超音波医学
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36 巻, 2 号
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総説
  • 一二三 倫郎, 肱岡 範, 浦田 孝広, 山根 隆明, 今村 治男
    2009 年36 巻2 号 p. 147-163
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/12
    ジャーナル 認証あり
    膵嚢胞性病変の臨床病理学的特徴と超音波診断を中心とした画像診断の要点について概説する.臨床と病理の両面からの研究の進展に伴い膵嚢胞性病変に関する疾患概念も統一化されてきており必ずしも理解困難な病態ではなくなってきた.腫瘍性嚢胞である漿液性嚢胞腫瘍,粘液性嚢胞腫瘍,膵管内乳頭粘液性腫瘍などは発生部位,性や年齢,肉眼形態や組織像にそれぞれ特徴のある腫瘍であり,その臨床病理学的特徴を理解して画像診断に役立てる必要がある.二次性嚢胞の中では膵管癌の発見契機として重要な意味を有する貯留嚢胞や,本来充実性腫瘍である内分泌腫瘍やsolid-pseudopapillary tumorなどに見られる嚢胞状壊死などを理解しておく必要がある.先天性嚢胞としては遭遇する機会は少ないがvon Hippel-Lindau disease,polycystic disease,リンパ上皮性嚢胞,類表皮嚢胞などの病理学的知識が画像診断をしていく上では必要である.画像診断は臨床病理学的特徴の理解の上でなされるべきものであり,切除標本の肉眼所見と画像所見の対比を繰り返していくことにより診断の精度向上が期待出来るし,正確な診断が可能になれば不必要な手術を回避出来ることにも繋がる.
  • 中谷 敏
    2009 年36 巻2 号 p. 165-173
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/12
    ジャーナル 認証あり
    全体的な心機能を見る目的は,いわゆる心臓全体の活きのよさを把握することであり,(1)疾患の重症度を知りたい時,(2)手術適応を決めたい時,(3)心疾患の予後を知りたい時,(4)治療に対する反応を見たい時などが考えられる.一方,局所機能については,(1)疾患罹患部位の活きの良さを見たい時,(2)虚血心に対するバイパス術やカテーテルインターベンション前後,(3)拡張型心筋症に対するβ遮断薬投与前後など治療効果を見たい時などであろう.いずれの評価にも沢山の指標があるが,勿論その使い分けに決まったルールがあるわけではなく,目的に応じて選択すればよい.日常臨床では,疾患の重症度を知り,その予後を推定するために全体的機能を評価し,虚血を診断する際に局所機能を見ることが多いと思われる.一般に,局所機能を評価する方が全体機能を評価するよりも鋭敏に疾患を捉えることが出来るはずである.したがって,疾患重症度をうまく反映する局所とその指標を選べば,全体機能に異常が出るのに先駆けて出現する局所機能異常を捉えることも出来るであろう.最近,手軽に使えるようになった心筋ストレインにはそのような意義があるのではないかと考えている.
  • 富松 宏文
    2009 年36 巻2 号 p. 175-183
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/12
    ジャーナル 認証あり
    先天性心疾患の診療において心エコー検査は欠くことの出来ないものである.さらにその非侵襲性のため誰でも手軽にこれを使って検査出来る.しかし一方で,"エコー病"とも言える様々な誤診もあり,それが診療に悪い影響を及ぼすこともある.ピットホールが発生する原因には,人為的ミス,装置の不適切な調整,不適切な断面図,疾患の特徴や血行動態の把握が不十分,などがある.したがって,これらについて十分な理解と知識があればピットホールには陥ることはない.これらピットホールを来す可能性のある原因について概説するとともに,実例を提示した.
  • 長束 一行
    2009 年36 巻2 号 p. 185-190
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/12
    ジャーナル 認証あり
    頸動脈は体表近くにあり粥状硬化の好発部位であることから,脳梗塞症例のみならず,粥状硬化のリスクを持つ症例の動脈硬化の進展を見る上で便利な検査である.粥状硬化により頸動脈に現れる変化で最も初期のものは,内中膜の肥厚であり,内中膜厚(IMT)として評価される.さらに粥状硬化が進展すると,プラークと呼ばれる局所的に盛り上がった病変となり,このプラークが大きくなると血管の狭窄を来し,血流にも影響を与えるようになる.IMTは優れた指標であるが,7‐10MHzの超音波の分解能は0.1mm程度でしかないことを理解して解釈する必要がある.プラークは1.1 mm以上の厚みのあるものをプラークと定義しているが,1.1mm程度の部分が必ずしも病理組織上の粥腫と一致している訳ではないことも知っておくべきである.大きなプラークは輝度や表面性状などの評価を行い,可動性の有無にも注意を払う.一方,狭窄率の計測には種々の方法があり,計測法により大きく数値が異なること,狭窄直後の収縮期最高血流速度から狭窄率を推定する方法が欧米では主流であることも知っておく必要がある.
