Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
14 巻, 10 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
Editorial
総説
  • 清水 克時
    2023 年 14 巻 10 号 p. 1268-1275
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    Kumu Cloward Lecture誕生の歴史を紹介し,脊椎感染症に対するインストゥルメンテーションについて概説しました.抗生剤発見以前,脊椎カリエスの前方病巣に手を加えることは「死の門をひらく」と形容されたほど危険でした.そのため,脊椎後方固定による姑息的手術しかありませんでした.前方病巣廓清が一般化するのは抗生剤の登場以降です.その後,前方病巣廓清と同時に,あるいは二期的に後方インストゥルメンテーションを加える方法も登場しました.著者らは,前方病巣に手を加える前に,脊椎後方インストゥルメンテーションを行い,二期的に前方病巣廓清+骨移植を行う方法を確立しました.この方法は,一回目の手術後ただちに除痛とADL改善が得られて全身状態が良くなり,前方手術が楽に安全にできます.脊椎感染症の手術には,低侵襲手術,一期的手術(前方単独,前方→後方)そして,私たちの二期的手術(後方→前方)があり,それぞれ長所と短所があります.二期的手術法(後方→前方)は慎重な方法で,広範囲,全身状態不良,耐性菌などの悪条件に勧められる安全性の高い手術です.

原著
  • 早川 周良, 岡野 市郎, 工藤 理史, 土谷 弘樹, 山村 亮, 丸山 博史, 白旗 敏之, 江守 永, 大下 優介, 瀬上 和之, 神﨑 ...
    2023 年 14 巻 10 号 p. 1276-1282
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)の手術療法についてのこれまでの報告は,主に胸腰椎移行部に関するもので,中下位腰椎での報告は少ない.今回,中下位腰椎の骨粗鬆症性椎体骨折に対して前後合併アプローチの椎体置換術(AP群)と後方単独の椎体間固定術(P群)の治療成績を比較した.

    対象と方法:神経症状を伴う骨粗鬆症性中下位腰椎椎体骨折の手術症例で,AP群11例とP群7例の1年以上観察できた18例を対象とした.検討項目は,術前腰椎前弯(LL),手術前後の局所後弯角(LKA),矯正角,矯正損失,インプラント関連有害事象,手術時間,出血量とした.

    結果:術前LKAはAP群-3.6±13.9°,P群9.0±16.0°と2群間で差は認めず(p=0.173).術直後矯正角はAP群12.5±6.3°,P群5.1±4.5°(p=0.029)とAP群で大きかった.矯正損失や術後1年での矯正角は2群間での差はなかった.

    結語:AP群での矯正角度は大きかったが,矯正損失はP群と同等であった.中下位腰椎椎体骨折の治療において後弯矯正やアライメントを考慮した場合,前方手術が有用である可能性が示唆された.

  • 安川 泰樹, 白旗 敏之, 朝倉 智也, 工藤 理史, 丸山 博史, 山村 亮, 早川 周良, 土谷 弘樹, 石川 紘司, 豊根 知明, 稲 ...
    2023 年 14 巻 10 号 p. 1283-1291
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:当院では側方侵入腰椎椎体間固定術(以下,LLIF)を用いた腰仙椎の多椎間固定において最尾側アンカーを仙骨椎弓根スクリュー(S1PS)としているが,S1PSの弛みが多い.L5/Sを含む腰仙椎多椎間固定におけるS1PSの弛み,L5/SのCage Subsidence,前弯角矯正損失,骨癒合を調査した.

    対象と方法:当院でLLIFを併用して腰仙椎多椎間固定を行い,1年以上経過観察可能であった14例を対象とした.CT画像を用いて術後3ヶ月,6ヶ月,1年におけるS1スクリューの弛み,L5/SのCage Subsidence,前弯角矯正損失,骨癒合を評価した.

    結果:術後3ヶ月でS1PSの弛みが確認されたのは9例(9/14,64%),術後6ヶ月で13例(13/14,92%)であった.術後1年のL5/Sの平均前弯矯正損失は4.3°であり,Cage Subsidenceは10例(10/14,71%)に認めた.骨癒合は7例(7/14,50%)で得られていなかった.

