Journal of Pesticide Science
Online ISSN : 1349-0923
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ISSN-L : 0385-1559
9 巻, 4 号
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  • アルテリシジンの作用機構 (第1報)
    切貫 武代司, 市場 常男, 片山 薫
    1984 年 9 巻 4 号 p. 601-610
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    アルテリシジン複合体 (AC) は Pseudomonas cepacia KB-1が生産する抗かび性抗生物質であるが, その作用機構をおおまかに把握するために, Alternaria kikuchiana (ナシ黒斑病菌) および Ustilago maydis (トウモロコシ黒穂病菌) を用いて実験を行なった結果を報告する.
    両糸状菌における乾燥菌体重の増加はAC処理直後から抑制され, とくに U. maydis 小生子の生育は8ppmで完全に阻害され, 菌体重の減少が認められた.
    A. kikuchiana 菌糸の基質呼吸および自家呼吸はAC 5~25ppmではほとんど影響されなかったが, 50ppmでは50%程度抑制された. またラット肝ミトコンドリアの酸素消費はAC 4ppmでまったく影響されなかった.
    両菌のタンパク質, RNAおよびDNA各分画への14C-タンパク質加水分解物, 14C-ウリジンおよび14C-チミジンの取込み, および A. kikuchiana 菌糸細胞壁分画への14C-グルコースの取込みはAC処理直後から阻害された. その阻害程度は各分画成分によって若干異なった. しかしこれら14C-基質の細胞内各成分への取込み率と細胞そのものへの取込み率とを無処理対比値で比較すると, 両者間でほとんど差が認められなかった. また両者とも取込み率の時間的経過にはほとんど変化がみられなかった. 両菌に対する総脂質分画および細胞そのものへの14C-酢酸ナトリウムの取込み率へのACの影響は少なく, むしろ総脂質はAC処理により増加の傾向を示した.
    以上の結果から両菌に対するACの第一次作用点が細胞膜に存在すると仮定して, 今後の検討を進めることが妥当と考えられる.
  • Nagi Reddy ACHHIREDDY, Ralph C. KIRKWOOD, William W. FLETCHER
    1984 年 9 巻 4 号 p. 611-615
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    MCPAに抵抗性を示すトウモロコシ, やや感受性のハコベ, 感受性のソラマメの切除葉および円形切除葉を用いて, 14C-MCPAの吸収と移行性について検定した. またオキサジアゾンに抵抗性を示すイネおよび感受性のノビエについても, 同様の材料を作り, 14C-オキサジアゾン処理による吸収と移行を検定した. 14C-MCPAの体内移行性はトウモロコシに比べてソラマメ, ハコベで明らかに大きかった. 同様に14C-オキサジアゾンではイネに比べてノビエで大きな移行性を示した. 円形切除葉のオートラジオグラフによる観察では14Cの吸収はトウモロコシ, ノビエで多く, 葉脈への集積は前者だけであった. 14C-MCPAと異なり, 14C-オキサジアゾンでは sink creation よりあまり影響はうけなかった.
  • Nagi R. ACHHIREDDY, Ralph C. KIRKWOOD, William W. FLETCHER
    1984 年 9 巻 4 号 p. 617-622
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    制御された環境条件下で, MPCAに抵抗性を示すトウモロコシ, やや感受性のハコベ, 感受性のソラマメに対し, MCPAの植物毒性を体内移行, 代謝と関係づけて検討した. ソラマメ, ハコベおよびトウモロコシにおける14C-MCPAの移行量は, それぞれ処理総量の7.6, 5.9および2.5%であった. しかし処理葉における14C-MCPAの残量はソラマメ, ハコベに比べてトウモロコシで多かった. 葉部残量のうちクチクラワックス内には処理量の1%以下にすぎず, この数値は3植物間に有意な差は認められなかった. 14C-MCPA処理による14CO2の発生はトウモロコシ, ハコベに比べてソラマメにおいて明らかに多かった. MCPAの葉面処理により, 14CO2の固定およびその同化生成物の体内移行阻害はトウモロコシに比べてソラマメ, ハコベで明らかに大きかった.
