超音波医学
Online ISSN : 1881-9311
Print ISSN : 1346-1176
ISSN-L : 1346-1176
50 巻, 4 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
特集「Update on Reference Values for Echocardiography」
  • 杉本 匡史, 土肥 薫
    2023 年 50 巻 4 号 p. 215-217
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/12
    [早期公開] 公開日: 2023/05/25
    ジャーナル 認証あり

    一般に,診断用検査項目の基準値は,健常者において測定されたそれら検査項目の95%信頼区間値に基づいて定められる.心臓の大きさは性別によって異なるため,心エコー検査項目の基準値にも性別による差異がある.そこで,年齢,性別,体格による違いを補正し,心エコー検査項目の基準値のばらつきを小さくする試みが世界的に行われている.この短い総説では,心エコー検査項目の基準値に関する現状と問題点を述べ,これらの問題点を解決することを目的とした研究結果について考察する.

  • 三好 達也, 田中 秀和
    2023 年 50 巻 4 号 p. 219-232
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/12
    [早期公開] 公開日: 2023/06/12
    ジャーナル 認証あり

    心エコー図検査は,心臓の大きさと機能を評価するために世界中で使用されている.どのような値が異常であるかを決めるためには,心エコー図検査における正常基準値を規定することが不可欠である.現在の心腔定量評価ガイドラインでは,心腔サイズの正常基準値が明記されており,性別や体格を考慮することが推奨されている.しかし,これらの正常基準値は,主に欧米の白人健常者を被検者とした計測方法が統一されていないデータベースを用いて設定されたものである.また,欧米以外の国から報告された複数の研究では,心臓のサイズは世界的に異なることが示唆されている.これらの制約を乗り越えるために,近年,心腔サイズにおける類似性と差異を検討し,世界的な多様性を考慮しながら正常基準値を設定することを目的としたNormal Reference Ranges for Echocardiography study やWorld Alliance of Societies of Echocardiography Normal Values studyという研究が実施された.これらの研究の結果,心腔サイズ正常基準値の標準化が重要であることが示された.本総説では,心エコー図検査で求めた心腔サイズ正常値の現状についてまとめた.

  • 楠瀬 賢也, Robert Zheng, 山田 博胤, 佐田 政隆
    2023 年 50 巻 4 号 p. 233-240
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/12
    [早期公開] 公開日: 2023/07/04
    ジャーナル 認証あり

    循環器画像診断は日々進歩しているが,左室駆出率(left ventricular ejection fraction:LVEF)は現在でも日常の診療における収縮機能の指標として最も重要である.LVEFは複数の分野(心臓弁膜症,心筋梗塞,がん治療に伴う心機能障害など)におけるガイドラインで中心的な位置を占めており,心不全患者における臨床的な方針決定にも不可欠である.しかし,LVEFの注目すべき限界として,不明瞭な音響窓や測定法のばらつきなどによる検査者間の再現性の低さが挙げられる.この問題を解決するために,検査者間で基準画像を共有することでLVEFの計測を標準化する方法や,人の手によらない計測を行うための人工知能が開発されてきた.本総説では,基準画像を用いたLVEFの標準化と,人工知能を用いたLVEF測定の自動化に焦点を当てる.

  • 根岸 朋子, 根岸 一明
    2023 年 50 巻 4 号 p. 241-249
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/12
    [早期公開] 公開日: 2023/06/27
    ジャーナル 認証あり

    グローバル長軸方向ストレイン(global longitudinal strain:GLS)は,左室収縮機能の頑健で感度の高いマーカーであり,心室の縦方向の短縮を反映する.心駆出率などの従来のマーカーと比較して,不顕性で早期の心機能変化を特定する上で優れていることを示すエビデンスが増えてきている.そのため,臨床の場においてGLSを評価する必要性は高まっているが,現在の文献においてGLSを正確かつ適切に測定する方法に関する情報は限られている.本総説では,画像の取得,後処理,標準化により臨床への応用を促進するために必要なトレーニング/経験など,GLS測定の重要な側面を要約する.

  • 中西 弘毅, 大門 雅夫
    2023 年 50 巻 4 号 p. 251-259
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/12
    [早期公開] 公開日: 2023/05/15
    ジャーナル 認証あり

    加齢は心血管疾患発症の重要な危険因子であることが広く認識されている.加齢に伴う心臓の変化は,心血管疾患の原因となる基質を変化させることにより,高齢者における心血管疾患の発症に影響を与える.しかし,加齢に伴う心臓の変化が加齢そのものに起因するのか,それとも他の後天的な心血管危険因子の獲得による二次的なものに起因するのかは,未だはっきりしていない.加齢と心臓リモデリングの関係を理解することは,心血管系の老化への洞察を得るとともに,高齢者の心血管疾患に対する予防戦略につながる可能性がある.スペックルトラッキング心エコー図法は,従来の心エコーでは検出できなかった心筋の微細な変化を客観的かつ定量的に評価することができ,再現性に優れている.左室収縮機能不全の鋭敏な指標である左室長軸方向ストレインは,心血管疾患および死亡の独立した危険因子であることが明らかになった.最近では,左室のみならず右室や心房の機能を評価するためにも使用されており,低下した右室と心房のストレインは,様々な臨床場面で心血管イベントを予測する.本稿は,加齢と心筋ストレインの変化の関連性を総括し,今後の展望を述べる.