    結語:LLIFを用いたL5/Sを含む腰椎多椎間固定においては,最尾側アンカーがS1PSである場合,高率に弛みを呈する.

  • 都井 政和, 圓尾 圭史, 有住 文博, 木島 和也, 楠川 智之, 橘 俊哉
    2023 年 14 巻 10 号 p. 1292-1297
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:L4/5経椎間孔腰椎椎体間固定術(TLIF)後の局所前弯は重要であるが脊柱骨盤パラメータとの関係は不明な点が多い.本研究はL4/5TLIF後の局所前弯が脊柱骨盤パラメータに及ぼす影響を後ろ向きに検討した.

    対象と方法:2014年から2020年にL4/5の1椎間TLIFを行った91例を対象とした.術前,術後1年でL4/5の局所前弯角(segmental lordosis angle;SLA)と脊柱骨盤パラメータを計測し増加した群をSLA(+)群,減少した群をSLA(-)群とした.患者背景因子,ケージ関連因子,レントゲンパラメータを2群間で比較し,多変量解析でSLA(+)の予測因子を同定した.

    結果:術後1年でSLA,脊柱骨盤パラメータは改善していた.SLA(+)群は73例で2群間の患者背景因子は有意差を認めなかった.SLA(+)群では術前SLAが有意に低値であり,ケージ沈下が少なく,ケージが有意に前方設置であった.SLA変化量と術前SLAは負の相関を認めた.また術後1年の脊柱骨盤パラメータは2群間で有意差は認めず,SLA(-)群でPI-LLミスマッチを有意に多く認めた.術前SLAとケージの沈下がSLA(+)の独立した予測因子であり,術前SLAのカットオフ値は15.3°であった.

    結語:SLAは術後1年の脊柱骨盤パラメータへ影響しないが術前SLA15°以上,ケージ沈下がSLA低下の危険因子であった.

  • 波多野 克, 圓尾 圭史, 西尾 祥史, 中村 佳照, 鈴木 伸芳, 橘 俊哉
    2023 年 14 巻 10 号 p. 1298-1307
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:S1椎弓根スクリュー(PS)は解剖学的に力学的に緩みやすく,仙椎前方の皮質骨を貫くbicorticalやtricorticalが提唱されているが,ガイドワイヤーを使用する経皮的椎弓根スクリュー(percutaneous pedicle screw,PPS)では神経血管損傷のリスクを伴う.L5/S椎体間固定術におけるS1 PPSの軌道,血管損傷のリスクについて後ろ向きに検討した.

    対象と方法:L5/Sを含む2椎間以下の椎体間固定術において76例,S1 PS 152本(男性49例,女性27例,平均年齢68±13歳)を対象とした.S1 PPSの軌道は前方皮質穿破なしunicorortical fixation(Uni)群,前方皮質穿破ありbicortical fixation(Bi)群,mPES(modified penetrating endplate screw)法で挿入されたS1終板を貫くmPES群に分け,血管損傷リスク(ガイドワイヤー軌道上の血管の有無,PS先端と血管距離≦5 mm)について検討した.

    結果:症例はmPES群10例,両側Bi群15例,片側Bi群21例,Uni群30例で,S1 PSはmPES群19本,Bi群51本,Uni群82本であった.ガイドワイヤー軌道リスクはmPES群:5.26%,Bi群:58.8%,Uni群:30.5%で有意差を認め(p<0.01),PS先端リスクではmPES群:5.26%,Bi群:52.9%,Uni群:7.32%で有意差を認めた(p<0.01).

    結語:S1 PPSにおけるbicortical purchaseはスクリュー内側角が小さく血管損傷リスクが高い.mPES法は血管損傷のリスクを低減できS1 PPSでは有用である.