  • 高濃度乳剤
    堀出 文男, 辻 孝三, 吉田 亮
    1984 年 9 巻 4 号 p. 623-629
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    S-3552は通常乳剤に使用される有機溶剤に対する溶解度が低く20%以下の乳剤しか製剤できない. 除草活性は乳剤がフロアブル剤, 水和剤より優れており, そこで乳剤の高濃度について検討した. 共溶媒にフェノールを用い, 乳化剤を選択することにより良好な低温安定性, 乳化安定性, 貯蔵安定性を有するS-3552 30%乳剤を製剤することができた. またこの30%乳剤はキシレン, イソホロンを溶媒に用いた10%乳剤, 20%乳剤と同等の良好な除草活性を示した.
  • Anton J. HOPFINGER, Deepak MALHOTRA, Robert D. BATTERSHELL, Andrew W. ...
    1984 年 9 巻 4 号 p. 631-641
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    種々のフェノスリン関連化合物について, 立体配座および線形自由エネルギー解析を行なった. 配座解析にあたり, 各分子を3個の構造部分に分割した. そのうち, アシルおよびフェノキシフェニル部分については, 以前に得られた結果を適用し, 本研究ではエステルの-OCH(X)-部分の立体配座解析を進めた. 活性型と考えられる立体配座において, 酸部分の置換ビニル基は, 3-フェノキシベンジル基の末端ベンゼン環の近傍に位置する. このような折れ曲がり型立体配座をフェンバレレートも最小エネルギー状態でとることがわかった. また, ある種のフェンバレレート同族体がトリフルオロエタノール溶液中においてこのような配座をとっていることが螢光分析により示された. さらに, ベンジル基のα位置換基Xの相対的疎水性ΔlogP(=logPX-logPH) 値が-0.5~-1.5の範囲内にあるとき, イエバエに対する殺虫活性が最大になることがわかった.
  • メプロニルの作物・土壌残留に関する研究 (第3報)
    浅野 讓, 大石 利治, 阿部 洋, 安間 勝男, 石川 莞爾, 石原 英助
    1984 年 9 巻 4 号 p. 643-649
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    殺菌剤メプロニルを幼穂形成期および穂ばらみ期に散布した水稲について, 部位別および剤型別にメプロニルの消長を調べた. 部位別の付着量は粉剤2回目散布1日後の残留量で比較したところ, 葉身が圧倒的に大きく, 葉鞘および穂が葉身の1/15~1/20でこれに次ぎ, 根は1/450と非常に小さかった. その後, 地上部では散布2週後までに残留量が1日後の1/10以下と急速に減少したが, 2週以後の減少は緩慢となった. 根では残留量は小さく, その変化も非常に少なかった. 剤型による差は, 水和剤が粉剤より散布直後に幾分高い付着濃度を示したほかは, 類似の消長を示し, ほとんど認められなかった. えられた分析値よりメプロニルの減少を示す式を求めた. この式による減少曲線と実際のそれとはよく適合し, また, 同式でえられた減少速度定数より, 散布後短期間の速やかな減少は水稲植物体からの離脱など非生物的な要因が主たることを明らかにした.
  • メプロニルの作物・土壌残留に関する研究 (第4報)
    浅野 讓, 阿部 洋, 大石 利治, 安間 勝男, 石川 莞爾, 石原 英助
    1984 年 9 巻 4 号 p. 651-657
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    室内および圃場試験により土壌中のメプロニルの消失について調べた. 土壌条件別の室内試験では湛水条件より非湛水条件のほうが, また, 圃場試験では水田より畑地のほうがメプロニルは速やかに減少した. 殺菌土壌中での減少ははるかに遅くなり, これらのことより土壌中のメプロニルの消失には好気的土壌微生物が関与しているものと推定された. 土壌別の減少速度は, 湛水条件下では最大と最小との間に5倍もの差がみられた. 土壌の性質との関係は, 火山灰土壌中で減少の遅い傾向がみられたほかは明らかではなかった. 室内試験ではメプロニルの減少はおおむね一次減少速度式に適合し, 圃場試験では適合しなかった.
