静脈経腸栄養
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25 巻, 5 号
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特集:肝硬変に対する栄養サポートのエビデンス
  • 鈴木 壱知, 玉野 正也
    2010 年 25 巻 5 号 p. 1047-1050
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/25
    ジャーナル フリー
    肝硬変患者の多くはタンパク・エネルギー栄養障害(Protein-energy malnutrition:PEM)を合併しているため栄養評価はきわめて重要である.しかし栄養指標の多くは肝硬変の病態により修飾をうけるためいくつかの栄養指標を組み合わせて評価することが必要である.肝硬変患者の栄養指標の多くは肝硬変患者の予後を予測できる因子であることから肝硬変患者の栄養評価は単に栄養状態の評価としてだけではなく,予後の評価としても重要である.また,肝硬変患者に対して栄養評価を行い,栄養治療を行うに際して肝硬変患者に見られる種々の代謝異常に考慮して栄養治療を行う必要がある.
  • 加藤 章信, 鈴木 一幸
    2010 年 25 巻 5 号 p. 1051-1056
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/25
    ジャーナル フリー
    肝硬変の栄養代謝異常として蛋白質・エネルギー栄養不良が特徴的である。このうち蛋白アミノ酸代謝異常には経口分岐鎖アミノ酸製剤が用いられ、栄養学的効果とともに有害事象の減少を含めた予後に対する有用性が明らかになっている。
  • 中屋 豊, 堤 理恵, 原田 永勝, 阪上 浩
    2010 年 25 巻 5 号 p. 1057-1062
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/25
    ジャーナル フリー
    肝硬変ではインスリン抵抗性、肝細胞障害および肝細胞絶対数の減少などにより、肝における糖の取り込みが制限され、その結果グリコーゲンの蓄積が十分行えない。このため、たった一晩の絶食でも、早朝空腹時には肝臓からの糖の供給が減り、各組織では糖を利用できなくなる。また、食後には肝臓に糖が取り込めないために、著明な食後高血糖を示す。これらの状態を改善するためには、少量頻回食が有効である。特に、総摂取カロリーを一定にした場合には、夜間就寝前の軽食(late evening snack:LES)は、早朝の飢餓の時間を減らすだけでなく、血糖のコントロールも改善する。最近では、夜食として分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤の使用、αグルコシダーゼ阻害剤の併用などの工夫も試みられている。また、BCAAはインスリン抵抗性の改善、癌発症予防などにも効果があることが認められ、今後さらなる応用が期待される
  • 岩田 加壽子, 原 なぎさ
    2010 年 25 巻 5 号 p. 1063-1067
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/25
    ジャーナル フリー
    近年、慢性肝疾患において、インターフェロン(IFN)無効患者や、鉄の過剰蓄積、鉄起因性酸化ストレスの改善における治療として、瀉血及び鉄制限食療法が認知されてきており、瀉血療法導入後に鉄摂取制限を行い、追加瀉血回数の減少、肝機能の安定化が得られたとの報告も増えてきた。肝硬変患者に対する栄養介入においても「ウイルス性肝硬変に対する包括的治療のガイドライン(2010年3月改訂)」に瀉血が治療のひとつに加えられ、肝硬変に対しても瀉血後の鉄制限食療法が必要となってくる。もちろん、肝硬変に至るまでの病期の進行に合わせた栄養療法の中での鉄制限食として実施することが重要である。
  • 白木 亮, 森脇 久隆
    2010 年 25 巻 5 号 p. 1069-1072
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/25
    ジャーナル フリー
    肝硬変患者ではしばしば蛋白エネルルギー低栄養状態に陥り、栄養学的介入を行うことで、肝機能や生存率やquality of lifeが改善されることが明らかになってきた。一方、食の欧米化に伴い慢性肝疾患患者においても約30%に肥満を認め、非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis; NASH)という病態や、肥満による肝臓の炎症・線維化・癌化との関連について問題となっている。また、肥満による肝発癌の予防治療として分岐鎖アミノ酸(Branched Chain Amino Acids: BCAA)顆粒製剤が報告され注目されている。
  • 川崎 成郎, 岩崎 泰三, 筒井 麻衣, 野呂 拓史, 大平 寛典, 鈴木 裕
    2010 年 25 巻 5 号 p. 1073-1077
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/25
    ジャーナル フリー
    【目的】半固形化栄養は胃食道逆流や誤嚥性肺炎の予防効果があるが、腹満感などの消化器症状がみられることがある。これらの消化器症状に対し、消化管運動機能改善剤が与える効果について検討した。