  • 石田 鴻晟, 石原 昌幸, 谷口 愼一郎, 足立 崇, 朴 正旭, 谷 陽一, 田中 貴大, 川島 康輝, 政田 亘平, 安藤 宗治, 齋藤 ...
    2023 年 14 巻 10 号 p. 1308-1317
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    目的:骨粗鬆症性椎体骨折後後弯変形(kyphotic deformity after osteoporotic vertebral fracture KDOVF)に対する側方経路腰椎椎体間固定術(LLIF),lateral access corpectomy(LAC),anterior column realignment(ACR)等のlateral access surgery(LAS)の臨床成績を検討した.

    対象及び方法:2019年以降当院にてKDOVFに対してLASを行い,24ヶ月以上経過観察可能であった23名を対象とした.検討項目は手術方法,骨折椎体レベル,局所後弯角(local kyphosis LK),固定椎体数,骨癒合率,cement augmentation(CA)併用の有無,合併症とした.

    結果:術式はLLIFが6例(L群),LACが14例(C群),ACRが3例(A群)であった.骨折椎体レベルはL群でL1からL4,C群はT12,L1が最多であり,A群はL2,3のみであった.出血量及び手術時間においてC群が有意に多く,固定椎体数は3群間で有意差はなく,CAはL群及び,C群で2例,A群の1例で併用した.LKは,3群いずれも術後有意に改善した.矯正損失はL群で約1度,C群で2.4°,A群で3°でありL群で有意に低かった.最終的な平均矯正量はL群11度,C群25°,A群18°でありC群はL群と比較し有意に大きかった.骨癒合率は1年でA群が低い傾向にあったが有意差はなく,術後18ヶ月では3群とも90%以上で認めた.合併症はC群で終板損傷を1例,またcage subsidenceをA群で1例認めた.C群では胸膜損傷を4例,proximal junctional failureを1例認めたが,再手術を要した症例はなかった.

    結語:KDOVFに対するLASの臨床成績を調査した.3群とも概ね良好な結果がえられた.骨脆弱性の強い病態であるKDOVFに対して支持面積の大きい強力な前方支柱再建が可能であるLASは有用な術式といえる.

  • 橋村 卓実, 大西 英次郎, 和田 晃大, 山根 逸郎, 田中 敦, 坂本 祐志
    2023 年 14 巻 10 号 p. 1318-1324
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:本研究の目的はヒト脱灰骨基質(demineralized bone matrix:DBM)と自家腸骨(Iliac Crest Bone Graft:ICBG)のLLIFケージ内骨癒合について比較することである.

    対象と方法:2019年3月から2020年8月までの期間に,腰椎変性疾患に対して腰椎側方進入椎体間固定術(lateral lumbar interbody fusion:LLIF)を行った21例で,平均年齢76.4歳である.ケージの材料はチタン製:12例30椎間,polyetheretherketone(PEEK)製:9例20椎間であった.ケージ内骨移植は正中を境にDBM単独とICBGを左右に分けて充填し,1年以上の最終観察時にCTでのケージ内骨癒合を評価した.また,ケージ内における各移植骨のCT値を測定した.

    結果:ケージ内骨癒合はDBM:62%,ICBG:90%の達成率であった(P=0.001).チタン製ではDBM:87%,ICBG:97%で有意差はなかったが(P=0.353),PEEK製ではDBM:25%,ICBG:80%で有意差を認めた(P=0.001).移植骨のCT値は,検者の目視評価による骨化の程度と同様の傾向を示した.

    結語:DBM単独でもチタン製ケージ内ではICBGと同等の骨化が確認できた.

  • 茶薗 昌明, 瓜本 奏太
    2023 年 14 巻 10 号 p. 1325-1331
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:術野の視野が限られた側方進入腰椎椎体間固定術(LLIF)では腰部静脈系血管からの出血でも手術の妨げになり,その走行や分枝には個人差が大きく周術期の血管損傷は回避すべき合併症である.今回,LLIFにおいて三相造影CTによる腰部静脈系血管の下大静脈(IVC)の走行とその分岐レベルならびに描出された腸腰静脈(ILV)の出現頻度について調査した.

    対象と方法:成人脊柱変形に対してLLIF手術前に造影CTを施行した71例を対象とした.造影剤の急速投与後に動脈相・静脈相・平衡相からなる三相造影により撮像し,椎体と動脈・静脈・尿管との関係を描出し,3DCT画像を構築した.IVC左側外縁と正中仙骨垂線(CSVL)との水平距離(RLD),ILVの本数,流入静脈,椎体走行高位を調査した.