  • ピレスロイド系殺虫剤に関する研究 (第2報)
    波多腰 信, 松尾 憲忠, 中山 勇, 桐野 修, 高山 千代蔵
    1984 年 9 巻 4 号 p. 659-665
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    α-シアノベンジルとα-エチニルベンジル3-(2, 2-ジクロルビニル)-2, 2-ジメチルシクロプロパンカルボキシレートのベンジル3位に種々の置換基をもつ化合物の構造活性相関について, 物理化学的パラメータと回帰分析を用い解析した. α-シアノベンジル化合物の共力剤添加, 無添加状態で得られたイエバエ成虫に対する殺虫活性の大きさは, 3位置換基の疎水性および立体的かさ高さにより決定される. しかし, 共力剤の有無によって立体的かさ高さの意味は異なる. 共力剤添加の場合はEsを, 共力剤無添加の場合はファンデルワールス体積を意味する. さらに, 3位置換基のこれらの性質が同一の場合, βγ位に存在するπ電子は, 殺虫発現に好ましい. α-エチニルベンジル化合物の殺虫活性の大きさは, 共力剤の有無にかかわらず, 3位置換基の変化にほとんど依存しない. α-置換-3-フェノキシベンジル化合物の構造活性相関についても検討した. 共力剤添加により得られた殺虫活性は, α位置換基の幅が減少するほど高くなる. 一方, 共力剤無添加状態で得られた殺虫活性は, α位置換基の疎水性が減少するほど高くなる.
  • 奴田原 誠克, 村井 敏信
    1984 年 9 巻 4 号 p. 667-674
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    キノメチオナートの光分解を保進するナス葉中に含まれる物質を同定し, その特性について検討した. 光分解促進物質はオレイン酸等の不飽和脂肪酸で, これらの活性は不飽和結合に起因し, 不飽和脂肪酸部位を有する界面活性剤, 油脂等も同様の活性を示した. 二重結合を1個有する直鎖不飽和脂肪酸では炭素数が少なくなるほど, また不飽和結合がカルボキシル基から離れるほど活性が大きい傾向を示し, 同一脂肪酸では, シス体がトランス体に比べはるかに強い活性を示した. また, 他の農薬に対するオレイン酸の光分解促進効果を検討したところ, アニラジン, クロメトキシニル, クロルニトロフェン, クロロタロニル, ジクロゾリン, ジゴホルおよびプロシミドンに対しても有効であった.
  • 上路 雅子, 富澤 長次郎
    1984 年 9 巻 4 号 p. 675-680
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    O-ethyl O-2-isopropoxycarbonylphenyl N-alkylphosphoramidothioates の殺虫活性について検討した. アズキゾウムシに対する殺虫力は, N-アルキル置換同族体間で大きな差異があり, N-イソプロピル同族体が最も強い殺虫力を示した. N-アルキルオキソンの in vitro でのアセチルコリンエステラーゼ阻害作用は概して弱く, とくにN-イソプロピル, tert-ブチルのI50値は10-3M以上であった. N-アルキル同族体およびN-イソプロピルオキソンはミクロゾームの酸化酵素系によって, より強力なアセチルコリンエステラーゼ阻害剤となり, 酸化剤m-クロル過安息香酸によっても同様の結果を得た. これらの結果から, phosphoramidothioate およびオキソンは酸化的に活性化され, 強力なアセチルコリンエステラーゼ阻害効果を発現し, 高い殺虫活性を示すことが示唆された.
