的な肝評価において魅力的な選択肢となっている.本総説では,肝脂肪沈着の定量的評価におけるMRI-PDFFの技術的説明と臨床的解釈に主に焦点を当てて概説する.さらに,MRエラストグラフィや,R2*およびT1マッピングなどを組み合わせたマルチパラメトリックMRIによる肝MRイメージングの今後の展望について言及する.

  • 山田 哲, 吉澤 恵里子
    2023 年 50 巻 3 号 p. 189-196
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/12
    [早期公開] 公開日: 2023/03/10
    ジャーナル 認証あり

    近年,非アルコール性脂肪肝疾患の早期診断への高い関心を反映し,非侵襲的で信頼できる脂肪定量化法の開発が必要とされている.デュアルエナジーコンピューター断層撮影(Dual-energy Computed Tomography:DE-CT)は,2つの異なるエネルギー(管電圧)で生成されたX線を使用したDE-CTスキャンから得られた物質固有のX線吸収特性に基づき,物質弁別(material decomposition, MD)法を使用して撮影対象物の組成を推定する,定量的画像診断法である.本総説では,最初にDE-CTの基本原理および技術的側面を説明する.次に,DE-CTの現在の診断能力と,DE-CTを使用した肝脂肪沈着の定量的評価に影響を与える要因を,超音波およびMRIを含む複数のモダリティと比較して紹介する.簡潔に要点を示すと,DE-CTは,最新の超音波を用いた肝脂肪測定法と同等の診断能を持っている可能性がある.しかし,現在のDE-CTによる物質弁別法は,従来の単一のエネルギーを用いたコンピューター断層撮影(Single-energy Computed Tomography:SE-CT)で得られるCT値以上の脂肪定量化精度改善が得られていないため,単純な肝脂肪沈着の定量的評価においては十分な付加価値を提供できていないと考えられる.DE-CTを使用した肝脂肪沈着の定量的評価に対して最も大きな影響を与える因子は,肝臓の鉄沈着であると考えられる.現在,肝臓内の鉄の影響の補正に特化した多物質弁別アルゴリズム(multi-material decomposition, MMD)法の開発も進められている.現在の物質弁別アルゴリズムは,造影DE-CTを使用した肝脂肪沈着の定量的評価など,特定の状況では依然として付加価値を提供できると考えられる.しかしながら,DE-CTを使用した肝脂肪変性の定量的評価において肝線維化が与える影響に関しては未だ不明な点が多い.

  • 近藤 礼一郎, 草野 弘宣, 三原 勇太郎, 鹿毛 政義, 秋葉 純, 矢野 博久
    2023 年 50 巻 3 号 p. 197-203
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/12
    [早期公開] 公開日: 2023/02/16
    ジャーナル 認証あり

    近年,肝臓の脂肪含有量を定量的に評価できる新しい超音波(ultrasound:US)法が開発されているが,BモードUSは依然として健診の二次検査を含めた臨床で脂肪肝を検出する際に用いられる主要な方法である.BモードUSによる脂肪肝は主に定性的な所見で評価されるため,検査者はBモードUSでの脂肪肝の所見は偽陽性または偽陰性を示すことがあることを認識した上で評価を行う必要がある.例えば,肝組織への脂肪沈着の程度や肝細胞に沈着した脂肪滴の大きさは,BモードUSを使用した脂肪肝の所見の感度および特異度に影響を与える.本稿では,脂肪肝の病理所見について,BモードUSで脂肪肝の所見が偽陽性や偽陰性を呈する肝臓の組織所見を含めて概説する.

症例報告
  • 石黒 はるか, 丸上(高橋) 亜希, 丸上 永晃, 三宅 牧人, 藤本 清秀, 藤井 智美, 田中 利洋, 平井 都始子
    2023 年 50 巻 3 号 p. 205-210
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/12
    [早期公開] 公開日: 2023/04/19
    ジャーナル 認証あり

    精巣上体乳頭状嚢胞腺腫(papillary cystadenoma of the epididymis:PCE)は精巣上体に発生する稀な良性腫瘍である.常染色体顕性遺伝であるフォンヒッペルリンドウ病(von Hippel-Lindau disease:VHLD)に関連して発生するほか,孤発性にも発生する.悪性化は稀で局所切除が可能,あるいは慎重な経過観察も選択枝となり得る腫瘍性病変であるが,画像のまとまった報告はなくVHLDの既往がない場合には術前診断は難しく高位精巣摘除術が選択される場合も多い.今回我々は孤発性と考えられたPCEの1例を経験したので超音波画像を中心に報告する.症例は70代男性.右鼠径ヘルニアを疑われ撮像された造影CTで左陰嚢内に多血性充実性腫瘤を偶然発見された.超音波検査では腫瘤は左精巣の頭側に隣接して存在し,Bモードで境界明瞭,内部は精巣と等エコーを示し,石灰化と思われる音響陰影を伴う高エコー域を有していた.カラードプラでは腫瘤内の大部分に豊富なカラー表示がみられた.PCEは鑑別の一つに考えられたが傍精巣領域原発の肉腫を否定できないと考え高位精巣摘出術が施行された.病理組織学的に淡明な細胞質とクロマチンが増加した類円形,あるいはやや歪な形の核を有する細胞が乳頭状に増殖する腫瘍で明細胞型の腎細胞癌の転移とPCEの可能性が検討されたが,腎細胞癌の既往がなかったことからPCEとの最終診断に至った.

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