静脈経腸栄養
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23 巻, 4 号
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特集:がん患者の栄養管理
  • 宇佐美 眞, 濱田 康弘, 戸田 明代
    2008 年 23 巻 4 号 p. 601-605
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    ESPEN(ヨーロッパ臨床栄養代謝学会)では、がん患者の栄養療法に関するガイドラインを作成している。これは、最近30年間に報告されたエビデンスとコンセンサスに基づき、20ヶ国の88人の臨床栄養学のエキスパートからなる13の疾患別ワーキンググループが文献検索結果のエビデンスを吟味してまとめ、コンセンサスカンファレンスによって確認されたものである。また、医師向けの臨床栄養と代謝のセミナーLLLプログラムによるe-learningがあり、それらを概括する。
  • 赤水 尚史
    2008 年 23 巻 4 号 p. 607-611
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    末期がん患者の多くは、食欲不振・体重減少・全身衰弱・倦怠感などを呈し、悪液質(カヘキシア)と呼ばれる状態に陥る。がん悪液質は、生命予後やquality of lifeに多大な影響を与える点で重要である。悪液質の特徴は、脂肪組織のみならず骨格筋の多大な喪失を呈することである。このような病態をもたらす要因は、単なる食欲低下とエネルギー消費の増大ではなく、その上流にサイトカインネットワークや腫瘍特異的物質の産生が存在すると考えられている。また、患者の年齢や活動度などによってその病態が修飾されることが最近指摘されている。がん悪液質に関連するサイトカインや腫瘍由来物質の同定とそれらの筋肉や脂肪などに対する作用が分子レベルで精力的に検討されているが、このような研究の進展が新たな治療標的の発見や治療法の開発に結びつくと期待されている。
  • 平井 栄一, 城谷 典保
    2008 年 23 巻 4 号 p. 613-616
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    医療全体の中での“倫理”について、また終末期医療における倫理的検討の重要性について、臨床現場での倫理的問題を整理し結論を出すプロセス、そして基本姿勢について述べた。また日本緩和医療学会の発行する“終末期がん患者に対する輸液治療のガイドライン”のうち倫理についての状況ごとの推奨について記載した。
  • 池田 健一郎, 木村 祐輔, 岩谷 岳, 野田 芳範, 伊藤 直子, 木村 聡元, 高橋 正統, 肥田 圭介, 若林 剛
    2008 年 23 巻 4 号 p. 617-621
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    Oral nutritional supplements (ONS) は付加的経腸栄養剤の経口投与のことであり、周術期、高齢者、急性期疾患などで、合併症発生率の軽減や活動性の向上などの有用性が報告されている。また、在宅患者でも悪性腫瘍をはじめ様々な病態において有用性が報告されており、主に低栄養患者に有用である。しかし、栄養剤の投与量や投与期間などは今後の更なる検討を要する。今回、我々は食道がん術後で外来通院中の高度体重減少患者20名に対し、1日250mLの経腸栄養剤によるONSを試みた。その結果、良好な飲用コンプライアンスと活動性増加などのQOLの向上を認め、体重増加も11名で認められた。ONSは患者本人の自発的な飲用が必要であり、栄養指導を含めた今後のNST活動を通じて展開していくのが理想であると思われる。
  • 池永 昌之
    2008 年 23 巻 4 号 p. 623-628
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    がん悪液症候群に伴う食欲不振・倦怠感緩和は、終末期がん患者に出現する頻度が非常に高く、その症状マネジメントは緩和ケアにおける重要な課題とみなされている。コルチコステロイドはこのような症状の緩和に対して、広く使用されている。これまでの報告においては、信頼性、妥当性が証明された倦怠感の評価ツールを利用した検討はほとんどなく、多くのものがQOLの評価ツールの一部や他の身体症状を評価している。また、観察期間は比較的短いものが多く、患者の全身状態や生命予後を考慮したうえでの評価も乏しく、副作用に関する検討も少ない。今後の課題としては、信頼性、妥当性の証明された評価ツールを使用したコルチコステロイドの評価が必要であろう。また、生命予後や全身状態を考慮した効果判定、副作用の経時的な評価も重要な検討課題になるであろう。そして、その上での臨床的に利用可能なコルチコステロイドの投与指針(ガイドライン)を作成し、それを再度、注意深く評価していく必要があると考えられる。
  • 済陽 高穂, 済陽 輝久, 鈴木 貴勝, 立石 隆洋, 野澤 亜希子, 篠塚 規, 宇野 賀津子
    2008 年 23 巻 4 号 p. 629-635
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    激増する進行再発がん治療については、外科的治療には限界があり、化学療法や放射線照射が適応されることが多い。われわれは切除後広範再発や当初より切除不能のいわゆる『晩期がん』症例に対し過去10年余、栄養・代謝改善の観点から食材の改変による食事療法を指導してきたが、今回その中で主として化学療法や放射線照射例を中心に、副作用軽減や個体免疫能向上を目的とした手法を判定した。晩期がんでは病巣や局所に留まる例は少なく、全身病としてのがん疾患に対する取り組みが肝要である。投与薬剤量や照射放射線量の検討、リンパ球減少で表現される免疫能低下への賦活食材の選択あるいはミネラルや投与総カロリーをも勘案し、病態改善への糸口を模索中である。
    経験した晩期がん110例での生存率は69.1%、奏効率は64.5%であり、従来の治療法に比較し格段の向上をみている。今後、栄養・代謝に立脚した治療法の導入ががん治療成績に大いに好転されるものと期待している。