  • 志賀 直史, 木下 津多子, 平尾 慶子, 俣野 修身, 後藤 真康
    1984 年 9 巻 4 号 p. 681-688
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    摩砕均一化したぶどう中でチオファネートメチル (TM) は不安定であり, 室温で3時間放置後, 約25%の消失が認められた. このTMの消失はL-アスコルビン酸ナトリウム (SL-A) を添加することにより抑えられた. 摩砕均一化した種々の農作物中のTMは凍結保存中に最大で45%の消失が認められたがSL-Aを添加することにより抑制された. また, 分析の回収率および精度もSL-Aの添加により著しく向上した. したがってSL-Aの添加はTMの残留分析に有効な方法である. この摩砕均一化したぶどう中のTMの分解消失は温度 (至適温度: 40℃), pH (至適pH: 5~7), ならびにぶどうに含まれる熱に不安定な物質に依存した反応であった. また, この分解はカタラーゼとアジ化ナトリウムのいずれによっても抑制され, 過酸化水素を要求するヘム蛋白酵素が関与した酵素反応と考えられ, この分解がSL-Aの添加により抑えられることが明らかとなった.
  • Chlobenthiazone のイネいもち病防除機構 (第2報)
    井上 悟, 植松 多聞, 加藤 寿郎
    1984 年 9 巻 4 号 p. 689-695
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    イネいもち病防除剤 Chlobenthiazone (S-1901) の本病原菌感染過程への影響をオオムギ幼苗を用いて検討した. 本薬剤は低濃度で付着器からの穿入糸形成過程を阻害するとともに, 付着器の褐変化 (メラニン化) 過程も同じように低濃度で阻害した. また, それらの阻害程度は, 防除効果の程度ともよく相関した. しかし, 胞子発芽, 発芽管伸長および付着器形成の各過程は, 高濃度でも阻害されなかった. 一方, 本薬剤は, メラニン化した付着器のいもち病菌に処理をした場合および植物体への侵入に付着器を必要としない傷接種の場合には, 高濃度でも防除効果を発揮しなかった. 以上の実験結果から, 本薬剤のイネいもち病菌感染過程における作用機構は, 付着器のメラニン化阻害による穿入糸の形成阻害であると考えられる.
  • 三上 信可, 坂田 信以, 山田 宏彦, 宮本 純之
    1984 年 9 巻 4 号 p. 697-702
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    ピレスロイド系殺虫剤フェンバレレートの酸およびアルコール側のフェニル基を14Cで標識した化合物を新たに用いて, 土壌中での分解についてさらに検討を加えた. フェンバレレートを2種類の土壌に1ppmの割合で添加して好気的畑地条件に保つと, 酸化および加水分解を経て初期消失半減期が3週と16週の速度で分解し, 48週後には0.03ppmと0.29ppmに減少した. 主分解経路はエステル結合の加水分解で, 生成した3-phenoxybenzoic acid と2-(4-chlorophenyl)-3-methylbutyric acid はさらに環の開裂を受けて最終的にCO2 (添加14Cの25~66%) にまで分解した. また, 分解物としてα-carboxy-3-phenoxybenzyl 2-(4-chlorophenyl)-3-methylbutyric acid が新たに同定された. フェンバレレートから生成した bound 14C を含む土壌抽出残渣に新鮮な土壌を加えてインキュベートすると14CO2が発生し, その割合は24週間後に bound 14Cの18~24%に達した.
  • 吉田 充, 守谷 茂雄, 上杉 康彦
    1984 年 9 巻 4 号 p. 703-708
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    イネいもち病菌生菌体内におけるメチオニンのメチル基のコリンへの転位, およびこの反応に対するIBPとイソプロチオランの影響を, 13C NMRスペクトルによって観察した. いもち病菌菌糸を [メチル-13C] 標識メチオニンを含むリン酸緩衝液中で3時間インキュベートすると, 54.9ppmに〓N+-CH3に由来すると考えられるシグナルが出現し, このシグナルの強度は時間とともに増大した. この13C-標識されたメチル基のシグナルは, おもに可溶性画分に含まれるコリンに由来し, ホスファチジルコリンの寄与はわずかであることが, 菌糸の分画によって明らかになった. このことから, コリンのメチル基のうち少なくとも一つはメチオニンに由来することが示された. 緩衝液中にIBP 100ppmを添加すると, 3~6時間後のコリンへの13C-標識メチル基の取込みが阻害され, イソプロチオラン40ppm添加の場合にも同様の影響が認められた.
