各種毒性試験を実施し, フルトラニルの安全性を評価した.
その結果, 本剤のラットおよびマウスにおける急性経口LD
50値は10,000mg/kg以上であり, 低毒性化合物と判断された. 皮膚に対してごく軽微な刺激性を示したが, 眼に対しては刺激性を示さなかった. ラットの亜急性および慢性毒性試験においては, 高用量群で体重増加抑制, 肝重量あるいは肝体重比の増加, 肝の空胞変性あるいは肝細胞肥大が観察された. またイヌの慢性毒性試験では, 嘔吐, 軟便等の症状, 体重増加抑制, 腸管の充血等が認められた. しかし, いずれの試験においてもフルトラニル投与に起因すると考えられる重篤な慢性毒性や催腫瘍性は認められず, 変異原性も陰性であった. 繁殖や次世代にも悪影響を及ぼすことはなく, 催奇形性も認められなかった.
本剤は, 昭和60年に, イネ, バレイショ, ムギ類, ナシ, 野菜の対象病害に対して登録を取得し, その後昭和62年にテンサイの葉腐病・根腐病, フキおよびコンニャクの白絹病にその適用が拡大された. 登録保留基準値は, コメ: 1ppm, ムギ・雑穀: 2ppm, 果実: 5ppm, 野菜: 2ppm, イモ類: 0.2ppm, テンサイ: 1ppmと設定されている.
フルトラニルは, 低毒性で安全性が高い薬剤であり, 定められた使用基準を遵守すれぼ農業資材の一つとして有用であると考えられる.
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