硫酸タリウムの安全性評価のため各種毒性試験を行なった.
その結果, 原体の急性毒性はやや高かったが製剤の急性毒性は比較的低く, とくに急性経皮毒性はマウス, ラットとも2000mg/kg以上と低いものになっている. しかし殺そ剤としての製剤も, 0.3%以下で黒色に着色されトウガラシエキスで着味されたもの以外は現在劇物に指定されている.
製剤のウサギに対する眼一次刺激性試験では, 1%粒剤は非洗眼, 洗眼とも「最小限度の刺激性物質」, 2%液剤は非洗眼, 洗眼とも「無刺激性物質」と分類された.
製剤のウサギに対する皮膚一次刺激性試験では, 1%粒剤は「無刺激性物質」, 2%液剤は「軽度の刺激性物質」と分類された.
皮膚感作性試験においては, 1%粒剤, 2%液剤ともモルモットの皮膚に対して感作性のない物質であると判断された.
変異原性を評価するために行なった復帰変異原性試験では, 硫酸タリウム原体に遺伝子突然変異誘発性はないと判断された.
0.3%以上の製剤は劇物に指定されているが, 1%粒剤, 2%液剤とも比較的急性毒性は低い. 非標的動物に対する注意を十分に払い, 定められた使用法, 使用基準を遵守し, 適正に使用すれば安全性は十分確保できる有用な農薬の一つであると考える.
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