  • カチオン性界面活性剤の植物病害防除作用に関する研究 (第2報)
    梶川 彰, 渡部 忠一, 阿久津 克己, 黄 耿堂, 見里 朝正
    1984 年 9 巻 4 号 p. 709-715
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    1) カチオン性界面活性剤 didodecyldimethylammonium bromide で処理したいもち病菌菌糸の電顕観察から, 細胞膜外側に電子密度の高い物質の沈着が認められ, また, 核膜の肥大, 細胞壁構造の消失, 菌体内容物の崩壊も観察された.
    2) 菌体内容物 (260nm吸収物質) の漏出は, 100ppm処理で最も顕著で, 処理後5~7時間でほぼ最大となった.
    3) 本薬剤は蛋白合成系をとくに強く阻害し, また, グルコースの取込みを阻害し, 取り込まれたグルコースの漏出がみられた.
    4) カチオン性界面活性剤は, 細胞膜に作用し, そのことによって細胞膜は変性して, その透過性, 輸送機能が阻害され, さらに蛋白合成系, 脂質合成系の代謝系が阻害されることが示唆された.
  • 有機リン殺菌剤の研究 (第1報)
    佐々木 満, 加藤 寿郎, 山本 茂男, 向井 邦男
    1984 年 9 巻 4 号 p. 717-723
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    [Hydroxy (pyridin-3-yl) methyl] phenylphosphinate および関連化合物の構造と抗菌活性との関係を, Sphaerotheca fuliginea によるキュウリうどんこ病の防除効果を指標として検討するとともに, それらの抗菌活性とエルゴステロール生合成阻害度との相関関係を, Saccharomyces cerevisiae の無細胞抽出液を用いて調べた. その結果, 抗菌活性が最も高いのは, o-ethyl [hydroxy-(pyridin-3-yl) methyl] [4-fluorophenyl] phosphinate (38) であった. また, その抗菌作用機構はエルゴステロールの生合成を阻害することが知られている他の殺菌剤と同様であると推定した.
  • 中村 成子, 加藤 寿郎
    1984 年 9 巻 4 号 p. 725-730
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    U. maydis 菌を液体培地で振とう培養すると単細胞の小生子となり, 通常出芽法により増殖する. これにトルクロホスメチルを4μg/mlで処理すると, ただちに出芽が抑制され小生子数の増加が止まった. 処理2時間目まで細胞分裂はまったく認められなかったが, その後小生子内に隔壁ができ, 小生子は多細胞となった. さらに培養を続けると細胞分裂が再び止まり, 一部の細胞から内容物の吐出が認められた. 処理24時間後までにはほとんどの細胞が内容物を吐出した. 一方, 菌体乾重の増加およびRNA生合成は本剤処理後, 2時間目では抑制されなかったが, DNAおよびタンパク質生合成は薬剤処理後初期に抑制が認められた. これは本剤が同時期に細胞分裂を阻害した結果と考えられる. 内部呼吸およびグルコースを基質とする外部呼吸は, 本剤4μg/ml処理で阻害されなかった. コハク酸を基質とする外部呼吸では同処理でやや抑制が認められた. しかし同処理後ただちに小生子の増殖が影響を受けることを考慮すると, この呼吸阻害のみで本剤の抗菌性を説明することは困難であると考えられた. 以上の結果から, トルクロホスメチルは, U. maydis の細胞分裂に影響を与え, とくに出芽を阻害することが明らかとなった.