    【方法】総カロリーを225kcal に統一して液状食と半固形食を試験食として用いた。13C呼気試験による胃排出能検査を消化管運動機能改善剤の併用の有無で施行した。
    【結果】消化管運動機能改善剤の併用によって半固形食の胃排出は促進された。液状食の胃排出に差はみられなかった。
    【結論】消化管運動機能改善剤は半固形食の胃排出を促進する。
原著
  • 今野 佑介, 義平 邦周, 船見 孝博
    2010 年 25 巻 5 号 p. 1079-1088
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/25
    ジャーナル フリー
    経腸栄養に適した半固形化剤を明らかにすることを目的とし、濃厚流動食の力学特性におよぼす食品多糖類の効果を検討した。濃厚流動食としてカロリー量が等しく、国内に流通する代表的な市販品3種を用いた。検討した食品多糖類のうち、ハイブリッドカラギナン、キサンタンガムおよびハイブリッドカラギナン/キサンタンガムの混合製剤を用いて半固形化した濃厚流動食はいずれも弱いゲル型のレオロジー挙動を示した。また、他の食品多糖類を用いて半固形化した濃厚流動食に比べ、シリンジ押し込み時の荷重が小さく、チューブ内壁への残渣の付着も少なかった。さらに、チューブ通過後の食塊の保形性が高かった。ハイブリッドカラギナン/キサンタンガムの混合製剤は粘度の立ち上がりが最も早く、短時間(< 10分)で平衡に達した。以上より、濃厚流動食の半固形化剤としてハイブリッドカラギナン/キサンタンガム混合製剤が有用であることが示された。
臨床経験
  • 御子神 由紀子, 丸山 道生, 橋本 直子, 中島 明子
    2010 年 25 巻 5 号 p. 1089-1093
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/25
    ジャーナル フリー
    【目的】摂食・嚥下障害を有する高齢者の栄養状態の分析とリハビリの効果を明らかにするため調査を行った。
    【対象及び方法】入院後経口摂取困難となった高齢者66例を対象とし、ADLで分類し、改善している者を改善群、退院時も変化がない者を不良群、死亡退院した者を死亡群とした。カルテより入院時疾患、既往、Alb、栄養経路、転帰などを調査した。
    【結果】経口摂取能力、Albの改善は改善群では不良群より良好であった。転帰先は改善群では不良群より自宅退院が多かった。不良群で転院の者は全て経口摂取能力を獲得していなかった。
    【考察】摂食・嚥下障害とADLの改善は相関し、予後の因子の一つとして低栄養が推測される。転院の原因は胃瘻など栄養管理が困難な場合、低栄養によるADLの低下であった。医療経済効果のため栄養管理を地域医療に推進させる必要があり、今後このような高齢者を支えるためにシステムの構築が重要である。
症例報告
  • 冨山 成章, 中村 千鶴子, 吉田 泰, 花田 法久, 鎌田 みき子, 田實 敏郎, 森口 和代, 池田 知子, 大熊 利忠
    2010 年 25 巻 5 号 p. 1095-1099
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/25
    ジャーナル フリー
    上腸間膜動脈塞栓症により小腸大量切除術が施行され、残存小腸はトライツ靭帯から50cm、空腸―横行結腸吻合術が施行された症例の血中ジゴキシン濃度モニターによる投与設計と栄養管理を評価した。術前に投与されていたメチルジゴキシン(β-MD) 0.1mg/日が術後18日目から投与され、β -MD開始後9日目における血中ジゴキシン濃度は0.89ng/mLであり、β -MDの吸収は良好であったと考えられた。術後198日目の上部消化管透視検査では、残存小腸の拡張および造影剤の停滞傾向がみられ、便のズダン染色は陰性であり、腸肝循環が保たれていると考えられた。本症例では術後55日目以降静脈栄養を完全に離脱でき、血清アルブミン値および体重の推移から残存小腸において十分な栄養吸収が行われていると考えられた。これらのことがβ -MDの吸収ならびに血中β -MD濃度が良好に維持できた要因と考えられた。
施設近況報告
  • 近藤 秀則, 綱島 美紀, 角田 和香代, 松尾 一美
    2010 年 25 巻 5 号 p. 1101-1106
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/25
    ジャーナル フリー
    当院では栄養療法におけるチーム医療の充実を目指し、2004年1月よりNSTを導入した。さらに当法人内の病院(病棟・外来)・介護施設・訪問看護ステーションが連携して栄養療法を行う法人一体型NSTを構築している。胃瘻造設患者、消化器癌術後、慢性閉塞性肺疾患、褥瘡患者等の低栄養患者に対して退院後も継続して栄養療法を行うことができるようNST外来を開設した。法人一体型NSTにおけるNST外来の位置づけとしては、低栄養で入院し退院した患者の外来におけるfollow upおよび訪問看護(在宅)や介護施設における低栄養患者の相談窓口である。NST外来の現状として、その中心となっているのが胃瘻外来である。胃瘻造設患者に対して、アセスメント用紙の作成、胃瘻交換患者用クリニカル・パスの導入等を行っている。NST外来は、在宅・介護施設の低栄養患者に対する切れ目のない栄養管理を行っていくうえで有用と思われた。
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