総説
  • 東口 高志
    2008 年 23 巻 4 号 p. 637-641
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    これまで各施設あるいは個々の医師が明確な指針や方向性もないまま実施してきた栄養管理が、NSTの普及によって大きく変化を遂げ、適切な栄養管理サービスの提供が多くの施設で可能となった。わが国の医療におけるNSTが担うべき将来の課題として、(1)高齢者医療の基盤の確立、(2)侵襲に対する修復機転の促進、(3)チーム医療の充実、(4)患者中心の医療(全人的医療)の実践、(5)高次的地域医療連携の構築などがあげられる。しかし、NSTは普及し1200以上の施設に設立され、第三者機関によるNST活動の質の保証が行われても、わが国の医療は未だ縦割り構造を完全に離脱したわけではなく、職種間や診療科間の壁がチーム活動を妨げ、その育成を害することもある。この大きな壁を乗り越えるためには、常にNST活動を続け、医療行為としてのチームの提言を診療録に記録し、すべての患者に最適な栄養管理を提供する体制づくりを進めるなど種々の努力が必要である。
症例報告
  • 荒金 英樹, 西村 敏, 兼子 裕人, 仁丹 裕子, 浦底 美由希, 増田 哲也, 北岡 陸男, 廣瀬 遼子
    2008 年 23 巻 4 号 p. 643-647
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は79歳女性。原因不明の意識障害で他院入院中、褥創の悪化、意識レベルの低下から当院転院となる。BMIは 14.6kg/m2、栄養補給は胃切除後から腸瘻より施行されていた。入院時血清銅値は正常であったが低亜鉛、高炭酸ガス血症を認め、プルモケア®にポラプレジンクを併用した栄養療法を開始、8週間後にポラプレジンクは併用のまま亜鉛、銅含有栄養剤を投与したが、6週間後に腸瘻周囲皮膚炎の悪化からTPNへ変更した。変更直後から白血球、好中球数の減少を認め、TPN開始8週後には白血球数1910/μL、好中球数343/μL、血清銅濃度は8μg/dLと低下していた。TPNに微量元素製剤添加したところ急速に好中球は増加、貧血も改善した。TPN開始から短期間で銅欠乏症が発生したことから、銅非含有栄養剤投与に加え、EN施行中の亜鉛負荷による銅吸収阻害が関与した可能性も考えられた。
    長期経管、経静脈栄養の際には、微量元素に留意する必要があり、その配合比率も検討が必要であると考えられた。
  • 静間 徹, 石渡 一夫, 盛 英三, 福山 直人
    2008 年 23 巻 4 号 p. 649-652
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は17歳女性。摂食障害にて嘔吐を繰り返しており、るいそうが著明なため、入院となった。投薬後に嘔吐量は減少し、食事負荷が増大したことによる全身浮腫(refeeding edema)が発現したが、食事・塩分摂取量を制限したところ、浮腫は消退した。血中インスリン値(μU/mL)は、浮腫発現時には低値(1.4)、発現1週間後には正常範囲(4.3)であったが、浮腫消退時には軽度の高値(17.4)を示していた。血中グルカゴン値(pg/mL)は、浮腫発現時(131)・消退時(101)とも正常範囲であった。
    refeeding edemaの発現には、refeeding後のインスリン分泌の亢進やグルカゴン分泌の低下が主要な機序と推測されているが、自験例では、浮腫発現期の血中インスリン値の上昇、血中グルカゴン値の低下は認めていなかった。
  • 増本 幸二, 中辻 隆徳, 間野 洋平, 和田 美香, 竹野 みどり, 都地 里美, 浦部 由紀, 山口 貞子, 田口 智章
    2008 年 23 巻 4 号 p. 653-657
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    緑膿菌による創感染では感染創の改善に時間を要することがある。われわれは、頚部手術後の手術部位緑膿菌感染による創し開に対し、感染のコントロールができた状態で創洗浄とアルギニン滋養飲料(アルジネード®)投与を含めた栄養管理を行い、創の著しい改善をみた小児例を経験した。
    【症例】症例は2歳女児。基礎疾患は巨大臍帯ヘルニア(術後)、肺低形成。基礎疾患のため、1歳4ヶ月時に気管切開を施行した。その後CPAP(continuous positive airway pressure)管理で呼吸状態は安定したが、頻回の嚥下性肺炎を認めた。精査にて喉頭機能不全が存在し、2歳2ヶ月で喉頭気管分離術を行った。術後7日目に手術部位感染を認め、その後創し開となった。起因菌は気管孔からの緑膿菌であった。創に対して局所洗浄を行うとともに、経腸栄養にて適切な栄養管理を行い、アルギニン滋養飲料併用投与を行った。創部は順調に改善し、術後1ヶ月で気管孔の創し開部は深部が肉芽組織に置き換わり、上皮化が進み良好な状態となった。
    【まとめ】小児の手術部位感染に伴う創し開例にアルギニン滋養飲料を使用した。感染のコントロールができた状態で、創洗浄を行うとともに、適切な栄養管理に加えて、アルギニン滋養飲料を併用したことで、感染部位の早期の治癒を認め、本飲料の併用は創傷治癒促進効果が期待できる可能性があると考えられた。
  • 福田 泰代, 塩田 邦彦, 稲葉 知己, 坪井 順子, 野崎 純子, 中島 弘毅
    2008 年 23 巻 4 号 p. 659-662
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/30
    ジャーナル フリー
    抗てんかん薬は、長期投与が必要なため、種々の副作用が問題となる。今回、抗てんかん薬服用患者において、完全静脈栄養施行中、鼻出血を初期症状とした巨赤芽球性貧血を認め、その原因として葉酸欠乏が判明した症例を経験したので報告する。抗てんかん薬長期服用患者では葉酸欠乏の準備状態をきたしており、完全静脈栄養施行時には、葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血が短期間に惹起されうる可能性を考慮し、葉酸を積極的に投与する必要がある。
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