  • 井上 悟, 前田 清人, 植松 多聞, 加藤 寿郎
    1984 年 9 巻 4 号 p. 731-736
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    テトラクロロフサライドおよびPCBAは, イネいもち病菌の菌糸のメラニン化を, それぞれ50μMおよび100μMの濃度で阻害する. しかし, その阻害濃度は, メラニン生合成阻害剤, クロベンチアゾン, トリシクラゾール, ピロキュロン, pp-389などと比較し高かった. クロベンチアゾンおよびトリシクラゾールでは, イネいもち病防除効果と, 付着器のメラニン化阻害程度間には良い相関が認められるが, テトラクロロフサライドおよびPCBAは穿入糸の形成を抑制するが, 発病を阻害する濃度でも付着器のメラニン化を完全には阻害しなかった. 以上の結果から, テトラクロロフサライドおよびPCBAの穿入糸形成阻害は, メラニン生合成阻害によるものではないと考えられた. クロベンチアゾンおよび関連化合物は付着器のメラニン化開始直前までに処理すれば, いもち病菌の侵入を阻止するのに対し, 両化合物はメラニン化開始よりさらに早く処理しなければ, 効果がなくなることから, 付着器のメラニン化以前の成熟過程に何らかの影響を及ぼすものと思われる.
  • 有機リン殺菌剤の研究 (第2報)
    佐々木 満, 大石 正, 加藤 寿郎, 高山 千代蔵, 向井 邦男
    1984 年 9 巻 4 号 p. 737-744
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    提題化合物の Rhizoctonia solani に対する抗菌活性を寒天培地希釈法を用いて検討した. 抗菌活性を高めるためには, methoxyphosphinothioyl 部とベンゼン環の2, 4, 6-置換様式が必須であった. O, O-dimethy O-(4-substituted-2, 6-dichlorophenyl) phosphorothioates では, 抗菌活性は, パラ置換基の長さと疎水性とに放物線的に相関することが判明した. また, O-alkyl O-methyl O-(2, 4, 6-trichlorophenyl) phosphorothioates では, 抗菌活性はアルキル基部分の疎水性の増加とともに低下した. これらは, 本系続類似の殺虫剤とはその作用発現に対する置換基効果がまったく異なるものであった. 抗菌活性の強さおよび高収率で合成できる容易さから, O, O-dimethyl O-(2, 6-dichloro-4-methylphenyl) phosphorothioate (tolclofos-methyl, 14) が実用性のある殺菌剤として選抜された.
  • 文 永煕, 鍬塚 昭三
    1984 年 9 巻 4 号 p. 745-754
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    湛水土壌中におけるベンチオカーブ脱塩素反応を起こす土壌の性質および条件について, 室内実験により研究した. 供試した17種類の土壌のうちで, わい化症を起こした水田から採取した2土壌のみがベンチオカーブを脱塩素した. 脱塩素活性の強い大城土壌は, 他の土壌に比べ有効態リン酸含量が高く, リン酸吸収係数および鉄含量が低かった. 脱塩素反応を起こすためには土壌中に有機物の添加が必要であり, 殺菌土壌中では反応は進行しなかった. 脱塩素反応は, ベンチオカーブ添加後10~20日のラグタイムののち進行した. 土壌を湛水下にプレインキュベーションするとラグタイムは短くなり, 反応速度も速くなった. 反応性の高い大城土壌と活性のない安城土壌の混合土壌中では, ラグタイムは混合量比には関係なく一定で, 反応速度および脱塩素ベンチオカーブの最大生成量は大城土壌の含有量にほぼ比例した.
  • Gerald T. BROOKS, Grahame E. PRATT, Anthony P. OTTRIDGE, John A. COCKS
    1984 年 9 巻 4 号 p. 755-758
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    ワモンゴキブリ, Periplaneta americana L. のアラタ体を供試して, in vitro での juvenile hormone III 生合成に及ぼす各種化合物の影響を検討した結果, 混合機能オキシターゼ (mfo) の阻害剤である次の4化合物, phenyl glycidyl ether 1-(2, 3-epoxypropoxy)-3-prop-2-ynyloxybenzene, 6, 7-methylenedioxy-2, 2-dimethylchromen, naphth [1, 2-d]-1, 3-oxathiole, 8-methoxynaphth [1, 2-d]-1, 3-oxathiole は precocene II よりも強くJH IIIの生合成を阻害した. JH III生合成過程において, これらの化合物は最終過程に関与する methyl farnesoate epoxidase を阻害するものと期待されたが, 必ずしもこの酵素を阻害するものではなく methyl farnesoate のエポキシ化よりも前の生合成過程を阻害するものもあることが明らかとなった.