総説
  • 小川 眞広, 松本 直樹, 渡邊 幸信
    2023 年 50 巻 4 号 p. 261-272
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/12
    [早期公開] 公開日: 2023/06/26
    ジャーナル 認証あり

    日本超音波学会ホームページで2019年 5月に公示された脂肪肝診断基準についての解説とメタボ症例に対する超音波検査のコツを解説する.脂肪肝の定義として各学会のコンセンサスにより肝細胞に占める脂肪滴の割合が「30%以上」から「5%以上」に変更された.本稿では,この変更された脂肪肝に対する超音波診断基準のBモードの診断ポイントについて述べる.さらに,いわゆる“メタボ”症例(腹部の膨満が強く,内臓脂肪や皮下脂肪が厚い被検者)に対して役立つ撮影のコツについても触れる.メタボリックシンドロームでの超音波検査のポイントとしては,(1)先入観の排除(外見に騙されない),(2)適切な圧迫と呼吸法の調節,(3)肋間走査の有効活用,(4)装置の条件設定を変更,(5)体位変換を有効に活用,の5項目が挙げられ,これらについて解説を加える.本稿が会員の皆様にとって日常診療の参考になれば幸いである.

  • 中瀬 順介
    2023 年 50 巻 4 号 p. 273-277
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/12
    [早期公開] 公開日: 2023/05/23
    ジャーナル 認証あり

    変形性膝関節症による膝関節痛に対する注射療法は,膝関節内に行うことがこれまでの常識であった.しかし,運動器領域での超音波診療の普及に伴い,これまでの画像診断ツールでは見えなかった病態が見え,出来なかったインターベンションが出来るようになり,常識が変化しつつある.膝関節痛に対する運動器超音波診療のコツは超音波解剖を理解することであり,層状構造を解剖学的に把握することが重要である.変形性膝関節症による膝内側部痛では圧痛点を正確に把握し,同部位に正確に超音波ガイド下で注射を行うことで病態を把握し,新しい保存療法につながる.本稿では変形性膝関節症の診断と診かた,内側部痛に対する超音波ガイド下注射について解説する.

  • 齋藤 大輔
    2023 年 50 巻 4 号 p. 279-289
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/12
    [早期公開] 公開日: 2023/06/23
    ジャーナル 認証あり

    体表や頸部の腫瘤を主訴に外来を受診する患者は多く,その診断において,非侵襲的でリアルタイムに情報を得られる超音波検査が果たす役割は大きい.しかしながら,頸部は血管・神経・筋肉・腺組織など様々な組織が複雑に存在するため,正常解剖を理解したうえで超音波検査を行うことが重要となる.解剖を理解するうえでも,頸部全体を系統的に観察するスクリーニング検査を習熟する必要がある.甲状腺,頸動脈・静脈,顎下腺,オトガイ部,耳下腺,外側頸部と基本画像を数ヵ所決め,その部位を観察し記録しておくことが推奨される.頸部を慎重に観察すると,リンパ節が辺縁明瞭の扁平楕円形低エコー腫瘤として多数描出される.正常リンパ節では,内部にfatty hilumと呼ばれる小さな高エコー域を認める.カラードプラでは,fatty hilumに沿った血流を認める.頭頸部癌の転移リンパ節ではこの正常構造が破壊され腫大するため,超音波にて正常との鑑別が可能である.頸部に出現する他の腫瘍としては,甲状腺・唾液腺腫瘍や神経原性腫瘍,脂肪腫,嚢胞性腫瘤,血管腫などがある.それぞれに特徴的な超音波像があるため,形状や発症部位,内部血流などを詳しく観察して診断する必要がある.体表・頸部では視診・触診も可能なのでこれも診断の一助となる.

症例報告
  • FUKUDA Toma, YASUDA Shun, IMAIZUMI Karin, ISOGAMI Hirotaka, MURATA Tsu ...
    2023 年 50 巻 4 号 p. 291-294
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/12
    [早期公開] 公開日: 2023/04/19
    ジャーナル 認証あり

    Pfeiffer syndrome-which is characterized by craniosynostosis, mid-face hypoplasia, and broad deviated thumbs-is classified into three clinical subtypes based on the severity of the phenotype. Pfeiffer syndrome type 2 is the most severe form, usually leading to death during early infancy. Therefore, an accurate diagnosis of Pfeiffer syndrome and appropriate counseling are critical. However, diagnosing Pfeiffer syndrome prenatally using ultrasonography alone is difficult because the differential diagnosis is complicated. Here, we report a case of Pfeiffer syndrome type 2 diagnosed in the second trimester using three-dimensional computed tomography complemented with ultrasonography. This report discusses the usefulness of computed tomography for the prenatal diagnosis of Pfeiffer syndrome.

  • 白谷 理恵, 坂東 裕子, 岡崎 舞, 澤 文, 井口 研子, 近藤 譲, 原 尚人
    2023 年 50 巻 4 号 p. 295-300
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/12
    [早期公開] 公開日: 2023/06/22
    ジャーナル 認証あり

    Cowden症候群では,乳房に乳管過形成や乳頭腫,腺症や線維腺腫などの良性疾患に加え,悪性腫瘍も生じやすく,鑑別が難しい場合がある.症例は35歳女性.子宮内膜癌や甲状腺癌の既往がある.19年以上前より両側乳房に多発腫瘤を指摘されていた.右乳房に新規の腫瘤を自覚し精査を行った.乳房超音波では両側乳房に多発かつ多彩な乳腺腫瘤や乳腺症様の所見を認めた.患者が自覚した嚢胞内腫瘤に対する吸引式組織生検により非浸潤性乳管癌が疑われた.造影MRIでは対側にも悪性を疑う病変を指摘され,精査の結果,同時性両側乳癌の診断で両側乳房全切除術,両側センチネルリンパ節生検,両側腋窩リンパ節郭清術を施行後,放射線照射,抗癌剤治療が行われ,現在ホルモン治療を継続中である.マルチ遺伝子パネル検査ではPTEN遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントを認めた.

今月の超音波像
feedback
Top