目的:心臓・大血管との解剖学的位置関係に注目し,胎児気管・気管支の描出および観察することを目的とした.
対象・方法:対象は妊娠26週から41週までの正常胎児50例とした.胎児頸部横断面にて両頸動脈の間にある気管を同定し,それを尾側にたどる事で気管・気管支を確認した.その後,心臓・大血管と気管・気管支との位置関係を観察し,容易に描出出来る断面を明らかにした.さらに気管分岐部の内径を計測し週数別に検討した.
成績:気道は喉頭以下の部位で描出可能であり,three-vessel tracheal viewで横行大動脈の中央右背側に気管の短軸像が認められた.左気管支横断面は大動脈アーチ内側で右肺動脈のやや頭側後方に確認出来た.肺動脈・動脈管アーチ断面では,右肺動脈と動脈管に挟まれた位置に左気管支を認めた.three-vessel viewでは上行大動脈の右後方に右気管支の断面が描出された.その他にも気管支が描出されやすい断面が幾つか確認された.一方,奇静脈は右気管支に騎乗することより,右気管支の確認に役立った.気管,左・右気管支の内径は,妊娠26‐27週の平均でそれぞれ2.9mm,2.0mm,1.9mmであり,妊娠40‐41週では,6.0mm,4.7mm,4.6mmであった.
結論:胎児心エコー検査の中で気管・気管支が比較的容易に観察可能であった.よって胎児気道の出生前スクリーニングも可能であると思われた.
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