    結果:RLDは側弯Cobb角と有意な相関を認めた.ILVは約7割の症例で同定できた.ILV流入静脈は両側とも総腸骨静脈(CIV)が8割と最多であったが左右差はなかった.ILVは約5%の症例でL4/5レベルを横走していた.

    結語:従来の二相造影(動脈相・平衡相)では腰部静脈系血管の描出は困難である.我々が提案した三相造影では腸腰静脈の描出は良好であり,LLIFに対する術前計画に有用である.

症例報告
  • 諸井 威彦, 橘 安津子, 渡邉 泰伸, 伊賀 隆史, 中道 清広, 片岡 嗣和, 河野 仁, 竹内 拓海, 細金 直文
    2023 年 14 巻 10 号 p. 1332-1339
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:第5腰椎分離すべり症の術式はposterior lumbar interbody fusion(PLIF)やposterolateral fusion(PLF)が一般的である.椎体のすべりが大きい場合は整復操作に伴う神経障害のリスクが高く,椎体間の前方や側方に骨性架橋がある症例では,すべりの整復自体が困難である.我々は神経障害の発生を回避し,かつ強固な固定力および骨癒合を得るため,症例に応じてS1 transdiscal screwを用いた腰仙椎固定術を行っている.今回当院における術後成績を報告する.

    症例1:69歳,女性,腰痛,右臀部痛.Meyerding分類grade 3,% slip 56%,slip angle -3°のすべりあり.L5/S1椎間板は高度に変性し,椎間板腔は狭小化していた.

    症例2:33歳,男性,腰痛,両臀部痛.grade 3,% slip 55%,slip angle 8°のすべりあり.L5/S1椎間板は高度に変性し,椎間板腔は狭小化していた.

    症例3:56歳,男性,腰痛,右臀部痛.grade 2,% slip 26%,slip angle -2°のすべりあり.L5/S1椎体間の前方および側方に不連続な骨性架橋の形成あり,すべりの整復やケージの挿入は困難と考えられた.

    結語:術後腰痛,下肢痛ともに全例で改善し,神経障害の発生なく,術後1年で骨癒合が得られ,本術式は有用であった.

  • 手塚 猛司, 古矢 丈雄, 牧 聡, 井上 嵩基, 弓手 惇史, 三浦 正敬, 白谷 悠貴, 丸山 隼太郎, 永嶌 優樹, 折田 純久, 林 ...
    2023 年 14 巻 10 号 p. 1340-1344
    発行日: 2023/10/20
    公開日: 2023/10/20
    ジャーナル フリー

    頚椎症性神経根症は保存療法抵抗性の症状を認める場合,手術加療も治療選択肢の一つに挙げられる.今回,頚椎後方すべりに伴う椎間孔狭窄により生じた保存療法抵抗性の神経根症に対し後方除圧矯正固定術を施行した1例を経験したので報告する.

    47歳女性,右上肢痛,しびれを主訴に前医初診.診察,画像検査から頚椎症性神経根症の診断となり保存加療抵抗性であったため当科紹介受診.神経症状は右頚部から右上肢にかけてのしびれと疼痛を認めた.X線画像でC5椎体後方すべり,MRIでC5/C6間の右椎間孔狭窄,CTではC5/C6椎間板の菲薄化および鉤椎関節部に骨棘様の増殖性変化を認めた.通常の頚椎症性変化に加え,頚椎後方すべりにより椎間孔の狭窄が生じ,右C6神経根症を呈していると考えた.C5椎弓切除,C6椎弓頭側部分切除と右C5/C6の椎間孔拡大,すべりの矯正を意識したC5~6後方除圧矯正固定術を施行した.術後は上肢痛などの症状は早期より完全消失,術後2年が経過した現在も,症状の再燃なく,経過は良好である.

    すべりを伴う椎間孔狭窄による神経根症に対する後方除圧矯正固定術は有効な術式であると考えた.

feedback
Top