  • 伴野 広太郎, 熊沢 紀之
    1984 年 9 巻 4 号 p. 759-762
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    8-quinolinol およびその関連化合物の, カンキツ黒点病菌に及ぼす生育阻害作用と, ミトコンドリアの呼吸に及ぼす作用との関係を検討した. quinoline, 6-quinolinol, 7-quinolinol, 8-quinolinol は, 10-3~10-2Mでラット肝臓のミトコンドリアの呼吸を促進した. α-naphthol は 10-3~10-4M, 5-chloro-7-bromo-8-quinolinol は 10-5~10-4M, 5, 7-dichloro-8-quinolinol および 5, 7-dibromo-8-quinolinol は10-5~2×10-4Mで呼吸を促進した. これらの化合物は, ミトコンドリアの呼吸を促進する濃度とほぼ同じ濃度で, カンキツ黒点病菌の生育を阻害した. カンキツ黒点病菌の発芽を50%阻害する濃度をI50, ラット肝臓のミトコンドリアの呼吸を1.5倍に促進する濃度をC1.5とすると, log1/I50とlog1/C1.5との間には非常に高い相関関係が見られた (n=8, r=0.944).
  • カチオン性界面活性剤の植物病害防除作用に関する研究 (第1報)
    梶川 彰, 渡部 忠一, 阿久津 克己, 黄 耿堂, 見里 朝正
    1984 年 9 巻 4 号 p. 763-768
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    Several cationic surfactants were tested for their inhibitory activities against powdery mildew of cucumber. Among alkyltrimethylammonium chloride, the octyl derivative was the most effective on the powdery mildew, but caused a little phytotoxicity. Alkyldimethylbenzylammonium chloride used in this experiment showed low effects. Didodecyldimethylammonium bromide was remarkably effective, and caused on phytotoxicity on cucumber plants. Inhibitory effects of didodecyldimethylammonium bromide were observed at various growth stages of the cucumber powdery mildew fungus (Sphaerotheca fuliginea), namely, conidial germination, appressorial formation, haustorial formation, hyphal growth, and sporulation. The compound was effective on the fungus at all stages of the life cycle, especially at haustorial formation, hyphal growth, and sporulation. Also the stained mycelia of this fungus showed a speckled, collapsed membrane system and death of hyphal cell were observed frequently. These results suggest that didodecyldimethylammonium bromide act on the cell membrane.
  • 尾崎 守, 鍬塚 昭三
    1984 年 9 巻 4 号 p. 769-771
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    薄層クロマトグラフィー (TLC) とリニアスキャンニング方式のTLCスキャナーを用いるデンシトメトリーによって除草剤イソウロンとその代謝物エナミノケトンの分離と定量を行なった. 吸着剤としてシリカゲルを用い, クロロホルム-アセトン (30:5) の混合溶媒で展開すると両化合物は良好に分離した. これをTLCスキャナーを用いて波長240nmにおける吸光度で測定すると両化合物の量と吸光度の間には0.25~1.5μg/spotの範囲で直線関係が成立した. この定量法を用いて Hansenula saturnus によるイソウロンの分解を調べた. イソウロンは徐々に分解し20日目には初濃度の40%が消失した. それに対応してエナミノケトンが生成し培地中に蓄積した.
  • 微生物起源農薬と遺伝子操作
    矢野 圭司
    1984 年 9 巻 4 号 p. 773-782
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
  • 微生物農薬へのバイオテクノロジーの応用
    岩花 秀典
    1984 年 9 巻 4 号 p. 783-791
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
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