Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
15 巻, 1 号
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Editorial
原著
  • 古家 雅之, 奥田 眞也, 長本 行隆, 松本 富哉, 髙橋 佳史, 岩﨑 幹季
    2024 年 15 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2024/01/20
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    はじめに:骨強度の評価は脊椎手術の治療戦略を立てる上で極めて重要であるが,DXA法による骨密度検査は全ての施設で簡便に施行できる検査ではなく,骨粗鬆症評価なしに手術に至ることも少なくない.そこで今回我々は椎体CT Hounsfield unit(HU)値を用いた骨粗鬆症判定の有用性について検討した.

    対象と方法:対象は2019~21年に当院で腰椎CTとDXAによる骨密度測定の両検査を6ヶ月以内に受けた138例.3機種のCTで撮影した腰椎CTを用いてT12-L4の椎体海綿骨HU値を測定し,椎体HU値とDXA T-scoreや脆弱性骨折の有無との関連を調査した.更に骨粗鬆症(T-score≦-2.5)の判定閾値や脆弱性骨折ありの判定閾値についてROC曲線を用いて検討した.

    結果:椎体HU値と腰椎・大腿骨近位部T-scoreは相関関係にあり,脆弱性骨折を有する患者では有しない患者と比較し椎体HU値は有意に低値であった.骨粗鬆症及び骨折ありの判定閾値は74.1と69.1であった.

    結語:椎体HU値はDXA T-scoreと相関関係にあり,骨強度の術前把握に有用な指標である.

  • 伊藤 陽平, 三原 久範, 多々羅 靖則, 新村 高典
    2024 年 15 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:本研究は,術前のST介入による頚椎前方除圧固定術後嚥下障害の予防効果と,術前嚥下機能を含めた術後嚥下障害の発生リスク因子を調査した.

    対象と方法:STによる術前日の嚥下機能評価(舌圧,RSST;Repetitive Saliva Swallowing Test)の後に頚椎前方除圧固定術を受けた116例を対象とした.術後嚥下障害(+)群と(-)群にわけて,X線学的検討項目と術前日嚥下機能について比較検討した.また,ミエロ施行時にSTによる嚥下機能評価と嚥下訓練指導がなされた60例について,ミエロ時と術前日の嚥下機能を比較することで,術前嚥下訓練の有効性を検討した.

    結果:嚥下障害は,12.9%(15/116例)に発生した.術後嚥下障害(+)群は,(-)群に比べて,高齢で,固定端がより上位で,術後C2-7角およびΔC2-7角が高値であり,舌圧とRSSTは有意に低値であった.ミエロ施行時のST介入に関して,舌圧は有意に改善したが,RSSTの値に有意差はなかった.

    結語:本研究より術前の嚥下機能が頚椎前方手術後の嚥下障害発生に関係することが示された.また,ミエロ時にSTによる嚥下指導を行うことで,手術施行時の嚥下機能を改善させる可能性が示唆された.

  • 柳井 亮介, 松村 昭, 並川 崇, 星野 雅俊, 谷脇 浩志, 木下 右貴, 中村 博亮
    2024 年 15 巻 1 号 p. 20-27
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2024/01/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:成人脊柱変形手術におけるProximal Junctional Vertebral Fracture(PJVF)の発生率をUpper instrumented vertebra(UIV)anchorの違いに着目して検討した.

    対象と方法:下位胸椎から骨盤までの矯正固定術を施行し1年以上経過観察可能であった60例を対象とした.UIV anchorは椎弓根スクリュー(pedicle screw, PS),横突起フック(Hook),およびUIV+1に短いPSを尾側向きに挿入し,UIVにHookを設置したHook-sPSの3種類を用いた.PJVFをUIV,UIV±1の椎体骨折と定義しX線パラメータとPJVF発生率を比較した.

    結果:最終観察時のThoracolumbar kyphosis(TLK),Proximal Junctional Angle(PJA)に3群間で有意差を認め(P<0.05),Hook-sPS群はHook群よりもTLK,PJAが有意に小さかった(P<0.05).またPJVF発生率については3群間で有意差を認めなかった(P=0.1).

    結語:Hook-sPSはPJVF予防の有意性は示せなかったが,PJAは有意に減少し,PJVF予防に有用な可能性が示唆された.