原著
  • 青木 昭和, 原田 崇, 宮崎 康二
    2009 年36 巻2 号 p. 191-199
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/12
    ジャーナル 認証あり
    目的:心臓・大血管との解剖学的位置関係に注目し,胎児気管・気管支の描出および観察することを目的とした.対象・方法:対象は妊娠26週から41週までの正常胎児50例とした.胎児頸部横断面にて両頸動脈の間にある気管を同定し,それを尾側にたどる事で気管・気管支を確認した.その後,心臓・大血管と気管・気管支との位置関係を観察し,容易に描出出来る断面を明らかにした.さらに気管分岐部の内径を計測し週数別に検討した.成績:気道は喉頭以下の部位で描出可能であり,three-vessel tracheal viewで横行大動脈の中央右背側に気管の短軸像が認められた.左気管支横断面は大動脈アーチ内側で右肺動脈のやや頭側後方に確認出来た.肺動脈・動脈管アーチ断面では,右肺動脈と動脈管に挟まれた位置に左気管支を認めた.three-vessel viewでは上行大動脈の右後方に右気管支の断面が描出された.その他にも気管支が描出されやすい断面が幾つか確認された.一方,奇静脈は右気管支に騎乗することより,右気管支の確認に役立った.気管,左・右気管支の内径は,妊娠26‐27週の平均でそれぞれ2.9mm,2.0mm,1.9mmであり,妊娠40‐41週では,6.0mm,4.7mm,4.6mmであった.結論:胎児心エコー検査の中で気管・気管支が比較的容易に観察可能であった.よって胎児気道の出生前スクリーニングも可能であると思われた.
  • 小野田 結, 角田 博子, 菊池 真理, 野崎 太希, 河内 伸江, 大出 幸子, 齋田 幸久
    2009 年36 巻2 号 p. 201-204
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/12
    ジャーナル 認証あり
    目的:エラストグラフィは近年急速に普及しつつある乳腺の"歪み"を表す新しいmodalityである.乳腺の張りや痛みの自覚が月経周期により変化することはすでに知られている.この月経周期により乳腺の歪みに変化があるかどうかを調べた報告は無い.今回,我々はエラストグラフィを施行する上で,月経周期を考慮する必要があるかどうかを知るために,閉経前女性ボランティアを対象として月経周期による乳腺実質の"歪み"の変化の有無を検討した.対象と方法:対象は閉経前健常ボランティア20人40乳房.年齢は24‐46歳.方法は各被験者の右乳房10時方向,左乳房2時方向で各5回Strain Ratio機能により皮下脂肪組織と乳腺実質の歪比を測定する.測定時期は月経開始の前後,月経終了の時期,排卵前後期の3時期とし,統計学的解析を行った.結果と考察:3時期の五つの歪比の平均値と中央値を,Friedman検定を用いて解析したところ有意差は認められなかった(平均値:p=0.36,中央値:p=0.33).対応サンプルのそれぞれ2点を,Paired t-testを用いて解析したところ,歪比の平均値・中央値とも有意差は認められなかった.結語:エラストグラフィは乳腺病変の歪みを評価するのに,月経周期に影響されることのない手段である.
症例報告
  • 植東 ゆみ, 松下 陽子, 岡山 幸成, 西村 理, 松末 智, 小橋 陽一郎
    2009 年36 巻2 号 p. 205-209
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/12
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    脾静脈に発生した平滑筋腫の1例を経験したので腹部超音波検査(以下,US)像を中心に報告する.症例は61歳,男性.検診のUSで膵腫瘍を指摘され,精査を指示されて当院を紹介受診となった.USで膵体部相当部に40mm大の境界明瞭,内部に高エコー域を混ずる低エコー腫瘤を認めた.膵管の拡張は無く,脾静脈は圧排され,周囲に側副血行路の発達を認めた.開腹所見で,腫瘍は膵からは容易に剥離出来たが,脾静脈と融合しており,脾静脈合併腫瘍切除術が施行され,病理組織学的に脾静脈原発平滑筋腫と診断された.RetrospectiveにUS像を見直すと,脾静脈にbeak signが見られ,腫瘍の発生部位を特定する着眼点と考えられた.
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