  • 定 拓矢, 岩田 栄一朗, 奥田 哲教, 田中 誠人, 撫井 貴弘, 川崎 佐智子, 重松 英樹, 中島 弘司, 田中 康仁
    2024 年 15 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2024/01/20
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    はじめに:側方椎体間固定術は大血管やその分枝の損傷が危惧される.本研究の目的は術前造影CTで血管損傷のリスクとなる解剖の評価すること.

    対象と方法:当院で側方椎体間固定術前に造影CTを施行した46名を対象とした.L1/2-L4/5各椎間でmajor artery,major veinの走行と腰動脈分枝の椎間板縦走を評価した.静脈走行異常は(a)duplicated vena cava,(b)左総腸骨静脈分岐の総腸骨動脈外側の走行,(c)性腺静脈の拡張を評価した.

    結果:Moroらの評価方法でzone1-4を走行するmajor arteryはL1/2で5例,L2/3で3例,L3/4で2例,L4/5で5例,major veinはL1/2で6例,L2/3で16例,L3/4で37例,L4/5で39例であった.腰動脈分枝の椎間板縦走はL3/4で1例,L4/5で15例に認めた.静脈走行異常は(a)が0例,(b)が4例,(c)が3例であった.

    結語:L1/2~L4/5でmajor artery,major veinに,L3/4とL4/5で腰動脈分枝に注意し,静脈走行異常も術前評価が必要である.

  • 鎌倉 大輔, 長谷川 敬二, 中村 一将, 福武 勝典, 和田 明人, 高橋 寛
    2024 年 15 巻 1 号 p. 34-39
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2024/01/20
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    はじめに:頚椎片開き式椎弓形成術後のC5麻痺は一定の割合で発生する.その発生原因については様々な説が報告されている.本研究の目的は,自験例から頚椎片開き式椎弓形成術後のC5麻痺発生リスク因子を検討することである.

    対象と方法:対象は,当院で2015年12月から2021年3月までに頚椎片開き式椎弓形成術を施行した93例とした.検討項目は,頚椎CTでのC4/5椎間孔径,C5上関節突起の突出,C4・5各椎弓の骨溝位置,術前・後頚椎Xp側面でのC2~7角度とし,C5麻痺群(C5群)と非C5麻痺群(N群)で比較検討を行った.

    結果:C5麻痺発生数は7/93例(7.5%)で出現した.C4/5椎間孔径は,C5群で有意な狭小化を認め,C5上関節突起の突出はC5群で有意な突出を認めた.頚椎Xp側面C2~7角度では術前では有意な差を認めたが,術後では両群において明らかな差は認めなかった.

    結語:頚椎片開き式椎弓形成術後におけるC5麻痺のリスク因子を検討した.術前リスク因子としては術前頚椎CTでのC4/5椎間孔狭小化,C5上関節突起の突出,術前頚椎C2~7角度が大きいことが挙げられた.

  • 葉 清規, 対馬 栄輝, 大石 陽介, 村瀬 正昭, 土居 克三, 竹内 慶法, 林 知希, 松田 陽子, 亀島 将士
    2024 年 15 巻 1 号 p. 40-48
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2024/01/20
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    はじめに:本研究の目的は,BKP術後長期経過におけるJOABPEQの疼痛関連障害スコアの改善と,その他の重症度スコアとの関連を明らかにすることである.

    対象と方法:BKPを施行した71例の術前と術後1年後のJOABPEQを調査し,疼痛関連障害,腰椎機能障害,歩行機能障害,社会生活障害,心理的障害スコアを求めた.術後1年後の疼痛関連障害スコアから改善群,改善不良群に群分けし,その他の重症度スコアの術前から術後1年後の獲得点数について比較した.さらに,疼痛関連障害スコアとその他の重症度スコアの有効率の関連を解析した.

    結果:BKP術後1年後の疼痛関連障害スコアの改善群(40例)は改善不良群(31例)と比較して,腰椎機能障害,歩行機能障害,社会生活障害スコアの獲得点数が有意に高値であった.疼痛関連障害スコアと,腰椎機能障害(連関係数φ=0.35),歩行機能障害(φ=0.45),社会生活障害(φ=0.24)スコアの有効率に有意な関連がみられた.

    結語:BKP術後1年後のJOABPEQの疼痛関連障害スコアの改善と,腰椎機能障害,歩行機能障害および社会生活障害スコアは関連していた.

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